マーチンアコギの選び方 音楽ライターに聞いた
音楽ライターの田澤 仁さんに、マーチンアコギを選ぶときのポイントを3つ教えてもらいました。
ボディサイズはDタイプと4種類のOタイプ
音楽/DTM/PCオーディオ 専門ライター
音量や弾きやすさに影響するのがボディサイズ。マーチンではドレッドノートのDタイプと、小ぶりなボディのO(オー)からかなり大きめのOOOO(クアドラ・オー)までOタイプが4種類あります。その中で誰にでもおすすめできるのは、やはり標準サイズともいえるドレッドノート。OOOより少し大きいサイズで音量が出るし、低音も豊かに鳴ります。鳴らしきるには力強いピッキングが必要ですが、マーチンらしい音を出したいなら、ドレッドノートを選んでおけば間違いありません。
また、ドレッドノート以外のOがついたモデルはボディのくびれが深く、ドレッドノートに比べてブライト(明るめの音)で繊細な音になります。OOOまでのサイズは弦長もやや短く張りがゆるいので、弾きやすさを重視する人に向いているでしょう。中でもOOOは低音から高音までバランスよく鳴らせるので、指弾きで繊細な表現をしたい人におすすめです。
Martin『Standard Series D-28(2017)』
アコギの中でもスタンダードなモデル。モダンな風合いと感触で、幅広いギタリストにおすすめ。
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音楽/DTM/PCオーディオ 専門ライター
音色で選ぶなら、材質に注目しましょう。材質は、モデル名後半の数字でわかります。たとえば人気機種でよくある18や28はトップ材がスプルースというマツ科の常緑高木であることを示しています。そしてバックとサイドは18ならセンダン科の常緑高木であるマホガニーが使用されており、中音域に張りがあり、ブルースやロックに向いた音色になります。また28のバックとサイドはローズウッド材を使用しており、低音から高音までバランスよく鳴り、伸びやかな音なので人気があります。マーチンの代表機種である『D-28』もこのタイプで、オールラウンドに使えるモデルです。
ちなみにこのモデル名後半の数字は装飾の種類も表していて、数が大きくなるほど装飾が増え、ゴージャスで高価なモデルになります。たとえば40番台になるとアバロン貝のインレイ装飾が施されるなど、見た目もゴージャスになってきます。逆に装飾がない15などは低価格なので、できるだけ安くマーチンを手に入れたい人におすすめです。
Martin『Standard Series 000-18』
ヴィンテージライクな仕上りで、弾きやすさも抜群。初めて持つアコギとして最適です。
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音楽/DTM/PCオーディオ 専門ライター
同じボディサイズや材質でも、シリーズが違えば価格も大きく違うことがあります。価格を重視するなら、シリーズを決めてから選びましょう。まずチェックすべきは定番のスタンダードシリーズ。人気のあるモデルがそろっていますし、マーチンらしさといえばやはりこのシリーズです。とくに理由がなければスタンダードシリーズを選んでおけば間違いなしです。より低価格なマーチンを狙うなら、ロードシリーズや圧縮合板材を使ったXシリーズがよいでしょう。小型のジュニアやリトルマーチンシリーズなどにも低価格モデルがそろっています。
また、ヴィンテージシリーズとオーセンティックシリーズは、歴史的な名ギターを復刻したもので、素材も作りも最上級。そのぶん高価ですが、一生ものの1本を手に入れたいなら、このシリーズもチェックしておきましょう。
マーチンアコギのおすすめ7選 音楽ライターが厳選
ここまで紹介したマーチンアコギの選び方のポイントをふまえて、音楽ライターの田澤 仁さんに選んでもらったおすすめ商品を紹介します。

Martin『Standard Series D-28(2017)』


















出典:Amazon
シリーズ | スタンダード |
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ボディシェイプ | ドレッドノート |
サイド&バック材 | イースト・インディアン・ローズウッド |
トップ材 | シトカ・スプルース |
スケール長(インチ) | 25.4” |
オールマイティな王道中の王道マーチン
マーチンだけでなく、アコースティックギターの中でもっとも有名なモデルが『D-28』。永遠のスタンダードとして、世界中のプロミュージシャンから愛されているモデルです。ピックでコードストロークを弾けばふくよかな低音を味わえるし、フィンガーピッキングのソロならアタックの効いたフレーズが楽しめるという、まさにオールマイティなギター。幅広いギタリストにおすすめできるモデルです。
なお、スタンダードシリーズのD-28は2017年に仕様が変更されました。内部の補強材であるブレーシングがレスポンスのよい形式に変更され、ネックも薄めで弾きやすくなっているほか、外観もよりヴィンテージの雰囲気が強まっています。以前のモデルも並行して販売されていることがあるので注意してください。

Martin『Standard Series DC-28E』

出典:Amazon
シリーズ | スタンダード |
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ボディシェイプ | ドレッドノート |
サイド&バック材 | イースト・インディアン・ローズウッド |
トップ材 | シトカ・スプルース |
スケール長(インチ) | 25.4” |
ライブ派におすすめ、王道モデルのエレアコ仕様
ドレッドノートの『D-28』のボディをカッタウェイ仕様(ボディのネックの付け根部分を片方へこませた形)にして、さらにエレクトリック・アコースティック・ギター(エレアコ)にした『DC-28E』は、ライブで使いたい人におすすめのモデルです。『D-28』のボリューム感のある低域はそのままに、中高域も抜けがよく華やかなサウンドはとても魅力があります。エレアコであっても、生の音が素晴らしいのはさすがマーチンといったところ。
定評あるフィッシュマンのAURA VT ENHANCEピックアップシステム(2つのサウンドがブレンドできるシステム)を搭載、そのサウンドを余すところなく拾ってくれます。従来の『D-28』よりネックは薄めで、カッタウェイもあるためハイポジションでも弾きやすいです。ソロ演奏にぴったりのモデルです。

Martin『Standard Series 000-18』

出典:Amazon
シリーズ | スタンダード |
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ボディシェイプ | 000 |
サイド&バック材 | マホガニー |
トップ材 | シトカ・スプルース |
スケール長(インチ) | 24.9” |
抱えやすく弾きやいコンパクトボディ
ドレッドノートよりひとまわり小さい000サイズの製品。抱えやすいだけでなく、ネックが短いショートスケールなので弦の張力もゆるめになっています。手が小さい人でもチョーキングやビブラートがしやすく、とても弾きやすいモデルです。ボディのサイドとバックはマホガニーでやわらかいサウンドですから、指弾きの繊細なニュアンスも表現しやすいです。
000サイズで人気があるのはローズウッドの『000-28』ですが、これではちょっと音がかたいと感じる人には、この『000-18』のほうが向いているでしょう。立ち上がりがよく抜けのよい音は、バンドでも活躍してくれます。ふだんエレキを弾いている人が初めて持つアコギとしてもおすすめですよ。

Martin『15 Series 000-15M』

出典:Amazon
シリーズ | 15 |
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ボディシェイプ | 000 |
サイド&バック材 | マホガニー |
トップ材 | マホガニー |
スケール長(インチ) | 25.4” |
オールマホガニーの個性派マーチン
定番のマーチンでは面白くない、という人におすすめの個性派モデルです。マーチンでも多くのモデルがスプルースをトップ材に採用する中で、オールマホガニーのボディ、バインディングなどの装飾も一切ないという渋いルックスはとても目立ちます。あたたかく甘みがあり、まとまりもよいサウンドは独特の魅力があるし、トップ、サイド、バックともにすべて単板なので響きも抜群です。
トップのフィニッシュ(仕上げ塗装)をグラデーション状に色が濃くなるようにして、さらに見た目を渋くヴィンテージのような風合いにした『000-15M BURST』もラインナップされています。

Martin『X Series DXMAE』

出典:楽天市場
シリーズ | X |
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ボディシェイプ | ドレッドノート |
サイド&バック材 | HPL |
トップ材 | HPL |
スケール長(インチ) | 25.4” |
初心者にもおすすめの低価格モデル
マーチンのドレッドノートタイプが欲しいけれど、『D-28』などは高価で手が出ないという人は多いでしょう。そんな人におすすめなのがこの『DXMAE』です。HPLと呼ばれる圧縮合板材を使った低価格な製品をラインナップする、Xシリーズの製品です。
ボディだけでなくネックには木材を再構成して作る集積材、指板やブリッジには再生紙を樹脂で固めたリッチライトを使っていますが、音が安っぽくなることはなく、マーチンならではの音を鳴らしてくれます。音量はそれほど大きくありませんが、エレアコ仕様なのでライブでも便利に使えます。天然の木材をほとんど使っていないので、気候などの影響を受けにくいし、野外のライブでも思い切り弾けるところも魅力です。

Martin『Road Series DRSG』

出典:楽天市場
シリーズ | Road |
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ボディシェイプ | ドレッドノート |
サイド&バック材 | シリス |
トップ材 | シトカ・スプルース |
スケール長(インチ) | 25.4” |

Martin『Little Matin LX1』

出典:Amazon
シリーズ | Little Matin |
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ボディシェイプ | -- |
サイド&バック材 | HPL |
トップ材 | シトカ・スプルース |
スケール長(インチ) | 23” |
どこへでも持っていける小さなマーチン
小ぶりなボディで「リトル・マーチン」の愛称で親しまれている製品です。いわゆる「ミニギター」と呼ばれるサイズで、スケールはドレッドノートより6.5センチほど短い23インチ。このサイズなら手の小さい子どもでも弾きやすいですし、大人でも無理なく弾くことができます。ボディとネックはXシリーズ同様の合成材ですが、トップにはシトカ・スプルース材を使用していて、小さなボディからは想像のできないほどの音量を鳴らせるし、バランスよくまとまったサウンドで演奏できます。
小さくてもやはりマーチンの音なので、世界的に人気があります。イギリスのシンガーソングライターであるエド・シーランが使っていたのも、このモデルにピックアップを搭載したエレアコ版の『LX1E』です。
おすすめ商品の比較一覧表
音楽ライターからのアドバイス
音楽/DTM/PCオーディオ 専門ライター
イベント開催も要チェック!試奏して確認しよう
エレアコでは、生音とピックアップで拾った音のキャラクターが違うことがあります。マーチンでもモデルによっては音がかなり違うことがあるので、エレアコを試奏する機会があった場合は、アンプを通した音も忘れずに確かめてみてください。
また、日本各地の楽器店では多数のマーチン製品を展示するイベントも開催されています。通常は店頭に置いていないモデルも含めて試奏することができるチャンスですので、マーチンのギター購入を考えている方は、ぜひ足を運んでみてください。
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※2020/10/30 一部コンテンツと価格を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 大熊武士)
90年代にプロドラマーとして活動、その後、音楽ライターとして書籍、雑誌などの執筆を行なっている。 DTM、PCオーディオ関連の著書、DTMソフト、シンセサイザーの日本語マニュアル制作など多数。 Webでは2007年~2009年までサイトAll Aboutで「ロック」のガイドを務めたほか、音楽情報サイトBARKSでは国内外の数多くの有名アーティストのインタビュー、ライブ取材などを行なっている。 得意分野はAOR、ハードロック、フュージョン、80年代。