生酛(きもと)造りの日本酒とは?どんな製法?
お酒造りでは、少量の酒母(しゅぼ)という発酵のタネといえるものを仕込んで十分な酵母を育ててから、それを元に多量のお酒を仕込みます。ところが、酒母に含まれるお米由来の糖分は様々な菌の大好物。そのため、酵母菌が酸に強い性質を利用して、乳酸を使って酵母をそのほかの雑菌から守る手法がとられます。
乳酸をくわえる方法には、人工的な方法(速醸酛)と、蔵に住みついている自然の乳酸菌を取り込んで乳酸を発生させる方法とがあり、後者が「生酛(きもと)」です。「生酛造り」は人工の乳酸などがなかった江戸時代に確立されたといわれ、自然の力に寄り添った伝統的な酒造りの手法のひとつです
生酛造りの日本酒の選び方 蔵元もチェック!
国際唎酒師の宇津木聡子さんに、生酛造りを選ぶときのポイントを教えてもらいました。特徴をしっかり確認して、自分にあった生酛造りを選ぶ参考にしてみてください。
【1】生酛の個性を知り、相性のいい料理と楽しむ
【2】冷酒や熱燗など、楽しみたい温度帯で選ぶ
【3】蔵元の特徴から選ぶ
上記のポイントを押さえることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】生酛の個性を知り、相性のいい料理と楽しむ
自然の乳酸を取り入れているだけあって、乳製品を思わせる丸みのある自然な酸味、複雑さや野性味、飲みごたえを感じられる味わいが、生酛造りの特徴。また、天然の乳酸菌に守られて元気に育った酵母が、活発に糖分を使って発酵を進めるため、余分な糖分がのこらず、キレのある味わいを生み出します。
わかりやすくいえば、コクとボディがありつつも後味スッキリな味わい。食とのあわせ方にも幅があります。どちらかといえば、淡泊で軽い味わいの料理よりは、旨味や塩味の強めのもの、スパイシーなものや乳製品を使ったクリーミーなものなどとのペアリングを考えて選ぶといいでしょう。
【2】冷酒や熱燗など、楽しみたい温度帯で選ぶ
酸度と複雑な味わいが特徴の生酛は、季節・シチュエーション・食事内容などによってさまざまな温度帯を楽しむことができます。冷酒~常温の比較的低めの温度で楽しみたいときには、精米度合の高いお米を使って造られていた、クリアな味わいのものを選ぶといいでしょう。純米大吟醸/大吟醸、あるいは純米吟醸/吟醸の生酛のなかにお好みのものが見つけられると思います。
しっかりと濃醇(のうじゅん)な旨味やコクをお燗(かん)で楽しみたいときには、精米度合が低めの純米あるいは本醸造から選んでみてください。お酒の個性はさまざま。気に入った生酛が見つかったら温度での味わいの違いや好みに合う飲みごろや温度を探すこともまた楽しみのひとつです。
【3】蔵元の特徴から選ぶ
蔵に住む天然乳酸菌を取り込んで乳酸を発生させるという伝統的な手法には、それだけの手間と時間そして労力を要します。それゆえに生酛造りに取り組む蔵元にはそれぞれに目指すものとそれを実現するための挑戦があります。
なぜその作り方を選んで醸造しているのか、そしてそこにはどんな歴史や背景があるのか。そういった蔵元の思いを知りながら選ぶことも大切です。そしてそれを心に浮かべながら味わうお酒はきっと格別なことでしょう。
生酛造りのおすすめの日本酒6選 国際唎酒師が厳選!
うえで紹介した生酛造りの選び方のポイントをふまえて、国際唎酒師の宇津木聡子さんに選んでもらったおすすめ商品を紹介します。味の個性や蔵元のことなど、日本酒のプロフェッショナルである宇津木さんならではのセレクトになっていますので、気になる生酛造りがないかぜひチェックしてみてくださいね。

大七といえば生酛!王道の生酛造りを味わう
1752年の創業以来、今なおすべてのお酒を生酛造り一筋で続けています。その逸品は業界内はもちろん、数多くの食通にも高く評価されて愛されています。
大七には数々の素晴らしい生酛のラインナップがありますが、こちらはそのなかでもスタンダードといえる品。生酛らしいクリームのような香りとうま味、心地よい酸味で、和食のみならずクリームやチーズを使った洋食ともとても相性がいいといえます。また、お燗にするとさらにその味わいがまろやかにボリュームを増します。
まずは生酛造りの王道を味わってみたいという方や、お燗でお酒を楽しむのが好きな方におすすめします。
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ぬる燗で旨味が引き立つ、世界でも認められた味わい
こちらは、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2018本醸造酒部門で最高位のトロフィー賞を受賞したお酒です。
こちらの蔵元もすべてのお酒を生酛造りでおこなっています。その味わいが高く評価され、ワインの本場イタリアにも輸出しており、現地のイタリア料理店で提供されているほど。
幅広い温度帯で楽しめますが、とくに40度程度の「ぬる燗」にすると旨味が引き立ちます。コクのある料理、濃いめの味つけをした料理との相性も素晴らしく、イタリア料理店で楽しまれているというのも納得の味わい。
お手ごろな価格でもありますのでご家庭で楽しむ定番のお酒としてもおすすめです。

ちょっと特別なときに楽しみたい大吟醸の生酛造り
酒米の王ともいわれる山田錦を40%まで磨き、生酛造りによってその名のとおり別格といえる味わいを醸し出した逸品。純米大吟醸だけあり、フルーティーな香り、そしてクリアな味わいでありながら、生酛の個性であるキレと奥行きが見事に調和しています。
少し冷やして、あるいは常温程度で、ワイングラスに注いで香りと味わいを楽しんでみてください。専用の木箱に入っていますので、特別な日にちょっと贅沢(ぜいたく)に楽しみたい方に、または大切な方への贈り物としてもおすすめです。

身近に味わえる本格生酛は「押し味」が魅力
創業360年。「生酛造りは酒造りの原点、菊正宗の原点」という言葉を掲げ、今なお妥協なく酒造りを続けている菊正宗酒造の1品。天然の乳酸菌を使うと安定的につくるのが難しい生酛造りを、長年の研究によって大量に、そして安定した品質で提供することを実現しています。
清々しいキレのあとに奥行きと深みのある旨味を(蔵元では「押し味」といいます)しっかりと感じることができます。きりりとした辛口がお好きな方におすすめです。
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上質なお米の味わいと生酛の特徴が融和した味わい
酒米の王様といわれる山田錦の柔らかで雑味のない旨味と、生酛ならではの深みのある酸が見事に調和したお酒。お燗にすると品のあるお米の旨味、コクがさらにふくらみを増し、食中のお酒としてゆっくり楽しみたくなります。温度の違いによる味わいの変化を楽しむ飲み方もおすすめ。
本田商店では、「米の酒は米の味」をモットーに、お米にこだわり抜いた酒造りをしており、なかでも山田錦については品質がすばらしいとされる兵庫県特A地区で産出されたもののみが使われています。そんなこだわりに「なるほど」とうなずける味わいです。

旨味・キレ・ボディのバランスが◎
「古事記」や「日本書記」ゆかりの地のひとつである奈良県大宇陀(おおうだ)で醸造されているお酒です。通常2年ほど蔵で熟成されて出荷されます。そのためほんのり黄味がかった色味、そして旨味・キレ・ボディのバランスが非常によく、ほどよい熟成感が味わえるお酒です。
さらに、まろやかな酸味と旨味が引き立つお燗での味わいは格別。お燗酒が好きな方、あるいは赤身の魚や肉などコクのある料理がお好きな方におすすめしたいお酒です。
「生酛造り」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 生酛造りの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの生酛造りの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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生酛造りの日本酒の飲み方 国際唎酒師からのアドバイス
飲み方やお料理との合わせ方で広がる生酛の魅力
自然を生き抜いている乳酸で醸す「生酛」。時折、生酛(きもと)の乳酸系の酸が苦手という方もいらっしゃいます。嗜好はそれぞれですが「ちょっと強いな」とか「酸が高いな」と感じるときには、少し割り水をしたり、お燗にしたりすると自分好みの味わいを発見できることもあるので、ぜひお試しください。
生酛は「お料理と合わせるのが楽しいお酒」。ぜひ、食中酒として「自然の力と人の手が融合して生みだす味わい」を楽しんでください。
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日本の風土、知恵、歴史が生み出した日本酒の魅力や楽しみ方を、より多くの人に広めるため、訪日外国人へのプライベート日本酒体験、外国人・日本人向け日本酒にまつわるセミナーやイベントの企画を行っている。 外国人のプライベート日本酒体験では、これまでに30か国以上から400人余りをお迎えしている。 日々の生活でも、カンパイは日本酒、スキンケアは日本酒と酒粕で、そして朝晩の甘酒を欠かさない。