そもそもエールビールとは? ラガービールとの違いも紹介
最近は、「◯◯エール」というビールを見かけるようになりましたね。エールとは、ビール酵母の種類なのです。
酵母は、発酵するときに下に沈む下面発酵(かめんはっこう)の「ラガー酵母」、上昇する上面発酵(じょうめんはっこう)の「エール酵母」、そして空中に浮遊している「野生酵母」があり、「エール酵母」で発酵してつくったものが「エールビール」です。
ビールはそのほとんどが「ラガー酵母」か「エール酵母」でつくられていて、前者は総じて、スッキリと喉越しが良く、後者は華やかな香りが楽しめます。
エールビールの選び方 種類や飲み方なども確認
エールビールを選ぶときのポイントを詳しく解説していきます。ポイントは下記。
【1】エールビールの種類で選ぶ
【2】メーカーで選ぶ
上記のポイントを押さえることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】エールビールの種類で選ぶ
エールビールには、「ペールエール」や「IPA」などさまざまな種類(ビアスタイル)があります。ここでは、代表的なものを紹介するので、好みのエールビールを選ぶ参考にしてくださいね。
ペールエール|バランスのいい苦みと香りが特徴
ペールエールとは、イギリス中部の街であるバートン・オン・トレントで19世紀前半にうまれたビアスタイルです。ロースト色の濃いビールがそれまではビールの印象でしたが、ミネラルを含んだ硬水の湧き水によって透明感のあるビールが生まれました。
ペールエールの製法がアメリカに伝わるとホップをたくさん使ってつくるアメリカン・ペールエールができました。その後イギリス生まれの製品はイングリッシュスタイル・ペールエールとよばれるようになります。
どちらもそれぞれに特徴があるので飲み比べて確かめてみてください。
ヴァイツェン|苦味が少ない優しい味わい
ドイツ語で小麦のことを意味するヴァイツェンは、その意味どおり小麦麦芽を使うビールです。タイプもいろいろとあり、白濁したやわらかいイエローのビールの製品やロースト麦芽を使った色の濃いビールがあります。
ヴァイスタイプは小麦麦芽を使用する量が少なめですが、小麦本来の味わいとフルーティな香りが口と鼻を刺激してくれるでしょう。ほかにやわらかいテイストのヘフェ・ヴァイツェンや飲み口がすっきりしたクリスタル・ヴァイツェンなどがあります。
IPA|ずっしりとした苦みが特徴
インディア・ペール・エール、通称IPAはクラフトビールの中でも多くの人に支持されているビールです。もとは18世紀に当時イギリスの植民地であったインドへビールを運ぶ際に、殺菌性のあるホップを大量に使って作ったことが起源となっています。
ホップをたくさん使って仕上げるのがこのビールの特徴で、ホップのもつ苦みを存分に楽しむことができるでしょう。タイプもいろいろとあり、とくにイングリッシュスタイルIPAやアメリカンスタイルIPAなどが愛好家からは好まれています。
ベルジャンホワイト|甘み感じる爽やかなビール
麦芽化していない小麦を使っていて、そのほかの原料にオレンジピールやコリアンダシードを使っているため爽やかな酸味とほのかな甘みが特徴のエールビールです。
また泡立ちと、副原料に柑橘系やスパイスの香りをプラスしているため、口当たりは柔らかく、ヨーグルトのような味わいを感じることができます。そのフルーティな味わいを楽しむためには、味が淡白な白身魚料理と相性がいいですよ。
ダークエール|濃厚な味わいの黒ビール
18世紀はじめに、ロンドンの港で荷受人(ポーター)の間で流行っていたブレンドビールが、「ポーター」と呼ばれ人気を博しました。
そこで隣国のアイルランドでも同じものをつくろうとしますが、麦芽の税率が高く、それを逃れるためローストした大麦を使うビールを生み出し大人気となりました。それが、今や世界的に知られている「ギネス」ビールです。
ギネスに合う食材は、海のミルク、牡蠣(かき)。そのほかローストした肉やビーフシチュー、はたまたチョコレートやバニラアイスなど、意外といろいろな料理と相性のよいスタウトです。
【2】メーカーで選ぶ
海外ブランドに加えて近頃では国産メーカーのエールビールが増えています。エールビールに馴染みがない方であればまず国内ブランドから試してみるのもおすすめですよ。
安定の味わい「キリン・サッポロ・サントリー」 日本の大手ビールメーカー
日本のメーカーで選ぶ場合には、キリンビールをはじめ、サッポロビール、サントリーがエールビールを製造しています。
キリンビールは発酵中にホップを漬け込むディップホップ製法を取り入れて、クラフトビールのシリーズであるグランドキリンから多くの商品を販売しています。フルーティーでワインのような飲み口が特徴です。
サッポロビールは、プレミアムエビスブランドでエールビールを手掛けています。ブランドのカラーでもある厳選した素材で仕上げたビールは上品なエールビールとして堪能可能です。
サントリーもまた、メーカーの上位製品であるプレミアムモルツシリーズから香るエールを販売しています。神泡リッチ製法も取り入れられており、製品の代名詞ともいえる神泡も味わえるでしょう。
よなよなエールで有名な「ヤッホーブルーイング」
日本にエールビールを広めたいという創業者の思いによって設立されたのがヤッホーブルーイングです。1996年から製造をはじめ、徐々に認知度が上がっています。取り扱っている商品はペールエールやIPAです。エールビールのビアスタイルを深くたのしめます。
クラフトビールでありながら、缶で販売していて最近ではコンビニなどでも気軽に購入できるようになっています。缶のデザインもおしゃれで女性も手の伸ばしやすい製品でしょう。
伝統的な味を楽しむなら「海外エールビールメーカー」
エールビールの本場でイギリスやヨーロッパ、アメリカなどのエールビールもおすすめです。ギネスやバラデンなどさまざまな商品があります。長い歴史をもつビールばかりですのでその歴史も含めてじっくりと味わいたい商品ばかり。
日本では少ないヴァイツェンやダークビールなどをメインにしているメーカーも多いので、いろいろと試してお気に入りを見つけてみるのも楽しいでしょう。
エールビールのおすすめ15選 日本のエールビールから海外のエールビールまで幅広くご紹介
それではいよいよ、ビアジャーナリストの宮原佐研子さんと編集部が厳選した、エールビールのおすすめ商品を紹介していきます!
日本と海外のエールビールをご紹介するので、それぞれのタイプを見ながらお気に入りの商品を探してみましょう。
本場のベルジャン・ホワイトをたのしむ
ベルギーの中心にあるヒューガルデン村にいた修道士たちが、約550年前の1445年に生み出したビールが原型となっている商品です。インドとの交易が生まれて完成した味は長い歴史で洗練されたコクを感じられます。
フルーティーな味わいなので、女性でも飲みやすいでしょう。香りづけとしてオレンジの皮やコリアンダー、クミンの種が使われているのも特徴です。
日本で生まれたベルジャン・ホワイトエール
グラスに注いだ瞬間からオレンジピールのさわやかな香りがたまらない商品です。一口含むとハーブのような風味が口いっぱいに広がります。あわせてビールの苦みは抑えめで、やさしい味わいを楽しめるでしょう。
日本生まれのビールなので日本人が好む味わいに仕上げられています。ふだんビールを飲まない人や苦めのビールは飲まない女性などでもすいすい飲めてしまうライトなエールビールです。

ペールエールの入門編におすすめ!
毎夜楽しんでほしいという想いが込められた『よなよなエール』。1997年に誕生したこのビールは、20年目にカスケードホップを増量し、それを引き立てるホップをブレンド。さらにアメリカン・ペールエールの魅力である華やかな香りが楽しめるようにリニューアルしました。
「このビールを飲んでエールビールに目覚めた」「クラフトビールのきっかけはよなよな」という人が多数の、ペールエールを試してみたいという人におすすめの大人気ビールです。

採算を度外視して目指した世界一のIPA
2007年にブルワリーを立ち上げて以来、ほんの数年でイギリスの飲食企業のトップにおどり出たというブリュードッグ。
創業者ジェームズ・ワットが世界一のIPAを目指してつくりあげたこのビールは、通常のラガービールの約40倍のネルソンソーヴィン・ホップを投入し、完成間近にホップをさらに投入するドライホッピングをおこなうことにより、やみつきにさせるIPAに仕上がっています。
あらゆる賞を総なめにし、世界にその名をとどろかせたこのIPAは、クラフトビールのトレンドをおさえたい人におすすめです。

ヴァイツェンビールの元祖ビール
725年に創建された修道院を起源に、1040年にはビールつくりをはじめていたという現存する最古の醸造所がつくる小麦のビール。
グラスに注げばきめこまやかな白い泡がふんわりと立ち上がり、ひとくち飲めば、長い歴史も吹き飛ぶほどの芳醇なフルーティさと甘く上品な味わいに感動します。ゆっくりと楽しめば、時間を追うごとにさらにまろやかなコクも味わえて、魅了されること間違いなしです。
イタリア生まれのフルーティーな味わいがクセになる
ライトな味わいとさわやかな香りで食前酒としても合うエールビールです。ビアスタイルはベルジャン・ホワイトエールでオレンジピールやコリアンダーのエキゾチックな香りもまた嗅覚を刺激してくれます。
イタリアで1997年に製造されたはじめてのホワイトタイプのビールであり、イタリア料理のカルパッチョや白身魚のメインディッシュなどとの相性がよいです。マリネやお刺身にも合わせると料理のポテンシャルを変化させてくれます。

富士山の伏流水を使った上品な香りのヴァイツェン
標高約1,000mの富士山麓で組み上げた富士山の伏流水(ふくりゅうすい)を使ってつくる、日本が世界に誇る「ヴァイツェン」。バナナのような上品なエステル香とやわらかくほんのりとした甘さが楽しめます。
ヴァイツェンのふくよかさもありつつ、どこかすっきりとした飲み口は、富士桜高原麦酒の集大成ともいえる仕上がりです。白身魚やチキンにレモンをしぼった料理などはもちろん、フルーツをのせたパンケーキなどとブランチで味わうのもおすすめです。
※Amazonは4本セット、楽天・Yahooは24本セットです

軽やかに楽しめるさわやかで香り高いIPA
クラフトビールのおもしろさのキーとなるのがホップ。クラフトビールにちょっと興味があるという人にこそ飲んでもらいたいビールです。
ビアスタイルはセッションIPA。セッションIPAとはIPAの個性はそのままに、アルコール度数が低いスタイル。IPAは気になるけれど苦すぎるのはちょっと、という人でも、気軽にホップの魅力を楽しむことができます。
※Amazonと楽天は3本セット、Yahooは24本セットです

初期のギネスの味わいを楽しめる
このビールは、「エクストラ・スーペリア・ポーター」として1821年から販売されていた味を今も守り続けています。当時を思いながら飲むなら、おつまみに羊の内臓を使った料理のハギスをおともにして楽しみたいところ。
深いロースト香と麦芽のふくよかな甘さで、料理はもちろん、スイーツとの相性もぴったり。大人のコーヒーのような感覚で、読書しながら飲むのもおすすめです。

日本のパンの祖の名にあやかる英国式ペールエール
伊豆にある世界遺産の韮山(にらやま)反射炉。その足もとにあるのが反射炉ビヤです。反射炉を建設した責任者は、江戸幕末の伊豆韮山(現:伊豆の国市)代官の江川太郎左衛門英龍でした。彼は日本ではじめてパンを作った「パンの祖」とも呼ばれ、そんな彼の名にあやかったビールは、原料に英国産マリスオッターとクリスタルモルトをつかうイングリッシュペールエール。
紅茶を楽しむようにゆっくりとビールを味わいたい人におすすめです。
日本人の嗜好に合ったフルーティ酵母の後味が爽やか
愛されるジャパニーズエールビールを目指して作られた独自の醸造技術で、醸造香のある爽やかな香り。神泡リッチ製法で泡品質が良く2杯3杯と飲むごとに味わい深くなるのが特徴です。
1000種類以上ある酵母から、日本人の嗜好に合ったフルーティ酵母を使用することで生まれた爽やかさ。手軽に自宅飲みできる価格帯もうれしいポイントです。
「エールビール」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする エールビールの売れ筋をチェック
Yahoo!ショッピングでのエールビールの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
エールビールの美味しい飲み方 もっと美味しく味わうために
エールビールを最高の状態で味わうために以下のポイントをおさえておきましょう。
香りが引き立つのは「ぬるめの温度」
エールビールの製法について説明した際に、一般的なラガービールと違って上面発酵酵母を使って造られるということをお話しました。製法によっては高温で短時間に仕上げられるものもあります。
温度高めで仕上げられるエールビールは冷やすよりも少しぬるめの温度や常温で飲むほうが相性がいいとされています。常温にするとビール本来の香りが際立ち、エールにしかないコクを体感できます。ぜひ一度試してみてくださいね。
「グラス」にもこだわってみよう
美味しいエールビールを鼻と口で楽しむのは当然ですが、せっかくであれば目でも楽しんでみましょう。その場合、エールビールの種類によってグラスを変えてみるのはいかがでしょうか。
香り高いエールビールであればワイングラスで、ヴァイツェンの場合は泡立ちもよいので背の高いビアグラスを使用するとおいしそうな泡とビールの姿を見ることができます。
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ここはまだ入り口で奥が深いのがエールビール
エールビールの世界はいかがでしたでしょうか。しかし今回ご紹介した製品はごく一部でしかありません。実際世界中には100種類以上のビアスタイルが存在しています。約半分がエールビールのジャンルになっているのでここは入り口でしかありません。
ラベル上に「エール」または「Ale」と表記されているビール製品はエールタイプになりますので、いろいろと見つけてたのしんでみるとよいでしょう。奥に行くほど、うまみや香りの虜になってしまうのがこのビールの特徴なので、決しておそれずこの沼生活にハマってみてください。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
ビールやパン、ワインなどの魅力にはまり、国内外のオイシイもの探しに足をのばし、胃袋を広げる毎日です。 日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーター、日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリストとして日本ビアジャーナリスト協会HP、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、世界22カ国158本のビールを紹介するe-MOOK『ビールがわかる本』(宝島社)、ビアエンタテインメントムック誌『ビアびより』(KADOKAWA)他執筆。 『ビール王国』では、ビールと料理のペアリングやビール列車などの記事を担当。日本パンコーディネーター協会主催世田谷パン大学でパンとビールのペアリング体験講座も実施。