広角レンズとは? 画角と焦点距離の関係
広角レンズとは、ひとことで言えば、画角の広いレンズのことを指します。人間の目で感じるよりも広い範囲を撮影することができるレンズのことです。一般的には、35mmフィルム換算で24mm~35mmが広角、24mm以下は超広角と呼ばれます。広角レンズの主な特徴は次の3つ。
1)画角が広い(広い範囲を写し込める)
2)遠近感を強調することができる(手前が大きく、奥が小さく写る)
3)被写界深度が深い(ピントの合う範囲が広い)
広角レンズの選び方 単焦点・ズーム・フィッシュアイ(魚眼)
ここからは、広角レンズの選び方をご紹介します。詳しいポイントを知っておけば、撮影時に役立つ広角レンズ選びがしやすくなるでしょう。
【1】単焦点かズームレンズかを選ぶ
【2】広角レンズを使った撮影シーン
【3】レンズの明るさで選ぶ
【4】使いやすさで選ぶ
【5】より広範囲の景色が撮れる「超広角レンズ」
【6】手ぶれ補正機能搭載モデルがおすすめ
【7】画角と焦点距離の関係
【8】広角レンズ選びの注意点
上記のポイントを押えることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】単焦点かズームレンズかを選ぶ それぞれのレンズの違い・特徴を紹介
ここでは、単焦点とズームレンズ、フィッシュアイの違いや特徴について解説します。
「単焦点レンズ」の特徴 レンズの明るさと画質が強み
単焦点レンズとは、ズーム機能がなく焦点距離(撮影範囲)を変えられないレンズのことを指します。そのため、自ら被写体に近寄って撮る必要がありますが、その分、F値が明るいなどの特徴があります。
「ズームレンズ」の特徴 1本で遠くも近くも撮れる手軽さ
ズームレンズとは、~mmの数字で表される焦点距離(撮影範囲)を変えられるレンズのことを指します。たとえば、28-85mmといったようにレンズに表記されているものが焦点距離を意味しています。通常、焦点距離を変えるとF値も変わるため、環境の明るさなども考慮しながら絞りを変える必要が出てきますが、自ら動かずに撮影できることからも単焦点レンズと比べて使い勝手のよいレンズということが言えます。
「フィッシュアイ(魚眼)」レンズ
魚眼レンズは、広角レンズのカテゴリーにくくられることがあるように、焦点距離も24mm以下と短い広角域のレンズになります。最大の特徴は、画面の中心から外側にかけて球体のように大きく歪んで撮れる点です。
たとえば、水平線を撮れば、地球の外側を写したように丸みを帯びた写真を撮ることができ、動物の顔をアップで撮れば、鼻が大きく強調された可愛らしい写真を撮ることができます。
【2】広角レンズを使った撮影シーン 風景写真・ポートレート
ここでは、広角レンズを使った撮影シーンをご紹介します。撮りたい写真のイメージをふくらませて、レンズ選びの参考にしてみてください。
風景 空や海など
広角レンズの広い画角を存分に生かせる撮影シーンが風景写真です。露出設定は絞りF10~16あたりで設定すると画角の隅々までクッキリとシャープに撮影することができます。
室内 店内・建物内など
風景の次に広角レンズの強みを生かせるシチュエーションが室内撮影です。端から端まで画角いっぱいに写すことができるため、店内を広々と見せる効果があります。
ポートレート(人物) 被写体の脚を長く見せる
一般的に、ポートレートと言えば、85mmの中望遠レンズが最適と言われますが、広角レンズで撮るとまた違った味わいで写すことができます。特徴としては、全身を写すことができるということ。そして、ローアングルであおるように撮ると、脚を長く見せられるという効果もあります。
大きな被写体 迫力の写真が撮れる
たとえば、ジャンボジェット機のような大きな被写体を撮ろうとしたとき、広角レンズであれば、画角いっぱいに機体を写し込むことができるため、より迫力ある画を撮影することができます。
【3】レンズの明るさで選ぶ F値の低いレンズに注目
F値とは、レンズの明るさとボケ感をあらわす数字のことです。数字が小さいほど、ボケ感が強くなるほか、レンズを通る光量が多くなるため、明るい写真が撮影できます。
そのため、夜間などの暗いシーンでもシャッタースピードを落とさずに済むため、星景写真をカメラを手持ちで撮影する場合は、できるだけF値が小さいレンズを選ぶほうが、きれいに撮りやすいです。
【4】使いやすさで選ぶ 重さ・使い勝手のよさに注目
カメラのレンズには、広角・標準・望遠があります。比較的、単焦点のほうが軽く持ち運ぶのには便利ですが、撮影シーンは絞られます。対して、ズームはやや重量がある分、表現の幅が広がります。
一般的に、広角レンズで使いやすいと言われている焦点距離は28mm、35mm。まずは、単焦点とズームの特徴をおさえ、自分が撮りたい被写体はどのくらいで撮るのが適当なのかを見極めることから始めてみてください。
【5】より広範囲の景色が撮れる「超広角レンズ」 非球面レンズに注目
一般的に、焦点距離が21mm以下のレンズを超広角レンズと定義されています。文字通り、かなり広い画角の写真を写し込むことができるため、より迫力を求めたいという人におすすめのレンズです。
【6】手ぶれ補正機能搭載モデルがおすすめ 暗い場所での撮影には
ズームレンズや望遠レンズと違って、広角レンズは比較的に手ぶれを起こしにくいため、手ぶれ補正機能が搭載されていないことが多いです。しかし、暗い環境で撮影することになれば、自ずとスローシャッターになるため、手ぶれを起こしやすくなります。やはり、手ぶれ補正機能がある広角レンズを選ぶほうがよいに越したことはありません。
【7】画角と焦点距離の関係 18mmと200mmで比較
焦点距離とは、レンズの中心からカメラ内部のイメージセンサー(撮像素子)までの距離のことを指します。その距離を示すのがレンズに記されている「~mm」の数字になります。その数字(距離)が小さくなるほど画角(写せる範囲)が広くなっていきます。
【焦点距離の目安】(35mmフルサイズの場合)
広角:24mm~35mm
超広角:10mm~21mm
【8】広角レンズ選びの注意点 画角はセンサーサイズによって異なる
画角は、レンズの焦点距離と密接に関係しています。
たとえば、焦点距離24mmのレンズをフルサイズ判イメージセンサーのカメラで使用したときの画角と比べ、APS-C判やマイクロフォーサーズ判のカメラと組み合わせた場合には、画角は狭くなります(より望遠画角になる)。
広角ズームレンズのおすすめ商品9選 種類・焦点距離・対応マウントもチェック!
上記の広角レンズの選び方のポイントをふまえて、写真家・カメラ評論家の田中希美男さんと編集部が厳選したおすすめの広角レンズをご紹介します。まずはズームレンズから!

手ぶれ補正機能付き! 広角ズームレンズ
キヤノンフルサイズ判一眼レフ用の、開放F値がF4通し(ズーミングしてもF値が変化しない)EF広角ズームレンズです。キヤノンには、同じズーム域でF4よりもひと絞りぶん明るい「EF16-35mm F2.8L III USM」もありますが、価格は約2倍と高くなってしまいます。F2.8という明るさは魅力ですが、F4の16~35mmレンズには、レンズ内手ぶれ補正(IS)の機能が内蔵されています。
「広角レンズに手ぶれ補正は必要ないのではないか」ともいわれますが、いえいえ、広角レンズといえどもわずかな手ぶれはするものです。それが解像描写力に悪影響を及ぼしますから、広角レンズの手ぶれ補正の機能は大いに役立ちます。ご自身の手ぶれが少しでも気になっていた方には、ぜひおすすめの機能を搭載したレンズです。

広い画角をカバーする大口径ズームレンズ
富士フイルムの、APS-C判ミラーレスカメラ用の広角ズームレンズです。開放F値は、ズーム全域でF2.8の大口径。フルサイズ判換算で24mm~84mm相当の画角をカバーします。レンズ構成では非球面レンズが3枚、異常低分散レンズを3枚も使った、12群17枚構成のたいへんに贅沢な設計です。
絞りリングを備えていて、手動で絞り値を設定することも、カメラ側から絞り値を設定することも可能。防塵防滴、耐低温の構造を備えています。APS-C判ミラーレス用としては少し「大ぶり」な広角ズームですが、なによりも写りのよさを優先する人であれば、大きさや重さは気にならなくなってしまうほどですのでおすすめです。

シグマ、キヤノン、ニコン用と3種展開の広角ズーム
シグマの、フルサイズ判一眼レフ用の広角ズームレンズです。対応マウントは、シグマ、キヤノン、ニコン用があります。24mmから35mmまでの低倍率比(約1.5倍)のズームレンズですが、開放絞り値はF2のコンスタントF値で、ズーミングしてもF値は一定で変化なしです。カバーする焦点域はせまいのですが、ズーム全域で最高の描写性能を目指して設計されたレンズでもあります。
私も愛用していますが、F2開放絞り値でどしどし撮影ができるし、描写については非の打ちどころがありません。このレンズ1本で24mmF2、28mmF2、35mmF2を「内蔵している」と考えるとたいへんにお得な感じがします。
16~35mm相当の広角域を撮影可能なレンズ
広角域の撮影が可能で広大な自然の風景をダイナミックに撮影することや、被写体に寄ったポートレートの撮影まで、多彩な使い方ができます。
商品名にあるUSMとは超音波モーターのこと。このモーターのおかげで、素早いピント合わせを可能にします。広い画角のズームレンズをお探しの方におすすめしたいアイテムです。
コンパクトサイズの超広角ズームレンズ
EF-Sレンズの広角ズームとしては初の手ブレ補正機構が搭載されており、重量も軽く持ち運びに便利なので、お出かけのとき常備して、風景やスナップを撮るときに幅広く使えるでしょう。
最近は一眼レフで動画を撮影することも多いですが、動画撮影時のオートフォーカスも静かでスムーズなので、さらに幅広く使うことができるでしょう。
広角単焦点レンズのおすすめ商品7選 種類・焦点距離・対応マウントもチェック!
続いて、広角単焦点レンズのおすすめをご紹介します。

コンパクト設計! 操作性や質感も良い広角レンズ
マイクロフォーサーズ判用の交換レンズで、フルサイズ判換算で24mm相当の画角となります。とてもコンパクトですが、開放F値がF2という大口径レンズ。金属外装によって高級感のあるレンズ鏡筒で、とてもすぐれた外観デザインです。シルバーとブラックの2カラーモデルがあります。
操作しやすい幅広のピントリング(AF時には回転しない)をカメラ側にスライドするとMFに切り替わり、手動でピント合わせすることができます。
軽快にスナップ撮影したい人におすすめしたい、操作感にすぐれたレンズです。

高画質を追求! 納得の写りが期待できる広角レンズ
ニコンのフルサイズ判一眼レフ用の大口径広角レンズです。とにかく素晴らしい描写性能の広角レンズで、F1.4の開放絞り値から画面全体の描写には、ほとんど不満のないすぐれた写りをします。少し価格が高めなのですが、実際に使って撮ってみれば納得の価格だと思います。私としてはニコンの広角単焦点レンズではイチ押ししたいレンズです。
なお、ニコンには同じ広角単焦点レンズに「AF-S NIKKOR 24mm f/1.8G ED」があります。28mmより広い24mm画角で、開放F値は2/3絞りほど落ちますが、価格が安い! 少しでも画角の広い、開放F値の明るい単焦点レンズがほしいという人には、こちら24mmF1.8をおすすめします。

24センチまで接写可! ミラーレス用単焦点レンズ
ソニーのフルサイズ判ミラーレス用のEマウントレンズです。24mmの広角レンズで、開放絞り値がF1.4とたいへんに明るいレンズでありながら、全長は10センチ以下、重さは約440グラムとコンパクトで軽量です。描写性能もとてもすぐれていて、ユーザーの評価も高いレンズです。
最短撮影距離は、24センチまで近づいて撮影ができます。24mm広角レンズであってもF1.4の絞り値で撮影すれば、ピントを合わせたほんの一部分を除いて画面いっぱいに美しいぼけ描写をします。もちろん、F5.6ぐらいに絞れば容易にパンフォーカスの写真を撮ることも可能。初心者、ベテランに関わらずおすすめしたい、すぐれた広角レンズです。
おすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 広角レンズの売れ筋をチェック
Amazon、Yahoo!ショッピングでの広角レンズの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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最後に|エキスパートのアドバイス
単焦点の広角レンズはやや上級者向け
ズームレンズよりも単焦点の広角レンズをすすめたいのは、広角レンズの描写特性の知識があり、「バリエーションのある広角写真を撮ろう」という作画意識の高い人。レンズの描写性能のよさをなによりも優先する人や、「大口径の広角レンズを使ってぼけ描写を作画に活かしたい」などはっきりした目的をもっている人にも、単焦点レンズをおすすめします。
単焦点の広角レンズを使いこなすには、テクニックと努力する覚悟が必要だと思われます。いや、初心者が使ってはいけないとは決して言いません。初心者であっても、あえて単焦点の広角レンズからスタートしてもいいのです。少し我慢しながらあれこれ試行錯誤していけば、写真が上達していける可能性も楽しみも、大いに広がりますから。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
多摩美術大学付属多摩芸術学園・写真科卒業。撮影分野は、おもにクルマを中心に人、モノ、料理、風景、スナップ、ファッション、ドキュメントなど被写体を問わない。 ほかに、カメラ雑誌などに新型カメラやレンズのテストのレポート、撮影技法などの解説をする。