イヤモニとは?
小さなライブハウスでは、ボーカルの足元にあるモニターと呼ばれるスピーカーで事足りますが、会場が大きく、ステージを歩き回ったり爆音のライブ会場ではドラムやギター、ベース、などの音を聞き取るには不十分。
そこで、イヤホンに似た形状の、IEM(インイヤーモニター)、略してイヤモニを装着することで、自分たちが奏でる音を確認できるようになります。
イヤモニは、ライブ以外にも曲の制作時など、基本的にプロのミュージシャンが使うアイテムとして認知されているので、その音質の高さは折り紙付きになっています。
イヤモニとイヤホンの違いとは?
イヤモニとイヤホンの違いをかんたんに説明すると、外部の音をシャットアウトす遮音性になります。
先ほどもお伝えした通り、イヤモニはミュージシャンがライブ時などに使うことを想定しているため、自分たちの音を聞き、それ以外の音に邪魔されないことを目的にしています。
イヤホンにもノイズキャンセリングを搭載したモデルがありますが、より外部の影響を受けずに音に没頭したいなら、イヤモニがおすすめと言えるでしょう。
イヤモニのメリットとは? ステージで自由に動き回れる、遮音性が高い、ハイレゾ音源の再生に適している
イヤモニのメリットは大きく3つあります。
その1「ステージで自由に動き回れる」
ワイヤレスなので、ステージで演奏するだけでなく、ライブ会場を自由に動き回ることができ、自由なパフォーマンスを行うことが可能です。
その2「遮音性が高い」
遮音性が高いため、ファンの声援といったほかの音に影響されにくく、自分たちの演奏に集中できます。また、一般の人にとってはこの遮音性の高さが、外部の音に邪魔されず、好きな音楽に没頭することができる、便利なアイテムになるでしょう。
なお、イヤモニはスマホに使うイヤホンのように、音が出る部分にゴムなどのイヤーピースがついたカナル型が多く販売されています。
その3「ハイレゾ音源の再生に適している」
最近では、生の音に近いハイレゾ音源が普及しています。イヤモニなら通常のイヤホンでは再生できない周波数でも、再生が可能になります。
イヤモニのデメリットは? 耳が痛くなりやすい、外出で使うには不向き

デメリットは大きく2つあるので、解説します。
イヤモニのデメリットは大きく2つあります。
その1「耳が痛くなりやすい」
イヤモニはその遮音性の高さからイヤホンよりも密着する、鼓膜に音が直接届くため、耳が痛くなりやすいと言われています。
また、汗や皮脂で汚れが付着しやすいので、イヤモニ・耳の定期的な掃除を忘れない、長時間の連続した使用は様子を見ながら行うようにしましょう。
その2「外出で使うには不向き」
イヤモニは遮音性が高い、カナル型が多く販売されているとお伝えしましたが、これが外出時にはデメリットになってしまいます。
具体的には、その遮音性の高さ故、近づいてきた車などの音を遮断してしまう、歩くたびにコードが揺れそれが耳に伝わる、といった点です。
イヤモニを選ぶポイント 音質の高さは折り紙付き

Photo by Austin Neill on Unsplash
プロのアーティストも使っているイヤモニ。音質にこだわる人にはぜひ使ってもらいたい製品です。
ガジェットライターの武者良太さんに、イヤモニを選ぶときのポイントを3つ教えてもらいました。
ドライバーユニットで選ぶ 種類・数によって価格帯が変わる
ドライバーユニットは、振動で音を鳴らす仕組みのことで、主に3種類あるドライバーユニットごとに音の特徴が変わります。
なお、数が増えれば増えるほど再生帯域が広くなり、同時に価格帯も高くなります。
ダイナミック型:幅広い音域を楽しめる
ダイナミックドライバーを搭載したイヤモニ。サイズもコンパクトで使いやすく、女性や小柄な人にもおすすめ。ベーシックなタイプ。迷った方は、まずはこの商品から試してみてはいかがでしょうか。
一般的なドライバーユニットで、低音から高音まで、幅広い音域を楽しみたい方は「ダイナミック型」搭載機を選びましょう。ロックやポップスとの相性が抜群です。
バランスドアーマチュア型:高音域と音の繊細さを併せ持つ
弦楽器や管楽器の響きのよさまで聞きこみたいなら、高音域と音の繊細さを併せ持つ「バランスドアーマチュア型」がおすすめですが、構造が複雑でその分コストがかかるため、高級イヤホンに搭載されています。
なお、バランスドアーマチュアドライバー搭載機の中には「2WAY~」といった、複数のドライバーユニットを使っているモデルもあります。
ハイブリッド型:2つのいいとこどり
低音から高音まで幅広い音域が楽しめるダイナミック型、高音域と音の繊細さを併せ持つバランスドアーマチュア型のいい部分を組み合わせたのが、「ハイブリッド型」になります。
高機能なため、値段はかなり高めの設定ですが、音にこだわるなら購入を検討してみましょう。
インピーダンスもチェック スマホで再生するなら25Ω以下を基準に
外出先で音楽を聴く際、iPhoneやAndroidなどのスマホを使う方も多いと思いますが、その際、イヤモニを使うこともできますが、その時に重要になるのがインピーダンスになります。
電気信号に対する抵抗のことをインピーダンスと呼びます。この抵抗が高いとノイズが乗りにくいメリットがあります。スマホなどのアンプでは出力不足で、極端に音が小さくなる場合も。ちなみに、スマホで再生するなら、25Ω以下が基準になります。
なお、高級イヤモニではこのインピーダンスも高い傾向にあるため、注意しましょう。
使い方に合わせて選ぶ
音楽作成時のヘッドホンの代わり、移動時のイヤホン代わりにも使われているイヤモニ。使い方に合わせて向いているタイプがあるので、確認しておきましょう。
カナル型:遮音性が高い
外部から音が聞こえてしまうと、集中して作業することが難しくなります。音楽作成時のモニター用に使うなら、外部からの音が聞こえにくいカナル型のイヤモニを選んでみましょう。
ケーブル型:移動時の使用に便利
移動時にイヤホン代わりにイヤモニを使うなら、音の良さだけでなく、頑丈さや取り回しやすさも重要なポイントになります。
ケーブルが強化素材になっているもの、聞きやすい位置でイヤモニを保持できるケーブルクリップがあるもの、リケーブル対応などがあるので、忘れずにチェックしましょう。
イヤーピースの素材で選ぶ シリコンゴムは耐久性が高い、ウレタン製は低反発
耳に直接あたるイヤーピースも重要です。大きく分けて、シリコンゴム製とウレタン製があります。それぞれ特徴が異なります。快適に使うためにも、しっかりと確認しておきましょう。
シリコンゴム製:長く手軽に使える
材質的に水洗いが可能なのがシリコンゴム製で、メンテナンスがかんたんで清潔に保ちやすくなっています。また、耐久性も高く、長期間使う場合にも適しています。
デメリットは、遮音性には期待できないので、プロユースには向いていません。
ウレタン製:遮音性と密着性が抜群
遮音性や密着性が抜群なのでウレタン製で、音をクリアに聞いたり、耳の負担の軽減したいなら迷わずウレタン性を選びましょう。
デメリットは、シリコン製と異なり水洗ができないので、約1か月程度の定期的な交換が必要になる点です。ただ、価格が安いので、習慣化すれば定期的な交換もあまり手間に感じなくなるかもしれません。
生産方法で選ぶ 自分の耳に合わせるか、コスパを取るか
イヤモニの生産方法には、オーダーメイドと市販があります。それぞれ特徴が異なるので、自分に合う生産方法のイヤモニを選びましょう。
ユニバーサルタイプとカスタムタイプの2種類がある
イヤモニは大きく分けて「ユニバーサルタイプ」と「カスタムタイプ」の2種類があります。
前者はオーディオショップや家電量販店、通販ショップで手に入れられるもの。誰でも装着できるような形状となっています。
後者は自分の耳型を採寸して作るオーダーメイド式。イヤーピースを使わずとも完全にフィットするため、前者よりも遮音性が高く、激しい動きをしても外れにくくなっています。
しかし、耳型採寸時に完璧な耳掃除が必要、完成するまでに時間がかかる、高価、個人の耳に合わせて作られたため中古で売るのがきわめて難しいという点があるので、注意が必要です。
免許がいらないワイヤレスイヤモニも
製品の数は多くありませんが、SHURE(シュア)『PSM300 ステレオパーソナルモニターシステム(P3TJR112GR)』のように、免許がいらないB帯域の個人で使えるワイヤレスのイヤモニシステムもあります。
プロではないアマチュアの方でも、音にこだわるならチェックしてみるのもいいかもしれません。
良質な音源であればあるほどステキな音に ガジェットライターからのアドバイス
ガジェットライター
リスニング用にチューニングされた普通のイヤホンとは違い、イヤモニはクッキリした音を鳴らすのが得意です。
そのため、録音状態が悪い、または低ビットレートで圧縮された曲を聴くと、耳障りな音と感じてしまうことがあります。
半面、録音クオリティの高い曲のハイレゾ版を聴くと、鮮やかで重層的なサウンドステージの広さにびっくりするはず。
いままで聴こえてこなかった音があちこちに散りばめられているのがわかり、好きな曲にもっと惚れ込んでしまうこと確実ですよ。
ただし、再生機器のクオリティも上げたほうがベストになります。
「イヤモニ」のおすすめ商品の比較一覧表
イヤモニのおすすめ8選 鉄板モデル、プロ御用達メーカーなど
ここまでご紹介した、イヤモニの選び方のポイントをふまえて、ガジェットライターの武者良太さんと編集部が選んだおすすめ商品をご紹介します。



イヤモニの神さまが手掛けた価値ある一品
バックストリート・ボーイズ、セリーヌ・ディオン、デュラン・デュラン、イーグルス、エミネムなど、数多くのミュージシャンやアーティストのためにカスタムIEMを作り続けてきた、イヤモニ界の神さまことジェリー・ハービー。
彼が率いるJerry Harvey Audioと、オーディオプレーヤーメーカーのAstell&Kernがコラボして生まれたのが『Billie Jean』です。
名前の由来は、そう、マイケル・ジャクソンのあの曲! 2WAYバランスドアーマチュアドライバーを搭載したポップス向けのサウンドチューニングとなっていますが、それだけに音楽の熱気を味わうのにピッタリ。
付属イヤーピースはS、M、Lの3サイズです。ポップスを楽器の音まで楽しみたい方におすすめ。

プロゲーマーも認めた高明瞭感&高解像度
正確かつスピーディに音を鳴らすことが求められるイヤモニ。その性能を突き詰めると、eスポーツのゲームの試合において、音で的確に敵の位置を察知できるプロユースのゲーミングイヤホンとしても活用できるようになります。
この『ATH-E70』は、実際に日本のプロゲーミングチームが採用したモデル。
もちろん低中高3基の3WAYバランスドアーマチュアドライバーによるHi-Fiな音楽再生力も魅力です。
ハイスピード・ハイレスポンスなサウンドで、テンポの速い曲もタメなく聴かせてくれます。ゲームに使用する方や、よりよいパフォーマンスを求める方におすすめです。
イヤーピースは4サイズ+低反発素材1サイズが付属します。

実像感がきわめて高いサウンドステージを描く
ソニー・ミュージックの協力のもと、第一線のPAエンジニアが開発に協力して作り上げた、珠玉のイヤモニが『IER-M9』です。
自分の奏でている音だけではなく、ほかのメンバーの音も正確な音量・スピード・響きで鳴らすために、ウーファー、低域寄りのフルレンジ、高域寄りのフルレンジ、トゥイーター、スーパートゥイーターの5WAY構造を、片側5機のバランスドアーマチュアドライバーで構成しています。
実力を発揮するには数十万円級のオーディオプレーヤーが必要になりますが、そのサウンドクオリティは圧倒的。
楽器音だけではなく、楽器本体の響きや、アーティストの息づかいまでもがリアルで、自分がステージのど真ん中に立っているような錯覚を覚えるほど。
アーティストやエンジニアの世界観を体感したい方にはおすすめです。
【番外編】免許不要のイヤモニシステム
ライブ前に自分の声やギター音をしっかりチェックしておきたい。そんなときには、イヤモニシステムが不可欠です。モニタリング機能を備えるイヤモニシステムを紹介します。
音にこだわる人のための関連商品はこちら 【関連記事】
音質にこだわりのある人におすすめのアイテム イヤモニについて3つのおさらい
1)オーディオショップなどでカンタンに入手できるユニバーサルタイプにするか、自分の耳にあったカスタムタイプにするかを決める
2)ドライバーの種類・数によって価格帯が変わる
3)イヤーピースが多いモデルはセッティングの幅が広い
音質にこだわりのある人には使ってもらいたいイヤモニですが、結構種類も多いようです。自分の好みの音質を提供してくれる商品を見つけましょう。
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※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
1989年にパソコン誌、ゲーム誌のライターとしてデビュー。 90年代初頭に株式会社三才ブックスに入社。編集職に就き、パソコン雑誌などを手がける。 退職の後にフリーライター/カメラマンとして活動。 現在のカバーエリアはIT、IoT、デジカメ、オーディオ機器、モビリティ、クラウドファンディングなど。 1971年生まれ。元Kotaku Japan編集長。