パイロットの万年筆とは?
パイロットは、1918年創業の文房具メーカーです。純国産の14金製ペン先を開発・販売して以来、さまざまなタイプの万年筆を世に送り出してきました。
ペン先の種類も多く、また万年筆自体も「コスパ重視」「日本語を美しく書く」など用途に応じた万年筆のシリーズがあります。インクとの組み合わせによって、自分の好みに合わせたカスタマイズが可能です。万年筆の愛好家はもちろん、はじめて万年筆を手にする人にも選びやすいでしょう。
パイロットの万年筆の選び方 カクノ、コクーン、キャップレスなど人気シリーズ
フリーライター/小物王の納富廉邦さんへの取材をもとに、パイロットの万年筆を選ぶときのポイントをご紹介します。
シリーズごとの魅力から選ぶ
パイロットの万年筆は、用途や価格に合わせて多くのシリーズを展開しています。こちらでは、代表的なシリーズについてご紹介します。
万年筆の入門編ならプチプライスの「カクノ」
「きっと書くのが楽しくなる」をキャッチコピーとした「カクノ」は万年筆入門者にぴったりです。プチプラなうえ、外観もポップでおしゃれです。スケルトンのボディにカラーインクをいれて使うのもおもしろいでしょう。
グッドデザイン賞を受賞したカクノは、軸も適度な太さで、持ちやすく転がりにくいつくりとなっていて、子ども用に開発された商品ながら大人も楽しみながら使える実用性があります。
万年筆を感じさせないデザインの「コクーン」
「コクーン」は、20~30代を対象にして作られた万年筆です。「繭」をモチーフに、丸みのあるボディとシンプルなデザインがグッドデザイン賞受賞にもつながりました。
メタリックなボディはシンプルですが、ほどよい太さと重量感は毎日使いたくなるほどの存在感を持っています。価格も万年筆としては抑えめなので、ビジネスの相棒としてもぴったりです。
しなやかで日本語が美しく書ける「エラボー」
「エラボー」は、ペン先がやわらかくしなやかで、軽いタッチで文字が書けるのが魅力です。日本語の「とめ」「はね」「はらい」を美しく書け、字幅の強弱も書く人の筆圧に合わせて忠実に表現できます。14金ロジウム加工のペン先は独自の開発です。
ボディは、重量感があるメタリックの金属ボディと、本体重量の軽い樹脂製の2種類があり、好みに合わせて選べるのも特徴です。
ボールペンのように使える「キャップレス」
万年筆といえば、使用するたびにキャップを取り外す必要があるものが主流でした。しかし、「キャップレス」はその名のとおり、キャップ式ではなくノック式になっています。ボールペンのように片手で操作できるので、外出先などでも手軽に使用できます。
使用しない場合は、ペン先を収納した部分がシャッター式に閉じられ、インクの漏れや乾燥を防いでくれます。
太めの軸が存在感を放つ「カスタム」
「カスタム」シリーズは、その名が示すように、オーダーメイドをイメージして作られました。「カスタム74」は11種類のペン先から選ぶことができ、4色の落ち着いた色合いのボディと組み合わせることで、長く使える1本を見つけることができます。
ボディも太く、長さもあるので、手の大きめな人が長く使ってもストレスを感じにくいでしょう。
カスタムシリーズには、さらにまたさまざまなタイプがあるので、公式サイトなどでチェックしてみてください。
多彩なペン先から選ぶ
フリーライター、小物王
パイロットの万年筆は、ペン先の種類が豊富なのが特徴です。1,000円のモデル『カクノ』でも、M(中字)とF(細字)があります。『カスタム743』などはEF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB・C・PO・FA・WA・SUと14種類ものペン先が用意されていますよ。
ですから、自分好みの文字の太さ、ペン先のやわらかさを選ぶことができます。つまり、今まで万年筆が苦手だと思っていた人でも自分に合った一本を見つけられる可能性が高いのです。
同じ製品でも、ペン先が違うと書き味もまったく変わります。初心者は、EFやFなどのなるべくペン先がかたくて細い文字が書けるものから入って、徐々に太いもの、やわらかいものにすすむと、スムーズに万年筆に慣れることができます。
初心者にも使いやすい「F」「FM」
ペン先がやわらかいため、はじめて万年筆を使う場合には力加減に戸惑うこともありますが、手紙やメモなどに使うのなら「F(細字)」や「FM(中細)」を選ぶとよいでしょう。とくに万年筆がはじめてなら、細字の「F」から試してみてください。
またこの2種類は、ふだんペン軸を立てて持つ人に向いているペン先です。
万年筆のなかでとくに細い「EF」
手帳やメモなど、狭い部分に書くことが多い人や、細い文字を好む人は「EF(極細)」を選ぶとよいでしょう。すこしかたい印象の文字となりますので、ペン習字を習っている方にもこちらはぴったりです。パイロットの万年筆では、可憐な花をイメージした女性向けの「グランセ」シリーズに使われています。
ペンを立てて使う人に向いています。
字幅の強弱をつけやすい「SF」「SFM」「SM」
「SF」「SFM」「SM」は、いずれもソフトタッチのペン先になるため、文字幅に強弱をつけたい人に向いています。またペンを寝かせて持つ人や、筆圧が弱めの人にもぴったりのペン先です。
パイロットの万年筆では、「カスタム」シリーズのなかで選べるようになっていますので、気になる人は公式サイトをチェックしてみてください。
どんな角度でも書きやすいストレスフリーの「WA」
ペン先がわずかにうわ向きに沿っている「WA」はどのような角度の書き手にも対応するペン先です。ソフトな中字を書けるので、手紙などやや太めの文字を書く人に向いています。
特殊なつくりになっているペン先なので、「カスタム」シリーズのなかから選ぶことになりますが、数人で使う場合にはだれにも使いやすいペンでしょう。
使いたいインクのタイプで選ぶ
万年筆のインクとしては、ボトルに入ったものと、手軽に交換できるカートリッジタイプがあります。同じ場所で書くことが多いのであれば、吸引式やコンバーターを使用するタイプでボトルからインクをいれて使うものでもいいでしょう。
一方、持ち歩くことが多いのであれば、カートリッジ式が便利です。予備を持っていれば、外出先でのインク切れに慌てなくて済みます。ただし、カートリッジはメーカーなどによってサイズが異なるものもありますので、同じパイロットで選ぶとトラブルは回避できます。
手の大きさに合った軸の太さや長さから選ぶ
万年筆を使って、長時間文章を書くのであれば、軸は太めのものが使いやすいでしょう。反対に持ち歩くことが多かったり、かんたんなメモ用として使いたかったりする場合は、細身の万年筆が便利です。
また手の大きい人は、軸が長めのものを、手が小さい人は軸が短めのものを選ぶと、書くときに安定感があり使いやすいでしょう。
オーソドックスなものからギミックがあるものまで
フリーライター、小物王
パイロットの万年筆は、いかにも万年筆らしいオーソドックスなものから、現在世界で唯一のノック式万年筆、ペン先のかたさを変えられる万年筆といった、ちょっと変わった仕掛けのあるものまで、幅広いラインナップが魅力です。
素早く筆記したいなら、ノック式の『キャップレス』が最高の選択肢ですし、大量に筆記する人には、一気にたくさんのインクを吸入できる『カスタム823』が最適であるように、ほかとは違う個性的な万年筆を探している人にはたまらない製品がそろっています。
漆(うるし)や蒔絵(まきえ)などの伝統技法にも注目
フリーライター、小物王
パイロットの万年筆といえば、創業当初から海外市場に向けて、軸に蒔絵(まきえ)が施された万年筆を作っていたメーカー。それだけに、漆や蒔絵の使い方に定評があります。
とくに、『カスタム845』や『カスタムURUSHI』にみられる、万年筆の軸の素材としてすぐれているといわれるエボナイトを漆でコーティングして、手になじむ美しい軸に仕上げる手法は世界的にも評価されています。
蒔絵の軸は高級感だけでなく、筆記具としての書きやすさ、持ちやすさにもこだわった実用品として仕上げられています。「使える工芸品」として、美術が好きな人、しっくりと手になじむ道具がほしい人は、ぜひ蝋色(ろいろ)漆仕上げが施されているものを選んでみてください。
パイロットの万年筆おすすめ10選 特別な一本に出会おう
うえで紹介したパイロットの万年筆の選び方のポイントをふまえて、フリーライター/小物王の納富廉邦さんと編集部で選んだおすすめ商品をご紹介します。

PILOT(パイロット)『カスタム URUSHI』






出典:楽天市場
サイズ | 最大径φ20×全長155mm |
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ペン種 | FM、M、B |
カラー | 黒、朱 |
材質 | ペン先:18K2色 30号、軸さや:エボナイト、蝋色漆仕上げ |
書くことにこだわるすべての人へ
やや値は張りますが、個人的に現在の実用品としての万年筆のなかでも世界最高の万年筆だと思っているのが、この『カスタム URUSHI』です。大きなペン先と太い軸にも関わらず、紙に触れるか触れないかで字が書けてしまうので、大きな文字から手帳など罫が小さな場所への文字の筆記までらくにこなしてしまいます。
こんなにらくに書ける筆記具を私はほかに知らないので、とにかく「書く」ことにこだわるすべての人に使ってもらいたいです。
とても軽く書けるので、軸は大きいですが手の小さい人でも問題なく使えます。開発担当者は女性で、その方も実際に愛用されているとのことです。

PILOT(パイロット)『エラボー』

出典:Amazon
サイズ | 最大径φ14×全長139mm |
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ペン種 | SEF、SF、SM、SB |
カラー | ブラック、レッド、ライトブルー、ブラウン |
材質 | ペン先:14Kロジウム仕上げ、軸さや:黄銅 塗装 |
トメ、ハネ、ハライなどの表現もスムーズに
万年筆は基本的には太さが変わらない均一の線を書くのが得意ですが、この『エラボー』のやわらかいペン先は、まるで筆のように書き手の感情を線にのせやすく、トメ、ハネ、ハライなどの日本語独自の表現もスムーズに書くことができます。そういう意味で、とても特殊な万年筆ですが、表情のある文字を書きたい人、手書きのよさを味わいたい人には最適です。
ただし、本当にやわらかいペン先なので、慣れないとうまく書けませんし、ていねいに書かないと文字がキレイに見えないという側面も。万年筆に慣れていない人は、ほかの万年筆で慣れてから挑戦することをおすすめします。

PILOT(パイロット)『キャップレス』










出典:Amazon
サイズ | 最大径φ13.4×全長140mm |
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ペン種 | EF、F、M、B |
カラー | マットブラック |
材質 | ペン先:18K、軸さや:黄銅 塗装 |
ノックひとつですぐに筆記開始
1963年、世界初のノック式万年筆として発売してから愛され続けている『キャップレス』。とても小さなペン先なのに、紙へのタッチがやわらかく、とても万年筆らしい書き味が楽しめます。とくに、18Kのペン先の製品は、紙に吸いつくような書き心地で、私はとても気に入っています。何より、ノックひとつですぐに書きはじめられるので、日常的な筆記具として、ボールペンと同じように使えるのが最高です。
ふだんから万年筆を仕事などで使いたい人や、手帳などにも万年筆で書きたい人におすすめ。また、ノックしてペン先が出てくるメカニズムもとてもおもしろいので、ギミック好きな人にもおすすめです。

PILOT(パイロット)『ジャスタス95』








出典:Amazon
サイズ | 最大径φ16×全長148mm |
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ペン種 | F、FM、M |
カラー | ネットブラック、ストライプブラック |
材質 | ペン先・コントロールプレート:14K、軸さや:アクリル樹脂、エンジンターン |

PILOT(パイロット)『カスタムヘリテイジ92』






出典:Amazon
サイズ | 最大径φ14.7×全長137mm |
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ペン種 | F、FM、M、B |
カラー | ノンカラー、透明ブラック、透明ブルー、透明オレンジ |
材質 | ペン先:14K 5号、軸さや:アクリル樹脂 |
PILOT(パイロット)『カスタム742』






出典:Amazon
サイズ | 最大径φ13.4×全長140mm |
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ペン種 | EF・F・SF・FM・SFM・M・SM・B・BB・C・MS・PO・FA・WA・SU |
カラー | ブラック、ディープレッド |
材質 | ペン先:14K 、軸さや:黄銅 塗装 |
PILOT(パイロット)『Petit1 ペチットワン 万年筆タイプ』

出典:Amazon
サイズ | 最大径φ13.4×全長108mm |
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ペン種 | - |
カラー | ブラック・レッド・ブルー・ブルーブラック・ベビーピンク・アプリコットオレンジ・アップル |
材質 | ペン先:特殊細字、軸さや:樹脂 |
PILOT(パイロット)『カスタム823』

出典:Amazon
サイズ | 最大径φ15.7×全長148.4mm |
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ペン種 | F・M・B |
カラー | ブラック、ブラウン |
材質 | ペン先:14K15号、軸さや:樹脂 |
PILOT(パイロット)『コクーン』






出典:Amazon
サイズ | 最大径φ13.4×全長138mm |
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ペン種 | F・M |
カラー | ブラック、ホワイト、シルバー、ブルー、ボルドー、チタン、メタリックグレー |
材質 | ペン先:特殊合金、軸さや:黄銅 塗装 |
PILOT(パイロット)『カクノ』






出典:Amazon
サイズ | 最大径φ16.0×全長131mm |
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ペン種 | EF・F・M |
カラー | オレンジ、ピンク、レッド、ライトグリーン、ブルー、グレー、ソフトピンク、ソフトブルー、ソフトバイオレット、ソフトイエロー、ノンカ |
材質 | ペン先:特殊合金、軸さや:リサイクル樹脂 |
「パイロット万年筆」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする パイロット万年筆の売れ筋をチェック
楽天市場でのパイロット万年筆の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
ハイレベルな商品がそろうパイロットの万年筆 小物王からのアドバイス
フリーライター、小物王
膨大なラインナップのパイロットの万年筆から、ほかにはない際立った個性の製品を選びました。ペン先も材質に金を使ったものから選んだので、やや高めの価格帯です。しかし、それだけにどの万年筆も、紙へのタッチの心地よさ、スムーズに書ける描線、握りやすい軸と、筆記具としての使い勝手もとてもハイレベルです。ですから、あとはペン先との相性次第。
できれば、実際にお店に書きに行くのがよいですが、通販でもパイロットの製品なら、そうハズレを引くことはありません。こだわりの強い方でも、自分に合う一本が見つかるのがパイロットというメーカーだといえるでしょう。
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※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(制作協力:Mako、掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/12/03 コンテンツ追加のため、記事を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 矢部栞)
文化、飲食、メディア、ガジェット、雑貨、伝統芸能など、娯楽全般をフィールドに雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、講演などで活動する。 文具系、カバンなどの装身具、お茶、やかん、ガジェット、小説、落語などに関する著書もある。テレビ「マツコの知らない世界」ではボールペンの人、「嵐にしやがれ」ではシステム手帳の人として出演。