ヴァイツェン(ヴァイス)ってなに?
ヴァイツェンはヨーロッパでは一般的なエールビールの一種で、日本で作られているラガータイプのビールとは作り方が違います。ラガータイプは下面発酵方法となるのですが、ヴァイツェンは発酵時の温度が高い上面発酵方法でつくられています。
材料も大麦麦芽や小麦麦芽、ヴァイツェン酵母を使っており、苦味が少なく、飲みやすく仕上げられています。1516年、バイエルン公国の君主は、ビールの原料がまちまちで品質が安定しないことを憂い、「ビールは大麦、ホップ、水のみ」という「ビール純粋令」を公布しました。小麦を使うヴァイツェンは醸造できなくなりましたが、密かに宮廷醸造所と一部の修道院だけではつくり続け、貴族たちだけがこっそりと堪能していたそう。そんな逸話もあるほどおいしいビールがヴァイツェンです。
フルーティーで飲みやすいのが特徴
ヴァイツェンは日本のラガータイプとは違い、フルーティーな味わいが強く、苦みは少ないという特徴があります。ライトな口当たりのため、ふだんビールをあまり飲まない人でも飲みやすいでしょう。
ヨーロッパでは日本のようにキンキンに冷やしてビールを飲むことは少なく、常温に近い温度でゆっくりと味わいながら楽しんで飲むのも特徴のひとつです。
ヴァイツェンの選び方 ビールが苦手な人でも飲みやすい!
ビアジャーナリスト・宮原佐研子さんへの取材をもとに、ヴァイツェンを選ぶときのポイントをご紹介します。自分好みのヴァイツェンを見つけるためにも、詳しくみていきましょう。ポイントは下記。
【1】ビアスタイルで選ぶ
【2】本場ドイツのヴァイツェンか日本のものか
【3】ノンアルコールでも楽しめるヴァイツェン
上記のポイントを押さえることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】ビアスタイルで選ぶ
ビールは醸造の仕上げに、酵母やそのほかの濁りの原因となるものを取り除く「ろ過」を行ないます。そのときビアスタイルにより味わいも変わりますので、違いを楽しむのもいいでしょう。
一般的なのは「ヘーフェ・ヴァイツェン」
酵母を残して瓶詰めをするものが、「ヘーフェヴァイツェン(またはヴァイス)」です。ヘーフェとは、酵母の意味。小麦のやわらかさに酵母のふくよかさも加わり、まるで白桃を食む(はむ)ようなおいしさです。一般的に「ヴァイツェン」とは、こちらを指すことが多いです。
ローストの香り高い「デュンケル・ヴァイツェン」
小麦のビールというと、どうしても白のイメージが強いですが、実は濃色のタイプも存在します。それは、「デュンケルヴァイツェン」と呼ばれるビアスタイルで、原料の小麦麦芽をローストすることで、ビールの色が濃色に仕上がっています。小麦本来のふくよかでまろやかな甘さとローストの香ばしさが重なり合い、まるでココアのように楽しめるでしょう。密かにファンの多いビアスタイルです。
飲みごたえのある「ヴァイツェン・ボック」
ヴァイツェン・ボックはヴァイツェンの種類の中ではアルコール度数が高いことが特徴で、約7~9%と設定されています。ローストする時間にもメーカーごとにこだわりがあり、飲み口も製品ごとに変わっています。
アルコール度数が高く、ローストによるしっかりとしたコクなどによって飲みごたえがあるため、ビールの風味をよく感じたい人におすすめです。
【2】本場ドイツのヴァイツェンか日本のものか
たくさんの醸造所で、ヴァイツェンをはじめ多様なビールをつくり続ける「ビール大国」のドイツ。日本では、1994年のビールの小規模醸造解禁以降、そんなドイツのビールづくりを目指すブルワリーが多数誕生しました。
設備をドイツから輸入して醸造技術を直接学び、その後切磋琢磨を重ねたことで、日本のヴァイツェンも世界のコンペティションで金賞受賞も果たすほどに成長しています。
長い歴史を経ても変わらぬドイツのヴァイツェンのおいしさ、それに負けない日本のヴァイツェン。好みでどちらかを選んでもいいでしょう。また、両者遜色(そんしょく)ないおいしさ同士を、歴史に思いを馳せつつ飲み比べてみるのもいいかもしれません。
【3】ノンアルコールでも楽しめるヴァイツェン
日本のメーカーでは見かけませんが、ドイツではヴァイツェンのノンアルコールビールがつくられています。ノンアルコールビールは、ビールファンには物足りないという意見もありますが、ヴァイツェンのノンアルコールビールはふくよかな小麦麦芽の味わいもいかされていて、満足度の高い一品です。
通常のヴァイツェンと飲み比べたり、ほかのノンアルコールビールと飲み比べたりしてもいいですね。ヴァイツェンのノンアルコールビールも、ぜひ選択肢に入れてみてください。
ヴァイツェンのおすすめ10選 本場ドイツや日本産も!
うえで紹介したヴァイツェンの選び方のポイントをふまえて、ビアジャーナリスト・宮原佐研子さんと編集部で選んだおすすめ商品を紹介します。ドイツ産・国産も合わせてチェックしながら、自分好みのヴァイツェンを見つけていきましょう。

名峰・大山のふもとの水で仕上げたヴァイツェン
鳥取県の久米桜麦酒は1856年に創業した蔵元からスタートした、日本四名山に名を連ねる名峰・大山のふもとにある醸造所です。周辺には雄大なブナの林があり、そこで育まれる伏流水を使ってビールづくりを行なっています。
このヴァイツェンは、2011年に英国で開催された「ワールド・ビア・アワード」で見事金賞に輝き、世界が認めた日本が誇るビール。日本のヴァイツェンの魅力を海外の方々に紹介したい人におすすめです。

伝統を受け継ぎ今も愛され続けるヴァイスビア
かつて、ミュンヘン中心部のフランシスコ会修道院のそばにあったフランツィスカーナー醸造所は、1922年にドイツのラガービールの生み出したシュパーテンと合併しました。そして今もつくり続けられるのがこのヴァイスです。
溢れるバナナのようなアロマとフルーティな芳醇(ほうじゅん)さは、決して古めかしさを感じることのないおいしさ。伝統的なヴァイツェンを楽しみたい方におすすめです。
瓶の底の酵母を残さぬよう、ゆっくりと回しながらグラスに注ぎ入れて楽しむことを忘れずに。

缶ビールのヴァイツェンとして親しまれている商品
宮沢賢治生誕100周年である1996年にスタートしたことから、銀河高原ビールと名づけられたブルワリー。今も、夜は満天の星空がまるで降り注ぐように広がる、岩手県沢内村でビールを醸造しています。
ドイツ純粋令にしたがって、ドイツ産の大麦麦芽と小麦麦芽、ドイツ産マルチファインアロマホップをメインに使用し、和賀岳の伏流水で仕込む自然派のビールです。
軽量な缶入りのビールなので、BBQやキャンプなどでも気軽にヴァイツェンを楽しみたい人におすすめします。

コーヒーのようなローストとクローブ香がまざり合う
富士桜高原麦酒がつくるヴァイツェンは、そのクオリティとおいしさで広く知られています。この『シュヴァルツヴァイツェン』は、2014年から定番ビールとして登場したもの。ビアスタイルは、デュンケルヴァイツェンです。
50%以上使用する小麦麦芽をはじめ、7種の麦芽がブレンドされています。甘く香ばしいビールのロースト香と、ヴァイツェン特有のクローブ香を絶妙なバランスで同居させながらも、すっきりと何杯でも飲みたくなる仕上がりが魅力です。
一般のヴァイツェンとは違う、珍しいヴァイツェンを探している人におすすめです。

アルコールが飲めないときにも楽しめるヴァイツェン
ドイツ最大の小麦ビールメーカーのエルディンガー醸造所。このブルワリーがつくるのが、『アルコールフリー』。ビールとほぼ同じ製法でつくり、瓶詰めする直前にアルコールを抜くという製法でつくっています(アルコール度数0.4%)。
ドイツでは、スポーツ後の体の回復によいという研究も発表されています。アフタースポーツや、酔えないけれどビールの雰囲気を楽しみたい人におすすめします。
本場ドイツで大人気のビール
ヴァイツェンは小麦麦芽を50%以上使用したビールのこと。こちらは、本場ドイツで最も売れている小麦ビールシリーズを作っている「エルティンガー」のおすすめ商品です。
気品のある味わいが特徴のハラタウホップを使用しているため、シャンパンのような華やかな香りがあります。味もバランスがよく、とても飲みやすいです。
万人受けするビール
日本酒で有名な「月桂冠」から販売されている、ヴァイツェンビールです。バランスがよく飲みやすいビールで、華やかな香りときめ細やかな泡が特徴。
飲みやすい一方、ドイツの重めのビールが好きな方には物足りなく感じてしまうかもしれません。淡白な味わいの魚料理と肉料理におすすめです。
コンクール受賞の実力派ビール
ドイツ中部のヘッセン州にある「ビンディング」は、オーストラリアの国際ビール賞でグランドチャンピオンなるほどの実力を持つブルワリーです。
そんな実力派のブルワリーが作ったヘファヴァイツェンは、ヴァイツェンの特徴であるエステルの香りがとても強く、濃厚な甘みと酸味が強く引き出された味わいとなっています。
400年の歴史を誇るビール
1600年代のバイエルン王国時代には、王朝が独占的に醸造を行なっていたほど人気のある、ドイツの有名醸造所「ホフブロイ」が生産しているヘフェヴァイツェンです。
エステルの香りは控えめになっており、小麦のフルーティーな香りや味が強い商品。ホップの苦味が残らないため、白ビールが苦手な方にもおすすめできます。
ドイツのヘフェヴァイスといえばこれ!
ドイツの強豪サッカーチーム、バイエルンミュンヘンのメインスポンサーをしているので、サッカー好きなら知っている方も多い、「パウラーナー」の主力ビールです。
エステルの香りが強く、苦味もしっかりあるので飲みごたえがあるビールとなっています。重めのビールが好きな方におすすめです。
「ヴァイツェン」のおすすめ商品の比較一覧表
発祥の地・ドイツらしい料理やスイーツと相性抜群! ビアジャーナリストからのメッセージ
ヴァイツェンの魅力は、ビール特有の苦味をほとんど感じないところ。ビールの苦味はちょっと……という人にぴったりです。また、副原料を使わずとも、豊かな香りとふくよかな甘みを楽しめるところも魅力のひとつといえるでしょう。
料理と合わせるなら、発祥の地であるドイツの白ソーセージやポテト料理、パンケーキやフルーツ、アイスクリームなどと相性抜群です。初夏の食卓にぜひ、選んでみてください。
そのほかのビールおすすめはこちら 【関連記事】
ヴァイツェン(ヴァイス)は飲みやすい
ヴァイツェン(ヴァイス)の選び方とおすすめ商品をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
ヨーロッパでは一般的なエールビール「ヴァイツェン(ヴァイス)」。フルーティーで飲みやすい味わいが特徴です。さらに、ビアスタイルや産地にこだわれば、自分にぴったりのものが見つかるはず。
この記事を参考にして、飲みやすいヴァイツェン(ヴァイス)をぜひ見つけてくださいね!
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ビールやパン、ワインなどの魅力にはまり、国内外のオイシイもの探しに足をのばし、胃袋を広げる毎日です。 日本パンコーディネーター協会認定パンコーディネーター、日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリストとして日本ビアジャーナリスト協会HP、雑誌『ビール王国』(ワイン王国)、世界22カ国158本のビールを紹介するe-MOOK『ビールがわかる本』(宝島社)、ビアエンタテインメントムック誌『ビアびより』(KADOKAWA)他執筆。 『ビール王国』では、ビールと料理のペアリングやビール列車などの記事を担当。日本パンコーディネーター協会主催世田谷パン大学でパンとビールのペアリング体験講座も実施。