液体ミルクとは? メリット・デメリットを解説!
液体ミルク(乳児用液体ミルク)は、液状の人工乳を容器に密封したミルクのこと。常温で長期間の保存(紙パックは6ヶ月、缶入りは12ヶ月)が可能な製品を指します。栄養組成は調乳後の粉ミルクと同じです。あらかじめ水に溶かした状態になっているのが粉ミルクとの違いで、調乳の手間がかからない点が最大の特徴と言えるでしょう。
液体ミルクのメリットは?
液体ミルクのメリットは「調乳の必要がない利便性」に尽きるでしょう。粉ミルクの場合は、調乳が必要となり、手間がかかります。そのまま飲むことができる液体ミルクであれば、授乳時の調乳の手間を省くことができますよね。
また、液体ミルクは、様々な事情で母乳哺育ができない場合や災害時にも確保しづらい調乳用のお湯も必要なく、液体ミルクは哺乳瓶に移し替えるだけで、すぐに使用することができます。
日常的なことを考えても、調乳用の荷物が減り、外出しやすくなるため子育ての面においても、メリットが多いアイテムです。
液体ミルクのデメリットは?
粉ミルクに比べると価格は少し割高で、使用期限は短いのがデメリットとして感じるママも多いかもしれません。
平均的に、液体ミルクの価格は粉ミルクの約3〜4倍ほど。保存期間は、未開封の粉ミルクが1年なのに対し、液体ミルクは半年と短い製品も多いので注意が必要です。
液体ミルクの選び方 防災ファシリテーターに聞く
防災ファシリテーターの南部優子さんのアドバイスをもとに、液体ミルクの選び方を紹介します。ポイントは下記の5つ。
【1】内容量
【2】紙パックor缶
【3】母乳育児の場合のポイント
【4】国産or海外製
【5】単品orまとめ買い
上記の5つのポイントをおさえることで、より具体的に自分に合う液体ミルクを選ぶことができます。一つひとつ解説していきます。
内容量で選ぶ
飲み具合が安定している場合は200mlを目安に
液体ミルクは1回で飲み切るスタイルの商品です。余っても保存はできません。このため、あまり容量の大きいものだと飲み残しが多くなり、もったいないと感じてしまうでしょう。
月齢が小さな間など、1回あたりの授乳量が少ない、また飲みムラがある赤ちゃんへは少量タイプの商品のほうが使いやすいかもしれません。
月齢が進んで飲みっぷりが安定してくると、200ml程度のミルクでも飲み切ってくれる可能性が高くなりますから、ある程度量が入ったもののほうが値段的にも割安に感じてよいでしょう。
紙パックタイプと缶タイプ、どちらがいい?
外出時の使用がメインなら軽量の紙パックが便利
外出時や旅行のときなど、急に赤ちゃんがぐずってしまったり、ベビーコーナーが見当たらないのにミルクを飲ませる必要ができたりしたとき、液体ミルクをさっと取り出して飲ませることができるのは本当に便利です。
赤ちゃんとのおでかけにはそうでなくても荷物が大量になりますから、持ち歩く液体ミルクも、かさばって重い缶タイプよりは紙パックタイプのほうが便利です。
缶に比べて容器の重さがぐっと軽く感じられますし、紙容器だと使用後小さく折りたたんで捨てやすいのもポイントです。
ただし、缶入りのほうが賞味期限は長くなります。災害用の備蓄としては、缶入りのほうがメリットがありますね。
母乳ミルク混合育児の場合
母乳がメインで非常時用の場合は少量パック
母乳中心で赤ちゃんを育てている場合でも、体調不良やストレスなどで母乳が急にでなくなることも考えられます。
こんなとき液体ミルクは、熱湯で作ってから冷まして飲ませるという手間がいらないため、夜中の調乳の負担をへらすことができますし、誰かに赤ちゃんの世話を代わってもらうときも頼みやすくなります。
母乳の場合の授乳は、ミルクの場合と比べるとどのくらいの量を飲んでいるかがわからないため、急に母乳がでなくなって切り替えることになると、どのくらい飲ませたらよいかわからず不安になるかもしれません。
そんなときは、1回あたり少量のものをお試し用に準備しておき、赤ちゃんが飲み切れるかどうか、どのくらいの間隔でミルクを欲しがるかを確認していくと安心です。
国内メーカー? 海外メーカー?
購入しやすさ・味見しやすさでは国内産のメーカー
日本国内で製造・販売されている液体ミルクは4商品で、商品のバリエーションが多いのは海外のものになります。
国内の商品は、海外の商品に比べて安価で入手でき、送付もすばやいため、手軽に試したうえでかんたんに補充することができます。海外のものがだめというわけではないですが、送料コストや入手までにかかる日数、いざというときのサポートなどを考えると、日本製にしておくほうが安心感が大きいです。
1本ずつ購入? まとめ買いする?
最初は少数で購入して赤ちゃんに選んでもらおう
液体ミルクはなんといっても赤ちゃんが主役。どんなに機能的な評価が高いミルクでも、飲んでくれなければ話が進みません。いつも同じ銘柄の粉ミルクにしていると、ほかのミルクを飲んだときの違和感が高くなれば飲みっぷりも変わってしまいます。
まずは少ない本数で購入して、どの程度赤ちゃんが好むか様子をみたあと、まとめてそろえていくことをおすすめします。
液体ミルクおすすめ4選 グリコ、明治、雪印ビーンスターク
うえで紹介した液体ミルクの選び方のポイントをふまえて、4商品の特徴を紹介します。

外出や旅行、非常時用に持ち運びやすい紙パック
日本の食品メーカーが製造・販売している粉ミルク「アイクレオ」の液体ミルクです。紙パックを採用しているため、小さくて軽く保存にもかさばらず、持ち運びも便利です。赤ちゃんに飲ませるときには、いつも使って飲み慣れている哺乳瓶へ、専用のストローを使って移し替えます。
1本の容量が125mlなので、月齢の低い赤ちゃんでも飲み残しが少なくすむでしょう。また、母乳との混合授乳の場合や、体調不良・非常時のストレスなどで母乳が出づらいときの補助に使うのにも使いやすい量です。
1本からすぐに入手できます。赤ちゃんは急にミルクの味が変わると受け付けてくれない可能性もありますから、ときどき飲ませてみて慣らしておくほうが無難です。

耐久性のある缶入り。よく飲む赤ちゃんにうれしい量
日本の食品メーカーの粉ミルク「明治ほほえみ」の液体ミルクです。スチール缶を採用し、1年の長期保存が可能となっています。大量保存するとかさばって重たくはなるものの、潰れる心配がないので備蓄に向いています。
耐熱使用の容器に移せば湯煎(ゆせん)などで温めることもできるため、常温では飲みたがらない赤ちゃんにちょっと温めて飲ませる場合に便利です。缶を開けて哺乳瓶に注ぐだけの手軽さで、移し替えもらくです。
1本の容量が240mlと多めなので、飲みっぷりが安定してきている月齢の赤ちゃんにちょうどよい量です。1日何度も飲むことを考えると、コスト的にも助かります。この液体ミルクも1本からすぐに入手できますから、赤ちゃんに味見してもらって慣らしておくとよいでしょう。
『明治ほほえみ らくらくミルク』の口コミ
試供品でもらったのがきっかけで使い、こんなに便利なタイプがあるのかと驚きました。哺乳瓶へ移し替えることもできますが、缶に付属の専用アタッチメントとピジョン「母乳実感」哺乳瓶の乳首をつければ常温でそのまま飲めるので、水がない時、お湯がない時などに大活躍。災害時の備蓄としてもおすすめです。(Mさん/0歳男の子)
森永はぐくみの液体ミルクはアルミパウチ容器入り
粉ミルクの「森永はぐくみ」から育児用液体ミルクが発売。栄養成分の量と成分バランスを母乳に近づけている点は、粉ミルクの「森永はぐくみ」と変わりません。
アルミパウチ容器に液体のミルクが100ml入っています。切り取り口から哺乳瓶に注いで、常温のまま赤ちゃんに飲ませてあげられます。
開封していない状態で、常温保存で賞味期限は12カ月。
『森永はぐくみ 液体ミルク』の口コミ
ほかの液体ミルクも試してみましたが、いちばん気に入ったのがこちらのミルク。パウチタイプのため、バッグのなかでもかさばりません。100ml入りなのもポイントでした!ほかの液体ミルクの場合、微妙に余ってしまうことがありましたが、これなら200mlちょうどのミルクを用意できます。母に預けたときも、「最近はこんなに便利なものがあるのね」と感動していました。(Kさん/0歳女の子)
使いやすい量の200ml缶タイプ
雪印ビーンスタークの液体ミルクは200ml。容量はmeijiの『らくらくミルク』とグリコの『アイクレオ』の中間となる量で、災害用の備蓄にも向く缶入りタイプです。
粉ミルクの「すこやかM1」と同じ母乳成分配合が配合されています。
液体ミルクおすすめ商品の比較一覧表
アタッチメント・乳首もチェック! 非常時・災害時に必要
災害に備えて液体ミルクと併せて準備するべきもの
液体ミルクは調合なしでそのまま飲めるため、調乳に必要な道具の消毒がいらず衛生的であることもメリットです。一方で哺乳瓶に移し替えて飲ませた場合、あとに残った哺乳瓶やニプルを洗って消毒するひと手間が必要になります。
日常だと気にならない手間ですが、災害時だと洗浄や消毒に使う水も貴重となってしまうため、回数の多い授乳をどうやって乗り切るかは頭の痛い話になります。ニプル付きのミルクだと衛生的にはたいへん便利ですが、専用のニプルでないと適合しないという問題も出ます。
おすすめは使い捨ての哺乳瓶・ニプルを備蓄として購入しておくことです。この場合も、ニプルの形状やにおいなどによって飲みっぷりが変わるかもしれませんから、まずは少量で試してみて、よさそうならロットの大きなものを備蓄しておくとよいでしょう。
▶乳首取り付け可能な缶タイプ
缶に乳首を取り付け可能!
液体ミルクのスチール缶に、お手持ちの乳首をそのまま取り付けるための専用アタッチメントが付いたセットです。哺乳瓶を持ち歩いたり、消毒したりしなくていいので、非常に楽ちん。国内メーカー品の中では賞味期限が1年ともっとも長く、災害時のストックとしてもおすすめです。
▶紙パックに取り付け可能な乳首(ニプル) 外出時に便利すぎると話題!
紙パックの液体ミルクに取り付ける乳首
紙パックの液体ミルクに取り付けることができる乳首。哺乳瓶がない状況でも紙パックに取り付ければ、赤ちゃんはそのまま飲むことができます。
乳首は月齢にかかわらず1サイズで使い続けられる、スーパークロスカット乳首。洗って何度でも使えるので、エコで経済的というのも特徴です。消毒は電子レンジ、薬液、煮沸のすべてに対応しています。
▶使い捨て哺乳瓶&インナーバッグ 備蓄用に便利!
消毒なしですぐに使える哺乳瓶
消毒済みの使いきり哺乳瓶。ジャバラ式のボトルで保管時はとてもコンパクトです。使うときは伸ばしてミルクを入れます。
20mlごとにメモリがあるので、飲みたい量のミルクを注ぐことが可能。楕円形の吸い穴になっていて、向きを変えるとミルクを吸い出す量が調節できる仕組みです。月齢を選ばず使うことができますね。
使いきりなので、備蓄用にピッタリです。お出かけ時の荷物を減らしてくれるのにも一役買ってくれます。
哺乳瓶を汚すことなく授乳できるため、お出かけのときのマストアイテムです。これがあれば、荷物に入れる哺乳瓶は1本だけでOK。外出先で2回以上授乳が必要なときも、替えの乳首+インナーバッグがあればいいので、荷物がかさばりません。インナーバックをうまくセットしないと哺乳瓶の目盛りと一致しないことがあるので、注意してセットするようにしています。(Sさん/0歳男の子)
普段の哺乳瓶に入れて使うインナーバッグ
普段使っている哺乳瓶の中にセットして使える、使い切りのインナーバッグになります。インナーバッグの中にミルクを入れるので、哺乳瓶本体は汚れません。
哺乳瓶のボトル本体の消毒不要ですが、ボトル本体以外(乳首など)は洗浄消毒が必要です。広口タイプの哺乳瓶のみに対応。袋タイプでかさばらないため、災害時の持ち出し袋に入れておくと安心です。
液体ミルクに関しての疑問にお答え! 【Q&A】
ここからは、Q&A形式で「液体ミルク」についての気になる疑問にお答えしていきます。
「液体ミルクは危険だから飲むな」って本当? 注意すべき点は?
液体ミルクは一度開封したらすぐに使い切る必要があります。まったく口をつけていないとしても、開封後に時間をおくと、内容物が変質する可能性があるので、飲むことはできません。このようなことから「危険」だから注意して飲ませる必要があるという考えが広まった可能性があります。
液体ミルクは開封したらすぐに使い切る必要があるので、状況に応じて使いやすいものを選ぶようにしてみてくださね。
液体ミルクの正しい温め方は?
常温保存の液体ミルクは、そのまま常温で飲めて加温は不要です。しかし、冬場に冷たくなってしまった液体ミルクを温めたいと思うママも多いはず。そんなときは、液体ミルクを哺乳ビンに移し替えフタをしてから、湯煎またはミルクウォーマー(哺乳瓶ウォーマー)であたためるようにしてください。缶のままの直火、湯煎でのあたためはNG。また、電子レンジでの温めは行わないで下さいね。
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日本国内での液体ミルクの歴史はまだ浅い! 防災ファシリテーターが解説
液体ミルクは、日本では乳製品に関する「乳等省令」で規格が厳密に決められていることや、粉ミルクが特別用途食品(母乳代替食品)に指定されていることから、長い間液体ミルクの製造や販売が禁止されていました。2016年の熊本地震のとき、フィンランドからの救援物資に液体ミルクがあったのをきっかけに注目され、法令の改正が進んでようやく2018年に改正省令が施行されました。国産品の販売が開始されたばかりです。
このように、液体ミルクは日本のなかでは歴史が浅く、国産品は4メーカーのみの展開。これからの開発や商品のバリエーションが期待されるところです。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
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