練り消しとは
練り消しゴム(通称:練り消し)は、粘土のように柔らかく、形状を変えられる消しゴムのことです。
引っ張って伸ばすこともでき、さらにちぎって小さく分断することもできるという特徴があります。おもちゃとして遊べるものや、デッサンで使用できるものなど、いくつかのタイプがあります。
練り消しのメリット
本項では、練り消しを使用するメリットもご紹介いたします。
●紙を傷付けずに文字を消せる
一般に流通しているプラスチック消しゴムの場合、紙の表面に摩擦を起こして文字を消していきます。しかし、練り消しを使用した場合、コロコロと転がすように文字を消すため、摩擦が起きにくく、紙を傷付けずに消すことができるというメリットがあります。
●画材を汚さずに消すことができる
デッサン用の場合も有効。鉛筆などで書いたイラストなどはプラスチック消しゴムで消すと鉛筆の炭が広がってしまいますが、練り消しを使うと、部分を消すだけでなく、炭をくっつけて消すことが可能。画材を汚さないように修正するのにもおすすめです。
●イラスト表現にも使用することができる
消すだけでなく、イラストの表現としても使用できます。例えば、練り消しで細く薄く消すことで光の線が入ったような表現になったり、押し当てることで、ぼかしなどの表現も作ることができます。
さまざまな使い方ができるからこそ、とても人気のある文房具です。
練り消しの種類・タイプ
練り消しは、用途により、「デッサン用」と「ホビー用」の2種類に大別できます。一つひとつ解説していきます。
デッサン用の練り消し
デッサン用に鉛筆や木炭の描画を消すための練り消し。こちらは「練りゴム」と呼称されることも多く、多くがビニールパッケージによる簡易包装がなされています。
デッサン用練り消しは、消す場所の大きさによって使いやすい大きさにちぎってから練り、描画部分をトントンと軽く叩き、汚れを吸着させて使います。消え具合が悪くなったり全体が黒く汚れ始めたりしたら、取り替えどきです。
消え具合と、紙面に貼りつく粘着具合、そして練ったときの硬さが、製品を選ぶポイントになります。
ただし、これは個人の感覚による部分がとても大きく、練り消しの個体性能というよりは好みの問題になります。そのため「この製品なら大丈夫」「間違いなくベストバイ」と言えないのが現状です。まずはひとつ試しに使ってみて、自分の感覚に合わなかったら別の製品を試すのがよいでしょう。
ホビー用の練り消し
おもに子どもが楽しんで使用するためのホビー用練り消し。香りがついていたり、色が華やかだったり、そのバリエーションは数え切れないほどです。単純に「練り消し」で検索してしまうと、その両方がヒットします。
基本的に、ホビー用練り消しは一般筆記用の消しゴムに比べ消字率が落ちます。感覚的にはほとんど消えない、と言っても過言ではありません。メーカーによっては、パッケージにはっきりと「この練り消しは字を消すことに適していません」と記載しているほどです。
ホビー用は、鉛筆の線を消すのではなく、練って楽しく遊ぶことを主眼に選んでください。
こちらのページではデッサン用の実際に消える練り消しを中心に選んでいるので候補は少ないですが、おとなが知らない練り消しの進化をご紹介いたします。
練り消しの選び方
字や絵を消すだけでなく、さまざまな用途がある「練り消し」。多用途な分、使い方によってどんな製品がよいのかわからず、選ぶのに迷ってしまいますよね。そこでここからは、選び方のポイントをご紹介します。ポイントは下記4点。
【1】消しカスが出ないか
【2】硬さ
【3】ベタつかないか
【4】しまえるものやケースが付いているか
上記の4つのポイントをおさえることで、より具体的に欲しい機能を知ることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】消しカスが出ないかチェック
基本的に練り消しは消しカスを出しません。使い方も、一般の消しゴムのようにゴシゴシこするのではなく、汚れを巻き込むように押しつけたりトントンと軽くたたきつけたりして汚れを巻き取ります。
しかし、なかには消しカスが出るタイプもあります。とくに、トレース台は消しカスが付着すると、トレースしたい絵の線が見えにくくなりとても困るもの。
トレース台で使う練り消しを選ぶときは、消しカスが出ないことを、口コミなどで確認してから購入しましょう。
【2】硬さをチェック
一般的に硬い練り消しはハイライトの効果があり、やわらかい練り消しはボカシの効果を出しやすいです。表現したい効果によって、硬さを選択するという方法もあります。
硬さの違う練り消しを複数持つ、あるいは、複数の練り消しを混ぜ合わせて自分好みの硬さにするなど、硬さと効果の関係を自分なりに試すことも可能です。
【3】ベタつかないかどうかチェック
デッサンなどで使用している際、ベタつくと完成度に支障が出ることもあります。そのため、できるだけベタつかないものを選ぶようにしましょう。
ベタベタしない一つの基準としては、硬さです。柔らかいものはベタつく傾向にありますので、少し固めのものを選ぶと、ベタつく可能性も低いでしょう。
また、ベタつきを抑えるパウダーを使用しているものも選択肢のひとつです。しかし、パウダーが紙に付着し、デッサンがしにくくなる場合もあるため、注意しましょう。
【4】しまえるものやケースが付いているか
練り消しは、そのまま放置しておくと小さなゴミやカスが付いてしまいます。また、乾燥すると練ってもすぐに切れてしまうため、しまえるものかケースが付いているもので、品質をたもって保管しましょう。
エキスパートのアドバイス
まずはひとつお試しください
何度も申し上げますが、人の好みは千差万別です。練り消しに関心がおありでしたら、まずはひとつ、お試しということで上記のどれかを買って使ってみてはいかがでしょうか。
あと、使用後の収納方法は注意が必要です。チャック袋やケースを用意していないメーカーの製品は、収納や持ち運びに気をつけましょう。特に粘っこい練り消しは裸でペンケースなどに入れておけませんので、ご注意ください。
また、ご自分のアトリエや作業机などがあり、つねに練り消しを置きっぱなしにしていい方なら、むしろプラスチックのパッケージなどは無用のものかもしれません。
練り消しおすすめ10選|デッサン用
上記で解説した練り消しの選び方のポイントをふまえて、おすすめ商品をご紹介します。まずは、デッサン用の商品です。ぜひ参考にしてください。

硬くてさらさら、独特な練り消し
木炭画材の専業メーカー・伊研の鉛筆画/木炭デッサン用練り消しです。
チャックのついたビニール袋に入って販売されており、使用後にしまうことができます。かなり硬く、さらさらとした感触で、他の製品に比べるととても個性的です。
木炭画では練り消しは線の消去というよりトーンの調整に使われ、消し具ではなく画材のひとつとして使用されます。軽く叩くだけではほとんど描線は消えませんが、その分消し具合を自分でコントロールできます。木炭画におけるトーン調整に最適な製品です。
まず初心者におすすめの比較的安価な練り消し
ヌーベルの鉛筆画/木炭デッサン用練り消しです。ビニール袋に入って販売されており、使用後に戻すことはできません。わずかに粘り気と硬さのある練り消しで、今回紹介した全製品の中でも最も中間層の製品です。
描線はほどよく消え、これもまた全製品で中間の性能です。特徴として、パッケージに「壁、ガラス、金属等ピンのきかないところに、貼り紙等を貼りつけることができます」と記載があります。
また、鉛筆画/木炭デッサン用練り消しとしては安価なので、はじめての練り消しとしてお試し用に購入してみてもいいかもしれません。
非常にやわらかく粘りのない小ぶりな練り消し
製図用品やマルスルモグラフなどの製図用鉛筆で著名な、ステッドラーの鉛筆画/木炭デッサン用練り消しです。ビニール袋に入って販売されており、さらにビニールで包まれた状態になっています。使用後に袋に戻すことはできません。他の製品に比べ小ぶりで、非常にやわらかく粘りがあります。
フィナンシェのように膨らんだ他社の製品がちぎってつかう製品だとすると、本製品はちぎることなく全体を練って使うイメージです。描線が良く消える製品で、描写によっては加減を要する場面もあるかもしれません。
最初からグレーなので汚れ具合が判りにくいのですが、そこに魅力を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
粘り気なくやわらかな感触の練り消し
国産画材メーカー・ホルベインの鉛筆画/木炭デッサン用練り消しです。チャックのついたビニール袋に入って販売されており、使用後にしまうことができます。
さらさらした感触の、粘り気のないやややわらかめの練り消しです。消し具合は若干弱めですが、逆にいえば、消し具合を自分で調整しやすいともいえます。粘り気のある練り消しが苦手な方におすすめします。
粘りがありやや硬めの練り消し
国産画材メーカーであるクサカベが用意した、鉛筆画/木炭デッサン用の練り消しです。チャックのついたビニール袋に入って販売されており、使用後にしまうことができます。粘りのある、やや硬めの練り消しで、よく練って使うとさらに粘りが出ます。
軽く叩くだけでかなりの描線を吸ってくれますが、慣れないうちは必要以上に消してしまう可能性もあります。まずは軽く叩いて消え具合を確認してください。粘り具合が気にならない方におすすめします。
やわらかめのデッサン用練り消し
クレパスなどの画材で有名な「サクラクレパス」の練り消しゴム。どちらかといえばやわらかめなので、デッサンではボカシの表現に用いると使いやすい製品です。
逆にいうと細かいところを消したり、強くこすりつけて消したりといった使い方はあまり得意ではありません。やわらかいタイプの練り消しが使いやすいと考えている方や、ぼかしの表現に適した練り消しを探している方に適した商品です。
消しカスが出ない練り消し
昔から使われているデッサン用の練り消しです。
消しカスが出ない練り消しなので、トレース台を使っている人に向いています。トレース台とは、半透明の紙に元の絵をトレースするために下から光を当てる台です。消しカスがあると、下絵の線が見づらくなりトレースの邪魔になるため、消しカスの出ない練り消しを使います。
本製品は、もちろん普通にデッサンをしている人全般に使えます。比較的硬めなので、こまかい部分を消したいときや、ハイライトを入れる場合に適している練り消しです。
レジンの封入用に人気の練り消し
シードのノーマルな練り消しで、デッサン用として提供されている製品です。ただ、レジンアクセサリーを作る方の間で、「雲」を表現するのに適した素材として人気があります。
手でよくこねてポロポロになった状態を作り、ピンセットでその形を崩さないようにそっと持ち上げてレジンに封入することで、雲に見せることができます。デッサンだけでなく、レジンアクセサリーで雲を作りたい、という方にも向いている練り消しです。
汚れや乾燥から守る!ケース付き
ドイツの名門ステーショナリーブランド・ファーバーカステル社の練り消しゴムです。
ケースが付いているので、すぐに練り消しを使いきれない方におすすめです。乾燥はもちろん、練り消しの型崩れも予防できます。また、消しくずがでないため、絵画や製図などで幅広く使いやすい製品です。
カワチ画材店『doArt 画材屋さんのこだわりネリゴム3種類セット』
初心者にうれしい硬さの違う3種セット
大阪に実店舗を持つカワチ画材店の練り消し3点セット。やわらかめ・ふつう・かためと3種類の練り消しがセットになっているため、使い心地を試せます。
やわらかめはぼかしに、ふつうはオールマイティに、かためはハイライトや細部の消しにおすすめです。個人によって硬さの好みなどもあるため、使い比べて自分好みの硬さを見つける、という用途にも適しています。
また、硬さの違う練り消しを使い比べたいときにも向いています。3点セットでも安価なので、気軽に試せる点もポイントです。
練り消しおすすめ3選|ホビー用
続いては、ホビー用の練り消しです。こちらもぜひ参考にしてください。
消えない! 練って遊ぶための黄金練り消し
レーダー消しゴムで有名なシードのホビー練り消しです。パッケージはプラスチックで、使用後に収納することもできます。
非常に硬くて粘り気のある練り消しで、「ゴールド」の名の通り黄金色に輝きます。また、最近の練り消しには珍しく、匂いがついていません。字を消す能力がないわけではありませんが、やはりデッサン用に比べるとその力は弱く、また黒鉛や木炭を吸い取ってしまうとせっかくの黄金色が汚くなってしまいます。
本製品はあくまで「練って楽しむホビー用練り消し」であり、パッケージにも「この練り消しは、字を消すことに適していません」と明記されています。純粋に練り消しを練って遊びたい方や、人工的な匂いが苦手な方におすすめです。
具材を練り込むおもしろ練り消し
おもしろ文具で有名なサカモトのホビー練り消しです。パッケージは硬質なプラスチックで、使用後に収納することもできます。非常に硬く、さらさらとした練り消しで、練った瞬間からコーンスープの香りが漂います。
また、本製品の特徴として、「具」と呼称される3ミリ角ほどのダイス状消しゴムが附属しており、これをいっしょに練り込んで具材入りのコーンスープを再現することができます。とにかく練っていてたいへん楽しい製品です。
練ると粘りが出て、ちゃんと描線を消すだけの能力を発揮しますが、本体が汚れてしまいますし、コーンスープの香りも弱くなってしまいますので、やはりホビー用としてお求めになるのがいいでしょう。
ゴム印の掃除全般に使える専用練り消し
通常の練り消しに比べて粘り気があるため、汚れを吸着するのに向いている製品です。印鑑のようにこまかい凸凹面があって、汚れが詰まっていて困るようなこと全般に使えます。
消しゴムハンコを彫っていて出てくる彫りカスをきれいに集めたり、ゴム印に詰まった汚れを取り除いたりするのに便利です。
ニッチな用途ではありますが、利用シーンによっては大活躍してくれます。
※Amazonは2個セット販売の商品です
「練り消し」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 練り消しの売れ筋をチェック
Yahoo!ショッピングでの練り消しの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
デッサン向け|練り消しの使い方
練り消しの使い道としては、デッサン用とホビー用がメインですが、ほかにも意外な使い道があります。
ここでは、練り消しをデッサンで使うときのちょっとした工夫や意外な使い道など、練り消しの使い方を集めました。もう使えなくなった練り消しの活用方法もありますので、必要に応じて試してみてください。
カンバスの濃淡により練り消しも使い分ける
練り消しは、未使用の状態では汚れをよく吸着しますが、何度か使っていると汚れをあまり吸着しなくなっていきます。この性質を利用して、描いている部分が淡い部分にはまだあまり使っていない練り消し、濃い部分には使い込んで黒っぽくなった練り消しを使ってみてください。
このように練り消しを使うことにより、新品の練り消しが一気に使えなくなるという無駄が減り、練り消しを節約できます。ただし、黒っぽいところにハイライトを入れたい場合は、汚れのあまりない練り消しを使いましょう。
レジンアクセサリーの「雲」に使う
レジンアクセサリーの作成で、練り消しを「雲」の素材として使う方が多く見られます。
雲にする場合は、練り消しがボロボロになる状態に引き延ばしてホロホロの状態にするのがコツです。ホロホロになった練り消しを、その状態を崩さないようピンセットでつまみ、レジンの中に封入します。
デッサン用の練り消しなら、どれでも雲素材を作れますが、レジンに封入するなら、色味を考えて選ぶといいでしょう。白い雲は青空に、雨雲を表現する場合はグレーの練り消しが使えます。
そのほかの練り消し関連の記事はこちら
実際に試して、好みを探してみよう
本記事では、練り消しの選び方とおすすめ商品について紹介しましたが、いかがでしたか?
デッサン用を探している場合は、まず硬さの違う練り消しを複数選び、実際に購入して試してみると、自分の好みがはっきりしますのでおすすめです。
硬めの練り消しはハイライトやこまかい部分の消しに、やわらかい練り消しはぼかしに使うなど、用途別にそろえてもいいでしょう。お気に入りの練り消しを見つけて、アートライフを充実させてくださいね。
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文房具トークユニット「ブング・ジャム」のメンバー。 文房具ユーザーとして数多くの文房具に触れ、その便利さを世に伝えたいと切望する。 筆記具と紙、その周辺の文房具を中心としたパーソナル文具全般に興味がある。 コレクターではないので所有点数は多くないが、文房具は買ったら必ず試す。