群馬の日本酒の特徴とは 口当たりやわらかな酒質
首都圏の水がめとしての役割を担う群馬県。浅間山、谷川岳、赤城山、榛名山など取り囲む山々から湧き出る清流が大河となり、そして海へと流れ出ます。
澄んだ空気、雄大な山々、豊かな土壌で育まれた水は、多くの場合軟水です。日本酒製造の工程で使う水が、ミネラルを多く含む硬水に近いほどスピーディに発酵が促され力強い酒質になりやすく、軟水ほどおだやかに発酵が進み、口当たりやわらかな酒質になりやすい特徴があります。群馬の日本酒の多くは軟水でつくられるため、後者の特徴が出やすいと言えます。
大自然のなかで育まれた軟水でつくられた口当たりのやわらかなお酒を、一度味わってみてください。ゆったりとした気持ちで飲むことができるお酒、それが群馬のお酒です。
群馬の日本酒の選び方
唎酒師の関 友美さんに、群馬の日本酒を選ぶポイントを教えていただきました。
代表的な蔵元を紹介
平地の蔵、山間部の酒蔵……一カ所に固まるのではなく、地域に分布する群馬の酒蔵。新潟県、埼玉県、長野県、福島県、栃木県など多くの県に囲まれていることも起因しているのか、首都圏が近いせいもあるのでしょうか。さまざまなバリエーションで、それぞれの個性を出す酒蔵が存在します。
牧野酒造の「大盃」のようなワイルドなタイプから、島岡酒造の「群馬泉」のように古典的なつくり方をしておだやかで抵抗なく飲めるタイプ、龍神酒造の「尾瀬の雪どけ」のように今までの日本酒の概念を壊してくれる酸が特徴のお酒……。ひとつの県のなかでもさまざまな味わいを楽しむことができるので、どんなタイプが好みか知ることができます。
早速、酒蔵ごとの特徴を見ていきましょう。
永井酒造の代表銘柄は「水芭蕉」
「awa酒協会」の代表理事を務めるのは永井酒造の代表取締役・永井則吉さんであり、この永井酒造は今話題のスパークリング日本酒に早くから取り組んでいた酒蔵のひとつです。日本酒造りの伝統を守りながら、新しい日本酒スタイルにチャレンジしています。
龍神酒造の代表銘柄は「尾瀬の雪どけ」
特定名称酒のみを製造する吟醸蔵。米の個性をぞんぶんに引き出す酒造りが強み。「尾瀬の雪どけ」は日本酒度が+10相当ある辛口ドライな味わいは、辛口好きにはたまらない仕上がりです。ただ辛いだけではなく、濃醇な米の旨味とするどいキレが楽しめる贅沢な味わい。
町田酒造の代表銘柄は「清りょう」
1883年(明治16年)創業の歴史ある酒蔵の娘である町田恵美さんが、東京のOL生活を辞め実家に戻り、群馬県内初の女性杜氏となりました。また、東京から実家に戻ったときの婚約者であり、現在の夫である晶也さんが社長を務めています。敷地内の井戸から汲み上げて仕込みや洗浄などに使う水は、利根川の伏流水で口当たりのよい軟水を使用しています。
牧野酒造の代表銘柄は「大盃」
群馬県で一番古い歴史を持つ牧野酒造は、「大盃」というお酒を長年つくっています。近ごろ遊び心で出された「マッチョシリーズ」はラベルのユニークさだけでなく、味わいから人気を集めています。国内の鑑評会などでの受賞も多数、品質本位の酒造りをしています。
島岡酒造の代表銘柄は「群馬泉」
群馬のお酒を語るうえで外すことのできない、特徴ある酒蔵。1863年(文久3年)創業の島岡酒造は、「生もと系山廃づくり」という昔ながらの製法を守り続けているのが特徴です。
蔵についた独自の天然乳酸菌を用います。原料米は、山田錦、美山錦、五百万石、そして群馬県産酒造好適米「若水」や「舞風」も使用、酵母には群馬の「KAZE酵母」や「群馬G2」を使用するなど、群馬県産の酒づくりにこだわりを持った酒蔵です。
聖酒造の代表銘柄は「関東の華」
伊香保温泉の近くで酒づくりを営む「聖酒造」を語るうえで、前任の杜氏の話を外すことはできません。1929年(昭和4年)生まれの小原喜六さんは長年にわたって杜氏を務めた人物で、2011年に黄綬褒章に輝いています。多くの受賞に加え、多くのファンを持つ彼の技術は、現在7代目の今井健介氏が継承しています。
柳澤酒造の代表銘柄は「桂川」
明治10年創業の柳澤酒造。伝統のもち米を使った本醸造と大切にし、本来の米がもっている甘味を生かすことで、甘口の酒造りにこだわりをもっています。赤城山のふもとに酒蔵を構えており「桂川」という銘柄の日本酒が有名です。
土田酒造の代表銘柄は「譽國光」
創業は明治40年。現在までに群馬県沼田市の都市計画により移転を余儀なくされたこともありましたが、移動するにあたって、数十本の井戸を掘ることで以前と同じ水脈をみつけるなどこだわりをもつ土田酒造。
高い精米歩合での日本酒をつくっており、地元に愛される酒造です。現在は、生もと造りという、自然の乳酸菌という微生物を活用した酒造りを展開しています。
大利根酒造の代表銘柄は「左大臣」
1739年から酒造りをしている歴史ある酒造。小さな酒造ではありますが、尾瀬のふもとの山々にかこまれた地で、地元の風土にあった手作りの味を代々受け継いでいます。寒造りならではの、爽やかな飲み口と芳醇な香りを感じることができます。多くの通の人たちのあつい支持を集めています。
分福酒造の代表銘柄は「分福」
創業は1825年。丸木屋本店の屋号で酒造りをはじめ、分福酒造に改名しました。現在に至るまでに、野辺山に移転しています。赤城山の自然水と契約栽培された酒米を原料に「分福」という銘柄の日本酒を製造しています。分福は「福を分ける」という意味で名づけられています。
会社全体で酒造りに携わることで、技術向上をめざしています。ほんのり柔らかく甘く、喉ごしにキレのある辛口の酒を醸造しています。
群馬の酒米「若水」「舞風」に注目する
古くから稲作が盛んだったといわれている群馬県。ここには日本酒づくり用の米・酒米も存在します。もともと1972年(昭和47年)愛知県総合農業試験場で開発された「若水」を群馬県に持ってきて育成、関東ではじめて「酒米」として認定されました。大粒であり、酒の麹づくりに重要だといわれる「心白」という部分が多いのが特徴です。
その後、2011年(平成23年)には群馬県オリジナルの酒造好適米「舞風」が誕生しました。せっかく味わうのなら、群馬県産米にこだわって選んでみるというのも、ひとつの選び方です。
群馬の日本酒おすすめ15選
ここまで紹介した選び方のポイントをふまえ、唎酒師の関 友美さんにおすすめの商品を選んでいただきました。
香りを楽しみながら飲めるフルーティーさ
兵庫県産山田錦の精米歩合35%のお米を丁寧にじっくり低温発酵、低温貯蔵して造り上げました。さわやかでマイルドな口当たりでフルーティーさも感じる味わい深い日本酒です。
華やかな吟醸香にすっきりした飲み口
兵庫県産の山田錦を48%まで精米し、浅間山麓を源とする湧水で醸した贅沢なお酒。淡麗ですっきりした辛口なので、冷やして飲むのがおすすめです。

ピュアで繊細なスパークリング日本酒
「水芭蕉」は透明感あるお酒が特徴です。「これから予想される多くの訪日者とともに発泡日本酒で乾杯を」と取り組む「awa酒協会」の代表理事を務めるのは永井酒造の代表取締役・永井則吉さんであり、この永井酒造は今話題のスパークリング日本酒に早くから取り組んでいた酒蔵のひとつです。
日本酒の製法にシャンパンのような瓶内二次発酵の製法を取り入れた、本格派のスパークリング日本酒『MIZUBASHO PURE』は、構想から10年、数百回にも及ぶ試行錯誤を経て2008年にリリースされました。
美しく澄んだなかにあらわれるシルキーで繊細な泡、やわらかい舌触りは日本人の持つ発泡日本酒のイメージを覆(くつがえ)すだけでなく、さまざまな料理に合うと世界のシェフから支持されています。特別な日にぴったりの日本酒です。
旨味にとことんこだわったお酒
山田錦を40%まで磨きこみ低温発酵で醸したお酒。酒蔵がこだわっているとおりしっかりと旨味を引き出した一本です。大吟醸ならではの華やかな香りで後味もすっきり、料理と一緒に楽しめます。
地元で愛される旨口の日本酒
2017年に昔ながらの醸造方法である山廃仕込みへ転換。原料も米、米麹、水、酵母のみでつくる純米酒に絞って酒造りをしています。小さな蔵ならではの個性ある味わいは、地元でも人気があります。
群馬を代表するブランド地酒の最高スペックな逸品
水、米、技、すべてにこだわり、丁寧に作られた「水芭蕉」は、群馬を代表する人気の地酒ブランドです。こちらは、究極の純米大吟醸を目指して醸し上げたプレミアムな1本。
ライチを思わせる華やかでフルーティーな香りと、ほのかな辛さが光る上品な味わいに仕上がっています。水芭蕉ファンからも格別な美味しさと評判。プレミアムな1本をお探しの方にお試しいただきたい地酒です。

実績に裏打ちされた、とまることを知らない人気酒蔵
1883年(明治16年)創業の歴史ある酒蔵の娘である町田恵美さんが、東京のOL生活を辞め実家に戻り、群馬県内初の女性杜氏となりました。
また、東京から実家に戻ったときの婚約者であり、現在の夫である晶也さんが社長を務めています。敷地内の井戸から汲み上げて仕込みや洗浄などに使う水は、利根川の伏流水で口当たりのよい軟水です。
果実のようなさわやかな香りと、それぞれの米を巧みに使い表現された旨味、飲んだ瞬間に感じるガス感は、さまざまなコンテストで受賞に輝き、日本酒ファンから愛されています。日本酒ビギナーや日本酒が苦手な方にもぜひ試していただきたい一本です。

インパクトある「マッチョ」な日本酒
群馬県で一番古い歴史を持つ牧野酒造は、「大盃」というお酒を長年つくっています。近ごろ遊び心で出された「マッチョシリーズ」はラベルのユニークさだけでなく、味わいから人気を集めています。
決してさわやかな夏酒ではなく、辛口のなかにほどよい酸味があって、ボディがしっかり。米の旨味が広がる、その名のとおり、まさにマッチョな酒質。
ほどよく華やかな香りがあるので、そこまでの暑苦しさは感じません。インスタ映えもばっちりで、夏のパーティーにおすすめです。

昔ながらのつくり方を貫く、玄人好みの酒蔵
群馬のお酒を語るうえで外すことのできない、特徴ある酒蔵。1863年(文久3年)創業の島岡酒造は、「生もと系山廃づくり」という昔ながらの製法を守り続けているのが特徴です。
蔵についた独自の天然乳酸菌を用います。原料米は、山田錦、美山錦、五百万石、そして群馬県産酒造好適米「若水」や「舞風」も使用、酵母には群馬の「KAZE酵母」や「群馬G2」を使用するなど、群馬県産の酒づくりにこだわりを持った酒蔵です。
この『山廃純米』は、若水を使用しており、開栓後じっくりと熟成をはじめ(よい意味での酸化)、1週間後、2週間後……と変化を楽しめるお酒でもあります。よりまろやかになった味わいは、ぬる燗(かん)をしてさらに冴え渡ります。料理との相性がよいので、食中酒を探している方にすすめたい一本です。

果実感あるさわやかな酒をつくる新生・聖酒造
伊香保温泉の近くで酒づくりを営む「聖酒造」を語るうえで、前任の杜氏の話を外すことはできません。1929年(昭和4年)生まれの小原喜六さんは長年にわたって杜氏を務めた人物で、2011年に黄綬褒章に輝いています。多くの受賞に加え、多くのファンを持つ彼の技術は、現在7代目の今井健介氏が継承しています。
そのなかで近年首都圏向けの限定流通酒としてスタートしたのが「聖(ひじり)」。さわやかな酸味、果実感ある香り、後半のスッキリとしたキレ。ジューシーな日本酒をお探しの方におすすめです。

日本酒苦手! という初心者に飲んでほしいピンク酒
「これは日本酒!?」と見た瞬間にびっくりする、ピンク色のお酒です。でもあくまでも米と麹だけでつくられていて、このピンクは酵母の色。着色料不使用なので心配は無用です。毎年春限定で出荷されるこのお酒はまるでいちごヨーグルトやラッシーのような、甘酸っぱさが特徴。
アルコール10%で、日本酒になじみがない方でもゴクゴク飲めてしまうお酒です。毎年リリースのときを待ちわびているファンが大勢いる大人気のお酒、ぜひチェックしてみてください。
「群馬県の日本酒」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 群馬の日本酒の売れ筋をチェック
Yahoo!ショッピングでの群馬の日本酒の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
日本酒のオンラインサイト
お酒の専門のオンラインショップ「KURAND(クランド)」では、全国各地の日本酒、梅酒、果実酒、焼酎、クラフトビールなどを取り扱っています。
KURANDは、日本酒はたくさん種類があって難しそう、どのように選べばよいのだろうという人たち向けに生まれたサイトで、酒造のストーリーから日本酒を学び、選ぶことができるのが特徴です。もちろん群馬の地酒もたくさん取り揃えています。
また、「酒ガチャ」という、ランダムでお酒を詰め込んだお買い得BOXを販売していたりと、酒造とお客さんとの新たなお酒の出会いも提案しています。
そのほかの日本酒のおすすめはこちら
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唎酒師で日本酒ライターの関 友美さんへの取材をもとに、辛口の日本酒の選び方とおすすめ商品6選をご紹介します。辛口の日本酒は、世の中にたくさんありますが、米や米麹などの原料、酒蔵や醸造方法などの違いにより、どれひとつつとして同じ味わいはありません。本当であればひとつ一つ飲み比べられればいいのです...
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唎酒師からのアドバイス 各酒蔵の個性を楽しむ
群馬県はいくつもの山を有し、清らかな水資源がある場所で、軟水由来のやわらかい酒質が特徴です。とはいっても各酒蔵でつくり方や、「こんなお酒をつくりたい」という方向性が違いますから、それぞれの個性を楽しむことができます。
ひとつの種類を飲んで「これだ!」と思えることもありますが、いくつも比べて試してみた結果として自分のお気に入りの一本を見つけることが多々あります。
やみくもに飲むよりも、「群馬のお酒」とか、なにかフィルターがひとつあることで整理されることは多いので、ぜひ試してみてください。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
日本酒アドバイザーや飲食店勤務を経て、現在は「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと日本酒の魅力を発信するさまざまな活動をおこなっている。 記事執筆、セミナーや講演、酒蔵での酒造り、各地の酒場での女将業など、あらゆる場所、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさ、日本の各地方の魅力を伝えている。