フレットレスベースとは 多くのミュージシャンを魅了する
フレットレスベースとは、ベースのフレットをあえて無くしたベースのことです。フレットとは、音の高さを変えるために指板にはめ込まれた金属の帯のことをいいます。フレットは本来、ベースの音程を安定させるためにあるので、フレットレスベースは音程が取りにくいという弱点もあります。
ですが、さまざまなフレーズや独特の浮遊感、スライドをした時のやわらかな音を出せるのはフレットレスベースならではで、多くのミュージシャンに愛されています。
フレットレスベースの特徴 フレッテッドにはない魅力!
フレットレスベースの特徴は、一般的なフレッテッドベースに比べ、音色の幅が広がることにあります。
エレキギターでもそうですが、フレットがある場合弦とフレットがこすれハリのある固い音がでますが、フレットレスはそれがない分、あたたかみのあるやわらかい音色を奏でることができるのが特徴です。
さらに、フレットレスだからこそ、半音以下の音を出すことができるというのも最大の魅力です。フレットがないことで押さえる弦をシームレスに動かすことができ、音色の幅が何倍にも広がるのです。
フレットレスベースの選び方 初心者におすすめ!
音楽ライターの田澤 仁さんに、フレットレスベースの選び方のポイントを教えていただきました。
はじめはフレットラインのあるものを
フレットレスベースの指板には、本来フレットがある位置に、正確な音程のポジションの目安となる、フレットラインと呼ばれる線が引かれているモデルがあります。とくにはじめてのフレットレスベースなら、このフレットラインがあるものがおすすめです。正確な音程で演奏しやすくなるのはもちろん、わざと微妙に音程をずらすときにもラインが目安になります。
フレットラインがあると、見た目がフレットレスらしくなくなってしまうのが少し残念ですが、ラインが目立たないモデルもあります。ただ、場合によっては演奏中にポジションを確認しにくいことがあるので注意してください。
また、フレットラインなしのモデルを選ぶ場合は、ネック側面のサイドポジションマークが見やすいかどうかも重要ですから、一度は手に取って確認することをおすすめします。
ジャズをやるならアコースティックという選択肢も
フレットレスベースにも、中空ボディのアコースティックタイプがあります。アコースティックならではのあたたかいサウンドに、フレットレスならではの甘い響きが加わるので、よりウッドベース(コントラバス)に近い雰囲気の演奏ができます。
ジャズを演奏する場合はもちろん、ロックバンドでもジャズのニュアンスを持つベースを弾きたいならアコースティックタイプがおすすめです。ただし音の抜けはソリッドボディ(音が共鳴するための空洞を持たないボディ)にはかなわないので、大音量のロックバンドではやや使いにくい面もあります。
また、ライブで使う場合には、中空ボディであるためハウリングしやすいなど、扱いが難しいところもあるので頭に入れておいてください。
指板のコーティングの有無で選ぶ
フレットレスベースには、指板にコーティングを施したモデルもあります。コーティング指板は有名なベーシストであるジャコ・パストリアスが使用していたことでも有名ですが、指板が傷つくのを防げるだけでなく、音が明るく明瞭になり、伸びがよくなることや、音程がはっきりするので弾きやすくなるといったメリットもあります。
ただし、音はフレットがあるモデルに近いものになってしまいます。フレットレスらしい音を出したいなら、コーティングなしのモデルを選ぶとよいでしょう。
指板にはあとからコーティング加工することもできますから、しばらく使ってみて、フレットレスのやわらかい音にどうしても物足りなさを感じたら、そのときにコーティング加工をするかどうかを考えてもよいと思います。
フレットレスベースおすすめ10選 練習や初心者に最適なものや、プロ用の高級モデルまで!
ここまで紹介したフレットレスベースの選び方のポイントをふまえて、音楽ライターの田澤 仁さんと編集部が選んだおすすめ商品をご紹介します。

日本製、定番のジャズベのフレットレスモデル
フレットレスの定番、フェンダーのジャズベース。作りがよい日本製で、コストパフォーマンスもよい製品です。
ピックガードのないサンバーストカラー(ふち周りの色がいちばん濃く、中央にいくにしたがって色が薄くなっていく塗装)のボディは、通常のジャズベとは一味違う雰囲気で、ローズウッドの指板に引かれたフレットラインは目立たないので、よりフレットレスらしいルックスが魅力です。
通常モデルのバスウッドに代わってアルダー材を使ったボディで、バランスのよい音を鳴らせるほか、リアのピックアップをメインに使えば、バンドサウンドでも埋もれにくい中高域の抜けのよい音で演奏できます。ピックガードが付属するので、ピックを使うならあとから取り付けることも可能です。

Bacchus『BJB-1R-FL』
フレットレス入門にぴったりな低価格モデル
フレットレスを一度は試してみたい、サブに1本フレットレスを用意しておきたいという人には、とにかく低価格なこのモデル。
伝統的なジャズベースのスタイルで、ボディはポプラ材。ジャズベらしい抜けのよい音を鳴らせます。ボディのひじに当たる部分やボディ裏の腰に当たる部分にはコンター加工が施されていて、弾きやすさも上々です。
弦はラウンドワウンド弦が張られていますが、フラットワウンド弦に交換すればよりフレットレスらしい音色を楽しめます。出力が物足りなければピックアップ交換をするという手もあります。改造が躊躇(ちゅうちょ)なくできるのも低価格モデルならではです。

アコースティックな音色のピエゾピックアップ搭載
サドル部分にピエゾピックアップ(電気信号を生じさせるピックアップ)が組み込まれたモデル。よりアコースティックベースに近い音を出したい人におすすめです。
ピエゾピックアップでウッドベースに近いサウンドを鳴らせるだけでなく、2つのマグネティックピックアップでエレキベースらしい音も出せるし、両方のミックスも可能。マグネティックピックアップには2つのバンドのイコライザー(音の変換装置)を搭載するほか、ピエゾピックアップは弦ごとのゲイン調整(音質の調整)もできるので、とても幅広い音作りができます。
指板がかなり長くなっているほか、スルーネックなので裏面がなめらかなカーブになっていて、カッタウェイ(ギターのボディのへこんだ部分)も広くとられているので、ハイポジションが弾きやすいのも特徴。ウッドベースのような高音域のソロも楽に弾きこなせるでしょう。5弦バージョンの『SRF705』もあります。

アコースティックなベースサウンドをライブでも
カナダのアコギメーカー、ゴダンのフレットレス仕様のエレアコベース。小さな空気孔だけを設けた独自の構造を採用し、アコースティックタイプの弱点であるハウリングを防いでいるので、ライブでアコースティックらしいベースサウンドを鳴らしたい人におすすめです。
マグネティックピックアップとピエゾピックアップを搭載していて、両方のサウンドを好みのミックスバランスで出力できるので、ウッドベースのようなあたたかい音もソリッドボディのような芯のある音も出すことができます。
ピエゾピックアップはローランドのギターシンセサイザー(音やリズムを合成・加工する装置)のドライバーも兼ねているので、『GR-55』などのギターシンセサイザーをつなげば、ベースに限らずさまざまなサウンドを作ることができます。

コーティング指板ならジャコパスモデル
指板をコーティングしたモデルなら、まずおすすめなのがフェンダーのジャコ・パストリアスモデル。コーティング指板の代表格といえる製品です。
基本はジャズベースですが、ピックガードなしのアルダーボディ、リバースチューナーなど、ジャコのこだわりが再現されています。指板はローズウッド素材に似た特性を持つパーフェロー材で、ウレタンコートを施して耐久性を向上させています。
コーティングされていることにより運指も滑らかにできるし、甘いトーンを持ちながらも埋もれない明るいサウンドで演奏できます。ジャコパスのように動き回るフレーズをガツガツ弾くなら、このモデルで決まりですね。

ハードロック向きのトニー・フランクリンモデル
ブルー・マーダーやザ・ファームのベーシストとして知られるトニー・フランクリンは、ハードロックでは珍しいフレットレスベースのプレイヤー。そのシグネチャーモデル(特定の著名人の名をかんした製品)は、プレシジョンベースのリア側にジャズベタイプのピックアップを追加したPJスタイルです。
エボニー材質の指板には塗装がなく、フレットラインもありませんが、サイドポジションマークが音程の目安になります。4弦のペグは、レバー切り替えによりワンタッチでチューニングを1音下げられるドロップDチューナーなので、重低音もばっちり出すことができます。ハードロックでもフレットレスを弾きたい人におすすめです。
Fender『American Professional Jazz Bass Fretless』
「フレットレスベース」のおすすめ商品の比較一覧表
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フレットレスベースを弾くときの注意点 音楽ライターからのアドバイス
フレットのあるモデルとの違いに注意
楽器を選ぶ際には試奏が欠かせませんが、フレットレスベースを選ぶときには、フレットがあるモデルよりも試奏が重要になります。
フレットレスベースは、弦を押さえるポジションによって音が変わったり、音が伸びにくかったりすることがまれにあるからです。試奏するさいには、色々なポジションで音を出して確認しておきましょう。
また、音感もフレットのあるベースを弾くときよりも鍛えておく必要があります。フレットがある場合のように半音単位だけでなく、微妙な音程も出せるのがフレットレスのメリットのひとつですが、音感が悪いとただ音程がずれただけの演奏になってしまいます。フレットラインのないモデルを使う場合はとくに注意してください。
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90年代にプロドラマーとして活動、その後、音楽ライターとして書籍、雑誌などの執筆を行なっている。 DTM、PCオーディオ関連の著書、DTMソフト、シンセサイザーの日本語マニュアル制作など多数。 Webでは2007年~2009年までサイトAll Aboutで「ロック」のガイドを務めたほか、音楽情報サイトBARKSでは国内外の数多くの有名アーティストのインタビュー、ライブ取材などを行なっている。 得意分野はAOR、ハードロック、フュージョン、80年代。