登山用クッカーの選び方 山岳ライターが解説!
山岳ライター高橋庄太郎さんに、登山用クッカーを選ぶときのポイントを4つ教えてもらいました。

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クッカーサイズは使用する人数とつくりたいメニュー、品数で選ぶ
登山用のクッカーのサイズは、いっしょに調理をおこなうメンバーの人数で必要な大きさが決まります。ひとりでかんたんな調理で済ませるのならば、容量300~700mlのクッカーがひとつあればじゅうぶんです。しかし、数名分を同時につくるには、その数倍の容量が必要です。
また、フリーズドライ食品をお湯で戻して食べるだけなら、小さなクッカーで済ませられますが、豊富なメニューで満足のいく食事をしたければ、調理しやすい大きめのクッカーが複数あると便利です。
まずは、「使用人数」と「調理するメニュー」から必要とするクッカーを考えていくとよいでしょう。
長所と短所で金属の素材を選び分ける
登山用のクッカーは、バックパックに入れて自分で持ち運ばねばならないものだけに、その重量がポイントになります。いくら丈夫でもかなり重いステンレスやスチールよりも、軽量な「アルミ」と「チタン」が現実的です。
熱の伝導性が高いアルミの長所は、火の熱がクッカー全体にいきわたりやすく、焦げにくいこと。調理の際に失敗が少なくなります。
一方、チタンの長所は、アルミと同様に軽いので長時間持ち運んでも疲労の原因にはなりにくいのがうれしい点です。さらにアルミより丈夫なため、衝撃で割れたり折れたりすることが少なく料理もしやすいのもポイント。ただし、アルミよりも高価なことと、クッカー全体に熱が回らず、火が当たった部分のみ高熱になって焦げやすいのが難点。
しかし、お湯を沸かすには問題ないでしょう。
持ち運ぶ際の収納性
ソロ用のミニマムな製品以外は、2~3個のクッカーを重ねて収納できるタイプが一般的です。なかにはフライパンやケトル(ヤカン)をいっしょに組み合わせられるものも販売されています。すきまなくスタッキング(重ね合わせ)できれば複数を一度に持ち運んでもかさばらず、移動時にガタガタといやな音も立てません。
しかし、収納時にいちばん外側にくるクッカーが大きな凹凸をもつタイプだったり、持ち手が出っ張っていたりすると収納性は落ちてしまいます。選ぶ際にはそのような細部にも注目してほしいと思います。
クッカー以外の付属パーツの有無と種類
ソロ用のミニマムな製品以外は、2~3個のクッカーを重ねて収納できるタイプが一般的です。なかにはフライパンやケトル(ヤカン)をいっしょに組み合わせられるものも販売されています。すきまなくスタッキング(重ね合わせ)できれば複数を一度に持ち運んでもかさばらず、移動時にガタガタといやな音も立てません。
しかし、収納時にいちばん外側にくるクッカーが大きな凹凸をもつタイプだったり、持ち手が出っ張っていたりすると収納性は落ちてしまいます。選ぶ際にはそのような細部にも注目してほしいと思います。
特殊加工からクッカーを選ぶ
フッ素樹脂加工
フッ素樹脂加工とは、連続使用温度260℃と高い耐熱性をもったフッ素樹脂で表面を覆う加工のことです。汚れがつきにくく油をひかなくても調理ができる点がメリットで、フライパンをはじめとする調理器具に広く利用されています。
フッ素樹脂加工のデメリットとしては、高温になるとフッ素樹脂が分解して有害物質が出てしまうことと、キズつきやすく、キズによってその部分から焦げつきやすくなることがあげられます。
高温にしないための注意点は空焚きをしないことです。また、調理に使うヘラは木製などあたりのやわらかいものを使用しましょう。洗うときもクレンザーなどの研磨剤は避け、やわらかいスポンジで優しく汚れを落とすようにしましょう。
セラミック加工
セラミック加工とは、高硬度で高耐熱のセラミック皮膜で金属などの表面を覆うことにより、熱や摩擦、キズへの耐性を高める表面加工方法です。
長所は、摩擦やキズに強く、熱伝導性がよいため丈夫で長持ちする点。短所は、焦げつきやすいため、中火以下で油を引いて調理せざるを得ない点です。
素材別の登山用クッカー22選 使い方に合わせて素材をチェック!
軽量で熱伝導性にすぐれたアルミ製、耐久性にすぐれたステンレス製、丈夫で軽いチタン製と、素材別で登山用クッカーをご紹介します。
アルミ製|軽量で熱伝導性にすぐれている
フッ素樹脂加工でお手入れしやすい
アウトドアやレジャー関連商品のブランドから紹介するのは、使いやすいクッカーの3点セット。内面がフッ素樹脂加工で焦げつきにくく、調理と後片づけがとても ラクなセットです。
アルミ製なので軽く持ち運びに便利なうえ、熱伝導率も高くて調理が速く進みます。表面は硬質アルマイト加工で腐食に強くなっており、長く使い続けられるクッカー。2~3人でのキャンプ向きです。
オレンジのアクセントがスタイリッシュ
耐久性のあるハードアノダイズド加工で丈夫なクッカー3点セット。黒にオレンジの取っ手が映えてとてもおしゃれです。フライパンは凹凸加工が施してあり、肉や魚などを焼くときに余分な脂を抑えることもできるでしょう。
取っ手はステンレスの樹脂カバーなのでしっかりしていて安定感もあり。2~3人でアウトドア料理を楽しむのにじゅうぶんなサイズです。スタッキングして付属のメッシュケースに収納すれば、持ち運びもしやすく便利です。
「ご飯を炊く」が目的のクッカー
その名の通り、ご飯が炊けるクッカー。もちろんご飯だけでなく料理をすることの楽しさに焦点を当て、製造されています。蓋つきのメインのクッカーは炊飯用で、上部が吹きこぼれを軽減する設計。更に1~3人分の目盛り付きで、アルミ素材によりクッカー全体に均一に熱が行き渡り、美味しいご飯を炊けます。
フライパンは中華鍋などで使用される黒皮鉄板なので、油馴染みがよく、炒め料理や焼き料理に最適。このセットで美味しいご飯とメイン料理、煮物や汁物までワンランク上のアウトドア料理を楽しめます。

機能美を感じさせるシンプルなデザイン
容量1,300mlのアルミ製クッカーがふたつと、フライパンとして使えるフタを組み合わせたセット。まったく同じサイズのクッカーの組み合わせゆえに構造上はいくらでも重ねて持ち運ぶことができ、いくつか手元においておけば用途や人数に応じて必要な数だけ持っていくこともできます。
フタはフライパンとして活用できるように、焦げつき防止のノンスティック加工が施されており、クッカーと同様に付属ハンドルで取り扱います。見た目も美しく、自宅でも使いたくなるかもしれません。

厚さ5cm! 折りたたみ可能なクッカーセット
2,800mlのポットと1,300mlのケトル、そして8インチのフライパンのセットで重量は756g。正直なところ、登山用途としては重いのは否めないものの、その代わり非常に薄くたためてしまうというのがこのクッカーのすごさです。
ポットとケトルは、火が当たる底面はアルマイト加工のアルミですが、火が当たらない側面はやわらかなシリコンに素材を変更し、蛇腹状につぶせば平たくなります。これらをフライパンのなかに入れれば、厚みはたった5cmに。2~3人分の山中料理ができるクッカーが、驚くほどコンパクトになります。
万能調理ツールウォックパン中心の3点セット
万能調理ツールのウォックパンを中心に、フライパンと片手鍋がセットになった3点セットのクッカー。ウォックパンとは、深型の中華鍋のようなフライパンで、焼く、煮るはもちろんのこと、蒸し料理や揚げものもできるすぐれものです。
ウォックパンのなかにすべてスタッキングしてコンパクトに持ち運びできるようになっているのが便利。本体は約2.5mmのアルミニウムで熱伝導率がよく、焦げつきを防止してくれるノンスティック加工でお手入れもラクです。
アルコールバーナーを効率よく使えるクッカーセット
アルコールバーナーをスタンドベースに固定し、穴の開いている部分を風上に向けておくことで、炎を安定させ効率よく調理がすすめられるシステムのクッカー。ベースの穴を空気が入りやすい方向に向けておく、ということにさえ気をつけていれば、誰にでもかんたんに扱える点が大きな魅力です。
セットにはソースパンがふたつとフライパンひとつが付属。別売の0.6Lケトルも一緒にパッキングできるようになっています。収納袋も別売ですが、ラインナップしています。
ファミリーキャンプに最適な5人用クッカーセット
ひとつのフライパンに3サイズの鍋、そのほか合わせて17点の付属品がセットされたクッカーセット。セット内容は、よく使うボールが5つ、しゃもじやスポンジなどもついています。4~6人用の大きいサイズで、グループキャンプの料理はこのセットがあれば安心です。
表面の硬質アルマイト加工で強度も耐久性もあり、内面のノンスティック加工で焦げつきにくい点も魅力。アウトドア派のファミリー向けクッカーセットです。
スッキリまとまり超軽量
軽くて扱いやすいアルミニウム素材のクッカー。本体は熱伝導率がよいですが、取っ手や蓋がプラスチック製で調理中にやけどをしないよう考慮されています。付属のカップやスプーンは全て鍋の中に収納でき、全ての鍋の取っ手を折りたためばコンパクトにまとまります。
鍋の深さや容量に応じて煮物やコーヒー、炒め料理に焼き料理とバラエティーに富んだ調理が可能。登山にはもちろんキャンプやバーベキューでの使用もおすすめです。丈夫で安定したデザイン設計なので、シングルバーナーや焚き火台、アルコールストーブなどさまざまな加熱調理器との相性も抜群です。

肉や野菜を炒めても、焦げつきはなし
2~3名のグループ登山で使いやすい、容量2,500mlと1,500mlのアルミ製クッカーのセット。内側にはセラミックコーティングがほどこされ、焦げつきにくいアルミがますます高温に強くなり、キズつきや摩耗もしにくくなっています。
ハンドルはクッカーの外側のパーツに引っかけて使うタイプで、フタには湯切りもついており、パスタなどをゆでるのに便利でしょう。同社のマグカップなどがスタッキングしやすい形状で、合わせて使えばコンパクトなパッキングが実現します。
ステンレス製|耐久性にすぐれている
チタン製|丈夫で軽い

極限までの軽さを目指した「日本製」のクッカー
「超軽量」を意味する「ウルトラライト」の名を冠した、まさに超軽量なクッカー。容量900mlと600mlのふたつのクッカーを合わせても210gにしかならないのは、たんにチタンを使っているからだけではなく、特殊な製法で薄板にしているから。極限まで荷物を軽くして登山をしたい方におすすめです。
チタンはただでさえ火から遠い部分は熱くなりにくい金属ですが、このクッカーはさらに持ち手部分にシリコンチューブをかぶせ、素手でも持てるように配慮されています。
ちなみに同メーカーのクッカーは、メイド・イン・ジャパン。それも金属加工では世界的に有名な新潟県の燕市でつくられており、そのあたりも使う人の心をくすぐりそうです。

チタン製なのにアルミの熱伝導率
本来は焦げつきやすいとされるチタン製のクッカーですが、このクッカーは底面に溶かしたアルミを吹きつけることで熱の伝導性をアップし、焦げつきにくくなっているのがポイント。さらに、吹きつけたアルミの表面は、あえてザラザラとした細かな凹凸にすることで、熱を効果的に広げるだけではなく、コンロの上で滑りにくくなるように配慮されています。
ここで紹介したものは容量900mlのクッカーにカップとしても使える容量280mlのフタをつけたものですが、同じシリーズには別のサイズのクッカーもそろっており、合わせて使うと登山時の人数の増減などにもかんたんに対処できるでしょう。汎用性が高い製品です。
登山用クッカー 1人用
一人で使えるシンプルでコンパクトな登山用クッカーをご紹介します。それぞれの機能や使いやすさに着目して選んでみてくださいね。
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 登山用クッカーの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの登山用クッカーの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
登山用クッカーとあわせてそろえたいアウトドアグッズ
バーナーや食器など、クッカーとあわせて用意しておきたいアイテムをご紹介します。
「登山用クッカー」のおすすめ商品の比較一覧表
登山用クッカーに関するQ&A よくある質問
お手入れ方法は?

クッカーは汚れをそのままにするとさびついてしまいます。お手入れ方法は次のとおりです。このほかに、弱火で調理し、焦げ付かないように気をつけたり、空焚きしないように気をつけたりするなども重要なポイントです。
(1)家庭用の食器用洗剤で油汚れを落とす
(2)すすいで水気をきり、よく乾燥させる
(3)表面を傷つけない(ステンレスたわしはNG)
汚れにくいクッカーは?

フッ素加工などコーティング加工されたクッカーなら、汚れを楽々とることができるのでおすすめです。
アウトドアで使えるそのほかのキッチンアイテム 【関連記事】
登山用クッカーについて5つのおさらい
1)人数や調理メニューからクッカーのサイズを決める
2)アルミ素材のクッカーは軽量で熱伝導率が高い
3)チタン素材のクッカーも軽量で、アルミより熱伝導率は劣るものの耐衝撃性にすぐれる
4)重ねて収納できるタイプや凹凸の少ない形状のものなど、携帯性も考慮する
5)サイズに迷ったら少し余裕がある大きさを選ぶのが吉
迷ったら大きめのものを! 山岳ライターからのアドバイス
「大は小を兼ねる」のが登山用のクッカーというもの。大きすぎるものは重くなり、パッキング時にかさばるのが難点ですが、セレクトのときに困ってしまったら、少し余裕がある大きさを選んでおけば、多様な調理に対応でき、買い直したくなるような失敗は少なくなるでしょう。
そのほとんどが金属のみでつくられているクッカーは、使用後の洗浄といったかんたんな手入れさえおこなっていれば一生涯使えます。はじめに買ったものを基本に、大小のものをひととおりそろえてしまえば、あなたの相棒として一生のあいだ活躍してくれますよ。
扱いやすそうな特性を把握して選びましょう!
山岳ライター高橋庄太郎さんにお聞きして、登山用のクッカーの選び方とおすすめ商品をご紹介しました。最後に5つのポイントをおさらいしましょう。
1)人数や調理メニューからクッカーのサイズを決める
2)アルミ素材のクッカーは軽量で熱伝導率が高い
3)チタン素材のクッカーも軽量で、アルミより熱伝導率は劣るものの耐衝撃性にすぐれる
4)重ねて収納できるタイプや凹凸の少ない形状のものなど、携帯性も考慮する
5)サイズに迷ったら少し余裕がある大きさを選ぶのが吉
基本的には人数に合わせてサイズを選びますが、サイズに迷ったら大きめのクッカーを選びましょう。材質や表面加工にもそれぞれ特性がありますので、自分にとって扱いやすそうな特性を持ったクッカーを選んでください。アウトドアライフを楽しみ、登山用クッカーで野外での料理を堪能しましょう。
高橋さんのアドバイスを参考にして、自分の用途に合った登山用クッカーを見つけてください。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
1970年宮城県仙台市出身。高校山岳部で山歩きを始め、早稲田大学卒業後は出版社に勤務。 その後、フリーランスのライターに。著書に『山道具 選び方、使い方』(枻出版社)、『テント泊登山の基本』(山と渓谷社)などがあり、近年はテレビ番組やイベントへの出演も増えている。また、アウトドアメーカー各社とのコラボレーションを行なう自身のブランド「SCREES」を立ち上げ、製品開発にも取り組んでいる。