登山用腕時計の必要性
登山用腕時計とは、その名の通り、登山の際に便利な機能がそろった腕時計のこと。ペース配分を考えた時に、腕時計で時間を測ることは大切になりますが、それ以外にもたくさんの機能が付随されています。
例えば、山の高度や気圧を表示する機能。この機能により高山病などへの対策をいち早く準備することができます。また、方角を示すコンパス機能。その他、雨天時にも耐久性のある防水機能や耐衝撃性など、登山であると嬉しい機能があります。なにが起こるかわからない登山だからこそ、しっかり選んでおきたいところです。
登山用時計の代表的な機能
登山用時計には、「高度計」「電子コンパス」「気圧計」の3つの代表的な機能があります。それぞれの機能について解説いたします。
▼高度計
高度計は、大気の圧力を計って気圧を表示するものです。定点で気圧計の数値を知ることで、大まかな天気の流れがわかります。
また、地図とコンパスを併用すれば現在地を知ることができるので、どれだけ登ったのかも一目見てわかるのが特徴的。山登りが順調かどうかのペース配分の参考にもなるため、登山用時計に欠かせない機能のひとつです。
▼電子コンパス
電子コンパスは、現在自分がどの方角を向いているのかを計測して表示する、便利な機能のひとつです。たとえ舗装されている山道でも、長時間山のなかにいると、方角がわからなくなってしまうことがあります。
いま、自分がどの方角に立っているのかが確認できれば、目的地の方角もすぐに示すことができて遭難対策に役立ちます。
▼気圧計
気圧計は、気圧の変化を測定するもので、天候の急変予測などに役立てることができる便利な機能です。
ヘクトパスカル (hPa)を単位として数値を確認できること、グラフ化で目視できることなど、登山用時計によってさまざまな表示方法があるのが特徴的。山はとくに天気の急変が多いので、気圧計機能を持っていると、活躍するシーンが多いでしょう。
登山用時計の選び方
それでは、登山用時計の基本的な選び方を見ていきましょう。ポイントは下記の4つ。
【1】信頼性と堅牢性
【2】防水性能
【3】駆動時間
【4】その他の便利機能
上記の4つのポイントを抑えることで、より具体的に欲しい機能を知ることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】信頼性と堅牢性をチェック
どんな状況下においても、止まらないという「信頼性」や、岩にぶつけたり水に浸したりしても壊れないという「堅牢性」が大切と言えるでしょう。
ただ、トリプルセンサーのようにいろいろな情報が可視化できるのは、ギミックのひとつとして楽しいことは確かですね。
【2】防水性能をチェック
近年販売されている登山用時計は、ほとんどが「10気圧」もしくは「100m」以上の防水性を有するものがベーシックとなっています。これ以下の防水性能を一般的に「生活防水」と呼ぶのですが、生活防水は汗や雨滴に耐える程度のものであり、時計を水中に浸けると故障する場合があります。
安価なアウトドア用時計の中には、生活防水機能しか有していないモデルもあるので、こういった商品は避けた方が無難です。
「山では水中に入ることなどない」と考える人もいますが、川を渡る途中に転んで、不意に時計を水中に浸けてしまうこともあります。また冬は雪の中で使うこともあるので、防水性能は重視したいポイントです。
【3】駆動時間をチェック
昨今、登山用時計で熱いのが、カシオやスントから次世代時計として続々発売されている、「スマートウォッチ」です。PCなどと連動させることで、簡単なルートナビゲーションをさせることができ、ユーザーから注目されています。
一方で、登山エキスパートからはある性能面で実用に耐えうるか疑問視されています。それは、電池切れです。カシオの最新モデルでも、電池駆動時間は3日。つまり、ロングの山行となれば、途中の山小屋で充電が必要となります。当然ながら、充電器の携行で荷物が重くなるというデメリットも発生します。
おすすめは、ソーラー充電を備えたモデル。約10年間は電池交換も不要ですし、山行中に電池切れという事態も避けられるでしょう。
【4】その他の便利機能をチェック
登山用時計は、ほかにもさまざまな機能が備えられています。あると便利な機能である、温度計・GPS機能・ソーラー充電機能とは何か、特徴などを知っておきましょう。
(a)温度計
温度計は、外気温を正確に知ることができる便利な機能です。とくに標高1,000mを超える高山や雪山では、感覚だけで外気温を判断するのはとても危険。
山は気温も変わりやすく、また高度が上がるにつれて気温は低くなるので、体調管理に役立てるためにも持っておくべきだといえます。温度計は単体でも売られていますが、登山用時計に搭載されていれば忘れずに済むので安心です。
(b)GPS機能
GPS(GlobalPositioningSystem)は、人工衛星(GPS衛星)から発せられた電波を受信して、現在位置を特定する機能です。登山用時計以外にも、スマホや自動車、飛行機などにも搭載されています。
GPS機能があれば、現在地を把握できる以外にも、遭難を未然に防ぐために役立てたり、辿ってきた道を記録したりとさまざまな使い方ができます。
(c)ソーラー充電機能
太陽光を利用するソーラー充電機能。登山用時計を使うために別途電池を用意しなくてもよいので、バッテリー切れの心配がありません。ただし、蓄電池が劣化すると、充電ができなくなるおそれがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。
ソーラー充電機能は、登山以外にもキャンプやアウトドアスポーツなどのときに役立つので、搭載されていると重宝します。
有名メーカー・ブランドの特徴
登山用時計を取り扱っているブランドを紹介します。こちらもぜひ参考にしてください。
SUNTO(スント)
SUNTO(スント)は、1963年にフィンランドで創業した時計メーカーです。長時間のバッテリー駆動が可能な点や、GPS機能・気圧計など、登山にうれしい機能がたくさん搭載されています。
本格的なアウトドア・スポーツウォッチでありながらも、北欧ブランドらしいシンプルで洗練されたデザインが特徴的で、ふだん使いしやすいのがうれしいポイントです。
CASIO(カシオ)
CASIO(カシオ)は、世界中で人気の時計メーカー。また、その知見を活かして開発されたプロトレックは、登山用腕時計として確固たる地位を築いています。
計測値をすぐに確認できるディスプレイや自然現象の変化をとらえるトリプルセンサーは、登山以外にもハイキングや釣りなどでも活躍します。
SEIKO(セイコー)
SEIKO(セイコー)は日本でも有数の国産老舗時計メーカー。特にプロスペックシリーズは、冒険家の三浦豪太氏が監修しているシリーズ。「安全に登山を楽しむ」をコンセプトにしており、その名前にふさわしい、登山用のソーラーデジタルウオッチです。
登山以外にも、ダイビングやトレッキングなど、さまざまなアウトドアシーンで身につけることができます。
GARMIN(ガーミン)
GARMIN(ガーミン)は、アメリカで誕生し、その後スイスに本社を置き、世界で知名度を高めていったメーカーです。航空機に搭載されているGPSシステムを手掛けるほどの高い技術力は、登山用時計にも活かされています。
スタイリッシュなデザインが多く、手首で心拍数を測定できる機能など、GPG以外にも役立つ機能がたくさん搭載されています。
CITIZEN(シチズン)
1918年創業の、国産時計メーカーであるCITIZEN(シチズン)は、「海・陸・空を制覇する」というコンセプトのもとにプロマスターシリーズを展開しています。過酷な環境下でも耐えることができる機能性を備えており、商品ラインナップも豊富です。
海・陸・空ごとに製品の特徴も異なるので、登山用時計を選ぶなら陸をチェックしてみてください。
LAD WEATHER(ラドウェザー)
ラドウェザーは、アメリカと日本で共同開発されたアウトドアブランド。2009年に誕生し、リーズナブルで高性能な時計を展開しています。アウトドア以外でもふだん使いしやすく、ピンクやグリーンなどのカラー展開が豊富なのが特徴的です。
天気予測機能やデジタルコンパスなど、登山用時計にあると重宝する機能もしっかりと搭載されています。
登山用時計おすすめ13選
登山用時計の選び方のポイントをふまえて、おすすめ商品を紹介します。

コストパフォーマンス抜群の登山用時計
ラドウェザーは2009年に日米共同で生まれた新進時計ブランド。
この商品はドイツ製の精度の高い計測センサーを使っており、高度、気圧、温度、方位が計測可能な価格以上の性能をもつ一品です。また、天気の変化をアイコンで教えてくれます。
派手な機能はありませんが、登山に必要な基本機能をしっかりと備えており、しかも実勢価格が1万円を切っているのは驚き。リーズナブルだからと言って侮れない1本です。

不動のアウトドア用ウォッチの名作
登山経験を重ねていくと、登山に使う時計はシンプルに時刻を確認するもので良くなってくるもの。頑丈で過酷な状況下でも壊れない。それが一番のニーズになっていきます。
軽くて身につけやすい時計と言えば、Gショックのベーシックモデルにかなう物はありません。Gショックと言えばスクウェア型で定番の5600シリーズが有名ですが、この5700シリーズは長きに渡って海外専用だったモデルです。「スティングモデル」として、日本のコレクターの間で人気を博していましたが、2018年から日本でも販売されるようになりました。
時刻やストップウォッチ、タイマーなど機能は凡庸だが、鉄板の耐衝撃性能と20気圧防水で、シチュエーションを気にすることなく使うことができます。大きさや厚みも絶妙で、クライミングなど手を動かすシーンでも気にならない装着感がいいですね。

オーソドックスなデザインだが使いやすさは抜群
登山用時計においては、斬新なデザインよりも情報の見やすさが優先されます。
『PRW-3100』はデザイン性は乏しいですが、ヒューマンインターフェイスという点では優れたデザインを有しています。
高度、気圧、温度、方位を計測するトリプルセンサーを採用し、突然の気候変動や日の出・日の入りなどの情報を報せてくれるのもうれしいポイント。
マルチバンド6電波ソーラーや10気圧防水といった性能は、ものぐさにはうってつけです。満足度が高いモデルと言えるでしょう。

センサーの精度はさすがセイコー
モデルチェンジをするごとに、洗練されたデザインになっていくセイコーの「アルピニスト」。SBEシリーズは、スントやプロトレックと比べても見劣りしないモデルと言えるでしょう。
もちろん性能面でも隙はありません。高度、気圧、温度、方位といったベーシックな計測機能はもちろんのこと、スマホアプリと連動させることで、日本百名山や人気の山の登山計画を時計にインストールすることができちゃいます。
実際に山に出かけると、出発や下山の時刻、平均歩行速度などを自動で記録し、後からアプリで確認することもできます。またスマホとリンクする度に時刻修正をしてくれるのも便利な機能のひとつ。
センサーの精度も業界随一で、高度の誤差が少ないすぐれものです。

リストコンピューターの超定番モデル
スントはフィンランドのコンパスメーカーとして誕生し、その後、ダイビング用コンパスで世界に名を馳せたブランドです。登山者の間でもひじょうにメジャーなブランドで、スントの時計はひとつのステータスにもなっています。
スントでは腕時計という概念がなく、「リストコンピュータ」というコンセプトで精度の高い製品造りが行われてきました。この『CORE』は、スントのリストコンピューターの中でも、もっともベーシックなモデルです。
高度、気圧、温度、方位、そして日の出・日の入りの時刻を表示するなど、機能は地味ですが、実に使いやすい一本。発売から年数が経ちますが、カラーが豊富なこともあって、老若男女問わず高い人気を誇っています。
電池交換サイクルが、意外に早いのが難点です。

ハードな山行にも耐えるシンプルな電波時計
堅牢性と多機能という点ではデジタル時計に勝るものはないが、「やはり時計はアナログ」という方も多いでしょう。
複雑なメカニズムを持つアナログでありながら、JIS1種耐磁、衝撃検知機能、針自動補正機能を採用しているのがこちらの時計。もちろん20気圧という十分な防水機能も備えているので、ハードな山行でも遠慮なく使うことができます。
電波ソーラー時計なので、時刻合わせや電池交換などの煩わしさもありません。ケースやベルトにチタンを使用しているため、軽量な着け心地なのも嬉しいですね。
おすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 登山用時計の売れ筋をチェック
Amazonでの登山用時計の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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登山用時計は多機能=便利というわけではない エキスパートからのアドバイス
ビギナーが登山用品の購入を検討するときに、腕時計は比較的優先順位の高いアイテムになっています。昨今、各時計メーカーとも登山専用を謳った商品に力を入れており、どのモデルも「多機能」がウリになっています。
そのほとんどのモデルにはトリプルセンサーが搭載されており、方位、気温、高度、気圧の計測が可能です。たしかに多機能は魅力的で便利ですが、やはり時刻を確認することがメインですよね。
例えば方位ですが、エキスパートならコンパスは精度の高いものを別に持つことが多いです。高度を気にしながら登るのはビギナーの頃だけですし、気温については腕時計の表示はひじょうにアバウトです。
日の出や日の入り時刻についても、それを踏まえて事前の山行計画を立てるのが常識ですから、時計でその日に確認するということはほぼありません。使うとすれば、気圧の変化を示すグラフ。急激な気圧の変化を知ることで、豪雨や落雷などを避けることができます。
時計の機能はあくまでも簡易的なもの
昨今の登山用時計は、どんどん高機能化が進んでいます。しかし、たくさん機能が付いているから便利というわけでもありません。自分に必要な機能を精査し、どの商品にするか検討したいところ。
コンパスやGPSなどは、結局別に専用のものを買うことがほとんどです。時計の機能は、あくまでも簡易的なものであることを理解しておきましょう。
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自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に。登山やクライミングが趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて連載中。悩みは増え続けるアウトドア用品などの遊び道具の収納場所で、愛車のJeepラングラーもすっかり倉庫代わりに。昨今は車中泊にもハマり、住居をキャンピングカーに変えるか真剣に悩み中。