高級イヤホンとは? まずはおさえておこう
数多くのメーカーからさまざまな製品が販売されているイヤホン。数千円ほどの価格のモデルと数万円を超えるイヤホンにはどんな違いがあるのでしょうか。
一般的に「高級」とされるイヤホンは、高品質の素材を使ってドライバーの精度を高め、音の広がりや臨場感、クリアなサウンドを忠実に再現するさまざまな工夫が施されています。ハイレゾに対応したモデルが多いのも特徴です。普通のイヤホンに比べて圧倒的に音がよく、耐久性にもすぐれているといえるでしょう。
ただし、高級イヤホンには価格やスペックなどの明確な定義がありません。この記事では実勢価格で2万円前後より高額のものを「高級イヤホン」ととらえ、10万円を超えるハイエンドモデルまで幅広く取り上げます。いろいろ比較して、用途に合ったモデルを選ぶ参考にしてみてください。
高級イヤホン選びのポイント スマホで使える? ワイヤレス? 予算は?
オーディオ&ビジュアルライターの折原一也さんに、高級イヤホンを選ぶときのポイントを5つ教えてもらいました。
BAドライバー搭載モデルで選ぶ
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
高級イヤホン選びでよく注目されるのがドライバー構成。SHUREの『SE846』に代表される、プロミュージシャン向けのイヤーモニターに由来する技術がBA(バランスド・アーマチュア)型ドライバーです。
BAドライバーは1つのユニットのカバーする帯域は狭い一方で、こまかな音の表現が得意。低域用や中域用、高域用のように、複数のBAドライバーを組み合わせたモデルが数多くあります。2BA、4BA、6BA、12BA……と、高級モデルになるほどBAドライバーの数を増やして、音の緻密さを増している機種も多数あります。
とくに音の情報量を最大限に重視する方向性でイヤホンを探している方は、BAドライバーのタイプを探してみましょう。
ダイナミック型ドライバー搭載モデルで選ぶ
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
高級イヤホンのもうひとつの方式は、1基で幅広いレンジを再現できるダイナミック型ドライバーです。ダイナミック型ドライバーは、安価なイヤホンで使われているものと同じ方式ですが、ドライバーユニットの精度を高めたり素材を工夫したりすることで不要な振動音のよどみを抑え、高級イヤホンでも通用する実力まで引き上げています。
ドライバーが1基なので音のつながりがよく、空間の広がりにすぐれているのが特徴。空気を振動させるような重低音を求める方は、ダイナミック型ドライバーの高級イヤホンを探してみましょう。
BAドライバーとダイナミック型ドライバーの両方の長所を取り入れた、ハイブリッド型ドライバーもあります。
ハイレゾ対応などのスペックで選ぶ
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
高級イヤホンを選ぶための基準は、やはり音質です。
近年は「ハイレゾ対応」として40,000Hz以上の高周波数帯域をカバーしている機種や、「重低音」のしっかり聴こえる機種などさまざまなモデルが人気です。「再生周波数帯域」というスペック表記から、これらの性能を確認するとよいでしょう。
ただし、数万円にもなる高級イヤホンにもなると、ハイレゾも重低音もそろうのが当たり前。さらに上の趣味の世界として情報量の豊富さ、歌声のクリアさ、音の広がりや臨場感など、好みや聴く音楽に合うかどうかで選びましょう。気になる方は量販店などで実際に音を聴いて確認してみるか、おすすめ機種のコメントを参考にしてみてください。
スマホで聴くなら、ワイヤレス接続できるものを選ぶ
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
高級イヤホンを選ぶ際に注意してほしいポイントが、音楽を聴くためのプレイヤーです。
最近はスマホで音楽を聴く方が増えていますが、iPhone7で3.5mmのステレオミニ端子が廃止されてしまいました。現在ではAndroidを含むほとんどのスマホで専用端子を使うか、もしくはBluetoothでワイヤレス接続するしかありません。しかし高級イヤホンはまだまだ3.5mmの有線タイプ接続が主流で、携帯音楽プレイヤーと組み合わせる前提のものがほとんどです。
ただしJVC、SHURE、AKGなどBluetoothのワイヤレス接続用アダプタを同梱している製品もありますので、スマホからワイヤレスで音楽を聴きたい方はチェックしてみてください。
購入予算で選ぶ
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
イヤホンのなかでも高音質の高級イヤホンを探している方は、予算も考えてみましょう。国内・海外ブランドの高級イヤホンが選択肢に入るのは、2~3万円くらいから。
より高価な機種となると、各社最高峰の技術を搭載したハイエンドイヤホンが5~10万円、そしてさらに10万円以上の超高級クラスのイヤホンまで販売されています。
高級イヤホンおすすめ9選! 国内外の人気ブランドからオーディオ&ビジュアルライターが厳選
うえで紹介した高級イヤホンの選び方のポイントをふまえて、オーディオ&ビジュアルライター折原一也さんに選んでもらったおすすめ商品を紹介します。

SENNHEISER(ゼンハイザー)『IE 60』














出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 10~18,000Hz |
インピーダンス | 16Ω |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 約14g |
付属品 | イヤーアダプターセット(標準 S/M/L・ラメラ S/M/L)、キャリングケース、イヤーフック 、ケーブルクリップ、ほか |

JVC『SOLIDEGE 01 Inner(HA-FD01)』














出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 8~52,000Hz |
インピーダンス | 16Ω |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 約20g |
付属品 | ノズル(チタニウム、ブラス、ステンレス)、スパイラルドット(プラス)イヤーピース(S/MS/M/ML/L各2個)、ほか |
音質カスタマイズに対応
高い強度を持つフルステンレスの金属ボディで、クリアで伸びのあるサウンドを目指した「SOLIDEGE」シリーズの高級イヤホンです。音質はクリアなだけでなく、鋭く立ち上がるハードな響きと、微細音まで伝える解像感があります。引き締まった情報量志向の低音はロックやJ-POP、EDMなど現代的な音楽とよく合います。キレのある音にこだわりたい方におすすめです。
付属品である素材の異なる交換用ノズルを使用して、音色のカスタマイズができる「Jマウントノズル交換システム」を採用していて、音のニュアンスもカスタマイズ可能。ワイヤレス接続に対応する『SU-ARX01BT』とのセット販売も行なわれています。

S’NEXT『final E5000(FI-E5DSSD)』
















出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | - |
インピーダンス | 14Ω |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 24g |
付属品 | キャリーケース、イヤーピース、イヤーフック、カラビナ |

SHURE(シュア)『SEシリーズ (SE535LTD-A)』


















出典:Amazon
ドライバー | 3バランスド・アーマチュア型 |
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再生周波数帯域 | 18~19,000Hz |
インピーダンス | 36Ω |
ケーブル長 | 1.62m |
重量 | 30g |
付属品 | 3.5mmストレートケーブル (116cm)、ソフト・フレックス・イヤパッド、イエロー・フォーム・イヤパッド、ほか |
日本向けチューニングの鉄板!
マイクをはじめとしたプロ用機器ブランドであるとともに、日本では高級イヤホンのスタンダードと呼べるブランドがSHUREです。
『SE535LTD』は3基のBAドライバーを搭載した、SHUREとしてはミドルモデルで、音の密度感と情報量を圧倒的な生々しさで再現するだけでなく、J-POPなどボーカル曲が重視される日本市場向けのチューニングとしてボーカルの歌声を鮮明に聴かせてくれます。高級イヤホンのなかでも絶大な人気を誇る定番の一角で、ボーカルを重視したいという方におすすめ。
出荷時からBluetoothのワイヤレスアダプタが同梱されている『SE535LTD+BT1-A』というパッケージもあり、こちらはスマホで音楽が聴けるのもメリットです。

AKG(アーカーゲー) 『N5005 (AKGN5005BLKJP)』


















































出典:Amazon
ドライバー | 4バランスドアーマチュア + ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 10~40,000Hz |
インピーダンス | 18Ω |
ケーブル長 | - |
重量 | 11.4g |
付属品 | 4つのサウンドフィルター、4極プラグ対応ケーブル、ツイストバランスケーブル、BTケーブル、USB充電用ケーブル、イヤチップ、ほか |
高音質サウンドと多機能を両立
高級イヤホンを語るうえでは、オーストリアのプロ用機器ブランドAKGも外せません。
ハイブリッドドライバーの先駆けとなった2011年発売『K3003』の後継として登場した『N5005』は、BAドライバー4基とダイナミック型ドライバーという、ハイブリッドドライバー構成で登場した高級イヤホンです。サウンドの特徴は、高域まできわめて伸びやかなサウンドとサウンドフィールドの広大さを両立させた澄み渡るサウンド。低音も深みとともに情報量を備えています。
付属品もユニークで、音質調整に対応する4つのサウンドフィルターに、Bluetoohのワイヤレス接続対応のアダプタも同梱。さまざまな好みをもつ幅広い方々におすすめできるイヤホンです。

SONY(ソニー)『IER-M9』










出典:Amazon
ドライバー | 5バランスド・アーマチュア型 |
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再生周波数帯域 | 5~40,000Hz |
インピーダンス | 20Ω |
ケーブル長 | 約1.2m |
重量 | 約11g |
付属品 | ヘッドホンケーブル、バランス接続ヘッドホンケーブル、クリップ、キャリングケース、トリプルコンフォートイヤーピース、ほか |

SHURE(シュア) (SE846-K+BT1-A)








出典:Amazon
ドライバー | 4バランスド・アーマチュア型 |
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再生周波数帯域 | 15~20,000Hz |
インピーダンス | 9Ω |
ケーブル長 | - |
重量 | - |
付属品 | Bluetoothケーブル、USB充電ケーブル、リモート+マイク搭載イヤホンケーブル、ストレートケーブル、イヤパッド、ほか |

beyerdynamic テスラテクノロジー搭載 インイヤーヘッドホン XELENTO REMOTE














出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 8~48,000Hz |
インピーダンス | 16Ω |
ケーブル長 | 1.3m |
重量 | 7g |
付属品 | 1.3mストレートケーブル、シリコン製イヤーピース、Comply製イヤーピース、ケーブルクリップ、取り換え用保護グリルなど |

JVC ビクター『WOODシリーズ (HA-FW10000)』














出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 6~52,000Hz |
インピーダンス | 16Ω |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 約21.5g |
付属品 | スパイラルドット+(プラス) イヤーピース(S/MS/M/ML/L各2個)、キャリングケース |
木の振動板採用の10周年記念モデル
2018年10月にビクターブランドを復活させるとともに、同社の自社技術である木の振動板を使ったイヤホン10周年記念のフラッグシップとして開発されたモデル。新開発のウッドドームドライバーユニットを搭載したほか、日本産の楓や漆(うるし)、阿波和紙、絹などの伝統素材を多数採用しています。
サウンドは木の温もりのある艶やかさ、音空間の広がり、精緻でピュア志向な音のクリアさと解像感を両立したきわめて上質なサウンド。日本人になじみの深い素材による独自設計とたしかな音質が揃っています。音にこだわるだけでなく、所有欲も満たせる究極の高級イヤホンを求める方におすすめです。
高級イヤホンを選ぶ際は試聴して好みに合うか確認を|オーディオ&ビジュアルライターより
オーディオ&ビジュアルライター/AV評論家
音楽をより高音質に聴くために選ぶ高級イヤホンですが、おすすめした機種は安価なモデルでも2万円、高価なモデルでは10万円以上にもなる買い物です。数万円を超えるような高級イヤホンともなると、一定以上の実力があるのは当たり前。そこから先の趣味の世界として音情報を求めるか、歌声を求めるか、ライブ感を求めるかは、人それぞれ好みの領域ともいえるでしょう。
実際に購入する方は、可能であれば専門店や家電量販店の試聴コーナーで本当に自分の求めるサウンドかどうかを確かめてみることを強くおすすめします。口コミも参考にする際にはどんな携帯音楽プレイヤーで、どんな曲を聴いたかを確認すると参考になるでしょう。
高級イヤホンおすすめ3選! こちらもチェック! 編集部がセレクトした
さらに編集部が選んだ、ダイナミックドライバーとハイブリッドドライバーの商品をご紹介します。
SONY(ソニー)『IER-Z1R』


















出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 3Hz-100000Hz(JEITA) |
インピーダンス | 40Ω(1kHz) |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 約26g(ケーブル含まず) |
付属品 | クリップ、キャリングケース 、ケーブルホルダーイヤーピース13種 |
SENNHEISER(ゼンハイザー)『IE 500』
















出典:Amazon
ドライバー | ダイナミック型 |
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再生周波数帯域 | 6Hz~20kHz |
インピーダンス | 16Ω |
ケーブル長 | 1.3m |
重量 | 18g |
付属品 | イヤーアダプターセット(標準シリコン S/M/L、フォーム S/M/L) |
audio-technica(オーディオテクニカ)『ハイブリッド型カナルイヤホン(ATH-IEX1)』


















出典:Amazon
ドライバー | ハイブリッド型(ダイナミック型+バランスド・アーマチュア型) |
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再生周波数帯域 | 5Hz~50kHz |
インピーダンス | 5Ω |
ケーブル長 | 1.2m |
重量 | 19g |
付属品 | ケース、クリーニングクロス、イヤピース、バランスケーブル、コード |
「高級イヤホン」のおすすめ商品の比較一覧表
ハイレゾ対応イヤホンを検討している方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
高音質なハイレゾ音源を聞くために必要なハイレゾ対応イヤホン。一見ハイレゾ対応でないイヤホンと違いがなく、価格帯もバラバラのため、どういった基準で選べばいいのか迷っている人も多いでしょう。ここでは、オーディオ&ビジュアル製品のエキスパートである折原一也さんへの取材をもとに、おすすめのハイレゾ対応...
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※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
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オーディオ&ビジュアル専門誌『AV REVIEW』『プレミアムヘッドホンガイドマガジン』や、モノ雑誌『家電批評』『MONOQLO』『GoodsPress』『MonoMax』『DIME』『日経トレンディ』等、Webでは『Phileweb』『日経トレンディネット』『価格.comマガジン』『@DIME』『&GP』等の媒体で、レビュー、解説で活躍する1979年生まれの若手評論家。 日々、新製品発表会や欧米のIT・家電関連イベントを取材しデジタル家電のトレンドにも精通。 高価なハイエンドの機器だけでなく、格安・コスパ志向、ライフスタイル志向の製品までもカバー。 AV家電製品の取材歴が長い事もあり、製品はスペックで判断するだけでなく、実機に触れてクオリティをチェックした上でのレコメンドを心がけている。2009年より音元出版主催のオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員。