おすすめ小説をジャンル別に紹介!
司書教諭・yokoさんと編集部が、おすすめの小説をジャンル別にご紹介します。
おすすめ13選|新刊 話題の人気作を厳選
まずは、2022年に発売したおすすめの新刊を厳選しました。いずれも話題作ばかりです。
『夢をかなえるゾウ0(ゼロ)』は、読みやすく、分かりやすい指南本です。関西弁を話すガネーシャと平凡なサラリーマンとの、テンポのいい会話がすっと頭に入ってきます。人生に悩んでいる人におすすめ!

「夢ってなんだろう」と思ったら開く本
人間の体にゾウの鼻、4本の腕をもつ「神様」ガネーシャが、平凡なサラリーマンに指南を与える人気シリーズ。本作では、「夢とはなにか」「夢のかなえ方」について指南しています。
シリーズ累計450万冊を突破している人気シリーズです。関西弁を喋ったり、禁煙に何度も失敗したヘビースモーカーであるガネーシャに親近感を覚えながら読者自身も成長していける楽しい本になっています。
第167回直木三十五賞受賞作
人間関係にキズついた主人公が登場する5編の短編小説集です。主人公たちは、家族の死であったり親の再婚であったりこれまで構築してきた「家族」が変わってしまったことに戸惑い喪失感を感じています。それでも小さな救いを見つけて前へ歩こうとしている姿が描かれた作品。
2022年、第167回直木賞を受賞した作品です。
善人が殺されたとき家族の真実も明らかに
善人といわれていた喫茶店店主が殺害されていたことから物語は動き出します。一方、別の場所で今まさに息を引き取ろうとしている男性の遺言書には意外な人物の名が連なっていました。事件の真相とともに、家族の絆が明らかになっていきます。
いまや東野作品に欠かせないといっても過言ではない、加賀恭一郎シリーズの新作が文庫になりました。今回は加賀の従兄弟でもある松宮刑事が活躍します。
珠玉の恋愛小説
瀬戸内の島で育った男女の高校生。共通するのはどちらもいわゆる「身勝手な親」を持つという点。互いに惹かれあい、かけがえのない存在になるものの、すれ違い、そして成長していく様を描いています。
物語は交互の視点で進んでいく、珠玉の恋愛小説です。
この世界は「harsh society」なのか?
人をひとり殺したら必ず死刑になる社会。「harsh society(ハーシュソサエティ)」で起こる事件が短編4作、中編1作まとめられています。意図的な殺人はもとより、殺す意思がない殺人でも死刑が確定してしまう社会のなかで、罪と罰、贖罪、赦罪、殺人という罪に対しさまざまな立場から切り込んでいます。
同時に、SNSを中心としたネットでの問題にも深く考えさせられる一冊です。
5カ国で40万部以上読まれている話題作
中学生のユミは、バイク事故で亡くなった親友の母から1冊の日記を渡される。彼の日記には「ある日、僕が死にました」の一文が。親友の死は自殺だったのか、と悲しみにくれながらも、彼の母親の頼みもあり、日記を読み進めるユミ。少年を襲った突然の死、受け止めきれない周囲の嘆き、それでも訪れる日常。誰にでも起こりうるできごとを流れるような文章でつづっています。
韓国で出版され、その後4カ国の言葉に翻訳された話題作です。
誰も知らない「忘れられない初恋」
「本気で私をすきにならないこと」を条件に綿矢先輩とつき合うことができた僕。「恋人ごっこ」を続けるうちに彼女が「忘れられない恋」を抱えていることに気づく。
映画化された「今夜、世界からこの恋が消えても」の続編にあたる本作は、前作でもキーパーソンとなった綿矢 泉がヒロインとなり、話が進みます。前作ヒロイン・日野真織も登場。前作から成長したふたりの姿が描かれています。
あまり知られていない武将にスポットを当てた作品
桶狭間の戦いで、急死した父・今川義元のあとを継いだ彦五郎氏真。没落していく暮らしのなかにも光明を見出しながら日々を送っていた彦五郎に追い打ちをかけるような事態が起こる。蹴鞠と歌を横なく愛した彦五郎の最後の「意地」とは。
これまであまり知られていなかった歴史上の人物にスポットをあてた8編を収録したこちらの作品。直木賞作家・今村翔吾の作品をはじめて読む人におすすめです。
「有川 ひろ」改名後のお仕事小説
良助は、映像関連の専門学校を卒業しましたが、内定先であった会社が倒産。バイト生活をやむなくされますが制作会社でのバイトが決まり、張り切って仕事に臨みますが、慣れない業界用語やしきたりに悪戦苦闘する毎日。
「有川 浩」としてこれまでお役所や自衛隊、図書館など「お仕事小説」を書いてきた筆者が、自身の作品「植物図鑑」が映画化されたことにもインスパイアされて誕生した小説です。
華やかにみえる夜の街にもある「死」
シングルマザーとして自分を育ててくれた母が重い病に侵されていることをしり、ホステスの私は母を引き取ります。死期がせまる母と暮らすうちに、自らの命を絶った女友達のことが脳裏によみがえってくるのでした。
「夜の街」に暮らす女性を、『「AV女優」の社会学』『身体を売ったらサヨウナラ』の作者・鈴木涼美がリアルに描写した作品です。第167回芥川賞の候補作にも選出されました。
「令和いちの驚き、感動」といわれた作品
新人脚本家の甲斐千尋は、映画監督からある事件をテーマに映画を撮りたいと相談されます。その事件は、千尋が生まれ育った街で起こった事件でした。新進気鋭の監督は、この事件のなにを映像にしたいのか、千尋はどう向き合うのかを探りながら読み進めていくと驚きの真相が明らかになります。
湊かなえ作家生活10周年を記念する書下ろし作で、「令和いちの驚き、感動」といわれた作品です。ドラマ化もされました。
呉服商いへの大航海がいよいよはじまる
9歳で大阪の呉服商に女衆として奉公にでた幸が、商売の才能を見出され成長していくシリーズの最終巻になります。手ごろな商品販売で人気を博していた五鈴屋が高級な商品を取り扱うようになったことで生じる葛藤や問題。それらを乗り越えていく幸や五鈴屋の姿が描かれています。
「みをつくし料理帖」でも知られる高田 郁の人気シリーズ完結作です。
騙されて怒る人にはおすすめできない小説
孤島で「ゆーちゅーばー」となった僕たち。しかし、ある事件を境に、島の人たちがよそよそしくなっていくのを感じます。(「#拡散希望」)ほか5編を収録した推理小説集です。どの作品も最後のどんでん返しに「やられたー!」と叫びたくなるかもしれません。
「#拡散希望」は、第74回日本推理作家協会賞を受賞しています。
おすすめ14選|ミステリー小説 最後まで油断は禁物!
意外なところに隠されている伏線を探しながら謎を解き明かしましょう。おすすめのミステリーをご紹介します。
イヤミスの女王、湊かなえのデビュー作であり、代表作である『告白』。読み終えたあとは、さまざまな思いが胸に残りますよ。語り手が次々と変わっていき、事件の全貌に迫る手法にも注目。

愛娘を生徒に殺された教師の復讐劇
森口悠子は、自分が担任するクラスのホームルームで、教職をやめることを伝えます。さらに「自分の娘が殺害され、その犯人がこのクラスにいる」と驚きの告発まで行ないました。
湊かなえのデビュー作に当たる本作品で、2009年本屋大賞を受賞するなど高い評価を得ている作品です。また映画にもなっており日本アカデミー賞で4冠をはたすなどこちらも高く評価されています。
ガリレオシリーズ6年ぶりに再始動
行方不明になっていた女子学生が数年後に遺体で発見。容疑者として逮捕されたのは、以前も少女殺害事件で無罪となった男性ですが、証拠不十分で釈放になります。その男性が女性が住んでいた町に現れたことで、町全体が憎悪と義憤に包まれ……。
天才的頭脳を持つ変人物理学者が、一見すると超常現象に見えてしまう事件を科学の力で解決していく、ガリレオシリーズの6年ぶり、9作目となる本作をぜひお楽しみください。

裏社会とアステカを題材にしたクライムノベル
テスカトリポカは「QJKJQ」、「Ank : a mirroring ape」に続く、鏡シリーズの最終作になります。メキシコで麻薬密売反時期を牛耳っていた男、麻薬で身を滅ぼした臓器ブローカーの日本人医師、川崎で育ったハーフの少年。一見、接点のない登場人物たちが出会い、前代未聞の犯罪ビジネスを立ち上げる本作。
裏社会とアステカを題材にしたクライムノベルは必読です。
4大ミステリを完全制覇した戦国×ミステリー
「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい」「2022本格ミステリ・ベスト10」を史上初めて完全制覇。また、直木賞・山田風太郎賞も受賞しています。
時は本能寺の変から4年前の天正6年の冬。織田信長に反旗を翻した荒木村重が城内に立て籠ると次々と難事件が発生します。捕えていた黒田官兵衛が事件を解決するヒントをくれるという、戦国×ミステリーの本作。歴史好き、ミステリー好きどちらも楽しめる作品です。
デビュー作にしてミステリー界に影響を与えた作品
角島にある十角館を7人の大学生が訪れます。7人は大学のミステリ研究会のメンバーでこれから1週間、交流をかねた合宿を行なう目的十角館を訪れていました。十角館は、半年前に持ち主である中村青司が妻とともに焼死した場所です。いわくつきの場所で寝泊まりする彼らのなかから最初の被害者が出てしまうのでした。
綾辻行人のデビュー作であり、「館シリーズ」の第1作目の作品です。本作品は、ミステリー界に大きな影響を与えた作品のひとつだといわれています。1987年に発表されましたが、いまなお人気のある作品です。
湯川博士が真相を探る直木賞受賞作
花岡靖子は、どこに引っ越しても疫病神のようにあらわれる元夫・富樫に手を焼いていました。ある日口論のすえ、娘・美里と富樫を殺してしまいます。途方に暮れている花岡親子に、隣に住む石神が救いの手を差し伸べてくるのでした。
こちらは、東野圭吾作品の人気シリーズ・ガリレオシリーズの作品です。湯川博士が真相を探ります。
第6回本格ミステリ大賞、第134回直木賞を受賞した人気作品です。過去5回直木賞にノミネートされながらも落選が続いていましたが、本作で直木賞を受賞することができました。
麒麟の翼に込められた思いとは
東京の日本橋で、警官が腹部にナイフが刺さった男性をみつけます。瀕死の状態で、移動してきたことに疑問を覚えた加賀恭一郎は捜査に乗り出し被害者が「七福神巡り」を行なっていたことを突き止めました。家族に聞いても心当たりがないとの回答。しかしある人物が反応を見せるのでした。
東野圭吾の人気シリーズ加賀恭一郎シリーズの作品です。タイトルにある「麒麟」とは東京・日本橋にある彫刻の像を指します。「ここから羽ばたく」という意味を込めて設置されている麒麟が物語に大きな影響を与えています。
密室殺人のバイブルともいえる名作
孤島に10人の男女が集められます。職業や年齢はばらばらでこれまで接点もなかったメンバーですが、招待状によって集められたことがわかります。招待主が不在のままディナーがはじまりますが、その最中に集められた招待客それぞれの過去の罪を告発する気味の悪い声が聞こえます。その直後、招待客のひとりが毒により殺されました。
1939年に発表されたアガサ・クリスティーの代表作です。連絡手段がない孤島という密室(クローズドサークル)で行なわれた殺人であることと、童謡になぞらえて殺人が続けられる(見立て殺人)ことから、いまなお人気の高い作品のひとつとなっています。
毒舌執事の安楽探偵ぶりが楽しめる
宝生麗子は、国立署の新米刑事です。地味なスーツに身を包み、風祭警部のもとで捜査にいそしんでいます。しかし、家に帰ると宝生家のお嬢様としてドレスに着替え豪華なディナーを楽しみます。事件が難航した場合には執事である影山に相談を持ち掛けますが「お嬢様の目は節穴でございますか」といつもの毒舌が返ってきます。
東川篤哉の人気シリーズの第1作目です。影山が話を聞くだけで問題点を鋭く見抜く安楽椅子探偵ぶりも読者を楽しませますが、お嬢様である麗子とのやり取りも軽快でとても楽しい作品です。
豪雪に閉じ込められた密室での殺人
豪雪のなかを走っていたオリエント急行は、深夜突然停車します。夜が明けてみると、乗客のひとりが遺体となって発見されました。たまたま乗り合わせていた名探偵ポアロが捜査に乗り出します。
アガサ・クリスティー作品のなかでもとくに人気の高い作品です。1934年に発表されましたが、その後いくつもの言語に翻訳され、世界で愛されるミステリーの名作です。ドラマや映画などにもなっており、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
研究者は密室でどのように殺された?
愛知県にある孤島・妃真加島で、手足を切断された女性の遺体が見つかりました。その遺体は、妃真加島にある研究所があり、そこでもっとも権限をもつ真賀田四季博士でした。たまたま同島を訪れていた犀川創平と西之園萌絵も捜査に加わります。
S&Mシリーズの第1作目の作品です。1994年の作品で、当時インターネットなどの知識は一般的でありませんでしたが、工学博士でもある森 博嗣により読者にも理解しやすくストーリーが展開しています。
ホームズ初心者にも読みやすい短編集
ワトソンがホームズの家に立ち寄った際、「今から依頼人がくる」といわれホームズとともに依頼人と会います。ホームズは依頼人の正体を「ボヘミアの王」と見抜き、そのうえで相談内容を尋ねました。結婚を間近に控えているボヘミアの王に、過去につき合っていた女性から脅迫状が届き、証拠となる写真を婚約者に送るというものでした。(ボヘミア王のスキャンダル)
頭脳明晰なホームズが唯一「あの女性」と敬意を払うアイリーン・アドラーが登場する「ボヘミア王のスキャンダル」を含む12編の短編が収録されています。短編集なのでホームズものをはじめて読む人にも読みやすいでしょう。
何度もメディア化された不動の人気作品
戦争から復員してきた辰弥は、ある日ラジオで自分を探しているという放送を聴きました。天涯孤独の身になった自分を探している人がいることに不信感を覚えながら指定された法律事務所を訪れます。数日後「八つ墓村へ帰ってきてはならぬ。」という手紙が届くのでした。
金田一耕助シリーズの代表作ともいえる「八つ墓村」。1971年に発表された作品ですが、過去10回以上ドラマや映画などの映像化が行われており、同じく金田一耕助シリーズの「犬神家の一族」と人気を二分しています。
人気シリーズのなかでもとくに高い評価を受ける作品
寝台列車「はやぶさ」の取材を行なっていた青木は、1号車のなかで、茶色のコートを着た女性の写真を撮ります。しかし、女性が写ったフィルムを誰かに盗まれてしまいました。翌朝になって、その女性が多摩川で死亡しているのが見つかります。
西村京太郎の人気シリーズ・十津川シリーズのなかでもとくに人気のある作品です。十津川シリーズは、テレビドラマなどで放送されることも多いので、見たことがある人もいるのではないでしょうか。
おすすめ13選|恋愛小説 主人公と一緒にドキドキキュンキュン
恋愛はドキドキしたりキュンキュンしたりと、いつもココロに刺激を与えてくれます。リアルな世界で恋愛とは遠ざかっていても小説のなかならいつでも甘酸っぱい気持ちを追体験できますよ。おすすめの作品を紹介します。
『冷静と情熱のあいだ Rosso』は、イタリアを舞台にしたすてきなラブストーリー。恋愛小説の女王、江國香織が描き出す美しい情景に心奪われます。辻 仁成の「Blu」とセットで読むのがおすすめです。

10年前の約束を覚えていますか
「30歳の誕生日にミラノのドゥオモであいたい」と、学生時代の恋人・順正と交わした約束をいまも胸に刻んでいるあおい。約束の日がちかづくにつれ、現在の恋人・マーヴとの関係もぎくしゃくするようになっていました。
『月刊カドカワ』『feature』で、江國香織と辻 仁成が、それぞれあおいと順正の視点でストーリーを進めていた作品です。江國香織のターンが「Rosso」、辻 仁成のターンが「Blu」というサブタイトルでそれぞれ刊行されています。イタリアを舞台に映画化もされました。
二人の物語が15年の時を経て、再び動き出す
公園で出会った家に帰りたくない少女と孤独な青年。奇妙な共同生活が始まりますが、世間では少女が行方不明となり、事件に巻き込まれたとニュース番組で報道されていました。
ある日訪れた湖で青年は逮捕されてしまい、少女と離れ離れに。15年が経ち、大人になった少女はたまたま訪れたカフェで青年と再会し……。
愛ではないがそばにいたい二人、周辺の人間関係を実力派作家が余すところなく描いた作品です。
読み返し必至の変わった恋愛小説
合コンにピンチヒッターとして出席した僕はマユと出会い、恋に落ちます。甘美でほろ苦い恋愛小説……と思いきや「最後から2行目(絶対に先に読まないで! )」を読むと、ここまでの印象ががらりと変わり、もう一度はじめから読み直したくなります。
映画にもなった話題作です。恋愛小説とミステリーを同時に楽しみたい人におすすめの1冊です。
障がい者の話ではなく、恋愛小説
1冊の本をきっかけにして、メール交換がはじまったふたり。「会いたい」と願う彼に対し、彼女には会えない理由があるのでした。ネットでの出会いが、難聴の彼女をどんどん変えていきます。
有川 浩の人気シリーズ「図書館戦争」の劇中作として登場した「レインツリーの国」が現実の作品として出版されました。この小説をめぐる図書館戦争・小牧や鞠江の気持ちにひたるもよし、純粋な恋愛小説としてひたるもよし、の作品です。
流行語にもなった人気作品
オーストラリアに向かう飛行機の中で、朔太郎が考えていたのは、亡くなった最愛の恋人・アキのことでした。誰からも愛されるほど明るく性格がよかったアキ。しかし高校2年生のときに白血病に冒されます。アキの夢をかなえるべく朔太郎がとった無茶な行動によりアキは空港で倒れてしまい……。
映画やドラマ化もされ、「セカチュー」が流行語大賞にも選ばれた人気作です。
25年経っても思い出は色あせることがない
光子との結婚を控えている豊は、不思議な魅力を持つ杳子と出会い恋に落ちます。激しく求めあい愛しあったふたりですが、別れを決断することに。やがて25年の月日を経てふたりは再会をはたします。
映画にもなった作品です。日本とバンコクが舞台になっており、美しい街の描写を背景に、お互いを思いあいながらすれ違う豊と杳子の姿が描かれています。
未来に悩む僕に過去の彼女からのメッセージ
母校に勤務しながらも、教職に向いていないと感じていた「僕」は老朽化で取り壊しが決まった図書室の図書整理を任されていました。整理する本のなかに「共病文庫」とかかれた本を見つけます。高校時代の同級生・山内桜良が書いたものでした。彼女との思い出がよみがえります。
アニメ映画や実写映画にもなった作品です。ドキッとするようなタイトルですが、主人公の高校時代をしることで、タイトルの意味を理解できるでしょう。
守りたいのは、愛する本と王子様?
高校3年のとき、メディア良化委員会に反抗した笠原 郁を救ってくれたのは、図書特殊部隊の「王子様」でした。厳しい母の目をごまかし、なんとか図書特殊部隊に配属された郁の前に現れたのは鬼教官の堂上でした。
有川 浩の「お仕事小説」の原点ともいえる作品です。実写映画やアニメ映画にもなっています。愛するものや人を守るために武器を手にする郁の姿にハラハラしながらも目が離せません。
雨の季節が待ち遠しくなりそう
小学生の息子と暮らす巧は、1年前に妻を病気で亡くしています。一生懸命頑張っているものの妻がいたころのような生活が送れずへこんでいる巧でしたが、「雨の季節に戻ってくる」という妻の言葉が忘れられずにいました。ある雨の日息子とふたりで森の廃工場に向かった巧のまえにあらわれたのは、なくなったはずの妻でした。
映画やドラマにもなった話題作です。ファンタジーの要素も織り交ぜながら家族3人の幸せな暮らしが描かれています。
映画の感動をそのまま追体験できる作品
東京で暮らす「瀧」と、飛騨で暮らす「三葉」は、あるとき奇妙な夢を見ました。しかし、その「夢」が何度か繰り返されるうちに、ふたりは夢ではなく、実際に体が入れ替わっていることに気づきます。あるときを境に入れ替わりがなくなったのを不審に思った瀧が記憶を頼りに調べると、三葉の住む村が隕石により壊滅していたことを知るのでした。
小説 君の名は。は、映画「君の名は。」の原作小説ともいわれていますが、実際は映画の脚本が完成したのちに書かれた作品です。通常の映画のノベライズとは異なり、映画とほぼ同じ内容なので、映画の感動もそのままに読むことができます。
動乱の時代を背景にさまざまな愛の姿を描いた作品
37歳のワタナベは、飛行機のなかでビートルズの「ノルウェイの森」を聴き、大学生時代が脳裏によみがえります。出会ったときの直子は、友人の恋人でした。やがてその友人は自殺しますが、直子との距離も離れてしまいます。1年後偶然再会したワタナベと直子は距離を近づけ結ばれましたが、直子の入院により再び別れます。
「世界の中心で、愛を叫ぶ」が登場するまで日本の小説(単行本)において発行部数が首位であったほどのベストセラーです。60年代の日本の様子もしっかりと描かれています。
家事もできる「躾けられたいい子」の正体とは?
深夜、飲み会から帰ってきたさやかが発見したのは自転車置き場に行き倒れている男性の姿だった。「よかったら俺を拾ってくれませんか」の言葉がツボにはまったさやかは男性・樹を部屋に入れカップラーメンをごちそうする。翌朝目覚めたさやかがまず感じたのは、おいしそうな食事の香りだった。
2009年にKADOKAWAから単行本、2013年に幻冬舎から文庫が出版され、累計80万部以上の人気作品です。漫画化・映画化もされ、読者と書店員が選ぶ「みんなの幻冬舎文庫(書店編)」など、いくつかの賞を受賞しています。
恋愛にがんじがらめになる女性を描いた作品
小さな編集プロダクションに努める井口。彼には職場に気になる女性がいます。それは、パートで勤務している水無月でした。社長と水無月の関係にも微妙なものを感じていましたが、ある夜、会社の飲み会で水無月の秘密を聞くことになったのでした。
水無月の恋愛中毒ぶりが、井口をとおして明らかにされます。恋愛に依存する傾向は多くの人のなかにあるでしょう。水無月の中毒ぶりにどこかで共感してしまうかもしれません。
こちらの作品は第20回吉川英治文学新人賞を受賞しています。
おすすめ12選|SF・ファンタジー小説 夢が広がる
ここからは、SFやファンタジーを扱った小説をご紹介します。
『日本沈没』は、日本のSF御三家のひとりと言われる、小松左京の作品です。日本が沈没するという壮大なストーリーにハラハラドキドキします。小説を読んだあとに、ドラマや映画を観るのもおすすめですよ。

50年経っても色あせない、日本のSF小説の頂点
物理学者・田所博士と、潜水士・小野寺は、海底を調査するなかで、海中の異変に気がつきます。日本国内ではこれまで休火山といわれていた山が次々に噴火しはじめていました。国民を避難させる計画が国家をあげて進められるなか、日本列島がすべて沈没する可能性にたどり着きます。
1973年に発表された「日本沈没」ですが、映画やドラマ、漫画、アニメとさまざまなメディアで制作されています。日本各地で被害が巻き起こるため、よく知った地名も出てきて、よりリアリティを感じながら登場人物に感情移入できるかもしれません。
最後の一文に込められた思いに涙
知的障害をもつチャーリーは誰からも愛される存在でした。ある日大学教授から脳の手術をすすめられます。同じ手術をうけたネズミ・アルジャーノンに迷路で敗れたチャーリーは、手術を受けることを決意します。
1959年に中編小説として発表、その後1966年に長編小説に改変された小説です。これまでのSFが宇宙や未来をテーマにしていたなか、人間の知能(能力)を人工的に高めるといったテーマを扱ったことで驚きをもって受け止められました。のちに映画化され、一大ブームを巻き起こしました。
近未来起こるかもしれない統治下の恐怖政治を描く
第三次世界大戦が終わり、地球上がオセアニア、ユーラシア、イースタシアの3大国に分断され統治されています。真理省の役人であるウィンストン・スミスは、歴史の改ざんが任務。しかし、社会の体制にひそかに不満を持ち続けていました。あるとき、ジュリアンという女生徒であったことから運命が動き出します。
世界大戦後に全体統治を行なうことになった世界の恐怖を描き出している小説です。私たちのすむ社会が検閲・監視・拷問が当たり前のように行われる反自由主義の社会にならないためになにができるかを考えさせれる一冊です。
ロボットとのつき合い方や距離感を再確認したくなる
「ロボットは人に危害を与えてはならない」などロボット工学三原則に背く動きを見せるロボットたちの調査記録を回顧する形で進められるロボット短編集です。ロボットを親友とする少女の話など9編が収録されています。どのロボットも愛らしく個性豊かなキャラクターです。
1950年に刊行され、ロボットSFの古典的作品として読み継がれています。AIなどが生活に浸透した現代のほうが書かれた時代よりもこの小説の価値を深く感じられるのかもしれません。
ふたりの少年のそれぞれの冒険物語
いじめられっ子のバスチアンは、いじめっ子から逃げるため飛び込んだ古書店で一冊の本とであいます。「はてしない物語」と書かれた本に興味を持ったバスチアンは店主の目を盗んで、その本を持ち出し、物置きにこもります。本のなかでは、バスチアンと同じ年ごろの少年アトレーユが冒険の旅に出ていました。
現実世界と本のなかの世界がリンクしながらすすめられる不思議なストーリーです。幸いの竜やケンタウロス、地霊小人などファンタジーの世界のキャラクターが多数登場し、どれも生き生きとした動きを見せています。
AIが進化した現代にこそ読みたい小説
最終大戦後の荒廃した世界で、人々は動物を飼うことで癒やされていました。しかし実際に生きた動物を所有できるのは、富裕層だけ。賞金稼ぎで生活しているリックは電気羊しか飼えないことが不満でした。そんなとき、人類を脅かすおそれのあるアンドロイドの処分の話を耳にします。ほんものの動物を飼うため、リックは乗り出すのでした。
1968年にアメリカで発表されたSF小説です。小説のなかで人間とそん色のないアンドロイドが登場することから「人間とは?」「アンドロイドとの違いは?」と問いかけるようなタイトルになっています。
かりそめの平穏はもろく崩れやすい
いまから1,000年後の地球、のどかな集落で生活していた早紀たち4人は、図書館の自走型端末と出会いました。そこで、人間が特殊能力を身に着けたことで、過去の文明が崩壊したことを知ります。あわせて封印されていた暗黒の歴史が一気に開示され、早紀の住む集落でも平穏な日々が失われ、危機が迫ってくるのでした。
第29回日本SF大賞受賞作品です。単行本でも上下の2冊構成となり、合計で1,000ページ以上ある大作となっています。ハラハラドキドキしながら読むにはがっつりと読み応えのある作品といえるでしょう。
幻想的でロマンチックで少しひんやりとする作品集
こびとは、自分の背が低いことにコンプレックスを感じています。そのためカーニバルにある歪んだ鏡に自分を映し、姿の大きな自分を見ることを日課としていました。(「こびと」)
SFの抒情詩人ともいわれるレイ・ブラッドベリが1965年に発表した短編集です。SFファンタジーというよりは、どこか怪奇で幻想的でホラー要素も盛り込まれている作品になっています。レイ・ブラッドベリは1956年にジョン・ヒューストン監督の『白鯨』の脚本を手掛けたことでも知られています。『10月はたそがれの国』でレイ・ブラッドベリに興味を持った人は視聴してみてください。
月で発見された遺骸から発覚する驚きの事実
月面で、深紅の宇宙服を着た遺骸が見つかります。遺骸はチャーリーと名づけられ、トライマグニスコープというあたらしい調査機器での調査がはじまります。トライマグニスコープを開発したハント博士も調査に参加することになりますが、調査は矛盾だらけ。なんとチャーリーは5万年以上前の遺骸でした。
1977年に発表されたSF小説です。月の起源など当時の科学の謎をSFの視点で解説しているのもおもしろいところでしょう。日本でもいまだに根強い人気のある作品のひとつ。
たいせつなものはなにかをもう一度考えたくなる作品
飛行士である「僕」は機体の不調から、サハラ砂漠に不時着します。そこで出会ったのは、どこかの星からやってきた王子さまでした。これまで誰にも理解されることがなかった僕を、王子さまはあっさりと理解し、ふたりに友情が芽生えます。僕と一緒に生活をしていくなかで王子さまは、故郷の星に残してきたバラを思いだします。
星の王子さま、と聞いて愛らしい少年のイラストを思い浮かべる人も多いでしょう。あのイラストも実はサン・テグジュペリ自身が描いたものです。さまざまな翻訳で出版されているので子どもの本と決めつけず、もう一度星の王子さまの世界にトリップしてみませんか。
将来現実化しそうな危機感がある作品
25世紀、その大半が水没した地球では、地上民と、海上民にわかれて生活を送っています。外交官である青澄誠司は、民族間に起こるいさかいや問題を解決することが任務です。AIをアシスタントとしながら、任務を遂行していますが、あるときさらなる悲劇が人類に襲い掛かろうとしていることを知ります。
民族間のいさかいや政治的かけひきなど現在も地球上にあるトラブルに、バイオテクノロジーやAIなどを交え、緊張感たっぷりにストーリーが展開していきます。
200年前に書かれたとは思えない斬新な作品
鉱物学教授オットー・リーデンブロックは古書店で購入した本にルーン文字で書かれた暗号のメモが挟まれていることに気づく。甥とともに暗号を解読したオットーは、アイスランドの火山に向かい、その火口から地底へもぐる旅に出るのだった。
こちらの作品は1864年に発表された古典的SF小説に位置づけられる作品です。アメリカを中心に何度も映画が作成されました。日本でも1885年以降、何度も出版されている人気の高い小説です。
おすすめ11選| ホラー小説 ひとりで読むのは危険?
思わずゾクリとするホラー小説をご紹介します。
ホラー小説の代名詞的存在となった『リング』は、映画化もされている作品。小説版の『リング』は、映像作品とはまた違った面白さがありますよ。伏線や内容も申し分なく、スリリングな展開から目が離せません。

人気ホラーシリーズ「リング」の1作目
雑誌記者の浅川和行は、自分の姪を含む高校生4人が怪死した事件を追うことになります。姪たちが死亡前に伊豆の貸別荘を訪れたことを知り、その別荘で不思議なビデオテープを発見しました。ビデオテープには分断された画像と「これを見たお前は7日目のこの時間に死ぬ」のメッセージが。浅川は高校時代の友人・高山竜司に相談します。
「リング」シリーズの第一作目の作品です。このあとに「らせん」や「ループ」などの作品が続き、人気はどんどん高まっています。映画・ドラマ・アニメ・ゲームなどの題材にも多く登用され、いまやホラー小説の代名詞ともいえる作品です。
日本ホラー大賞受賞作
大学生のいずみは、高校の同級生・裕司に誘われ夜市に出かける。公園の奥の森で開かれていた夜市で売られていたものは黄泉の河原の石など奇妙なモノばかり。恐怖を感じたいずみが帰ろうとしたが、「なんらかの取引をしないと帰せない」といわれ……。
中編小説「夜市」と「風の古道」が収録されています。「夜市」は第12回日本ホラー小説大賞を受賞し、直木賞候補作にも選出されました。
フィクションとリアルが混合した不思議な小説
かつて、ライトノベルやホラー小説を書いていたことがある小説家の「私」。かつての読者から実体験の「怖い話」を知らされます。その話を調べているうちに、同じマンションで同様の話を相談されていることに気づき、いよいよ本格的に調査することになりました。
京都に住む「私」は、著者と同じ経歴を持っており、また登場人物に実在のホラー作家を登場させるなどモキュメンタリ―(フィクションをドキュメンタリーのように見せる)の要素を取り入れた作品です。
天使の正体とは……
アマゾンの探索に出かけていた恋人・高梨が帰国後、精神に変調をきたし「天使のさえずりが聞こえる」と言い残し自殺します。その後国内のあちこちで似たような事件が続出。恋人の死と関連があるのではないかと考えた北島早苗は調査を開始します。
目には見えないほどのちいさな存在でありながら、人類を破綻に導く、寄生虫。その種の存続のパワーには驚かされるとともに恐怖を感じる一冊です。
方言が閉鎖的なエリアであることを強調
遊郭で働く女郎が、自分の不幸な身の上話を岡山弁交じりに話します。母は間引き専門の産婆であったこと。自分は双子で、ふたりとも間引かれたこと。姉は亡くなったが、自分は2日間川のなかで生き延びたこと。恐怖に震えだす客に、女郎はさらに「きょうてぇ」話を聞かせます。
表題作「ぼっけぇ、きょうてぇ」をはじめとする4本の短編が収録された一冊です。全編にわたり岡山弁で語られていますが、それほど苦労せずに読めるでしょう。
数億年の歳月を経て人類に襲い掛かる遺伝子との闘い
生化学者の永島は、最愛の妻の死を受け入れられず、妻がドナー提供を約束していた肝臓の細胞に利己的遺伝子Eve1を植えつけ、培養していました。Eve1は驚くべきスピードで増殖しやがては、自らの意思で培養箱を抜け出し、完全生命体を作りあげます。
何億年もほかの生物に寄生(パラサイト)してきたミトコンドリア遺伝子が、人類に向かって反逆を開始するSFホラー小説です。瀬名秀明 のデビュー作で、第2回日本ホラー小説大賞受賞作でもあります。
子どもはかわいいだけの存在ではないと思い知る作品
9歳のわたし(五月)は、弥生によって殺されてしまいます。理由は、弥生の兄である健が好きだと弥生に告げたことで弥生が嫉妬したためでした。健と弥生は、わたしの死体が見つからないように隠し場所を転々と変えます。
語り手が殺された五月である手法も驚きですが、大人の裏をかきながら死体隠しに奔走する兄妹にも恐怖を感じます。
第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞に選ばれた作品です。
信じるものと奪うもの、その決断が生死を分ける
藤木芳彦が目覚めてすぐに目にしたのは、深紅にそまった奇岩が一面に広がる光景でした。そのときそばにあった携帯ゲーム機が通知を知らせます。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された……」
9名のプレイヤーとともにゼロサムゲームを開始する藤木。ほかのプレイヤーとの協力も敵対も自由であるなか極限状態に置かれた緊張感からお互いが疑心暗鬼になっていく過程を詳細に描いたスリリングな作品です。
累計50万部を突破した人気作品となっています。
教室という閉鎖された場所に潜む死者
父の仕事の関係と自身の病気療養のため、母方の実家に身を寄せることになった榊原恒一は、クラスのどこか異様な雰囲気に気づきます。クラスメイトから「いないもの」として扱われている見崎鳴扱われているに関心を持ち話しかけたことで、恒一自身も「いないもの」として扱われることに。ある日クラスメイトのひとりが謎の死を遂げたことで、クラスに隠された秘密が明らかになります。
本作を原作としたアニメや実写映画も作られるほどの人気があるシリーズ作品です。第10回本格ミステリ大賞で最終まで残りますが、わずか1票差で大賞受賞を逃したエピソードでも知られています。
閉塞的な村で次々に起こる殺人事件
いまだ古い慣習がまかりとおる閉鎖的な外場村。わずか1300人ほどの狭い集落で、腐乱死体が3体見つかりました。獣に食い散らかされたように散乱する肉片。この惨状は、未知の病気によるものか、殺人か。人目を避けるように引っ越してきた一家との関係はあるのでしょうか。
単行本で上下巻、文庫本で5巻とたいへんボリュームのある作品です。登場人物だけで150人以上いる読み応えたっぷりの作品になっています。
あの世とこの世の境目にある坂
駆け落ちした娘からの久しぶりの連絡に、心を躍らせながら坂道を歩んでいた私。途中で出会った青年と同行していると途中で気分が悪くなり、成年の差し出した水を口にします。この坂は死者とすれ違う坂といわれていることを知っていた私が、ふと感じた違和感とは……。
表題作「よもつひらさか」をはじめ12編のスリリングな短編が収録された一冊です。ホラーのひとことで片づけるにはもったいないような作品がそろっています。
おすすめ12選|歴史・時代小説 いにしえに思いを馳せる
最後は、日本のよさを再確認できる歴史・時代小説のおすすめ12作品をご紹介します。
平安時代、鬼、妖、陰陽師……。このようなワードにグッときた人は、『陰陽師』できまりです!有名な陰陽師、安倍晴明が活躍する物語ですよ。短編集で読みやすいので、歴史・時代小説初心者の人にもおすすめ。

陰陽師・安倍晴明が活躍する短編集
しばらく都を留守にしていた晴明のもとを博雅が訪ねてきました。お互いに会えない間に起こったことを話していると、博雅が帝の大切にしていた琵琶が盗まれたという話をはじめます。しかもおとといの夜に博雅は羅生門でその琵琶の音を聴いたということでした。さっそくふたりは羅生門に出かけます。(「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」)
陰陽師は、夢枕獏の陰陽師シリーズの第1作目です。「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」をはじめ5編の短編が収録されています。陰陽師シリーズには長編もありますが、短編集も多く、サクッと読める点が魅力です。
新選組副隊長の半生を力強く描写した作品
地元では「バラガキのトシ」とよばれていた土方歳三。ケンカと女遊びに明け暮れる毎日でした。のちに新選組隊長となる近藤勇ら試衛館の門人とともに「浪士組」に参加し京に上ることになります。
1964年に発表された新選組・土方歳三を主人公とした時代小説です。本作品とのちに司馬遼太郎が執筆した『新選組血風録』が現在の新選組のイメージの基礎となっているともいわれています。
現在の坂本龍馬のイメージのもとといわれる作品
竜馬は、幼いころに母をなくし、3つ上の乙女に世話をされて成長しました。幼いころは体も弱く、泣き虫で手がかかる子どもだった竜馬が変わったのは、街にある道場で剣術を習いはじめてから。いよいよ江戸に剣術の修行に向かうことになりました。
司馬遼太郎の長編小説で、幕末に活躍した坂本龍馬を題材に扱っています。現在の坂本龍馬のイメージはこの「竜馬がゆく」がもとになっているといわれるほど、人々に読まれている人気の作品です。
単行本で5巻、文庫本で8巻におよぶなどとても長い小説ですが、竜馬の魅力にページがすすむこと間違いなしです。
明治から日露戦争までの日本を知れる作品
日本のコサック部隊を世界最強のレベルまで育て上げた秋山好古。その弟で海軍に斬新な戦術を取り入れ勝利に導いた秋山真之。そして兄弟のおさななじみの正岡子規は、俳句や短歌に革命を起こし、日本語の散文にも影響を与えた3人を中心に、明治時代の日本を描きます。
司馬遼太郎は、この作品にフィクションを書くことを禁じたとのことで、事実と確認できないことがらについては執筆しませんでした。そのため明治から日露戦争までの日本を知ることができる作品です。
名もなき少女が織田軍相手に大奮闘
戦国時代、瀬戸内海を取り仕切っていた村上水軍には景という当主の娘がいました。あるとき、織田信長からの侵略に苦戦している本願寺から毛利家を通じ、物資の輸送を依頼されます。村上水軍は毛利方に加勢することを決め、景も先頭に立って戦いに身を投じます。
「のぼうの城」などで知られる和田 竜の長編小説です。おもしろいのは、当代きっての醜女といわれている景の容姿描写です。作中にある描写に驚き笑ってしまうかもしれません。また生き生きと描かれた戦のシーンも必見です。
日本オリジナルの暦を作った男の半生
会津藩主にして、著名な碁打ちである安井算哲は、数学や天文にも興味がある好奇心旺盛な人物です。ある日、神社に新しい和算の問題が奉納されたと聞き神社にむかい、そこでえんという名の女性と知り合います。えんを介して数学者・関 和孝とも知り合います。
中国から入ってきた暦と、日本の天体の差異に気づき、日本にあった暦を作り上げた渋川春海(安井算哲)の半生を描いた小説です。天体や暦に興味がある人はぜひ読んでみてください。
神道とユダヤ教の関係とは?
賢司(ケンシ)は40年以上あっていなかった父との再会の日に、父がホテルで亡くなっていることを知らされます。父は日本でも古い神社の宮司を務めていました。また、別の日に父と同じホテルの部屋で、ユダヤ人の宗教家が父と同じ殺害方法で死んでいたことも知ります。父の死に不信感を抱いた賢司は、調べをはじめます。
日本で古くから信仰されている神道や、日本のルーツを探る、日本版「ダヴィンチコード」ともいえる作品です。豊富な地図、家系図、が盛り込まれており、歴史ミステリーに興味がある人におすすめの一冊です。
時代小説はチャンバラだけではないことを再確認
江戸から金毘羅詣でと称し、讃岐・丸海藩まで連れてこられた「ほう」は、藩医である井上家に引き取られます。しかしその井上家では琴江が毒殺されてしまいました。一方丸海藩でも不可解な死が続出していきます。それはすべて流罪として江戸から来た元勘定奉行の船井加賀守守利のせいだとされていました。
作中に出てくる丸海藩は「丸亀藩」、船井加賀守守利は「元南町奉行・鳥居耀蔵(とりいようぞう)」がモデルといわれています。ほうと加賀さまの交流をふまえ、ふたりがどのような運命をたどるかを見届けてください。
考え方は違えども目指す場所は同じ
戦災によって両親を失った石工・匡介は「絶対に破られない石垣」を作れば戦はなくなると考えていました。同じころ、鉄砲職人の彦九郎は「どんな城でも落とす砲」があれば、恐怖で世のなかから戦さがなくなると考えていました。
第166回直木賞受賞作品です。考え方は違えども、ふたりの職人が世のなかから戦をなくし自分と同じような被害者が生まれないようにしたいと思う熱い気持ちに心が打たれます。
仲間や家族への愛情や友情が詰まった人間ドラマ
鳥羽・伏見の戦いの情勢が明らかになってきたころ、大阪の盛岡藩蔵屋敷にひとりの侍がキズだらけで助けを求めてきました。男の名は吉村貫一郎、盛岡藩に妻子を残したまま脱藩し、新選組に参加していた剣豪です。しかしかつて吉村の友人でもあった蔵屋敷差配役・大野次郎右衛門は吉村に切腹を命じるのでした。
2000年に柴田錬三郎賞を受賞した作品です。人間ドラマが展開される本作品は、浅田がいちど「去年の雪」として書き上げながら保留にしていた作品です。歴史好きの編集者と出会ったことからリメイクして出版されました。
密通事件に隠された真実とは
城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎は、切腹の刑の代わりに向山村に幽閉されている戸田秋谷の監視を命じられました。戸田は、城主の側室と密通を行なった罪で10年後の切腹と家譜の編纂を命じられている人物です。壇野は、戸田と生活をともにするうちに、戸田が起こしたとされる事件の無実を確信するようになっていきます。
本作品は2011年直木賞を受賞しています。2009年から連続でノミネートされていましたが2011年に受賞することが決まりました。
女料理人の作り出すおいしい料理の数々
神田明神下御台所町で、上方料理をだす「つる家」の女料理人・澪は、ちいさなときに両親を水害で亡くしていました。大阪の名店・天満一兆庵に奉公にでて料理の腕を鍛えられましたが、ふたたび不幸に見舞われ江戸にむかうことになります。江戸の料理は上方料理とは異なり悪戦苦闘の毎日が続きます。
高田 郁の人気シリーズの第1作目です。こちらのシリーズは、ドラマや映画にもなりました。作中に登場する料理はどれもおいしそうなものばかりです。江戸の味覚を知るグルメ本としても楽しむことができるシリーズです。
「小説」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 小説の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの小説の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
そのほかの小説はこちら
小説の楽しみ方は人それぞれ
今回は、司書教諭・yokoさんとともに選んだおすすめの小説を紹介してきました。タイトルが気になる作品や本の表紙に感じるものがある作品など、自分のインスピレーションを信じて、選ぶのも小説選びのひとつの方法です。
また、文章を読むのが苦手な人は、まずマルチメディア化された作品のドラマや映画、アニメなどを視聴し、あらためて原作となる小説に手を出してみるのもいいでしょう。
小説は、これまで知らなかった世界を見せてくれます。気になるものがあれば手に取ってみてくださいね。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
本や博物館が好きすぎて、司書教諭の免許と学芸員の資格を保有しているライター。小学校教諭と幼稚園教諭の資格も保有。 どのようなジャンルの本も幅広く読む。趣味は小説を書くことや美術館めぐり。ネイルやマッサージなど、リラックスできることが生きがい。基本的に文化系女子。世界をひとりで旅行して、暮らすように滞在するのが好き。プチミニマリストで、がんばらない家事を意識している。