漢方の便秘へのアプローチ
漢方の便秘へのアプローチは、腸の働き全体を整えて気持ちのいいお通じを目指すというもの。そこで便秘をひとくくりにせず、体質や症状に合わせて便秘薬を選びます。一方、便が出ないという事象に注目し、便が出るよう治療するのが西洋医学のアプローチ。
そのため、市販薬の多くは、大腸を刺激して排便をうながす「大腸刺激性下剤」です。なかには、下剤を乱用してお通じがかえって悪くなるケースも。さまざまな生薬を組み合わせた漢方薬は、一剤でさまざまな症状に作用します。このバリエーションの豊かさが漢方の魅力です。
便秘におすすめの漢方の選び方
医療ライターの西村テツジさんのアドバイスをもとに、便秘におすすめの漢方の選び方を紹介します。ポイントは下記の4つ。
【1】体質に合わせる
【2】漢方薬の処方の種類
【3】飲むタイミングや量
【4】価格
上記の4つのポイントをおさえると、より具体的に自分に合う便秘に効くの漢方を選ぶことができます。一つひとつ解説していきます。
体質に合わせて選ぶ

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漢方では、体質を診る漢方独自のチェック法があります。体力や病気に対する抵抗力を診る「証」と不調の原因を診る「気・血・水」です。
漢方では「証」を診て漢方薬を処方する場合があります。「証」とは、個々の体質などの個人差。その人の体質・体格・体力・症状などから判断します。
「証」には「虚・実」があり、体力が充実している人を「実証(じっしょう)」、体力がなく、弱々しい人を「虚証(きょしょう)」と呼びます。そのため便秘の漢方薬には、実証向けと虚証向けがあるので、体質に合わせて選ぶ必要があります。
漢方薬の処方の種類で選ぶ
便秘薬は2種類に大別できます。腸の運動を高めるタイプと便をやわらかくするタイプです。漢方の便秘薬は、腸の運動を高める「大黄(だいおう)」をメインに、サポートするほかの生薬が配合されています。では代表的な漢方処方をみていきましょう。
どんな体力の人にでも合う大黄甘草湯
大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)は、後漢時代の中国古典医学書にでてくるシンプルな処方で、今でも代表的な漢方の便秘薬です。名前のとおり、大黄と甘草からなります。
腸の運動を活発にしてお通じをよくする大黄に、ほかの薬の作用を補ったり、強すぎる場合は穏やかにしたりする作用がある甘草を合わせたもの。証にこだわらず使用できるのが特徴ですが、ひどく衰弱した著しい虚証の人は、使用の際に注意が必要です。
肥満症で脂肪を燃焼させたい人には防風通聖散
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、体力が充実した、肥満気味肥満気味で脂肪が多く便秘がちな人にぴったりな処方です。便秘はもちろん、むくみ、高血圧にともなう肩こりやのぼせにも作用します。
配合されている生薬の数は18種類。虚証タイプ、胃腸が弱っている人や汗かきの人には向きません。
月経トラブルや不安・イライラに桃核承気湯
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、血行をよくする桃核と呼ばれる桃の種子を配合した、女性の月経トラブルをやわらげる漢方の処方です。体力中等度以上で、のぼせて便秘がちの人に向けて処方されます。
大黄をはじめ、桂皮など計5種類の生薬を配合したもの。暑がりでのぼせ気味、イライラ・緊張・不安を感じやすく、生理不順や生理が重たくてつらい人にぴったりです。
飲むタイミングや量をチェックして選ぶ
市販されている漢方薬は、煎じる必要のない錠剤や顆粒など、手軽に飲める乾燥エキス剤が一般的です。自分が飲みやすいタイプを選ぶのはもちろん、飲む量やタイミングも購入前にチェックしましょう。
錠数が多いとおっくうに感じる、寝る前に飲むタイプだと忘れずに飲めるなど、人によって薬とのかかわり方はさまざま。用法・用量をよく読んで自分に合った漢方薬を選ぶことが大切です。
体質を変えることで便秘を克服! 便秘漢方 医療ライターがアドバイス
便秘用漢方薬は、各人の体質を整えることで、便秘の原因を克服します。そのため、自分に合った便秘用漢方薬を選ぶには、まずご自身の体質を知ることが大切です。
体力があり筋肉質で体格がよく暑がりな方は「実証」、体力がなく細身の体格で、胃腸が弱く寒がりな方は「虚証」という体質です。
便秘用漢方薬は、体質によって選ぶ薬が異なり、鍵と鍵穴の関係にたとえられるお薬です。
便秘におすすめの漢方11選 医療ライターの西村テツジさんと編集部が選んだ
ここからは、便秘におすすめの漢方11選を紹介します。自分の体質に合った、飲み続けやすい漢方薬を見つける参考にしてください。

体力の程度にあまり関わりなく飲めるお薬は、武田コンシューマーヘルスケア『タケダ漢方便秘薬』です。
たくさんの錠数を数えて服用するのが面倒な人に
夜寝る前に服用すると、8〜10時間後に気持ちのいい自然に近いお通じを期待できる漢方の便秘薬。代表的な大黄甘草湯をベースにしており、タケダこだわりの国産「信州大黄」を配合しています。
錠剤はふたつに割れるように割線が入っているため、症状やお通じの様子をみながら服用量を調節可能。はじめて漢方の便秘薬を試す人も、少しずつからはじめられます。
第2類医薬品です。

軽い便秘の方にも使いやすいのが皇漢堂『皇漢堂漢方便秘薬』です。
腸内細菌を減らす抗生物質や下剤とは併用しない
1日1回、就寝前に飲む漢方処方の便秘薬。代表的な「大黄甘草湯エキス」が主成分で、おだやかに作用します。そのため、はじめて便秘薬を試す人、軽い便秘に悩む人にぴったりです。
消化器機能が弱っている高齢の人にも適していますが、体の虚弱な人が使用する際は医師に相談しましょう。
第2類医薬品です。

体力がある方で、肥満にともなう便秘には、ロート製薬『新・ロート防風通聖散錠T』がよいでしょう。
生薬の力を引き出す、こだわりの調合と抽出方法
お腹まわりの脂肪を落として肥満を解消したい、そして便秘もすっきりさせたい、そんな願いに応えるのがこちら。体力が充実した皮下脂肪が気になる人に合う漢方です。
18種類もの生薬を組み合わせた防風通聖散は、脂肪を内側から分解・燃焼し、便秘にも作用します。そのためダイエットと気持ちのいいお通じを目指す人にぴったりです。
第2類医薬品です。
乾燥してコロコロした便の排泄をうながす
麻子仁丸(ましにんがん)は、水分を保持する「麻子仁(まにしん)」と「杏仁(きょうにん)」に大黄などを配合しています。こちらは腸をうるおすことで、乾燥してコロコロした便の排泄をうながす処方です。
体力が中程度かやや弱い人向けで、高齢で水分不足が気になる人にぴったり。ほかの便秘薬(下剤)と併用はできないので注意してください。
第2類医薬品です。
3歳以上から服用でき家族みんなで使える常備薬
症状に合わせて服用する量を調節できる、漢方の便秘薬を探しているなら、こちらがいいでしょう。6種類の生薬が便秘に作用します。
強い便秘薬だとお腹に刺激があることがあり不快に思う人は、ぜひお試しください。小さな丸剤は飲みやすく、3歳の子どもから高齢の人まで利用できる医薬品。常備薬としてして備えておくのもいいですね。
第2類医薬品です。
15歳以上のみが服用できるため用法・用量に注意
漢方の便秘薬としてよく処方される大黄と甘草。この組み合わせに、さらに古くから便秘の薬として知られているアロエ、センナを加えた成分からなる便秘薬です。 甘草がこれらの生薬の作用をうまく引き出します。
こちらは、15歳以上が服用できる便秘薬となっており、小さな子どもが誤って服用しないように注意しましょう。
指定第2類医薬品です。
1日1回の服用で気持ちのいいお通じ
服用する回数をできるだけ少なくしたい人にぴったりな便秘薬。1日1回就寝前に服用するだけで便秘に作用し、翌日には自然に近い、気持ちのいいお通じがやってきます。
漢方の大黄に、アロエや大腸のぜん運動をうながす「センノサイド・カルシウム」を配合したもの。用法用量の範囲内で服用量を調節できるのがポイントです。
指定第2類医薬品です。
8種類の生薬を配合
便秘が続いて、お腹が張ったり頭が重くなったり、肌荒れや吹出物などに悩んでいる人にはこちら。腸のぜん動運動を高め、気持ちのいいお通じをもたらす大黄、アロエ、センナを配合した便秘薬です。
8種類の生薬がお通じをよくしてお腹のガスを解消、さらに腸の調子を整えます。しっかり作用する便秘薬を探している人にぴったり。服用回数は1日2回までが限度なので、飲み過ぎないように注意しましょう。
指定第2類医薬品です。
便秘気味のお腹に作用しお通じにきく
2歳以上から服用できる大黄甘草湯の顆粒タイプ。顆粒タイプは、小さな子どもにも少量だけ与えられるので便利です。1包の残りの服用は、2日以内にしてください。
漢方の代表的な便秘薬の大黄甘草湯は、大黄と甘草を組み合わせたシンプルな処方です。体の虚弱な人や高齢の人の場合を除けば、体力を気にせず服用できるので常備薬として備えておくといいでしょう。
第2類医薬品です。
お通じをすっきりと出しきれていないと感じる人に
ふだんから胃腸が弱く、腹痛や下痢になりやすい人に合うのが、こちらの桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)。便秘の治療でよく使われる漢方処方のひとつです。
お腹が張って痛みを感じるのに、実際にはお通じがうまくいかない人はお試しください。お腹の痛みをやわらげる芍薬が入っており、不快な症状をやわらげてくれます。
第2類医薬品です。
女性特有の悩みをもち、体力はじゅうぶんある人に
桃核承気湯は、体力はじゅうぶんあるものの便秘がちで、月経時には生理痛やイライラがつのる人のための漢方処方。のぼせやすい人に向いています。
ホルモンのバランスを整えるため、出産後に気持ちが落ちつかない人にもぴったり。便秘だけでなく月経のたびにつらい思いをしている人はぜひお試しください。
第2類医薬品です。
「便秘漢方」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 便秘におすすめの漢方の売れ筋をチェック
楽天市場、Yahoo!ショッピングでの便秘におすすめの漢方の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
そのほかの便秘改善に関連する記事はこちら 【関連記事】
体力に合わせて自分にあった漢方を見つけよう
今回は、昔から広く使われてきた「大黄甘草湯」を中心に、便秘におすすめの漢方を紹介しました。漢方では症状は同じ便秘でも、体力や体質ごとに生薬の配合が異なる場合があり、この点が西洋医学ベースの薬との大きな違いです。
漢方の便秘薬には、はじめて瀉下薬を試す人も使いやすい弱い作用のものから、15歳以上しか服用できないものまであります。便秘も水分不足でコロコロした便から、お通じが来そうで来ないなど症状もさまざま。今回の記事を参考に、自分の症状に合った漢方の便秘薬を見つけましょう。
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新薬の企画開発を10年経験。その後、日用品メーカーで医薬部外品、化粧品、健康食品の商品企画、マーケティング、新事業開発を18年経験。 健康関連のスペシャリストとして、青汁マイスター・ソムリエ、薬膳コーディネーターの資格を有し、これまでに執筆は100事案を超え、商品企画提案などにも含め幅広く活動中。