泣ける漫画の選び方 感情移入できるものやエッセイ漫画に注目

Photo by Tom Pumford on Unsplash
泣ける漫画を選ぶときは、世界観に浸れて、深く感情移入できるものを選ぶのもひとつの方法です。
「このマンガがすごい!」ライターの奈良崎コロスケさんに、泣ける漫画を選ぶときのポイントを3つ教えてもらいました。
内容が気になったら積極的にチャレンジを!
『このマンガがすごい!』ライター
絵柄ではなく内容で選ぼう
マンガを読んで「泣く」という行為は、その世界観に没入し深く感情移入しないとできません。作画のレベルがそれほど高くなくても、キャラクター造形と演出がしっかりしていれば自然と涙がこぼれてしまう。それがマンガのよいところです。
あまり好きな絵ではないな……と思うような作品でも、内容が気になったらぜひ読んでみてください。
名作は時代を超えて感動を呼ぶ!
70年代後半から80年代にかけて、人気を博したボクシング漫画。ひとりの少年が成長していくさまを描き、クライマックスでは熱い涙を流すこと間違いなしの作品です。
『このマンガがすごい!』ライター
長く読まれている名作も要チェック!
天才が登場するスポーツ漫画でも、はるか未来を舞台にしたSF漫画でも、わたしたちは、家族、友人、恋人、師弟、ライバル、ペットなど、「関係性」の物語を読んでいます。その関係性に変化が起こることで、感極まるのです。
これは今も昔も変わらぬ普遍的なもの。「昔の漫画だからなぁ」と敬遠せず、歴代の名作たちに触れていただきたいです。
ギャグ作家の描くエッセイ漫画に注目
東村アキコ先生が、大好きな恩師へ贈る自伝的作品。お得意のギャグを炸裂させつつも、最終巻は胸が締めつけらる漫画です。
『このマンガがすごい!』ライター
ギャグ作家の泣ける漫画は軽やかに読める
思わず声を出して笑ってしまうギャグ作品を描いている漫画家たち。最近では、意外な一面や驚きの過去をエッセイ漫画で発表することが増えてきました。もちろんお得意のギャグが随所に挿入されているのですが、笑っているうちに不思議と涙がこぼれるようなエピソードも多数。笑って泣ける漫画になっています。
ギャグ漫画家は湿っぽくなりすぎることを嫌います。悲しい展開になっても読者を重い気分にさせず、読み口を軽くする努力をしてくれているのがポイントです。
漫画のジャンルで選ぶ
スポーツ系やバトル系、冒険・ファンタジー系やほっこり系、恋愛系や少女漫画など、漫画にはさまざまなジャンルがあります。どのジャンルも名作が存在し、心がジーンとするものや青春を感じられるもの、キュンとするものなど感動シーンもたくさんあります。
泣ける漫画も自分の好みのジャンルで選んでみるのもひとつの方法です。
連載中か? 完結済みか?
「休みの日に一気に読みたい!」「続きが気になってしまう……」という方は、すでに完結済みの作品をおすすめします。クライマックスまで一気に読み進めることができるので、感情移入しやすいのもメリットでしょう。
一方、最新作をすぐに読みたいという方は、連載中の作品や読み切りの短編作品がおすすめですよ。
泣ける漫画おすすめ5選! 短編作品やエッセイ漫画も
うえでで紹介した、泣ける漫画の選び方のポイントをふまえて、「このマンガがすごい!」ライターの奈良崎コロスケさんに選んでもらったおすすめ商品をご紹介します。

小学館『がんばれ元気』

出典:Amazon
著者 | 小山ゆう |
---|---|
発売日 | 1997年12月12日 |
巻数 | 全16巻 |
少年はひとりの男だけを見据えて戦い続けた
70年代後半から80年代にかけて人気を博したボクシング漫画の大傑作です。主人公はプロボクサーのシャーク堀口を父に持つ堀口元気。ところが父は17歳のホープ・関拳児との激闘で絶命。当時5歳だった元気は、関と戦うために一刻も早くプロデビューすることを胸に誓います。
元気は名門高校に合格していたもの進学はせず、予定通り17歳でプロデビュー。ついに父を倒した関と世界戦で対峙するのです。果たして戦いの先に何が待っているのか。ひとりの少年が成長していくさまを追ってきた読者は、熱い涙なくしてクライマックスを読み進めることはできないでしょう。スポーツや格闘技好きの方はもちろん、親子愛の物語が好きな方におすすめの1冊です。

HaHa(1) (モーニングコミックス)

出典:Amazon
著者 | 押切蓮介 |
---|---|
発売日 | 2016年1月22日 |
巻数 | 全1巻 |
僕を生んだ母さんが生まれ、そして生きてきた世界
『ハイスコアガール』の押切蓮介先生が、実母の半生を描いた作品。物語は18歳の良太(押切先生)が、説教と下ネタが大好きな母を見ながら、「どう生きれば、こういう人になったのだろう」と疑問を抱くところからはじまります。そして「母の半生に関心を持ち、敬意を持って人生話に耳を傾けるのもひとつの孝行」と捉え、「自分をこの世に生んだ人間の物語」を紐解きはじめるのです。
自分が生まれる前に亡くなった祖父母の話、はじめて明かされる母の武勇伝や不運のエピソード。マンガ家への道を歩み始めた良太は、母の話から自分のルーツを見出していくのです。巻末に収録された母からの直筆メッセージが、とても温かく胸に沁み入ります。

双葉社『星守る犬』

出典:Amazon
著者 | 村上たかし |
---|---|
発売日 | 2009年7月7日 |
巻数 | 全1巻 |
言葉ではなくて心でつながっているひとりと1匹
動物ギャグのヒット作『ナマケモノが見てた』で知られる村上たかし先生が、はじめて挑戦したストーリー漫画です。物語は山奥の林道脇からくち果てた車両が発見されるところからはじまります。その車には1年以上前に亡くなった中年男性の遺体と、死後3カ月程度の犬の死体が残されていました。死亡時期にタイムラグがあるのはなぜなのか? ここから時間が巻き戻され、「おとうさん」と「ハッピー」の旅がスタート。
ひとりの男の生きざまと、彼に忠実な愛犬が過ごしたかけがえのない時間が、ていねいに紡がれていきます。ひとりの男の終活の物語ではありますが、決して悲しいだけじゃない、温かい気持ちが読後に残る名作。ペットを飼った経験がある方であれば涙してしまうであろうおすすめの作品です。

集英社『かくかくしかじか』

出典:Amazon
著者 | 東村アキコ |
---|---|
発売日 | 2012年7月25日 |
巻数 | 全5巻 |
女性におすすめ! 熱い想いは胸の中に残り続ける
『東京タラレバ娘』『偽装不倫』の東村アキコ先生が、大好きな恩師へ贈る自伝的作品です。
宮崎県の片田舎で育った林明子(のちの東村アキコ)の夢は少女漫画家になること。美大に進学し、在学中に漫画家としてデビューすることを目標に定め、高校3年生のときに地元の日高絵画教室に通いはじめます。しかし待ちうけていたのは講師・日高先生によるおそろしすぎるスパルタ指導でした。
物語は東村先生の漫画道を軸に進んでいきます。お得意のギャグを炸裂させつつも、たびたび暗示される日高先生との悲しい別れ。わかっていても最終巻は胸が締めつけられます。夢を追っていた方や追っている方、人からなにかを教わる大切さを知りたい方におすすめです。

KADOKAWA『祖母の髪を切った日』

出典:Amazon
著者 | しかばね先生 |
---|---|
発売日 | 2018年7月4日 |
巻数 | 全1巻 |
家族への愛おしさを掘り起こされる
とある田舎町で育った「しかばね」は両親に見放され、祖母と暮らしていました。年金でやりくりする家計は厳しく、強烈な貧乏エピソードが続きます。やがて就職したしかばねは念願の自由を手に入れます。遅咲きの青春を謳歌(おうか)していたある日、祖母に異変が……。認知症が始まったのです。
慣れない介護の日々に、心がすさんでいくしかばね。愛おしいと思う気持ちは忘れていない。それでもドス黒い感情が渦巻いていく。魂の叫びが背景を覆い尽くし、追い詰められた人間の狂気が描写されます。
タイトルにつながる美しい最終話、しかばねの心にふっと明るい光が灯るクライマックスに胸をつかれることでしょう。「家族とはなにか」を再認識させてくれる作品ですので、あらゆる方におすすめです。
「泣ける漫画」のおすすめ商品の比較一覧表
作者の想いも受け止めながら、いい涙を流してください 漫画ライターより
『このマンガがすごい!』ライター
作品に込められたメッセージが心を揺さぶる
泣くことは、笑うこと以上にリラックスできると言われています。たとえば、夜眠る前に漫画を読んで感情移入し涙を流すことで、翌朝スッキリと目覚めることができるでしょう。
とはいえ、漫画家たちは読者を泣かすことを目的に作品を描いたわけではありません。紹介した作品は、いわばすべてが人間賛歌。
「今日は泣くぞ!」と意気込んでページをめくりはじめたとしても、作者たちが伝えたかった想いもしっかりと受け止めて、物語を楽しんでいただけたら幸いです。
もっと色々な漫画が読みたいという人はこちらの記事がおすすめです。
マンガソムリエの兎来栄寿(とらいえいす)さんと、現役の「漫画読み」501名が厳選した、本当に面白い漫画54作品をご紹介します。アンケート調査による人気ランキングベスト39、兎来栄寿さんと編集部による、もっと評価されるべき名作15選をピックアップ! 在宅で時間ができたので漫画を読み倒したい方! ...
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/12/15 一部コンテンツの修正のため更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 秋元清香)
別冊宝島「ザ・マンガ家」シリーズを企画・編集した後、『このマンガがすごい!』年度版の創刊メンバーに。 以降、漫画家インタビュー、漫画評論、漫画原作映画の劇場用プログラムなどを手掛けるほか、2019年には自身も漫画家デビュー。 80年代の音楽体験を描く『音楽とおじさん』を夕刊フジzakzakにて連載中。