家具転倒防止器具の選び方 防災ファシリテーターに聞きました
日本は世界的にみても地震が多い国です。家具の転倒防止は、地震対策のひとつとして有効。阪神・淡路大震災のときの調査では、建物のなかで負傷した人の約半数が、家具の倒壊や落下によるものだったという結果が出ています。
防災ファシリテーター・南部優子さんに、家具の転倒防止用品を選ぶときのポイントを教えてもらいました。
【1】耐圧性能
【2】特殊な工具不要でかんたんに設置できるか
【3】家具とサイズや見た目がマッチするか
【4】耐震マットシートと突っ張りタイプの合わせ技
上記のポイントをおさえることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】突っ張って支えるタイプは「耐圧性能」を確認 公的機関試験済みで、耐圧数値を公表しているものを
家具と天井とをポールで突っ張って支えるタイプの場合、「耐圧性能」を確認することが大切。公的機関で試験済みのものや、耐圧の数値を明記しているものを選ぶと安心です。
なお、突っ張るタイプは、縦方向の力には強いですが、接する部分が点に近いと摩擦力が少ないため、横からの力にはそれほど強くありません。
家具側・天井側ともに、器具との接地面積が広いほど力が安定し、縦揺れ・横揺れの両方に強くなります。設置する場所は、必ず家具に対して左右対称になるようにし、圧力が均等にかかるように設置しましょう。
【2】特殊な工具いらずでかんたんに設置できる器具を選ぶ 接着タイプは事前に目立たない場所でテストを
特殊な工具を使う必要があると、つい設置がおっくうになってしまいますよね。また、むずかしい取りつけ方だと、耐震性能が上がらないかもしれません。
ハンドルやネジを回す、シートを貼るなど、日頃からよくやるかんたんな動作で調整でき、固定できるタイプのものを選びましょう。
なお、接着タイプの場合は、「きれいにはがせる」とうたっているものでも、壁紙や天井の素材によって跡が残ったりはがれてしまったりすることがあります。
家具の底面や隅のほうなど、できるだけ目立たないところで使うようにするとよいでしょう。
そのほか、家具の下に差し込んで使うタイプのものもあります。家具の手前に差し込み、高さをつけることで壁にもたれかけた状態をつくり、地震が発生したときの揺れで家具が手前へ倒れ込むのを防ぐ器具です。
差し込むだけのかんたんな作業なので、ほかの器具と併用して固定の強度をあげるとよいでしょう。
【3】家具とサイズや見た目がマッチする器具を選ぶ
耐震器具ですから、家具と天井面までの高さにあわせて強度をたもつことが重要です。このため、サイズ展開が幅広いものを選んでおくと調整しやすくおすすめです。
なお、耐圧や吸収性などの安全面の機能が最優先となるのは間違いないですが、お部屋の家具はいつも目に入ってくるものですので、デザイン的に家具となじむもののほうがよいのも確かです。
性能的によく似たものであれば、家具の色味にあったものを選ぶと、部屋になじみやすくなります。また、耐震器具のなかには収納ボックス兼用の多機能タイプもあります。
家具としての見た目や機能を損なわず、固定器具も目立たないため、むき出しの器具を設置するのに抵抗がある人は、家具となじみやすい多機能タイプを検討してみるのもよいでしょう。
【4】転倒防止器具を組みあわせて大きな揺れへの対策を 耐震マットシートと突っ張りタイプの合わせ技を
家具と天井や壁の間を固定する器具だけでは、震度6強や震度7といった大きな揺れになった場合、家具を支えきれなくなる可能性もあります。
とくに重い家具の場合は、補強する耐震グッズとして、マットやシートタイプをじょうずに活用した「合わせ技」がおすすめ。
マットやシートタイプを家具の下に敷き、家具の上と天井を突っ張り棒タイプで固定すると、L型金具を使用した場合と同じくらいの強度を出せるともいわれています。
うえに重い家具をのせても大丈夫なように、耐荷重が100kg以上、耐震が震度7など、具体的な数字が表記されている場合は、数字が大きいものを選ぶといいですね。
マットやシートは、ゲルなどの素材がもつ粘着力を活かして地震の震動を吸収します。このため、家具や床にぴったりとくっつくことが重要。
重い家具を支えるには、できるだけ底面を広く、安定的に支える必要がありますので、大きなもの、厚みのあるものを選ぶとよいでしょう。
なお、マットやシートはどうしても経年劣化がすすみます。重い家具の場合は差し替えも力仕事ですし、できるだけ耐久年数が長いものを選ぶことをおすすめします。
定期的に使用年数をチェックして、早めに取り替えるようにしましょう。
複数の防災器具を組み合わせて総合的に防災対策を 防災ファシリテーターからのアドバイス
壁や柱に耐震補強をせずにすませる転倒防止器具は、手軽な反面、本格的な耐震対策と比べると、どうしても強度が下がります。
そもそもの話にはなりますが、あまり背の高い家具は置かないとか、重いものを上のほうに置かないというような暮らし方を変えていく工夫も大切です。
また、家具が転倒しない場合でも、引き出しが飛び出したり、扉が開いてなかのものが落ちたり、ガラスが割れたりという被害も考えられます。引き出しや扉のストッパー、ガラス飛散防止フィルムなどを組み合わせ、部屋のなかでのケガを少しでも減らすように対策することをおすすめします。
家具転倒防止器具のおすすめ 突っ張り棒や賃貸で使える壁をキズつけないものも!
ここまで紹介してきた選び方のポイントをふまえて、家具転倒防止グッズのおすすめ商品をご紹介します。タイプ別にラインナップしています!
こちらからすぐチェック!
▼おすすめ8選|家具と天井を固定する「突っ張り棒タイプ」
▼おすすめ3選|家具と壁を固定する「接着タイプ」
▼おすすめ3選|家具の下に差し込む「マット・シートタイプ」
▼おすすめ8選|家具と天井を固定する「突っ張り棒タイプ」
食器棚や本棚など背の高い家具と、天井を突っ張り棒で接続するのがこちら。公的機関による試験をクリアしたものや、耐圧性能を記したものを選ぶようにしましょう。

押圧試験実施済み、5サイズ展開でこまかくフィット
突っ張り棒を発案した平安伸銅による突っ張り耐震ポールです。老舗(しにせ)メーカーが手掛けるだけあって、性能も取りつけ方のノウハウもしっかりしています。いつもの突っ張り棒と同じように、フィットさせたい長さより少しだけ余分に伸ばしたポールを縮めて押し込むだけでOK。
耐圧性能は、公的機関で押圧試験を実施しており、耐圧200kgを確保しています。サイズ展開は、超ミニ、ミニ、S、L、LLの5種類とバリエーションが多く、22~100cmまでとさまざまな空間に対応できます。いろいろな高さの家具が並んでいるお部屋で、統一した固定器具を用いたい場合におすすめです。
耐圧150kgでガッチリ固定!
家具の天板部分と天井をガッチリと固定する突っ張り棒。接地面は、発砲ポリエチレン素材を使用しており、家具に傷がつく心配もありません。
工具を使わずに取り付けられるのも嬉しいポイント。150kgの耐圧性能かつ、2本セットなので、重量のあるタンスなどにももってこいです。

ハンドルを回してかんたんに固定できるジャッキ型
10~20cmのすき間にしっかりと入り込むジャッキタイプです。接地面が広めで安定しており、耐圧も800kgと、かなりの高性能。
固定の調整はハンドルを回すだけなので、誰でもかんたんに設置できます。色もオフホワイトで、白い家具とよくなじむデザイン。すき間はわずかだけれど、安全性をより高めたい、重い書籍や書類が入っているキャビネットや食器棚などの固定器具としておすすめです。

収納ボックスと一緒に面で支えるジャッキタイプ
ジャッキタイプの器具と強化ダンボールの収納ボックスを積み重ねることで、家具と天井の間の空間をふさぐ商品。ボックスの数を調整していくことで、21~94cmまでのすき間に対応。色の展開は、クラフトとグレーがあります。
設置方法は、付属のドライバーでジャッキを回すだけ。ボックスの面全体で突っ張るため、天井への圧力の負担も分散されて安定感抜群です。自動車用の1トン・ジャッキが組み込まれているため、耐圧性能もしっかりしています。
収納自体は取り出すたびにジャッキを操作して開ける必要があるため、使用頻度が少ないものを入れておくほうがよいですが、固定ジャッキがダンボール収納の形でうまく隠れるため、家具の上にダンボール収納している風景とよくなじみ、違和感がありません。震災を経験して固定器具を目にすると気持ちがふさぐ人や、家具の上にむき出しの固定器具が見えることに違和感がある人におすすめです。

本格的な実証試験済。接地面が広く横揺れにも安心
大型3次元・6自由度加振振動実験装置(日本国土開発株式会社振動実験棟)という、本格的な実証試験で、震度6弱加振での検証をクリアしています。接地面が広く、横揺れにも強くなっています。また、壁の近くにひとつセットするだけでよいため、器具があまり目立ちません。
軽くて剛性をもつアルミ複合板を使用しているため、長く使うことができます。湿気の多い場所で使用してもサビにくく、キッチンや洗面、お風呂の脱衣場にある家具の固定器具としておすすめです。サイズは、S、M、Lの3タイプで、25~90cmまで対応します。
耐圧200kgで家具を強力に固定
ネジや釘を必要としないで取り付けられる突っ張り棒です。接地面は大判のすべり止めがついており、横揺れにも対応してくれます。
耐圧200kgで安心感も申し分ないです。最大50cmまでしか伸びないタイプなので、背の高い本棚などに使用するのがおすすめです。サイズ違いで最大100cmまで対応するものもありますよ。
鋼鉄製で強度抜群! 家具をキズつけず固定
防災用品を多く作っている東京都葛飾福祉工場の突っ張り棒です。構造力学に基づいたデザインで、長く愛されるロングセラー商品。
鋼鉄製で耐久性・安全性にすぐれ、家具や天井をキズつけずかんたんに取り付けることができます。カラーはアイボリーとブラウンがあるので、部屋のインテリアに合わせて選べますよ。

家具調の木製デザインで耐圧性能は300kg
家具となじみやすい木製のポールタイプ器具です。色味はやや薄めの木材でできています。木製の家具の上に設置すると、デザイン的に違和感のない仕上がりとなるでしょう。耐圧性能も300kgを確保しており、機能的にも安心です。
サイズは、SS、S、M、Lの4種類があり、25~67cmまでの空間に設置することができます。木目調のタンスなどの家具が多い部屋の固定器具としておすすめです。とくに、年配者のお部屋に設置すると高級感があって喜ばれるかもしれません。
▼おすすめ3選|家具と壁を固定する「接着タイプ」
金具や粘着シールなどを使って、家具と壁を固定する接着タイプ。倒れにくさは高いですが、家具や壁に穴が空いたり、粘着成分がうまくはがれなかったりと、跡に残ってしまうことが多いのがデメリットです。ただ、跡残りしにくいタイプもあるのでチェックしてみましょう。
貼るだけでかんたん!
不二ラテックスの「不動王」シリーズです。L字型のほか、T字型やキャスターストッパー、パソコン用の耐震シートなど、幅広い商品を展開しています。
こちらのL字型は、タンスや小物家具などの対策におすすめ。特殊素材が揺れを吸収してくれます。取り付けは粘着剤を貼るだけでかんたん、家具や壁をキズつけないのがうれしいですね。

ジェル材が力を吸収分散、どこでも貼れる粘着タイプ
家具と壁に貼りつけてとめる粘着ゲルタイプの器具です。接着面のゲルパッドがやわらかく粘って変形することで、家具や家電、壁への衝撃をネジでの固定と比べ約4分の1まで減らし、力を面全体へ分散します。
どこにでも貼れるので、突っ張ることのできない場所で、家具や大型家電の側面や背面、底面など、いろいろな面でつなぎとめておくのに使えます。
『NewBB』は、300kgの大型家具にも対応可能。(2個使用時)『ガムロック』シリーズは、ほかにもバックルベルト式、40cmの長さのベルト式、高さのある家具用など、いろいろな留め具の形状があり、使いわけできます。突っ張りタイプのポールを設置するのが苦手な人におすすめの器具です。
テレビの転倒を防ぐベルトを利用しよう
テレビの転倒を防ぐためのベルトです。テレビ裏にベルトを装着して、テレビ台に固定するタイプ。厚さ34mmまでのテレビ台の天板に対応しています。
また、壁に固定することもできるので、テレビの設置場所に合わせて設置できますよ。
▼おすすめ3選|家具の下に差し込む「マット・シートタイプ」
家具の手前に差し込むことで傾斜を作り、地震が起きた際、手前に家具が点灯してこないようにするためのものです。床に跡が残りにくく、どこでも使いやすいのが魅力。

家具のサイズに合わせて切って使える敷物タイプ
家具の下に挟み込むことで、揺れによる滑り出しを防ぐシートです。長さのサイズ展開が60cm、90cm、120cmの3種類あり、家具の幅に合わせて切って使うことができます。
半透明なので挟んでいても目立ちにくく、家具の底面全体に敷くことで手前側が約7mm高くなり、後ろの壁に寄りかかった状態になって、揺れても倒れにくくなります。
突っ張り棒タイプやジャッキタイプと組み合わせて使うと強度が上がります。重いタンスなど、前に倒れるのがとくに心配な家具に、ほかの器具と組み合わせてさらにしっかりと固定させる補助具におすすめです。

家具の下に挟むだけで滑り出しを防ぐストッパー
家具の下に差し込んで使うストッパーです。弾力のあるエストラマー素材で、粘着剤はついていませんが振動吸収機能があります。表面にギザギザ加工が施されており、また差し込んだときの高さが14.5mmとやや高めで安定感があります。
この商品も、突っ張り棒タイプやジャッキタイプと組み合わせて使うことで、転倒防止機能を強化することができる手軽な補助器具としておすすめです。
家具の下に敷いても目立ちにくいクリアカラー
家具の下に敷くことで転倒を防止するプレートタイプのアイテム。サイズは幅30×奥行4.5×高さ1cmですが、家具のサイズに合わせてカットして使用することができます。
クリアカラーなので、家具の下に挟んでも目立ちにくいのもポイント。4枚セットなので、冷蔵庫や本棚などいろんな家具に使えてコスパがいいですよ。
「家具転倒防止器具」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 家具転倒防止器具の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの家具転倒防止器具の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
家具転倒防止器具の上手な使い方 防災ファシリテーターが解説
防災ファシリテーター・南部優子さんに、家具転倒防止器具の使い方のコツを教えてもらいました。
ポール式とマット・ストッパー式器具併用がおすすめ
地震の揺れには2つのタイプがあります。
ひとつは、1995年の阪神・淡路大震災に代表される「直下型地震」で、ドスンと上下に激しく揺れる縦揺れが特徴です。
もうひとつは、2011年の東日本大震災に代表される「海溝型地震」で、大きく長く続く横揺れが特徴です。転倒防止器具も、この2つの揺れを意識し、縦揺れに対する耐圧性、横揺れに対する摩擦や衝撃の吸収性など、合わせ技で耐震性能を上げる必要があります。
最近の住宅事情を考えると、L字金具のように壁に穴を開けて固定するタイプの器具は、賃貸住宅やマンションには向きませんし、木材の持ち家でもパネルの壁は強度が足りません。
そこでおすすめしたいのが、天井と家具を突っ張って支えるポール式器具と、家具の底に敷くマットやストッパー式器具との合わせ技です。
ポール式の縦揺れに対する耐圧、マットやストッパーの横揺れの吸収と、器具のもつ特徴を組み合わせることにより、揺れに強くなります。
ほかの防災グッズもチェック! 【関連記事】
家具転倒防止グッズでもしものときに備えよう
備えあれば患いなし。地震の多い国、日本に住むわたしたちにとって、もしものときの備えは必要です。天井と家具を突っ張って支えるポール式器具と、家具の底に敷くマットやストッパー式器具を併用することで、より安全な対策ができます。
この記事を参考にして、自分の家に合った家具転倒防止グッズを見つけましょう。
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