熱いスポーツ漫画の選び方 漫画専門家に聞く
京都精華大学マンガ学部教授の吉村和真さんに、熱いスポーツ漫画を選ぶときのポイントを4つ、教えていただきました。
まずはスポーツのジャンル別にタイトルを探してみよう
京都精華大学マンガ学部教授
スポーツ漫画を知れば未体験の競技にも出会える
世のなかには、スポーツのジャンルや競技種目が多く存在します。漫画で描かれることによって人々に知られるようになったスポーツも、実は存在すると思うのです。日本では漫画によって、それだけ多種多様なスポーツが描かれてきました。
自分がやったことのあるスポーツ、世間で流行っている種目、見聞きする機会の少ないマイナー競技など、まずは気になるジャンル別に検索してみることをおすすめします。きっと思いもよらなかった新しいジャンルのスポーツが見つかるはずです。
ちばあきお『プレイボール2』
スポーツ漫画の影響を受けてそのスポーツを始めた、スポーツ漫画をとおしてそのスポーツの存在をはじめて知った、なんて人もいるのでは? まずメジャーなスポーツから探してみるのもありだ。
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京都精華大学マンガ学部教授
キャラクターが躍動感あるタッチの作品がおすすめ
静止画ならではの臨場感を味わいたいなら、キャラクターの動きが激しく描かれた作風のスポーツ漫画を選びましょう。
マウンドからピッチャーが投じる炎の剛速球、ありえない角度でゴールに突き刺さるサッカーのシュート、目にも留まらないボクサー同士のスピードパンチの応酬、砲丸を投げようとする瞬間の力の入った陸上選手の表情……。
動画の映像や実写の写真では決して伝わらない迫力が、スポーツ漫画ではありありと表現されています。静止画なのにスピードやパワーが読者に伝わってくるスポーツ漫画は、漫画本来の魅力と読み手の「漫画リテラシー」(漫画を読んだり描いたりする能力)を、より大きく引き出せるジャンルなのかもしれません。
森川ジョージ『はじめの一歩』
『はじめの一歩』は、1989年から現在まで連載が続いているボクシング漫画の金字塔。主人公・幕之内一歩の成長物語だが、ボクシング漫画ならではの臨場感あふれる描写も魅力的。
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京都精華大学マンガ学部教授
日本のスポーツ漫画の影響力は国内にとどまらない
スポーツ漫画を読むことは、いろいろなスポーツを知る方法のひとつです。『ドカベン』の登場人物のマネばかりしていたプロ野球選手、『キャプテン翼』を読んでワールドカップに憧れたサッカー選手、『スラムダンク』に出会ってバスケ部に入った中高生といった具合に、スポーツ漫画は数々のプレイヤーたちに影響を与えてきました。しかもその影響は国内に留まらず、海外にもおよんでいます。
一方で、野球やサッカーのようなメジャースポーツだけでなく、マイナースポーツを描いた漫画にも多くの名作が存在しますね。陸上十種競技やブラインドマラソンなど、ふだんあまりメディアで取り上げられないスポーツだからこそ、予想のできない展開で物語に引き込まれるでしょう。
香川まさひと『ましろ日』
スポーツ漫画のなかには、あまり知られていない競技を題材として扱っているものも。『ましろ日』はブラインドマラソンを題材にした漫画で、視覚障害をもつランナーや伴走者たちの絆を描いている。
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京都精華大学マンガ学部教授
女子ならではの競技に注目してみる
根性もののスポーツ漫画、つまり「スポ根」といえば『巨人の星』や『あしたのジョー』など、血と汗を流す男たちの活躍の場面が思い出されます。しかし、熱さでは「女子」だって負けてはいません。
野球やボクシング、テニスに柔道といった男女ともに人気がある種目でも、女子が描かれた作品があります。さらにはソフトボールやなぎなたのように、女子だからこそのジャンルまであります。歴史をさかのぼれば、バレーボールを題材とした漫画などが戦後の少女漫画の花形でもありました。
ぜひ熱い「スポーツ女子」の活躍にも目を向けてみてください。
講談社『JJM 女子柔道部物語』
スポーツ漫画は男性向けのものばかりでなく、女性向けのものも多いのが特徴。こちらの『JJM 女子柔道部物語』も、タイトルどおり柔道に打ち込む女性の物語。
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ここまで紹介した熱いスポーツ漫画の選び方のポイントをふまえて、吉村和真さんに選んでもらったおすすめの熱いスポーツ漫画を紹介します。

小林まこと『JJM 女子柔道部物語』

出典:Amazon
作者名 | 恵本裕子(原作)、小林まこと(脚色・構成・作画) |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | イブニング |
柔道はもちろん部活も女子も熱い
『1・2の三四郎』や『柔道部物語』など、熱血と爆笑を同居させたスポーツ漫画を描いてきた、小林まこと先生による最新作です。
小林先生はいったん漫画家を引退していたのですが、あまりにおもしろい人物とエピソードに出会ったため、この作品で再びペンをとりました。その人物こそ、この作品の主人公であり、原作者でもあり、そして日本女子柔道界初の五輪金メダリスト・恵本裕子さん。
この最強タッグが織り成す女子柔道部物語は、やっぱり熱さと笑いを届けてくれます。現在も連載中のこの作品は、かつての小林節を懐かしむ方にも、はじめて触れる方にも、ぜひおすすめしたい逸品です。

ちばあきお『プレイボール2』

出典:Amazon
作者名 | ちばあきお(原案)、コージィ城倉(著) |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | グランドジャンプ |
約40年のときを超えて復活した高校球児たち
「おおっ、ちばあきおの名作の続きが読めるぞ! 絵が少しぐらい似てなくても、話が何十年後に飛んでても構うもんか」そんな気持ちでグランドジャンプの連載を読み始めましたが、驚きました。絵柄も作風もびっくりするほど似ていたし、なにより、時代背景も設定も前作のままなのです。
作者のコージィ城倉先生は、少年マガジンに連載されていた「おれはキャプテン」、少年サンデー連載の「砂漠の野球部」など、ブッ飛んだ内容の野球漫画で有名ですが、この作品ではそれを完全に封印。読めば読むほど、主人公の谷口くんや仲間たちの熱気と息づかいが聞こえてきそうです。

山田芳裕『デカスロン』

出典:Amazon
作者名 | 山田芳裕 |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 週刊ヤングサンデー |
「迫真」という名のスポーツ漫画の到達点
「デカスロン」とは「陸上十種競技」のこと。百メートル走やハードル、槍投げ、走り高飛びなど、アスリートとしての総合力が問われる過酷な競技です。日本では決してメジャーではないこの競技を描くことは、それだけでも挑戦といえるでしょう。しかし山田芳裕先生はその壁を、漫画にしかできない表現で打ち破ったのです。
大胆で迫力満点の遠近法やデフォルメによって描かれた、選手たちの肉体の躍動感とスピード感、苦渋と喜悦に満ちた表情や息づかい。この漫画をとおして陸上十種競技に触れることで、2020年の東京五輪をよりおもしろく観戦できるでしょう。ひとつの競技だけを描くのではなく、競技ごとに山場があって楽しめる展開は、陸上十種競技というスポーツならではです。
スポーツ漫画の到達点を、そして漫画という視覚表現の可能性を、ぜひ体感してください。

香川まさひと『ましろ日』

出典:Amazon
作者名 | 香川まさひと(原作)、若狭星(作画) |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | ビッグコミック |
「ブラインドマラソン」が放つ光
メジャーからマイナーまで、多種多様なジャンルをテーマに描かれてきたスポーツ漫画。そのなかでも近年、異彩を放つのが、この作品で扱う「ブラインドマラソン」です。
交通事故で両目を失明した主人公が、このスポーツに出会ったことで少しずつ心に光を取り戻していくのですが、視覚障害のランナーやその伴走者の姿を見て、私たち読者もそこに光を感じることができます。
また作品の舞台が被爆地・広島であることも、人間同士の絆や記憶の継承の意味をより深く考えさせられますね。さらに本作のWeb特設ページには、視覚障害者向けに音読可能なシナリオを掲載。
扱うテーマだけ見ると重たい作品に思われるかもしれませんが、明るい絵のタッチで、読んでいると感動するとともにあたたかい気持ちに。そしてブラインドマラソンという題材を通じて、自分の人生を託すことの意味を、さまざまに考えさせてくれる作品です。

森川ジョージ『はじめの一歩』

出典:Amazon
作者名 | 森川ジョージ |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 週刊少年マガジン |
名実ともに平成を代表するスポーツ漫画のひとつ
1989年の連載開始以来、現在も連載中。約60年の歴史を持つ少年マガジンのなかでも、並外れた連載期間と発行部数を誇る、名作中の名作ボクシング漫画です。この作品の影響を受けたと公言するプロボクサーも少なくありません。
では、なぜわざわざここでおすすめするかというと、今の展開から目が離せないからです。本作は長年、主人公・幕之内一歩のボクサーとしての成長物語として読まれてきました。ところが最近はボクサーというよりも人間としての成長、いや、作者である森川ジョージ先生ご自身の苦悩と葛藤の物語として、作品そのものが新たな成長を見せているのです。その様子をぜひその目で確かめてください。
オールドファンから、これから読んでみたいという方まで。本作品は単行本だけでなく、少年マガジン本誌で追っかけるのもおすすめです!
熱いスポーツ漫画おすすめ22選【人気売れ筋から厳選】 名作、名言が生まれたあの作品も!
古舘春一『ハイキュー!!』






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作者名 | 古舘春一 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
藤巻忠俊『黒子のバスケ』

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作者名 | 藤巻忠俊 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
許斐剛『テニスの王子様』

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作者名 | 許斐剛 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
渡辺航『弱虫ペダル』

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作者名 | 渡辺航 |
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出版社 | 秋田書店 |
掲載誌 | 週刊少年チャンピオン |
ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』

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作者名 | ひぐちアサ |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊アフタヌーン |
小林有吾『アオアシ』

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作者名 | 小林有吾 |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | スピリッツ |
寺嶋裕二『ダイヤのA act2』

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作者名 | 寺嶋 裕二 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 少年マガジン |
あだち充『クロスゲーム』

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作者名 | あだち充 |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 少年サンデー |
足立金太郎/森高夕次『グラゼニ~パ・リーグ編~』

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作者名 | 森高夕次 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | モーニング |
満田拓也『メジャー 2nd』

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作者名 | 満田拓也 |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 少年サンデー |
金城宗幸/ノ村優介『ブルーロック』

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作者名 | 金城宗幸/ノ村優介 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 少年マガジン |
槇村さとる『モーメント 永遠の一瞬』

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作者名 | 槇村さとる |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | ココハナ |
なきぼくろ『バトルスタディーズ』

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作者名 | なきぼくろ |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 週刊Dモーニング |
田中モトユキ『BE BLUES!~青になれ~』

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作者名 | 田中モトユキ |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 週刊少年サンデー |
藤島康介『トップウGP』

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作者名 | 藤島康介 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊アフタヌーン |
八神ひろき『ディアボーイズ ACT4』

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作者名 | 八神ひろき |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊マガジン |
井上 雄彦『スラムダンク』

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作者名 | 井上 雄彦 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊少年ジャンプ |
二宮裕次『BUNGO(ブンゴ)』

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作者名 | 二宮裕次 |
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出版社 | 集英社 |
掲載誌 | 週刊ヤングジャンプ |
武蔵野創『灼熱カバディ』

出典:Amazon
作者名 | 武蔵野創 |
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出版社 | 小学館 |
掲載誌 | マンガワン |
矢口高雄『バーサス魚紳さん!』

出典:Amazon
作者名 | 矢口高雄 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | イブニング |
荒達哉『ハリガネサービスACE』

出典:Amazon
作者名 | 荒達哉 |
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出版社 | 秋田書店 |
掲載誌 | 週刊少年チャンピオン |
竹内友『ボールルームへようこそ』

出典:Amazon
作者名 | 竹内友 |
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出版社 | 講談社 |
掲載誌 | 月刊マガジン |
「スポーツ漫画」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする スポーツ漫画の売れ筋をチェック
Amazonでのスポーツ漫画の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
京都精華大学マンガ学部教授のアドバイス スポーツ漫画選びに迷ったら……
京都精華大学マンガ学部教授
全10巻以内で完結する作品がねらいめ
スポーツ漫画のジャンルは、多種多様です。多様な作品から自分の趣味に合うものだけを的確に選ぶのは、難しいかもしれません。でも逆にいえば、スポーツ漫画が長く広く読者に支持されてきたジャンルであることを歴史が証明しているわけですので、「ハズレ」は少ないはずです。スポーツ漫画は長編も多いので、まずは10巻以内で完結している作品あたりから読んでみるのもいいかもしれませんね。
また「熱いスポーツ漫画」といっても、それが「熱血」なのか「感動」なのか、はたまた「笑い」なのか「説得」なのかといった、作品の内容の受け止め方は、人それぞれでしょう。さまざまな感情を味わうことができるのも、スポーツ漫画の特徴なのです。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/08/17 一部コンテンツの修正のため更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 花島優史)
1971年、福岡県生まれ。専門は、思想史・マンガ研究。 マンガが日常生活に定着するまでの歴史と、マンガが人間の思想や価値観にもたらす影響について研究中。 2001年の日本マンガ学会設立や2006年の京都国際マンガミュージアム開館など、マンガ研究の環境整備と社会還元を進めています。