ミラーレスカメラ用レンズの選び方 ズームレンズ各種、画像センサー面までの距離、F値固定ズームをみる
写真家・カメラ評論家の田中希美男さんに、ミラーレスカメラ用レンズを選ぶときのポイントを教えてもらいました。
高倍率ズームレンズは1本あれば、どこでも対応可能 オートフォーカスや手ブレ補正も
高倍率ズームレンズはズーム域が広く、1本もっていると、どこでも・なんでもきれいに撮ることができます。風景だったり、遠くの物体に焦点をあてたり、どんなケースにも対応してくれます。
とくに近年発売された高倍率ズームレンズは、写りのよさやオートフォーカス、手ぶれ補正などの機能がついていて、より扱いやすいものが出ています。新たに購入を考えている場合は、多機能な高倍率ズームレンズを候補にしてみるのもいいでしょう。
日常使いに合う標準ズームレンズは、絞り値に注目 ポイントはF値、明るさとボケ感が増す
標準ズームレンズは、日々のスナップ写真など日常的に撮る機会が多い焦点距離のため、使い勝手がいいタイプです。標準ズームレンズのズーム域は広くありませんが、性能がいいものが多いのも特徴。
その上で、標準ズームレンズ選びのポイントとなるのはF値。F値はレンズに取り込む光の量を決める数値で、これが変わることでカメラのピントの合う範囲が異なってきます。とくに開放F値の明るいレンズは、よりボケ感がはいることで写真の主役が明確となり、できばえがさらに本格的に。
また絞り値固定のF値通しレンズであれば、露出補正が楽になりますので、扱いやすいですよ。
望遠ズームレンズは、重さ・大きさ・性能をチェックして 1kg以下のレンズも
遠くのものを撮るときに便利な望遠ズームレンズ。重くてサイズも大きめなイメージがありますが、ミラーレスカメラ用ならば、それに合った小さめタイプの望遠ズームレンズも出ています。なかには1kgを切っているものもあり、重さを気にする人やはじめての人も手にとりやすいでしょう。
望遠ズームレンズを選ぶときは、重さやサイズを気にするのはもちろんですが、性能もチェックしてください。小さくて軽いだけでは、せっかく買っても満足できない場合も出てきます。より本格的なものを求めるなら、一眼レフの望遠ズームレンズの性能と照らし合わせながら、探してもよいかもしれませんね。
F値の明るい単焦点レンズを選ぶ 予算があれば「F1.4」クラス
写真家、カメラ評論家
ミラーレスカメラ用の単焦点交換レンズのなかでも、開放F値の明るい大口径レンズには、一眼レフカメラ用レンズに比べて軽量小型のものがあります。単焦点レンズを購入するときは、せっかくですから開放F値の明るいレンズを選ぶことをおすすめします。
APS-C判やマイクロフォーサーズ判では、「F1.2」といった大口径レンズでもそこそこ小型で軽量。「F1.4」クラスの単焦点レンズになるとかなりサイズは小さくなりますが、性能が劣ることは決してありません。
一般的に、開放F値の明るいレンズのほうが描写性能で勝ることが多いです。もし、レンズラインナップのなかに、同じ焦点距離で「F1.4」と「F2.8」があれば、価格は少し高くなりますが思い切って「F1.4」レンズを購入するといいでしょう。
知っておきたい「フランジバック」と「バックフォーカス」 画像センサー面までの距離
キヤノン『RF35mm F1.8 MACRO IS STM』
ミラーレスカメラ用レンズは大口径のレンズでも小型のものが多くなっています。もし、ボディもキャノンで揃えるなら、レンズ交換タイプのミラーレスカメラ「EOS‐R」「EOS‐RP」シリーズが販売中。
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ミラーレスカメラを選ぶ際に知っておいたほうがいい用語「フランジバック」と「バックフォーカス」。
フランジバックは、レンズマウントとボディマウントが合致する面から画像センサー面までの距離のことをいいます。バックフォーカスは、レンズ最後端のレンズ面から画像センサー面までの距離のこと。厳密に言えば意味や役割は異なるのですが、一般的にはほとんど同じ意味で使われています。
ミラーレス用のレンズは、一眼レフ用レンズに比べてフランジバックが短いことが特徴。フランジバックが合わなければ、高性能のレンズであろうとも焦点が合わない不具合を起こすので、ミラーレス一眼用のレンズかどうかを確認しましょう。
マウントアダプターを利用すれば一眼レフ用レンズをはじめとして多種多様なレンズを使用できるという利点があるため、まず、所有のカメラ本体にマウントアダプターが付属しているのか(または別売りか)をチェックすることも忘れずに。
ズーミングしても開放F値が変化しないレンズを選ぶ F値固定ズームとF値可変ズーム
オリンパス『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』
背景をボカして写すなら、ズームしてもF値が変わらないレンズが便利。レンズカバーの役目をしてくれる、専用レンズフードも同梱されています。スライド収納が可能で、ロック機構も付いています。
写真家、カメラ評論家
ミラーレスカメラ用レンズ・一眼レフカメラ用レンズのどちらにも言えることですが、ズームレンズはズーミングしてもF値が変化しないタイプの選択がおすすめ。開放F値に「F2.8」や「F4」とだけ記されているズームレンズは、ズームしてもF値は変化しません(F値固定ズーム)。
「F3.5~5.6」や「F2.8~3.5」の開放F値のズームレンズ(F値可変ズーム)はF値が変化します。開放F値をF3.5やF2.8にセットしておいても、広角側から望遠側にズームすると、F5.6やF3.5へと自動的に変化してしまうのです。
絞り値を開放にして明るいF値で撮っているつもりが、望遠にズームしただけでF値が約1段も暗くなってしまいます。そのぶんシャッタースピードが遅くなり、予想外のぶれの原因に。F値固定ズームは、価格が少し高めで、サイズも少し大きくなりますが、使い勝手も描写性能もいいものが多くあります。
ミラーレスカメラ用レンズのおすすめ11選 F値固定ズームから単焦点レンズまで、超広角レンズも
うえで紹介したミラーレスカメラ用レンズの選び方のポイントをふまえて、写真家・カメラ評論家の田中希美男さんに選んでもらったおすすめ商品、編集部で選んだ商品を紹介します。

オリンパス『M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO』
















出典:Amazon
対応マウント | マイクロフォーサーズマウント |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 40-150mm |
開放F値 | F2.8 |
フィルター径 | φ72mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ79.4×160mm |
重さ | 880g(三脚座含む) |

キヤノン『RF35mm F1.8 MACRO IS STM』








出典:Amazon
対応マウント | キヤノンRFマウント |
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レンズタイプ | 単焦点レンズ |
焦点距離 | 35mm |
開放F値 | F1.8 |
フィルター径 | φ52mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ74.4×62.8mm |
重さ | 305g |
F1.8の大口径ながら小型軽量の広角レンズ
フルサイズ判ミラーレスである、キヤノン『EOS R』シリーズ用の大口径広角マクロレンズ。マクロレンズとしては珍しい35mm広角のレンズで、開放絞りがF1.8と明るいことや、とても小型で軽量なことが特長です。さらに、EOS Rシリーズ用のRFレンズのなかでは(今後発売が予定されているRFレンズも含め)価格が安く、「2本目のRFレンズ」として適しています。
最短撮影距離は17cm。至近距離の撮影の際に目立つシフトぶれを補正する機能も備えた、ハイブリッド式の手ぶれ補正機能を内蔵しています。マクロ撮影だけでなく、通常のスナップ撮影にも役立つ万能レンズで、『EOS R』シリーズのユーザーにおすすめ。また本商品以外にも、本体側で別売の専用マウントアダプター『EF-EOS R』を利用すれば、一眼レフ用の『EF/EF-Sレンズ』を使用することもできます。

ニコン『NIKKOR Z 14-30mm f/4 S』






















出典:Amazon
対応マウント | ニコンZマウント |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 14-30mm |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | φ82mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ89×85mm |
重さ | 約485g |
PLフィルターも取りつけられる広角レンズ
ニコンのフルサイズ判ミラーレスカメラZシリーズ用の超広角ズームレンズです。
このクラスの超広角ズームレンズは、一眼レフ用としても多くのメーカーから発売されていますが、どのレンズも大きく重いものばかり。そのうえ、前面のレンズが大きく湾曲しているため、フィルターが取りつけられないものも。一方、この14~30mmレンズは、直径82mmのフィルターが容易にセット可能。風景撮影などに使用することが多い広角ズームに、偏光フィルターを組み合わせて使えるメリットがあります。
さらに、レンズ構成は、EDレンズや非球面レンズを多く使ったぜいたくな設計で、すぐれた描写性能を誇っています。たいへん魅力的なズームレンズで、ニコンZシリーズのすべてのユーザーにおすすめです。

ソニー ZEISS(ツァイス)『Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS(SEL1635Z)』


























出典:Amazon
対応マウント | ソニーEマウント |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 16-35mm |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | φ72mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ78×98.5mm |
重さ | 約518g |
コストパフォーマンスにすぐれるF4通しレンズ
ソニーのフルサイズ判ミラーレスカメラ、αシリーズ用のFE広角ズームレンズです。同じFE広角ズームのGマスターレンズ「FE 16-35mm F2.8 GM」と比べると、こちらのレンズは開放F値が1段分暗いですが、価格が安いことや、ズームしてもF値が変化しないことが利点。
さらに、より小型で軽量であること、そしてツァイスの『T*(ティースター)レンズ』であることも魅力で、それらを総合的に判断しておすすめレンズとしました。
「T*」とは、ツァイス独自のレンズコーティング技術のこと。たいへんヌケがよく深みのある色再現性があることが特長です。レンズ重量も約500gちょっとなので、持ち運びをするにもそれほど気になりません。常用レンズとして、いつもカメラバックに入れておいてもいいでしょう。フルサイズ判ソニーαシリーズのユーザーにおすすめです。

富士フイルム フジノンレンズ『XF56mmF1.2 R APD』














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対応マウント | フジフイルムXマウント |
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レンズタイプ | 単焦点レンズ |
焦点距離 | 56mm |
開放F値 | F1.2 |
フィルター径 | φ62mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ73.2×69.7mm |
重さ | 約405g |
APS-Cサイズ用大口径標準レンズ
富士フイルムのAPS-C判ミラーレスカメラ、Xシリーズ用の大口径中望遠レンズ。フルサイズ判換算で85mm相当の画角になります。APS-C判センサーはフルサイズ判に比べて小さいので、ぼけが目立ちにくく、立体感のある描写になりにくい傾向があります。ところが、この56mmレンズは、F1.2というたいへん明るいF値なので、フルサイズ判に勝るとも劣らない大きなぼけ味の写真が撮れます。
さらに、アポダイゼーション(APD)という特殊なフィルターを内蔵していて、とくに輪郭部がふんわりとやわらかい独特のぼけ味が得られます。ポートレートや花の撮影において、美しいぼけ味にとくに強いこだわりがある方にイチ押ししたいレンズです。

シグマ『70mm F2.8 DG MACRO|Art』






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対応マウント | シグママウント、キヤノンEFマウント、ソニーEマウント、ライカLマウント(発売予定) |
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レンズタイプ | 単焦点レンズ |
焦点距離 | 70mm |
開放F値 | F2.8 |
フィルター径 | φ49mm |
サイズ(最大径×長さ) | φ70.8×105.8mm |
重さ | 515g |
中望遠の明るいArtラインマクロレンズ
シグマ製の、ソニーαシリーズ用FEマウントのマクロレンズ。フルサイズ判ミラーレスカメラ用ですが、APS-C判αシリーズにも使用可能。もともと一眼レフカメラ用に開発されたレンズなのですが、その光学系はそのままに、ソニーα用に完全互換性を確保するようモディファイされたレンズです。
ボディ内手ぶれ補正を内蔵したαシリーズのカメラに対応し、さらに、カメラ内収差補正の機能にも対応。シグマには、こうしたソニーFEマウントの交換レンズが、高級タイプArtシリーズとして20種以上ラインナップされています。このレンズは、たいへんにシャープでヌケがよく、高い解像感のあるレンズです。
AF時には、2組のレンズ群が独立し、最適にフォーカスを移動させるフローティングフォーカス機構を採用。至近距離で目立ってくる収差を補正することで、高画質を実現しています。マクロ撮影をしたいユーザーにとっては、すぐれた性能でありながらも価格が安い点が魅力的なおすすめレンズです。
キヤノン『超広角ズームレンズ EF-M11-22mm』












出典:Amazon
対応マウント | ミラーレス一眼用 |
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レンズタイプ | 超広角レンズ |
焦点距離 | 11mm |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | 55mm |
サイズ(最大径×長さ) | 55mm |
重さ | 220g |
キヤノン『RF24-105mm F4L IS USM 標準ズームレンズ』
















出典:Amazon
対応マウント | キヤノンRFマウント |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 24 |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | 77mm |
サイズ(最大径×長さ) | 10.73 x 8.35 x 8.25 cm |
重さ | 833g |
ニコン『NIKKOR Z 35mm f/1.8S 単焦点レンズ』




































出典:Amazon
対応マウント | ニコンZマウント |
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レンズタイプ | 単焦点レンズ |
焦点距離 | 35mm |
開放F値 | F1.8 |
フィルター径 | 62mm |
サイズ(最大径×長さ) | 12.4 x 9.8 x 9.5 cm |
重さ | 370g |
ソニー『FE 12-24mm F4 G SEL1224G 超広角レンズ』






出典:Amazon
対応マウント | Eマウント |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 12-24mm |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | フィルター不可 |
サイズ(最大径×長さ) | 22 x 12 x 12 cm |
重さ | 565g |
パナソニック 『 LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH』








出典:Amazon
対応マウント | マイクロフォーザーズ |
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レンズタイプ | ズームレンズ |
焦点距離 | 7mm〜24mm |
開放F値 | F4 |
フィルター径 | フィルター不可 |
サイズ(最大径×長さ) | 75mm×約83.1mm |
重さ | 300g |
おすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 交換レンズの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの交換レンズの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
一眼レフカメラ時代のレンズ資産を活用することも 写真家・カメラ評論家からのアドバイス
写真家、カメラ評論家
ミラーレスは、カメラもレンズもフランジバック(バックフォーカス)が短いのが特徴。ボディ側マウントとレンズ側マウントの間にマウントアダプターを介すれば、多種多様なレンズを使用することができます。AFはもちろん、AEなども利用できない場合もありますが、完全にマニュアルで撮影する覚悟があれば、古いレンズも使用できます。
キヤノンやニコン、ソニーなどのメーカーのなかには、一眼レフ用の交換レンズを自社のミラーレスカメラに使用できる、専用マウントアダプターを用意しているところもあります。それらの純正マウントアダプターなら、AFもAEも制限なく使えるものが多くあります。
もし、完全互換性がなくてもいいというのであれば、サードパーティー製の低価格なマウントアダプターもありますので、そちらを試してみるのもいいでしょう。
ミラーレスカメラ関連の記事はこちら 【関連記事】
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/12/05 一部コンテンツ修正のため、記事を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 横尾忠徳)
多摩美術大学付属多摩芸術学園・写真科卒業。撮影分野は、おもにクルマを中心に人、モノ、料理、風景、スナップ、ファッション、ドキュメントなど被写体を問わない。 ほかに、カメラ雑誌などに新型カメラやレンズのテストのレポート、撮影技法などの解説をする。