アウトドア用高機能ソフトシェルの選び方 素材特性、用途、アウターかインナーか、生地や裏地をみる
山岳・アウトドアライター高橋庄太郎さんに、アウトドア用高機能ソフトシェルウェアを選ぶときのポイントを教えてもらいました。

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「ソフトシェル」とは「素材」のこと
よく誤解されていますが、「ソフトシェル」とは、レインウェアのように特別な用途を持つウェアや、パーカのように独特の形状を持つウェアのことを指しているわけではありません。
ソフトシェルとは特有の性能を持つ「素材」であり「生地」のことです。ソフトシェルのウェアには、ジャケットもあればパンツもあり、ときにはグローブやシューズのアッパーにも使われています。
だから、ショップで店員に「ソフトシェルがほしい」といっても、それは「ウールがほしい」とか「コットンがほしい」と言っているのと同様で、どんなウェアを指しているのか伝えられません。まずはこのことを理解してください。
素材の特性をよく把握しておく
ソフトシェルの「シェル」は英語で「殻」という意味です。ウェア内部の人間の体を、アウトドアの厳しい外界から「柔らかな殻」で仕切るのがソフトシェルであり、一般的にその特徴は、柔らかな素材感を活かした「伸縮性」と「透湿性」。そして、素材表面は「撥水性」を持ち、多少の雨水は弾き飛ばしてしまいます。購入時はこれらの特性が充分かどうか見定めましょう。
ちなみに、ソフトシェルに対する「ハードシェル」という言葉もあり、その特徴は素材の張りと硬さで、伸縮性を追求しない代わりに非常に強靭です。そして、ただ水を弾くという意味の撥水性ではなく、雨に強い防水性を備えています。おもな用途は、雪山登山などです。
適したシチュエーションや用途を知る
すぐれた伸縮性や透湿性、撥水性を持つソフトシェル素材を使ったウェアが活躍するのは、クライミングやトレイルランニングといった体の動きが激しいアクティビティや、蒸し暑い時期の山歩きや荷物が重くて体力を使う登山のような発汗量が多いとき。
ハードシェルのウェアは生地が頑丈なだけに体の動きを妨げられ、汗の蒸発が追いつかないことが多いです。一方、ソフトシェルなら伸縮性や透湿性、撥水性がよいため快適さを保ち続けることができます。しかし防風性は基本的に考慮されていないため、強風時には体温が逃げてしまいます。
つまり、ソフトシェルが得意なのは、「激しい動き」「暑いとき」「発汗量が多いとき」のアウトドアアクティビティで、寒い時期にあまり体を動かさないようなシチュエーションは苦手です。
アウターとして使うか、インナーとしても使うか
ソフトシェルはあくまでも特有の機能を有する「素材」のことですが、この素材がもっとも活躍するウェアはジャケットを含むトップス類です。
アウトドアではベースレイヤーを含む数枚のレイヤリング(重ね着)で機能を発揮させます。このときにジャケットは、主にアウターとして一番うえに着る想定で設計されたものと、アウターとしてだけではなくインナーとしての用途も考えて、内部に着込みやすいように開発されたものとの2種類にわかれます。
その違いによってフィット感や保温力に大きな違いが出てきますので、どちらのタイプをセレクトするかで、ソフトシェルの使い勝手は大きく変わってきます。
生地としての厚みや裏地も重要
ソフトシェルの素材には、さまざまな厚みのものがあります。たとえば、保温性をアップするために裏地にフリースを張っていたり、冷気を遮断する防風性の表面素材を組み合わせていたりするものも開発されています。
温かい時期や発汗量が多いアクティビティのときは、透湿性や通気性を重視したシンプルな薄手を選びましょう。反対に、比較的寒い時期や発汗量が少ないアクティビティのときは保温性を優先し、防風性も兼ね備えたタイプにするなど、それぞれのソフトシェルの生地の持ち味にも目を向けましょう。
薄手のものはレイヤリングの際にごわつきを抑えられ、インナーとしても使いやすくなっています。
アウトドア用高機能ソフトシェルを選ぶポイント フィット感、デザイン、ブランドなど
アウトドア用高機能ソフトシェルウェアを選ぶときに、ほかに知っておくとよいポイントを紹介します。

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自分の体にフィットするものを選ぶ
伸縮性の高さが魅力のソフトシェルは、アウトドアで利用する際には自分の体にフィットして動きやすいものを選ぶことが重要です。
両腕を挙げた状態のときにウェアの裾がベルトよりもうえに来ていないか、肘を曲げたときに手首が裾から出すぎていないか、ファスナーを閉めたときに圧迫感がないかをポイントにしながら、体になじみやすいものを選びましょう。
また、フードを被ったときにも圧迫感を感じないか、視界は充分確保できるかといったポイントも重要です。とくに登山など天候の変化が激しいアウトドアシーンで利用する場合は、フードのフィット感は必ずチェックしておきましょう。
デザインやブランドから選ぶ
ソフトシェルのウェアを開発しているブランドは数多くありますが、国産ブランドとして高い人気を誇っているブランドがモンベルです。高機能でカラフル、幅広い用途に応じた製品を取り扱っており、比較的手頃な価格のものが多いという特徴があります。
一方で、海外ブランドのなかではアメリカ発のアウトドアブランド、パタゴニアも有名。アウトドア経験者も多く愛用しているブランドで、高いデザイン性と機能性を両立しています。激しい動きへの対応力も高く、身軽で動きやすいウェアがとくに多いため、アウトドアブランドとして高く評価されています。
アウトドア用高機能ソフトシェルのおすすめ10選 モンベル、パタゴニア、ノースフェイスほか本格アウトドアブランドから
アウトドア用高機能ソフトシェルの選び方のポイントをふまえて、山岳・アウトドアライターの高橋庄太郎さんに選んでもらったおすすめ商品、編集部で選んだ商品を紹介します。

ウインドシェルとして使える薄手タイプ
シャツ感覚で着られるフード付きジャケット。かさばりにくい薄手のソフトシェルなので、胸ポケットにウェア本体を押し込んで収納できるパッカブル仕様を実現しています。
薄手ゆえに、これ一枚では強い風雨には対応できませんが、悪天候時はこの上にレインウェアやハードシェルをレイヤリングすればよいので、春や秋の低山、真夏の高山といった「Tシャツ1枚では寒い」くらいの気温のときに活躍します。
素材自体の高い伸縮性に加え、脇の下にはマチをとって腕の可動域を広げているなど、体の動きを妨げない設計となっています。また、ウェア内部にたまった湿気もすみやかに排出し、フードや裾にはドローコードが取りつけられていて、体へのフィット感も上々です。
豊富なカラーバリエーションで街着でもOK
定番のグレーやブラック、ネイビーなどの色に加え、アーミーグリーンやカーキ、迷彩柄などのカラーバリエーションも揃ったフリースジャケットです。サイズはXSから4XLまで揃っており、幅広い体型をカバー。
裾は後ろ部分が長く設計されており、深くしゃがんだ姿勢でも腰が露出して冷える心配はないでしょう。
また、腕の部分にある収納ポケットはスマートフォンやICカード、カギなどの小物類を収納するのに向いています。
機能にこだわったソフトシェルジャケット
防水、防風性にすぐれたストレッチ素材を使っており、袖口に指を通すことができるサムホール、ジッパー付きのポケットが3個もついたソフトシェルジャケットです。
カラーはブラック、インディゴ、サファイアブルー、スプリンググリーン、サンセットオレンジの5色を展開。ブラック以外のカラーは、左右のポケットと胸部分のポケットがアクセントカラーとなっており、ファッション性も高いソフトシェルジャケットです。
薄手でありながらも高い機能が備わっているため、通勤や通学にも使いやすく重宝します。
断熱・防風・防水・通気性に優れた万能ジェケット
3層構造の弾性材料を使用しているため、断熱・防風・防水・通気性に優れています。
ジャケットの内側はソフトなフリースとメッシュの裏地です。フードはポケットから手を放さずに紐で簡単に調整でき、不要な時は襟の中に収納できます。
袖口はベルクロで簡単に閉めたり緩めたり調節可能です。
寒い中でも快適さを提供してくれるジャケット
ジャケットの表面はオムニシールド機能により、ちょっとした雨や汚れをはじく撥水性と防汚性を発揮します。
裏面はフリース加工で、重さも軽いため寒い中でも快適に動けます。
そのほか防風性やUVカット機能も備わっているため、キャンプやアウトドアなど幅広いシーンで利用できます。

基本ともいうべきオーソドックスな一着
ひじょうにシンプルなルックスで、アウターとしてもインナーとしても使いやすいデザイン。程よい厚みの生地の裏にはフリースのような起毛材を組みあわせ、これ一枚だけでもかなりの寒さを防げます。
体にフィットして生地に無駄なたるみがないためにインナーとして重ね着もしやすく、ハードシェルの下に合わせれば厳寒の冬でも活躍するでしょう。うれしいのは、生地に静電気を抑える加工が施されていることで、空気が乾燥している時期でも静電気によるピリっという嫌な感覚を覚えることがほとんどありません。
手首の部分にはサムホールが付き、ここに親指を通せば袖が手の甲を覆い、簡易的なグローブのように手を保温します。

タフな使用にも耐えうる本格派
ウェアの各部で2種類のソフトシェル素材を使い分け、雪山や岩場でのクライミングまで想定したハイスペックなジャケット。腰から下の部分と腕の前側という、ハーネスやロープで擦れやすい箇所には、とくに強靭な素材が使われていて、ウェアが過度に傷まないように考えられています。
ヘルメットをかぶったまま使えるフードには、片手でも簡単にフィット感を調整できるドローコードが取り付けられ、フロントのファスナーは下だけを開いて換気もできるWタイプ。
なによりソフトシェルの基本機能である伸縮性がすばらしく、行動中にストレスを感じません。ただし、その分価格は高くなるので、予算に余裕がある方は検討してみてはいかがでしょうか。

HAGLOFS(ホグロフス)『ボアフード ウィメンズ』
街着としても通用するルックス
アウトドア用のウェアは、ツルっとした質感の生地のものが大半ですが、これはまるでコットンのようなザラついた風合い。とても大人っぽいシックな雰囲気で、山中だけではなく、おしゃれ着として街中でも着用できるでしょう。
その一方で、本来のアウトドアウェアとしての機能性はしっかりと持ちあわせており、縦横4方向に伸びるストレッチ性は充分。
また、サイドに付けられたポケットのファスナーはかなり長く、ここを開いておくと換気用のベンチレーターとして機能するので、温かい時期は効率的に熱気と湿気を逃してくれます。
Mammut(マムート)『GRANITE SO Hooded Jacket』
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アウトドア用高機能ソフトシェルに関するQ&A よくある質問
ソフトシェルはどのようなときに使う?

ソフトシェルは通気性がよい代わりに防寒性はさほどないため、肌寒い、風が強い、霧が濃いときなどに着用します。
レインウェアとの違いはなんですか?

ソフトシェルは晴れの日に着るのが最適です。防水性は小雨を防ぐ程度で、蒸れにくいのが特徴です。対して、レインウェアは雨の日に最適で、防水性能が高いですが、その分蒸れやすいのが特徴です。
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失敗しないためにはサイズ感が重要 ソフトシェルにはパンツやグローブもある
アウターにもインナーにもなるタイプが多く、汎用性が高いソフトシェルのウェアは、アウトドアでの行動の幅を広げます。
この記事ではジャケットタイプを中心に紹介しましたが、先に述べたようにソフトシェル素材のウェアにはパンツやグローブなども開発されています。まずは種類が多いジャケット類でソフトシェルの持ち味を把握し、気に入ったら別のウェアにも手を延ばすと買い物の失敗が少なくなるでしょう。
最後にお伝えしたいのは、セレクトの際にはサイズ感を重視してほしいということ。伸縮性が高いソフトシェルは体に密着するくらいのサイズがちょうどよく、そのほうが汗を迅速に吸収し発散させ、体温をしっかり守ってくれます。
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1970年宮城県仙台市出身。高校山岳部で山歩きを始め、早稲田大学卒業後は出版社に勤務。 その後、フリーランスのライターに。著書に『山道具 選び方、使い方』(枻出版社)、『テント泊登山の基本』(山と渓谷社)などがあり、近年はテレビ番組やイベントへの出演も増えている。また、アウトドアメーカー各社とのコラボレーションを行なう自身のブランド「SCREES」を立ち上げ、製品開発にも取り組んでいる。