アウトドアナイフの選び方 山岳写真家が解説
山岳写真家の荒井裕介さんに、アウトドアナイフを選ぶ方とおすすめ商品について教えてもらいました。
最初に選ぶのは安価な一本か、ずっと使える一本か
モーラ・ナイフ Mora knife Companion Black
ワイルドライフクリエーター、山岳写真家
手に馴染むナイフを数本用意するのが理想
よくある質問ですが、これは使用頻度にもよって大きくかわってきます。安価でも同じモデルを使い続けるのもありです。
ナイフ選びにとって重要なのは、いかに自分の手に馴染むかです。また、用途別に数本用意するのがベストですが、初めてのナイフはブレード長(刃渡り)が10cm程度で、自分の手の平と同じか中指の付け根を少し超える物が扱いやすいでしょう。
目的に応じて使いやすいサイズを選ぶ
ユニフレーム(UNIFLAME) ギザ刃 キャンプナイフ 661840
ワイルドライフクリエーター、山岳写真家
メインナイフが10cm前後ならサブは6cm以下を
ナイフというと、サバイバル映画やアクション映画で出てくるような大型のナイフを想像してしまうのではないでしょうか?
アウトドアで言うナイフは武器ではなく道具です。道具には使いやすいサイズがあります。メインナイフが10cm前後のものであれば、サブナイフや多目的に使えるユーテリティーナイフは6cm以下の物を用意するといいでしょう。
メインナイフでできないような作業は、それ専用の別の道具が必要になるからです。ノコギリや斧がそれにあたります。
素材の選び方
ワイルドライフクリエーター、山岳写真家
靭性に優れ研ぎやすい炭素鋼材のナイフがおすすめ
初めて購入したナイフなら研ぎ方も覚えたいことでしょう。
そこでおすすめするのは、工具鋼などの炭素鋼材です。これらは靭性に優れていて、粘りもあって研ぎやすいのが特徴。価格も比較的安価な物が多いです。
近年良質なステンレス鋼材も多く開発され、「VG10」などのように、靭性、耐久性ともに優れているものもあります。初心者なら工具鋼のナイフが練習用としておすすめです。
「カーボンスチール」は切れ味バツグン!
「カーボンスチール」製のアウトドアナイフは、切れ味がバツグンという特徴があります。食材や魚をさばくのに使うのはもちろんのこと、木材などの硬めの素材もしっかりと切ることができるので、アウトドア向けの素材だといえます。
ただし、ステンレス製よりサビやすいため、お手入れは小まめにしっかりとおこなうようにしてください。
「青紙鋼」は食材用として用意したい1本
「青紙鋼」製のアウトドアナイフは、なめらかに切れて切り口がよいという特徴があります。料理人が使用する包丁に使用されている素材であり、魚やお肉をさばくのにピッタリです。
アウトドアで本格的な料理を楽しみたい方は、1本用意しておくと重宝します。ただし、カーボンスチール製と同様にサビやすいので、メンテナンスはしっかりとおこなわなくてはいけません。
「H-1鋼」は釣りなどの水辺によい
G・SAKAI(ジー・サカイ)『サビナイフ2(サバキ3寸)』
「H-1(エイチワン)鋼」は、ステンレス製よりもサビにくいといわれている素材であり、釣りやダイビングなど水辺でのアウトドアに適しています。カーボンスチール製や青紙鋼より切れ味は落ちますが、魚をさばく程度であればかんたんにできます。
海水や魚をさばくときについてしまう血であっても、真水で軽く洗い流す程度のメンテナンスでよいのがうれしいポイントです。
「ステンレス製」はサビに強くて研ぎやすい
仁作『陸刀(No.810)』
「ステンレス製」のアウトドアナイフは、サビにくいということが特徴として挙げられます。耐久性もあるので木材を削ったり、魚などのなまものを切ったりとさまざまな使い方ができます。また、研ぎやすいのでお手入れがしやすく、アウトドアナイフ初心者の方でも扱いやすいでしょう。
たくさん種類があって、どのアウトドアナイフがよいか迷ったら、ステンレス製を選べばまず間違いありません。
「モリブデン鋼」は刃が欠けにくくて丈夫
MAC(マック)『フィッシングナイフ(BNS-60)』
「モリブデン鋼」は、包丁や医療用メスなどに使われている素材であり、北欧などの寒い国でよく使われているタイプのアウトドアナイフです。刃が丈夫で欠けにくく、ていねいにお手入れをすれば切れ味をたもつことが可能です。
サビに強いですが、まったくサビないわけではないため、ナイフを使用したらお手入れはしっかりとおこなってください。
ハンドル材はナイフを扱えるレベルに合わせる
ヘレ・ナイフ テマガミ Helle knife Temagami Stainless
ワイルドライフクリエーター、山岳写真家
入門用にラバーグリップ、次のステップで天然素材を
ナイフのハンドル材には、ウッド、ラバー、プラスチック、マイカルタなどのさまざまな素材があります。高級な物には化石や骨などが使用されています。
上手に扱えるようになるには、入門者であっても自分の手に合うように、加工可能な素材を選ぶことが必要になります。しかし、ナイフを使い始めたばかりだと、ナイフを握り込む位置がわからないこともよくあります。
まずは入門用としてラバーグリップのものを選び、ラバーのすれる部分を意識しましょう。その後、次のステップで天然素材を選ぶのがおすすめです。
山岳写真家の「ここがポイント」 アウトドアナイフ選びに迷ったら……
ワイルドライフクリエーター、山岳写真家
万能なナイフを求めないこと!
アウトドアナイフは手の延長線として使えることが重要です。万能なナイフは存在しないと言っても過言ではありません。
上級者はなんでも万能にできるナイフを持っているのではなく、使いこなす技術を持っているのです。使いこなすには自身の手に合ったグリップやサイズ、バランスを有したナイフを選ぶことがおすすめ。
メインナイフだけですべてをできるわけではないので、料理人の包丁のようにそれぞれ得意としている作業がナイフにもあります。それらを使い分ける技術と、つねに切れるナイフを維持するメンテナス技術を身につけて、はじめてナイフは使いこなせるようになるのです。
安価であっても自分の手に馴染むことこそが上達への近道。それがいいナイフを選ぶ最大のポイントです。
重視したいポイントを考えて種類を選ぼう
アウトドアナイフは、「シースナイフ」や「フォールディングナイフ」、「ツールナイフ」と種類が分かれています。それぞれの特徴をしっかりと考えて選びましょう。
「シースナイフ」は刃渡りが長くて頑丈
Morakniv(モーラ・ナイフ)『コンパニオン ヘビーデューティー ブラックステンレス』
「シースナイフ」は、ブレードとタングが1枚の鋼材でできているタイプのアウトドアナイフです。刃渡りが長くて衝撃に強く、多少手荒く扱っても壊れにくいので、アウトドアで使うのに向いています。
革や化学繊維でできたナイフを入れる鞘(さや)のことを「シース」といい、この鞘に収納することから「シースナイフ」と呼ばれるようになりました。
「フォールディングナイフ」はキャンプ場に適している
Spyderco(スパイダルコ)『レディバグ3 ソルト』
「フォールディングナイフ」は、ハンドル内部にブレードを折りたたむことができるタイプのアウトドアナイフです。ブレードがしっかりとハンドルのなかに納まるので、安全に持ち運ぶことができるのが特徴的です。
ただし、強度は「シースナイフ」には劣るため、キャンプ場で食材や小枝などのかたすぎないものを切るのに向いています。
「ツールナイフ」は便利なアイテムが豊富!
ブレードの形状にも注目しよう!
アウトドアナイフには3つのブレードの形状がありますので、選ぶ際にチェックしてみてください。
・フラットグラインド…強度の面ではすぐれているが、研いでいくことで切れ味が悪くなりやすい。
・ホローグラインド…よく切れて、研ぎ減りしても切れ味が落ちにくい。ただし、強度の面ではフラットグラインドに劣る。
・コンベックスブラインド…蛤刃と呼ばれるものであり、強度は高いが研ぐのが難しいとされる。
「万能型」と「特化型」の2つあるとよい
キャンプやアウトドアで、実際にアウトドアナイフを使用するシーンは多いです。そのため、いろいろな用途に使える「万能型」と、切れ味や耐久性などにすぐれている「特化型」の2本持っておくとスムーズに準備をすることができます。
いつ、どんなときにアウトドアナイフを使うのか、しっかりと考えて自分に合ったものを用意しましょう。
安全性を重視するならロック機能をチェックしよう
折りたたむことができる「フォールディングナイフ」には、ロック機能が搭載されているものがあります。ロック機能にもさまざまなものがあり、ロックバック式やライナーロック式などがあります。
使う前にロックの仕方をチェックしておき、実際に使うときに慌てないようにしたいもの。小さい子どもと一緒にアウトドアを楽しみたい方は、とくによく確かめておいてください。
アウトドアナイフのおすすめ商品10選 ブレードの鋼材・刃長・重量・ハンドル素材もチェック!
「コスパ」「使い勝手」「強靭性」で選ぶならこの3本!

Morakniv(モーラ・ナイフ)『コンパニオン ヘビーデューティー ブラックステンレス』

出典:Amazon
ブレードの鋼材 | ステンレススチール |
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刃長 | 約104mm |
重量 | 104g(ナイフのみの重量) |
ハンドル素材 | ラバー |
生産国 | スウェーデン |

OPINEL(オピネル)『オピネル ステンレス No.7』










出典:Amazon
ブレードの鋼材 | ステンレススチール |
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刃長 | 約80mm |
重量 | 約36g |
ハンドル素材 | ブナ |
生産国 | フランス |

Helle(ヘレ)『Helle Temagami ST(ヘレ テマガミST)』




出典:Amazon
ブレードの鋼材 | トリプルラミネートステンレススチール |
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刃長 | 110mm |
重量 | 155g |
ハンドル素材 | カーリーバーチ(樺の木) |
生産国 | ノルウェー |
「コンパクトで2つの刃」と「使いやすいデザインの極薄刃」
自分にとって使いやすいのはどっち?
UNIFLAME(ユニフレーム)『ギザ刃キャンプナイフ(No.661840)』








出典:Amazon
ブレードの鋼材 | ステンレス刃物鋼 |
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刃長 | 95mm |
重量 | 38g |
ハンドル素材 | ABS樹脂 |
生産国 | 日本 |
MAC(マック)『フィッシングナイフ(BNS-60)』

出典:Amazon
ブレードの鋼材 | モリブデン鋼 |
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刃長 | 160mm |
重量 | 115g |
ハンドル素材 | 積層合板 |
生産国 | 日本 |
「工具鋼を使用したプーッコナイフ」と「サビ強いH-1鋼材」
どちらで選ぶか

KELLAM(ケラム)『KELLAM Wolverine(ケラム ウルヴァリン)』

出典:Amazon
ブレードの鋼材 | SPT炭素鋼 |
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刃長 | 約95mm |
重量 | 120g |
ハンドル素材 | カーリーバーチ(樺の木) |
生産国 | フィンランド |
ブッシュクラフターにおすすめのプーッコナイフ
近年人気を集めている、ブッシュクラフト(自然環境における生活手段)発祥の地、北欧の伝統的なナイフがプーッコナイフ(※)です。
ブレードが対象に対して自然に沿うような、素直な特性のスカンジエッジのブレードで工具鋼を使用し、材質の粘り強さと研ぎやすさを両立しています。アウトドアナイフワークを身につけるのにはうってつけです。
ハンドル材も白樺のコブ材などを使用しているため、美しい仕上がりです。長く使える一本を探しているならこのナイフがおすすめ。
比較的安価にもかかわらず作りがしっかりしていて、サイズ展開にもバリエーションがあるので、手の小さなひとでも気軽に使うことができます。
(※)フィンランドの伝統的なハンティングナイフ
G・SAKAI(ジー・サカイ)『サビナイフ2(サバキ3寸)』

出典:Amazon
ブレードの鋼材 | H-1 |
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刃長 | 92mm |
重量 | 89g |
ハンドル素材 | FRN(ガラス繊維強化ナイロン) |
生産国 | 日本 |
「ラフに使いたい」「落としても丈夫」「力を入れやすい」で選ぶならこの3つ!

Bark River(バークリバー)『ブラボー1 A2 ブラックキャンバスマイカルタ』














出典:Amazon
ブレードの鋼材 | A2鋼 |
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刃長 | 107mm |
重量 | 209g |
ハンドル素材 | ブラックキャンパスマイカルタ ブラスピン |
生産国 | アメリカ |
ヘビーデューティーなA2鋼材のハマグリ刃。
ブラボーシーリーズはすべて、ハマグリ刃という日本刀のようなブレード形状をしています。刃離れがよく、刃持ちがいいのが特徴です。
研ぎが難しいのですが、斧のようにラフに使えるナイフです。もちろん斧のように重さで破壊力を出すわけではないのですが、かなりラフに使えます。
その理由は、およそ4mmあるブレードとニュートラルバランスによる持ち重りのなさ。グリップの人差し指付近にナイフのセンターバランスがくるので、グリップとブレードのほぼ中央にバランスがきていることになります。
このバランスが疲れにくいナイフとされています。スキルアップにおすすめの1本です。

KA-BAR(ケーバー)『アウトドアナイフ ベッカーCompanion BK2』






出典:Amazon
ブレードの鋼材 | 1095 Cro-Van |
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刃長 | 約123mm |
重量 | 約418g |
ハンドル素材 | ウルトラミッド |
生産国 | アメリカ |
ハードに使えるフルタングナイフ
特筆すべきは衝撃にすぐれたハンドル材ウルトラミッドを採用していることです。このハンドルにはカラーバリエーションがあり、好みでアレンジも可能です。
紐などを通せるスリングホールもあり、手からの脱落防止にもなります。ブレード特性も素直で扱いやすく、切れ味も持続するクロム含有量が多い鋼材を使用しています。
刃の先端に向けてゆるく落ちていく形状のドロップポイントで、ハンティングからキャンプまでこなすオールラウンダー的ナイフです。
ブレードはパウダーコーティングが施され、炭素鋼でもサビに強い仕様となっています。ワイルド派におすすめのナイフです。
仁作『陸刀(No.810)』






出典:楽天市場
ブレードの鋼材 | ステンレス |
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刃長 | 170mm |
重量 | ナイフ:190g、シース含:280g |
ハンドル素材 | エラストマ樹脂 |
生産国 | 日本 |
刃渡り60mm以下のコンパクトなアウトドアナイフ3選 サブナイフとしても!
「そこまで本格的なアウトドアナイフは必要ない」「メインナイフは持っているのでサブナイフが欲しい」という方には折り畳めるものや、小さめのモデルがぴったり。刃渡り60mm以下のコンパクトなアイテムをご紹介します。
Spyderco(スパイダルコ)『レディバグ3 ソルト』






出典:Amazon
ブレードの鋼材 | H-1 |
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刃長 | 49mm |
重量 | 20g |
ハンドル素材 | ザイテル |
生産国 | ー |
Morakniv(モーラ・ナイフ)『エルドリス スタンダード』








出典:Amazon
ブレードの鋼材 | ステンレススチール |
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刃長 | 59mm |
重量 | 80g |
ハンドル素材 | TPEラバー、ポリプロピレン |
生産国 | スウェーデン |
VICTORINOX(ビクトリノックス)『ファーマー AL』

出典:Amazon
ブレードの鋼材 | ー |
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刃長 | ー |
重量 | 86g |
ハンドル素材 | ALOX(アルミニウム) |
生産国 | スイス |
「アウトドアナイフ」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする アウトドアナイフの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでのアウトドアナイフの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
【関連記事】アウトドアで役立つおすすめ商品はこちら!
その名のとおりマルチに使える、マルチツールナイフ・多機能ナイフはこちら
マルチツールナイフとは装備が充実した多機能型ナイフのこと。山岳写真家である荒井裕介さんに取材して、マルチツールナイフの選び方とおすすめの商品を教えていただきました。マルチツールナイフに興味のある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
ナイフを使って格好よく使いこなそう
山岳写真家が選ぶファイヤースターター10選+番外編2選をご紹介します。アウトドアで火をおこしたい時に便利なのがファイヤースターター。山岳写真家の荒井裕介さんにファイヤースターターを選ぶ時のポイント、おすすめの商品をうかがいました。ぜひ参考にしてみてください。
アウトドアナイフの6つのポイントをおさらい
1)いかに自分の手に馴染むかが重要
2)初めてのナイフは刃渡りが10cm程度、自分の手の平と同じか中指の付け根を少し超える物が扱いやすい
3)メインナイフが10cm前後のものであれば、サブナイフは6cm以下の物を用意するとよい
4)初心者の方は靭性に優れていて、粘りもあって研ぎやすい炭素鋼材のものがよい
5)ハンドル材は入門用としてラバーグリップ、次のステップで天然素材を選ぶのがよい
6)安価であっても自分の手に馴染むことこそが、上達への近道である
使用用途や扱えるレベルによって、アウトドアナイフの選び方は異なります。上記のポイントを踏まえ、自分にあったアイテムを選び、より快適なアウトドアを楽しんでください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/12/17 コンテンツ追加・修正のため記事を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 名原広雄)
ブッシュクラフト、狩猟、ULスタイル、沢登りなど様々なアウトドアに取り組む。海外生活の経験もあり銃器やトイガンにも造詣が深い。 アウトドア料理やビンテージアウトドアアイテムのレストア、道具作りにも造詣が深く自作アイテムのみでの山行も行う。 フェールラーベンのアンバサダーとしても活動している。