シグマ望遠レンズの選び方 写真家・カメラ評論家に聞く
自分が理想とする写真を撮るためにはレンズ選びは重要です。写真家・カメラ評論家の田中希美男さんにどのようにレンズを選べばよいかポイントを教えてもらいました。
3つのプロダクトラインから選ぶ
写真家、カメラ評論家
シグマのレンズは「Contemporary」「Art」「Sports」の3つのラインに分かれています。それぞれのラインにはレンズ開発のコンセプトの違いが明確にあります。
また、シグマのレンズ名称に「DG」「DC」「DN」などと記載されていますが、「DG」はフルサイズ判センサーを搭載したカメラ用、「DC」はAPS-C判センサーを搭載したカメラ用、「DN」はミラーレスカメラ用を意味し、「DC DN」はAPS-C判センサー搭載のミラーレスカメラ用レンズのことです。
Contemporary
F値が1.4と極めて明るい中望遠の単焦点レンズ。ハイスペックなわりに価格はおさえめです。顔認識や瞳AFを利用すれば、動いてもピントを合わせ続けることが可能。ボケをきれいに見せる大口径中望遠レンズとして、夜景なども撮影できます。
「Contemporary」ラインはコンパクトで低価格なので、カメラ初心者におすすめです。標準ズーム、望遠ズーム、高倍率ズーム、小型単焦点レンズなどが多くそろっています。
Art
SIGMA 単焦点望遠レンズ Art 135mm F1.8 DG HSM キヤノン用 フルサイズ対応
「Art」ラインは、シグマの最高の光学技術を駆使したレンズでやや高価ですが優れた性能を備えたレンズシリーズです。手持ちのレンズでは物足りない人にぴったりです。大口径単焦点レンズ、大口径ズームレンズ、マクロレンズなどがラインナップされています。
Sports
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary C015 | Canon EFマウント | Full-
「Sports」ラインは、スポーツや飛行機など動く被写体を撮る人におすすめの望遠系レンズがメインです。悪条件でも撮影できるように防塵防滴の構造になっています。自分が撮りたい写真はどのような写真なのかを把握してほしいラインを選びましょう。
レンズ名称からカメラの機能にあわせて見分けよう
開放F値1.8と非常に明るく、これ一本で中望遠域をカバーするズームレンズ。
写真家、カメラ評論家
シグマのレンズ名称には「DG」「DC」「DN」などと記載されています。それぞれの名称には意味があって「DG」はフルサイズ判センサーを搭載したカメラ用です。「DC」はAPS-C判センサーを搭載したカメラ用で「DN」はミラーレスカメラ用です。「DC DN」はAPS-C判センサー搭載のミラーレスカメラ用レンズのことです。
将来、シグマからフルサイズ判センサー搭載のミラーレスカメラ用レンズが出てくれば「DG DN」と記載されるはずです。製品名から自分のカメラにあったレンズを見分けて選びましょう。
APS-C判のカメラでもフルサイズ判の望遠レンズで対応
写真家、カメラ評論家
シグマの望遠系の交換レンズには、焦点距離にかかわらずフルサイズ判対応のレンズが多くラインナップされています。対して、APS-C判カメラ専用の望遠系の交換レンズは多くありません。望遠系レンズにフルサイズ判対応レンズが多い理由は、APS-C判専用レンズがフルサイズ判用レンズよりもコンパクトに作れないからです。フルサイズ判用レンズならAPS-C判のカメラに取りつけても問題ありません。
しかも、APS-C判カメラでフルサイズ判の望遠系レンズを使用すればより大きな望遠画角で撮影できます。フルサイズ判センサーを搭載したカメラに買い換えてからも同じレンズを使える大きなメリットもあります。
手ぶれ補正機能つきで60mm~600mをカバーする超高性能レンズ。標準から超望遠まで対応可能。野鳥や飛行機、スポーツ写真などを撮るのに最適で、高い描写性能を活かした望遠マクロ撮影もできます。
USBドックに対応しているかも確認
F2.8の明るさと優れた描写性能、また防塵・防滴性能が高い構造となっています。フロント部分が回転しないため、円偏光フィルターも使用可能。接合部など細かい部分にまで防塵・防滴仕様になっているため、ほこりやゴミの侵入を防いでくれます。
写真家、カメラ評論家
カメラや周辺機器には、本体を制御するファームウェアと呼ばれるソフトウェアが組み込まれています。レンズの新しいファームウェアが出たときに別売アクセサリーの「SIGMA USB DOCK」でPCと接続すれば、自分ですぐにアップデートやレンズ機能の変更など自分好みの再調整ができます。
USBドックに対応しているレンズと対応していないレンズがあるので、自分でレンズのカスタマイズをしたい人はUSBドック対応レンズを選ぶほうが良いでしょう。
シグマ望遠レンズ11選 写真家・カメラ評論家のおすすめ
カメラやレンズに精通している写真家・カメラ評論家の田中希美男さんと編集部が選んだおすすめのシグマ望遠レンズをご紹介します。上記のポイントを参考に自分にあった望遠レンズが見つかれば、自分の理想の写真を撮ることに近づきます。

シグマ(Contemporary)『56mm F1.4 DC DN』
















出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 6群10枚/9枚 (円形絞り) |
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最小絞り | F16 |
最短撮影距離 | 50cm |
最大撮影倍率 | 1:7.4 |
フィルター径 | 55mm |
最大径×長さ/重さ | 6.5mm x 59.5mm/280g |
手振れ補正 | - |
小型軽量かつ高画質レンズ
マイクロフォーサーズシステムのカメラと、ソニーのAPS-C判ミラーレスカメラに対応した交換レンズです。対応マウントはマイクロフォーサーズマウント、ソニーEマウントの2種類が用意されています。マイクロフォーサーズのカメラで使用すると、フルサイズ判換算で112mm相当に、ソニーのAPS-C判ミラーレスでは84mm相当の画角のレンズとして使えます。
もともとはAPS-C判センサーを採用するミラーレスカメラで使用できるように設計されたレンズです。それをAPS-C判センサーのサイズよりも二回りほど小さなマイクロフォーサーズ判センサーのカメラにでも使用できるようにしているので、オリンパスやパナソニックのカメラでは、より素晴らしい写真を撮ることができます。例えば、ハイスペックなフルサイズ判対応のレンズをAPS-C判のカメラで使用するようなものです。もちろんソニーのミラーレスカメラで使用してもよく写ることは言うまでもありません。F1.4の開放絞りから、とても優れた描写をします。実販価格では5万円以下ですから、お買い得なレンズと言えるでしょう。

シグマ(Art)『135mm F1.8 DG HSM』














出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 10群13枚/9枚 (円形絞り) |
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最小絞り | F16 |
最短撮影距離 | 87.5cm |
最大撮影倍率 | 1:5 |
フィルター径 | 82mm |
最大径×長さ/重さ | 91.4mm × 114.9mm/1130g |
手振れ補正 | ー |
「Artプライム」がさらに充実
素晴らしい描写力を備えたレンズです。レンズの全長は約11センチほどですが、最大径は約9センチ(フィルター径は82mm)そして重さは約1.1キログラムと大きくて重いレンズです。そのかわり非常に優れた描写性能のレンズになっていて、レンズ構成は10群13枚。レンズの前側に大型の超低分散ガラスレンズを4枚(FLD、SLDガラス)使用して収差を徹底的に補正しています。とくに大口径望遠レンズで目立ってくる軸上色収差をこのレンズではほとんどなくしています。レンズのサイズは大きくと重さもありますが、写りのよさを最優先した典型的なレンズと言えるでしょう。
フルサイズ判一眼レフ用のレンズで、対応マウントはシグマ用、ニコンF用、キヤノンEF用、ソニーE用のマウントレンズが用意されています。シグマではマウント交換サービスを行っており、有料ですがレンズ本体はそのままにしてマウント部だけを交換してくれます。また、別売されているマウントコンバーターMC-11を利用すれば、キヤノンEFマウントレンズに限定ですがソニーEマウントのミラーレスカメラで使用することもできます。

シグマ(Art)『50-100mm F1.8 DC HSM』
















出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 15群21枚/9枚 (円形絞り) |
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最小絞り | F16 |
最短撮影距離 | 95cm |
最大撮影倍率 | 1:6.7 |
フィルター径 | 82mm |
最大径×長さ/重さ | 93.5mm × 170.7mm/1490g |
手振れ補正 | - |
画角をカバーするF1.8ズームレンズの第2弾
APS-C判センサーを使用する一眼レフカメラ用で、非常にF値の明るい交換ズームレンズです。フルサイズ判換算で75mm~150mm相当の画角をカバーします。ズーム全域でF1.8という開放絞り値のレンズであるという点がこのズームレンズの最大のポイントです。もちろん、描写性能も文句なしに良好で、単焦点レンズと比べても遜色ありません。85mmF1.8、100mmF1.8、135mmF1.8といった代表的な中望遠単焦点レンズを1本のズームレンズでカバーしてくれます。対応マウントは、シグマ用、ニコンF用、キヤノンEF用が用意されています。レンズは15群21枚の構成ですが、撮影用レンズで21枚も光学レンズを使用しているものは希少です。
さらに超低分散ガラスレンズを7枚も使用し、そのうち蛍石レンズに匹敵する性能があると言われる「FLD」ガラスを3枚も使っています。描写性能に優れているのも当然だと納得できるレンズです。

シグマ(Sports)『60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM』














出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 19群25枚/9枚 (円形絞り) |
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最小絞り | F22-32 |
最短撮影距離 | 60~260cm |
最大撮影倍率 | 1:3.3(200mm時) |
フィルター径 | 105mm |
最大径×長さ/重さ | 120.4mm×268.9mm/2700g |
手振れ補正 | 〇 |
唯一無二のオールラウンダー
焦点距離60mmから600mmまでをカバーする、光学10倍の高倍率ズームレンズです。開放F値は60mm側でF4.5、600mm側でF6.3に変化しますが、開放F値でじゅうぶんな描写力があるように高い性能も備えています。望遠側にズーミングするとレンズ全長も伸びますが、持ち運びするときの縮長時(60mm時)の全長は約27cmと、このクラスのズームレンズとしてはコンパクトに収まります。レンズ重量は約2.7kgですが、これもスペックを考えればとても軽量に仕上げられたレンズだと言えます。
最短撮影距離は、焦点距離によって0.6m~2.6mまで変化します。プロダクトライン「Sports」のレンズですから、動く被写体を確実に捉えられる操作性と高い防塵防滴の構造で仕上げられています。対応マウントはシグマ用、ニコンF用、キヤノンEF用があります。ニコンやキヤノンのAPS-C判カメラにも使用可能で、そのときの画角はフルサイズ換算で約90mm~930mm相当をカバーします。シャッタースピード換算で4段分の手ぶれ補正(OS)機能、高速AFのための超音波モーター(HSM)を内蔵するなど、とても使い勝手のよい高倍率ズームレンズです。

シグマ(Sports)『120-300mm F2.8 DG OS HSM』














出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 18群23枚/9枚 (円形絞り) |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 150cm×250cm |
最大撮影倍率 | 1:8.1 |
フィルター径 | 105mm |
最大径×長さ/重さ | 121.4mm × 291mm/3390g |
手振れ補正 | - |
大口径望遠ズームが新ラインで登場
120mmから300mmまでをカバーするレンズですが、ズーム全域で開放F値をF2.8キープする大口径ズームレンズです。その優れた描写性能は、F2.8単焦点レンズの描写力と同等の実力を備えています。300mmF2.8レンズのことを「サンニッパ」とよび、多くのユーザーが憧れた望遠レンズでした。この120~300mmF2.8レンズが発売されたときは「サンニッパがズームになった」と驚いたユーザーも多くいます。
対応マウントはシグマ用、ニコンF用、キヤノンEF用があります。レンズ構成は18群23枚で、レンズ前群には蛍石クラスの性能を誇る大型のFLDガラスレンズを2枚使用しています。FLDレンズのような特殊低分散ガラスは径が少し大きくなるだけで材料費は格段にアップします。最短撮影距離はズーム焦点距離により1.5メートルから2.5メートルの範囲で変化します。レンズ全長は約30cmで重量は約3.4kgもありますので、けっして軽量コンパクトなレンズとはいえませんが、実際に使用して撮影すればこの大きさや重さに納得できる優れた描写性能があります。
シグマ(Contemporary)『18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM』


















出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 13群16枚 |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 39cm |
最大撮影倍率 | 1:3 |
フィルター径 | φ62mm |
最大径×長さ/重さ | φ70.7mm × 86mm/430g |
手振れ補正 | 有 |
シグマ(Contemporary)『18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM』












出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 13群17枚 |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 39cm |
最大撮影倍率 | 1:3 |
フィルター径 | φ72mm |
最大径×長さ/重さ | φ79mm × 101.5mm/585g |
手振れ補正 | 有 |
シグマ(Contemporary)『100-400mm F5-6.3 DG OS HSM』












出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 15群21枚 |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 160cm |
最大撮影倍率 | 1:3.8 |
フィルター径 | φ67mm |
最大径×長さ/重さ | φ86.4mm × 182.3mm/1,160g |
手振れ補正 | 有 |
シグマ(Sports)『70-200mm F2.8 DG OS HSM』






出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 22群24枚 |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 120cm |
最大撮影倍率 | 1:4.8 |
フィルター径 | φ82mm |
最大径×長さ/重さ | φ94.2mm × 202.9mm/1,805g |
手振れ補正 | 有 |
シグマ(Sports)『150-600mm F5-6.3 DG OS HSM』














出典:Amazon
レンズ構成/絞り羽根枚数 | 16群24枚 |
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最小絞り | F22 |
最短撮影距離 | 260cm |
最大撮影倍率 | 1:5 |
フィルター径 | φ105mm |
最大径×長さ/重さ | φ121mm × 290.2mm/2,860g |
手振れ補正 | 有 |
「シグマ・望遠レンズ」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする シグマ・望遠レンズの売れ筋をチェック
Yahoo!ショッピングでのシグマ・望遠レンズの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
シグマ望遠レンズに関するQ&A よくある質問
中古やレンタルでも利用可能ですか?

可能です。中古品であれば、カメラのキタムラや街の中古カメラやさんで取り扱っています。レンタルであれば、GooPass(グーパス)や銀一などはオンラインショップも運営しており、利用しやすいですよ。
ほかのメーカーのボディに装着することはできますか?

それぞれのメーカーに合わせた設計になっているため、異なるマウントに接続することはできません。ただし、シグマでは、レンズのマウント部や内部の基幹部品を交換して希望のボディのマウントに対応するよう調整してくれる「マウント交換サービス」を行っています。
シグマが独自で行っている有償サービス。カメラボディのマウントに合わせて交換レンズのマウントシステムを変更できる。
シグマの望遠レンズに関連するそのほかの商品 【関連記事】
大口径で高性能なレンズは大きくて重いが描写性が凄い 写真家・カメラ評論家からのアドバイス
写真家、カメラ評論家
シグマの交換レンズの特徴は、秀逸な描写性能と他社にはないスペックを持つ個性的なレンズの豊富さです。なかには世界初や世界唯一といった特別なレンズもあり、シグマのレンズを多くファンが熱烈に支持しています。シグマの設計は、描写性能を最優先していると言っても過言ではありません。「性能優先なので、レンズが大きく重くなってもユーザーは我慢して使用してくれるだろう」というシグマの期待も込められているようです。
新しくプロダクトラインを決めて、再出発してからのシグマのレンズは価格をかなり抑えめにしています。多少の大きさや重さよりも素晴らしい描写性能のレンズを使用したいという人にこそシグマのレンズがおすすめです。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2021/01/22 コンテンツ追加・修正のため記事を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 名原広雄)
多摩美術大学付属多摩芸術学園・写真科卒業。撮影分野は、おもにクルマを中心に人、モノ、料理、風景、スナップ、ファッション、ドキュメントなど被写体を問わない。 ほかに、カメラ雑誌などに新型カメラやレンズのテストのレポート、撮影技法などの解説をする。