千葉の日本酒の選び方
日本酒ライターの関 友美さんに、千葉の日本酒を選ぶときのポイントを教えてもらいました。
千葉の有名酒蔵・蔵元から選ぶ
唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
千葉県は40もの酒蔵が存在します。
水郷エリア
北総エリア
銚子エリア
九十九里エリア
上総エリア
南総エリア
こまかい水脈による違いはありますが、日本のほかの地方同様に全体として軟水でありながらも、木更津を中心にやや硬水寄りの傾向があります。酒づくりの仕方にもよりますが、硬水を使うとキレのよい辛口酒ができる傾向にあります。
そのエリアごとにこだわりや味わいも変化しますので、エリアに注目するのも選び方のひとつです。
北総エリアなら、滝沢本店など
千葉県の北西側に位置する北総エリア。地域でいうと成田や佐倉になります。なかでもおすすめは「滝沢本店」。有名な銘柄は、「長命泉」。蔵のなかにある井戸水が美味しく、長命延命霊力の水と評判になったことから、名付けられました。
上総エリアなら、藤平酒造など
上総エリアの藤平酒造は小さな酒蔵ですが、造り手3人だけで一貫して手造りにこだわり、少量仕込みの酒が評判。千葉県を代表する人気の酒蔵です。
代表的なお酒は「福祝」の中でも一番人気の特別純米。兵庫県産の山田錦を100%使用しており、穏やかで優しい香りが特徴です。
南総エリアなら、亀田酒造・木戸泉酒造など
上総エリアは南総エリアの隣に位置し、太平洋に面しています。
木戸泉酒造は「アフス」という変わった名前のお酒が有名です。開発に携わった新潟県住乃井酒造の先々代社長・安達源右衛門、千葉県醸造試験場初代所長(当時・木戸泉技術顧問だった)古川董、先々代社長の荘司勇の頭文字「A」「F」「S」をとってつけられました。日本酒は三段仕込みというつくり方をしますが、アフスは木戸泉酒造独自の高温山廃仕込みに加えて蒸米、麹米、水を一度に入れる一段仕込みです。
九十九里エリアなら、梅一輪酒造・寒菊銘醸など
南総エリアの上に位置する九十九里エリアは、ちょうど九十九里浜のあるところにあたります。
寒菊銘醸の最高傑作品として「名誉大吟醸」というすごい名前が冠されているこちらのお酒。酒米の王さまと呼ばれる山田錦を惜しげもなく研(みが)き、雑味の出る外側を取り除いたうえで使用しています。果実を思わせる吟醸香のあとの口当たりは、とてもやわらかです。
水郷エリアなら、東薫酒造・寺田本家など
酒造りだけではなく、乳酸発酵飲料や酒粕や麹を使った調味料の製造など、発酵にこだわりを持つ寺田本家。こちらは、精米歩合90%と、江戸時代から伝わる生もと仕込みで醸した純米酒です。
どこか懐かしさを感じさせる味わいと香り、低精米だからこその飲みごたえが特徴。
千葉県産の酒米に注目して選ぶ

Photo by Jeff Frank on Unsplash
千葉県では日本酒をアピールする「日本酒活性化プロジェクト」が進められています。原材料についても見直し、県内産の酒造好適米「総の舞(ふさのまい)」を開発、栽培して積極的に使用をするようにしています。「総の舞」は県外から原料米を取り寄せていた千葉県待望の酒米で、交配されるときの母に「白妙錦」、父に「中部72号」という食用米を持っています。
「白妙錦」は「玉栄」「雄町」「神力」といったふくよかな味わいが出やすい酒米の系譜を継いでいるので、「総の舞」を原料にしたお酒は、米の旨味をしっかり味わうタイプが豊富。そんな「総の舞」が使用されているお酒にしぼるのも選び方のひとつです。
辛口、甘口など好みの味で選ぶ
日本酒には、辛口や甘口など味わいがスッキリして飲みやすいタイプや、フルーティーなタイプなど様々です。同じ千葉にあってもその味わいはさまざまです。千葉県地域のお酒をセレクトして、飲み比べてみるのもひとつの方法です。
純米大吟醸や本醸造酒など特定名称から選ぶ
精米歩合が50%以下で、米と米麹だけで醸造したものが「純米大吟醸酒」、そこに醸造アルコールを添加しているものを「大吟醸酒」と呼びます。
精米歩合が60%以下で、米と米麹だけで醸造したものが「純米吟醸酒」、そこに醸造アルコールを添加しているものを「吟醸酒」と呼びます。
米と米麹だけで醸造された日本酒のことを「純米酒」と呼び、精米歩合の規定はありません。なお、「純米酒」で、かつ精米歩合が60%以下で、特別な醸造方法のものを「特別純米酒」と呼びます。
精米歩合が70%以下で、醸造アルコールを添加しているものを「本醸造酒」と呼びます。純米酒同様、精米歩合が60%以下で特別な醸造方法のものを「特別本醸造酒」と呼びます。
おなじみの酒か、新しい時代の酒かで選ぶ
唎酒師/日本酒ライター/コラムニスト/蔵人/フリーランス女将
千葉県のお酒は、昔ながらの味わいを守るタイプと、新しい時代にあったニュータイプのお酒が存在します。なかなか見定めるのは難しいかもしれませんが、都心の酒屋さんでも取り扱いがあるようなところは後者のタイプであることが多くあります。
また同じ酒蔵でも、地元向けには昔ながらのお酒をつくり、県外向けには酸や甘みが特徴の、香りが華やかな新型のお酒をつくるところも増えています。
初心者のかたは、新しいものから試してみて、それから昔ながらのお酒に進むことをおすすめします。
千葉の日本酒おすすめ13選
ここまでで紹介した千葉の日本酒の選び方のポイントをふまえて、日本酒ライターの関 友美さんに選んでもらった商品を紹介します。

飯沼本家『甲子 純米吟醸生酒 きのえねアップル』

出典:Yahoo!ショッピング
エリア | 北総 |
---|---|
原料米 | 五百万石 |
精米歩合 | 55% |
アルコール度 | 15度 |
日本酒度 | -18 |
内容量 | 720・1800ml |
日本酒嫌いをも振り向かせる、甘酸っぱいお酒
千葉の酒呑みで「甲子」の名を知らない人はいないであろう、深い歴史のある大きな酒蔵です。立春搾りなどにも力を入れ、立春のその日搾ったお酒をその日のうちにお客様へお届けするため発送、あるいは近郊の飲食店が手伝いにいって自らラベルを貼り持ち帰るという活動も行っている毎年の風物詩になってきました。
こちらの『純米吟醸生酒 きのえねアップル』の、まるでリンゴからつくったお酒のように甘酸っぱい味わいは、「協会77号酵母」というリンゴ酸多産性の酵母を使用しているから。日本酒度といって醸造家が残糖量をはかる目安の数値がありますが、通常の日本酒はプラスマイナスゼロくらい。プラスになれば辛口。マイナスになれば甘口のお酒ということになります。このお酒の日本酒度はマイナス18。かなり甘めなのが分かるかと思います。
アミノ酸もたっぷり出ていて、しかしながら後味スッキリ。かわいいラベルで飲みやすい日本酒を探しているかたにはおすすめの一本です。

鍋店『不動 山廃純米酒』




出典:楽天市場
エリア | 水郷 |
---|---|
原料米 | 美山錦(秋田県産) |
精米歩合 | 65% |
アルコール度 | 15~16度 |
日本酒度 | +2~3 |
内容量 | 720・1800ml |
揺るぎない実力派酒蔵の技術を感じる一本
「不動」「仁勇」というお酒をつくっている酒蔵です。ワイングラスでおいしいアワードをはじめ数々の受賞歴をもつ醸造技術の高い酒蔵ですが、「日本酒マニア向けなのでは……」と身構える必要はありません。なかでもわたしのお気に入りの、昔ながらの「山廃づくり」という製法でつくられた純米酒をご紹介します。
この製法でつくられたお酒は、現代の速醸というつくり方よりも、やや乳酸の香りが多く感じられます。丸みのある米の旨味があり、コクを感じるのに酸味のせいか後味スッキリ。丸みのある米の旨味があり、コクを感じるのに酸味のせいか後味スッキリ。冷酒でもお燗でもよく、中華から和食まで料理にもおすすめです。

木戸泉酒造『純米生アフス』

出典:Amazon
エリア | 南総 |
---|---|
原料米 | 総の舞(千葉県いすみ市産) |
精米歩合 | 65% |
アルコール度 | 13.7度 |
日本酒度 | - |
内容量 | 500ml |
ロックでもソーダ割りでもおいしい酸っぱいお酒
わたしはこのお酒と出逢ったとき、40年以上も前からこのお酒を商品化していると聞いて驚きを隠せませんでした。甘くて、びっくりするくらいのとびっきりの酸味。酸っぱいタイプの白ワインみたいに口の中を暴れまわるような、日本酒の概念を大きく覆す味わい。てっきり食文化が多様化しきった現代になってから新しく開発されたお酒なのかと思ったほどです。
「アフス」という変わった名前は、開発に携わった新潟県住乃井酒造の先々代社長・安達源右衛門、千葉県醸造試験場初代所長(当時・木戸泉技術顧問だった)古川董、先々代社長の荘司勇の頭文字「A」「F」「S」をとってつけられました。日本酒は三段仕込みというつくり方をしますが、アフスは木戸泉酒造独自の高温山廃仕込みに加えて蒸米、麹米、水を一度に入れる一段仕込みです。氷を浮かべたり、クラッシュアイスに入れたり、ソーダと割ったり、炭酸を注入してもおいしいので、日本酒を自由な飲みかたで楽しみたい方におすすめ。

寒菊銘醸『名誉大吟醸 夢の又夢』

出典:楽天市場
エリア | 九十九里 |
---|---|
原料米 | 山田錦 |
精米歩合 | 40% |
アルコール度 | 16度 |
日本酒度 | +5 |
内容量 | 720・1800ml |

小泉酒造『純米吟醸 東魁盛 秋上がり』

出典:Yahoo!ショッピング
エリア | 上総 |
---|---|
原料米 | 山田錦(兵庫県産) |
精米歩合 | 55% |
アルコール度 | 16度 |
日本酒度 | - |
内容量 | 1800ml |
秋に一番おいしい、やわらかなお酒
お酒本来の味をそのまま感じて欲しいという意味をこめて、日本酒度や酸度は非公開にしています。兵庫県産の山田錦を原料米として、ひと夏熟成させてから出荷される「秋上がり」のお酒です。秋に味わいが乗ってきて一番おいしい状態になる、と昔から秋上がりは重宝されています。
上品で優しく甘い香り、やわらかい酸味。このふたつにより、冷酒だけでなく、お燗をして甘みや旨味が広がったときにも味わいがバランスしてよりおいしく飲むことができます。
心温まる秋のお酒をお探しの方におすすめ。ちなみにこの蔵は、2019年の台風15号で大きな被害を受けました。大げさなことはしなくて良いので、ぜひこの機会に飲んで応援! 新しいお酒に、飲んで出逢おう! という気持ちで手に取ってみてください。

岩瀬酒造『岩の井 純米吟醸 総の舞』






出典:Amazon
エリア | 南総 |
---|---|
原料米 | 総の舞 |
精米歩合 | 55% |
アルコール度 | 15度 |
日本酒度 | +3 |
内容量 | 720・1800ml |
鍋店『仁勇 本醸造辛口』
![鍋店仁勇本醸造辛口瓶[日本酒千葉県1800ml]](https://m.media-amazon.com/images/I/41v7aklgrUL.jpg)
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出典:Amazon
エリア | 水郷 |
---|---|
原料米 | 国産米 |
精米歩合 | 70% |
アルコール度 | 15度 |
日本酒度 | +7~8 |
内容量 | 720ml、1800ml |
吉野酒造『腰古井 大吟醸』

出典:Amazon
エリア | 南総 |
---|---|
原料米 | 山田錦 |
精米歩合 | 40% |
アルコール度 | 15~16度 |
日本酒度 | +3 |
内容量 | 720ml、1800ml |
寺田本家『純米90 香取』

出典:Amazon
エリア | 水郷 |
---|---|
原料米 | コシヒカリ、雪化粧 |
精米歩合 | 90% |
アルコール度 | 15度 |
日本酒度 | +4 |
内容量 | 720ml、1800ml |
梅一輪本家『特撰 吟醸辛口 梅一輪』

出典:Amazon
エリア | 九十九里 |
---|---|
原料米 | ふさこがね |
精米歩合 | 麹米50%/掛米60% |
アルコール度 | 15度 |
日本酒度 | +6 |
内容量 | 180ml、300ml、720ml、1800ml |
藤平酒造『福祝 特別純米 山田錦55%磨き』

出典:Amazon
エリア | 上総 |
---|---|
原料米 | ふさこがね |
精米歩合 | 55% |
アルコール度 | 15~16度 |
日本酒度 | - |
内容量 | 720ml、1800ml |
東薫酒造 『東薫 大吟醸 叶』

出典:Amazon
エリア | ‐ |
---|---|
原料米 | 兵庫県産山田錦 |
精米歩合 | 35% |
アルコール度 | 17~18度 |
日本酒度 | +3 |
内容量 | 720ml |
飯沼本家『甲子 純米吟醸』






出典:楽天市場
エリア | 酒々井 |
---|---|
原料米 | 山田錦 |
精米歩合 | 55% |
アルコール度 | 15% |
日本酒度 | ‐ |
内容量 | 720ml |
おすすめ商品の比較一覧表
都道府県別のおすすめの地酒特集
各地方ごとに特色ある地酒が紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。各都道府県をクリックするとおすすめの日本酒記事に飛べます。
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和酒コーディネーターのあおい有紀さんに、若い人や日本酒初心者向けの日本酒選びのポイントや初めてでも飲みやすいおすすめの日本酒を教えてもらいました。日本酒は銘柄がものすごくたくさんあるので、初心者は、どの日本酒をえらんだらいいか迷うこともあるでしょう。この記事では、日本酒の基礎知識も紹介している...
唎酒師で日本酒ライターの関 友美さんへの取材をもとに、辛口の日本酒の選び方とおすすめ商品6選をご紹介します。辛口の日本酒は、世の中にたくさんありますが、米や米麹などの原料、酒蔵や醸造方法などの違いにより、どれひとつつとして同じ味わいはありません。本当であればひとつ一つ飲み比べられればいいのです...
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 日本酒の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの日本酒の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
まとめ
寒いところで米どころ、というのが「酒どころ」のイメージかもしれません。でも千葉県も実は江戸時代から酒どころのひとつとして数えられています。手が届かないお酒というよりは、古くから親しみやすいお酒をつくってきた印象が強い千葉の酒蔵。一歩千葉県に足を踏み入れて、スーパーの酒売り場に行くと「こんなにも千葉の地酒が存在するのか!」と驚くことでしょう。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2021/01/25 コンテンツを一部修正しました(マイナビおすすめナビ編集部 渡辺裕美)
日本酒アドバイザーや飲食店勤務を経て、現在は「とっておきの1本をみつける感動を多くの人に」という想いのもと日本酒の魅力を発信するさまざまな活動をおこなっている。 記事執筆、セミナーや講演、酒蔵での酒造り、各地の酒場での女将業など、あらゆる場所、あらゆる手段で日本酒の美味しさと日本文化の豊かさ、日本の各地方の魅力を伝えている。