ダイナミックマイクとは
ダイナミックマイクとは、マイクで拾った音を電気信号にして周りに伝えるマイクです。ライブやカラオケ店などにあるのがまさにダイナミックマイクで、音声を拾って大音量で出力したいときや、スピーチなどのシーンで活用できます。
ダイナミックマイクは湿気に強くて耐久性が高いというメリットがあります。また、電源も不要で値段も低価格なものが揃っています。混同しがちな製品で「コンデンサーマイク」がありますが、こちらは繊細な音を拾えるというメリットがあり、どちらかというとレコーディングや野鳥観察などに用いられることが多いです。
ダイナミックマイクの種類
ダイナミックマイクは、大きく分けて「カーディオイド型」と「スーパーカーディオイド型」の2種類があります。一つひとつ解説いたします。
▼動きながら使うときは「カーディオイド型」
カーディオイド型は、単一指向性のなかでももっとも音を拾う範囲が広い指向性です。ライブでボーカリストが歌う、ギターアンプを使うなど、一般的な指向性となっています。
正面の音のみを拾う一方、拾える音の範囲が少し広いのが特徴。そのため、少しマイクが動いても音を拾えます。マイクを握りながら歌うライブやカラオケ、プレゼンをしながらおこなうスピーチなどに向いています。
▼固定して使うときは「スーパーカーディオイド型」
単一指向性のものは、指向性の鋭さによってカーディオイド、スーパーカーディオイド、ウルトラカーディオイド、ショットガンカーディオイドとよなれています。
カーディオイドよりも指向性が鋭くなるスーパーカーディオイドは、音が拾える範囲は狭まる一方余分な音を拾わなくなります。マイクを固定して使うときや、楽器の音を拾いたいときにはスーパーカーディオイドが向いています。
(★)指向性(方向ごとの音の拾いやすさ)も確認しよう!
ナレーション・楽曲制作クリエイター
マイクを使っている時にこんなことを体験した、という方もいらっしゃると思います。
・自分の歌声が楽器に埋もれてしまわないようマイクのゲイン(音量)を上げたら、ハウリング(キーンという高い音)が起きた
・収録した声を聴いてみたら、エアコンやPCなどから出る雑音が入っていた
これらは「指向性(どの方向からの音を拾いやすいか)」を選ぶことで、かんたんに解消されることがあります。指向性もマイクによって種類はさまざまですが、実はダイナミックマイクは「単一指向性(カーディオイド)」と呼ばれるモデルがほとんどです。単一指向性とは、マイクの正面からの音をよく拾う特性を指します。
ボーカリストがライブで使用するほか、特定の楽器の音を狙う場合や、スピーチなどに使われることが多いです。しかし、ひとことに単一指向性といっても、モデルによって収音範囲は大きく変わります。範囲が狭いほど周りの雑音は拾われにくくハウリングにも強いのですが、向きや角度が少しずれると音が拾われなくなるため、扱い慣れるには時間が必要です。
指向性も周波数特性と同じく、収音範囲を視覚的に表現した円形の図があり、そのマイクがどの方向からの音を拾うのかが一目でわかります。気になる製品がありましたら、まずはメーカーのホームページでスペックを確認してみましょう。
ダイナミックマイクの選び方
それでは、ダイナミックマイクの基本的な選び方を見ていきましょう。ポイントは下記の6つ。
【1】音質(周波数特性)
【2】拾いたい音で感度(db)
【3】手元スイッチの有無
【4】耐久性
【5】シェア率の高さ
【6】見た目
上記の6つのポイントをおさえることで、より具体的に欲しい機能を知ることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】音質(周波数特性)をチェック
もし自分専用のマイクを選ぶなら、
・マイクを通した声と、マイクを通さずに聞こえる声との聞こえ方(=音質)に違いはないか
・自分の声の特徴をどのように活かし、コンプレックスに感じる点をどのようにカバーしてくれるのか
上記いずれかの条件は外せないですよね。マイクには「周波数特性(拾った音をどのように出力するのか)」と呼ばれるものがあり、いわばマイクの「個性」です。たとえ同じ声・同じ音でも、周波数特性の違うマイクを使えば、聞こえ方も大きく変わります。
自分の声がどんな特徴をもっているのか、自分の声を聴かせる相手にどのような印象をもたせたいかを明確にしておくと、選択肢を絞ることができます。
・渋い声を活かしたい→低音域の出力に強いマイク
・声量に自信がない→音抜けのいいマイク(高音域の出力に強い)
・トークで使うことがメインの方→地声の高さに合った周波数特性をもつマイク
・トークにも歌にも併用して使う方→低~高音域まで幅広く出力するマイク
・自然な音質を求めたい→すべての音域に対してフラットに出力するマイク
なお周波数特性には、視覚的に表現した曲線のグラフがあり、どの周波数で盛り上がっているのかによって、そのマイクがどの音域の出力に強いのかがひと目でわかります。気になる製品がありましたら、まずはメーカーのホームページでスペックを確認してみましょう。
【2】拾いたい音で感度(db)をチェック
ダイナミックマイクを含めて、マイクには感度が設定されています。感度とは音圧と電圧の関係を規定したもので、dB (V/Pa)という単位でレベルが表記されます。一般的に、0に近ければ近いほど、高感度のマイクになります。
マイクの感度はコンデンサーマイクのほうが高いですが、ダイナミックマイクでも高感度のものは発売されています。繊細な音を拾いたいときには、感度もチェックしてみましょう。
【3】手元スイッチの有無をチェック
ダイナミックマイクには、手元にオンオフスイッチがついているモデルとついていないモデルがあります。用途に応じて選びましょう。
オンオフスイッチが手元にあると、マイクごとにオンオフができる、ハウリングが出てもすぐにミュートできるなどのメリットがあります。オンオフスイッチがないと複数のマイクのオンオフを一括でコントロールできる、デザインがシンプルなどのメリットがあります。
【4】耐久性をチェック
ダイナミックマイクはコンデンサマイクと違って、電力供給がない分出力は劣りますが、構造が単純なため扱いやすく、少しの衝撃や湿気には耐えうる耐久性を持ち合わせています。
ダイナミックマイクの先端にある、球体あるいは円柱状等の形をした部分にはグリルボールと呼ばれる網状のカバーや、ウィンドスクリーンと呼ばれるスポンジのような素材が取りつけられていることが多いです。それらはマイクに内蔵されている音を拾う部品を衝撃や湿気から保護したり、雑音が入らないための風防としての役目をもっています。
もちろんモデルによって形や構造もさまざまで、なかにはメーカー独自の構造を持つものも存在します。ライブで激しいパフォーマンスをする方や、持ち歩く機会の多い方、使用後に毎度片づけるのが億劫な方は、万が一落としたりぶつけたりしても壊れにくいものを選びましょう。
【5】シェア率の高さをチェック
個性を求めるために、周りと違うモデルをもとうとお考えの方には賛同していただけないかもしれません。しかし、ダイナミックマイクはいくら耐久性が高いといえども、何度も衝撃を与えてしまったり、長時間外気にさらされて湿気で部品がさびてしまったりすると、交換や修理が必要になります。
その場合、シェア率の低いモデルだと生産が早期に終了してしまい、交換や修理が不可能な場面に遭遇することも少なくありません。
発売が古いモデルでも、ロングセラーは製品の生産や部品の入手、修理の受付が安定しているため、万が一壊れてしまっても部品を交換して継続使用や、新品を入手することが容易です。シェア率の高さは、入手のしやすさでもあるのです。
【6】見た目をチェック
これまで性能や利便性を見てきましたが、それでも決めかねるという場合は、思い切って見た目で選んでみてはいかがでしょう。形状や色、材質など、モデルによって多種多様に展開されています。なかにはコンデンサマイクのような見た目をしたダイナミックマイクもあります。
また、シェア率の高いモデルは、本体や部品の色違いが販売されていることもあります。見た目が自分の好みだと、愛着が湧いてモチベーションの向上にもつながりますよ。
ダイナミックマイクおすすめ13選
上で紹介したダイナミックマイクの選び方のポイントをふまえて、おすすめ商品をご紹介。商品によってそれぞれ特徴が違いますので、自分に合ったダイナミックマイクを探してみてくださいね。

世界中で愛されている定番モデル
プロの歌手やミュージシャンが使用しているのを見かけることも多い、人気のモデルです。スイッチの有無やワイヤレスモデルなど、さまざまなモデルが展開されています。中音域の出力がフラットなため、自然な音質に近く、PA(テレビやライブなどで、音響機材を操作する人)の方々からミキシングがしやすいとたいへん好評です。
音抜けを売りにしたマイクと比べると少しこもったように聴こえますが、声に優しい印象をもたせてくれます。ボーカリストで初めて自分専用のマイクをもつ方や、コーラスで使用する方、不特定多数の方が使うマイクを必要とする方、ミキシングに自信のある方など、初心者から上級者まで幅広くおすすめできるモデルです。また、入手のしやすさや耐久性の高さも大きなポイントです。
万が一グリルボールが凹んでしまっても、交換用のグリルボールに付け替えれば長くお使いいただけます。ちなみに、Adroaigの代表・畑耕平も、生徒さんとのレッスンではこのモデルを使っています。


音抜けの良さは最上級レベル!
オーディオテクニカが音抜けのよさをとことん追求した、AE4100の上位モデルです。とくにサ行の文字を発音した時に、ほかのモデルとの音抜けの違いを実感するでしょう。ただ、音抜けが良すぎるため、高音での自分の声が少し加工されたように聴こえる、という印象をもたれる方も少なくないようです。
指向性は、単一指向性よりもさらに範囲の狭い「ハイパーカーディオイド」を採用しており、向きや角度が少しずれただけで音が小さくなったり、拾えなくなったりします。一方で、雑音やハウリングにはめっぽう強いのも特徴です。声量に自信がないけど、ハードロックやメタルなどの激しい音楽をやりたいボーカリストには最強の相棒となってくれるでしょう。


楽器収音にピッタリのモデル
今までおもに、音声収録等におすすめのマイクを紹介してきましたが、こちらはギターアンプやドラムなど、楽器収音に向いているモデルです。周波数特性はSM58と少し違うのですが、中音域がフラットなのは同じで、とくにスネアドラムの収音にピッタリです。もちろん音声マイクとしても利用可能なのですが、SM57のグリルにはウィンドスクリーンが入っていません。
そのため、SM58よりも感度は強いのですが、半面、湿気に弱いため、音声マイクとしてそのまま使うと雑音をよく拾ってしまったり、中の部品がすぐさびてしまったりというリスクがあります。音声マイクとして使用する場合は、ポップガードなどの風防の役目を果たすアイテムとセットでお使いになられることをおすすめします。

レコーディングシーンにもってこいの高級モデル
今までご紹介したモデルより価格は上がってしまいますが、上記5点のモデルと比べて自然な音質の出力を売りにしています。実は、マイケル・ジャクソンがスリラーのレコーディング時に使用していたマイクとして有名です。こちらは楽器収音、歌、スピーチと幅広く活躍のできる万能モデルです。
また、こちらは標準のウィンドスクリーンだけでなく、近接での収音に使える別のウィンドスクリーンが付属品としてついています。なお、レコーディング向けのモデルであるためか、耐久性はほかのモデルと比べて劣ってしまうため、ライブなどのアクティブなシーンにはあまり向いていません。

ジャンル不問の超優秀ボーカルマイク
今回ご紹介するモデルのなかでは一番価格が高いですが、先ほどのSM7Bよりも、さらに自然な音質の出力が可能となっています。また、ダイナミックマイクとしては世界初のデュアルダイアフラムという設計を採用しており、そのカートリッジ部分の技術は特許を取得しているほどです。そのため、従来のダイナミックマイクに比べてハウリングに非常に強く、マイクとの距離の変化に伴う音量や音質の変化を最小限に抑えてくれます。
もちろん耐久性にも自信があり、ライブにもレコーディングにも使える非常に優秀なモデルとなっています。今までお使いのマイクから、さらにグレードアップをお望みの方におすすめのモデルです。

激安だけど侮るなかれ! コスパ最強モデル
マイク本体とケーブルがセットで2,000円ほどと、今回ご紹介するモデルのなかでは圧倒的に価格の安いモデルですが、このモデルの性能を侮ってはいけません。今回ご紹介したSM58と非常に構造が似ているのですが、中音域の出力に関しても非常にそっくりなのです。そのため、SM58の予備マイクとして使用している方も多くいらっしゃいます。
しかし、高音域の出力には独特の癖があり、ハウリングにも弱いため、メインで使用するにははばかられる、という意見もあります。なお、本体の重量に関しては、こちらのほうがSM58よりも非常に軽くなっています。性能面も大事だけど、とにかく価格を安くおさえたい方におすすめのモデルです。
番外編|収録をする方はポップガードも検討しよう
YouTubeの「歌ってみた」動画の収録や、音楽活動、ナレーション業務など、マイクを使用して録音などを行う方は、ぜひ「ポップガード」の購入も検討してみてください。
ポップガードは、音源にノイズが入るのを防ぐ役割だったり、マイクの湿気を抑える役割があるなど、収録作業では欠かせないアイテムです。ぜひ参考にしてみてくださいね。
おすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする ダイナミックマイクの売れ筋をチェック
Amazon、Yahoo!ショッピングでのダイナミックマイクの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
【関連記事】その他のマイクのおすすめはこちら
最後に|エキスパートのアドバイス
ナレーション・楽曲制作クリエイター
同スペックの商品でも音を出すと違いがあるので注意
とくに音質をはじめとした性能面を重視する方にお伝えしたいのですが、今回記載したダイナミックマイクの選び方や各モデルの紹介内容は、あくまで目安です。たとえ同じ特徴をもつ別モデルのマイクでも、音質や収音範囲に違いが見られることがほとんどです。とくに音質は、個々人によって感じ方に差異があります。
自分の求める音に近いか、使用目的に合っているかなどは、ご購入の前に取り扱いのある楽器店やレコーディング機器専門店にて、一度試していただくことを強くおすすめします。
※記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
代表・畑耕平(ナレーター)ナレーションや楽曲、イラストなど幅広いクリエイターを抱え、様々な作品を手掛けている。 テレビCM、ラジオ番組、カラオケ音源など実績は数千以上。声優を起用したボイスドラマ制作も多数実績あり。 ナレーターやギター、ボーカル講師も多数在籍。旅行会社HISのCMやBMWディーラーのCMなど、大手企業の案件も多数。