フィルムカメラ選びのポイント 写真家・カメラ評論家に聞く
写真家・カメラ評論家の田中希美男さんに、フィルムカメラを選ぶときのポイントを教えてもらいました。フィルムカメラが初心者の方は、次の点に気を付けて選びましょう。
使用するフィルムタイプを事前にチェック
写真家、カメラ評論家
フィルムカメラは使用するフィルムのタイプが決まっています(『写ルンです』などレンズ付きフィルムカメラを除く)。現在、一般に使用されているフィルムにはふたつのタイプがあります。
1つは35mmフィルム(135タイプとも言います)で、パトローネとよばれる金属製の密封装置に入っています。もう1つはブローニーフィルム(120タイプまたは220タイプ)で、こちらは遮光用紙に包まれてロール状になっています。
また、フィルムにはネガカラーフィルム、リバーサルカラーフィルム(ポジフィルム)、そしてモノクロ(白黒)ネガフィルムの3種類がありますので撮影目的や表現目的にあわせて選ぶ必要があります。
交換レンズ購入のことも考えておく
写真家、カメラ評論家
ここに紹介したフィルムカメラはレンズ交換式カメラとレンズ内蔵式カメラの2種類です。レンズ交換式カメラは、いうまでもなく交換レンズが必要で、もし交換レンズを持っていなければ、カメラボディを購入するときに必ず購入しなければなりません。メーカーによってはとても高価な交換レンズしかないこともありますので「カメラ+レンズ」のことを考えて予算を立てておきましょう。
レンズ交換式カメラのメーカーではフィルムカメラだけでなくデジタルカメラも販売していますから、購入した交換レンズはフィルムカメラにもデジタルカメラにも使えるというメリットも。はじめてレンズ交換式カメラを購入する予定で、どんなレンズを選んでいいか迷っているなら、まずは標準ズームレンズまたは50mm標準レンズを選ぶことをおすすめします。
デジタルカメラとは異なる点を知っておく
写真家、カメラ評論家
フィルムカメラはフィルムをカメラにセットして、指定された撮影枚数を撮影し終えればフィルムを巻き戻して取り出し、さらに撮影を続けるのであれば別の新しいフィルムをカメラにセットする必要があります。また、一度使用したフィルムは再使用できません。
1本のフィルムは最大でも36カットしか撮影できないので(特殊なカメラを除く)、デジタルカメラのように何十カット何百カットも連続して撮影し続けることができません。撮影してもその結果を確認するまでに数時間、数日かかるうえに、デジタルカメラのようにすぐに液晶モニターを見て写っていることを確認することもできません。ワンカットずつ慎重に露出やピントを合わせて撮影する必要があります。
とくにはじめてフィルムカメラを使う人は、そうした「フィルムカメラの不便さ」をよく理解しておくことが重要です。
フィルムカメラ選びに困ったときは 写真家・カメラ評論家のアドバイス
写真家、カメラ評論家
フィルムの取扱にはご注意を
言うまでもありませんが、フィルムはほんのわずかな「光」を受けても感光して使いものにならなくなります。明るい日中、カメラにフィルムを装填するときはじゅうぶんに注意したいものです。
フィルムは高温多湿を嫌います。生もの、生鮮食料品と同じように取り扱いには注意してください。フィルムには「使用期限」があり、フィルムパッケージに必ず記載されています。フィルムを購入するときは使用期限をチェックしておくことが大切。一度、光を受けたフィルムはじわじわと化学変化が進みます。撮影したフィルムはできるだけ早く現像処理をして仕上げましょう。
現像を終えたネガフィルムは直射日光を受けない、湿気のないところに大切に保存しておきましょう。
フィルムカメラおすすめ7選 写真家・カメラ評論家がセレクト
上で紹介したフィルムカメラの選び方のポイントをふまえて、写真家・カメラ評論家の田中希美男さんに選んでもらったおすすめ商品を紹介します。自分が使いやすそうな機種を選ぶ際の参考にしてください。

Nikon(ニコン)『Nikon F6』




















出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 約975g |
絞り | 瞬間復元式 |
シャッタースピード | P、Aモード時:30~1/8000秒 その他モードによって調整可能 |
ISO感度 | ・DX時 ISO 25~5000 ・マニュアル時 ISO 6~6400(1/3段ごとにセット可能) |
電源 | 電池式 |
世界最高峰のレンズ交換式AF一眼レフ
35mm判フィルムを使用するレンズ交換式一眼レフの最高機種といえば、キヤノンとニコンが長年、覇を競ってきました。しかし、キヤノンの最高機種「EOS-1V」が販売中止となり、現存する最高機種はニコンのF6のみになってしまいました。もし現役の最高フィルム一眼レフカメラを求めているのであれば選択肢は、このニコンF6しかありません。
フィルム一眼レフカメラはメカニズムの「塊」。そのメカニズムはきわめて高い精度をそなえ、プロ機ともなればすぐれた信頼性が必須です。そのためハードな撮影に対応するためにカメラの外装部はもちろん、可動部分や操作部の設計やつくり込みが徹底されています。
また、F6のような高級一眼レフは、さまざまなアクセサリー類が用意されたシステムカメラです。撮影目的にあわせてアクセサリーを選び・組み合わせて使用が可能。ボディ底部にセットするバッテリーパックMB-40もその1つで、F6を選ぶならぜひ一緒に購入しておくべきアクセサリーです。

Nikon(ニコン)『Nikon FM10 標準セット』
















出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 約420g |
絞り | - |
シャッタースピード | 1/2000・1/1000・1/500・1/250・1/125・1/60・1/30等13段 |
ISO感度 | ISO25~3200 |
電源 | 電池式 |
レンズ交換式フィルム一眼レフの入門機種
FM10ボディとAiズームニッコール35~70mmf/3.5~4.8S・カメラケース・ストラップがセットになったお買い得な標準セット。
フィルム一眼レフカメラの入門機種ですが、オート撮影の機能は一切ありません。徹底的にマニュアル操作にこだわったカメラです。フィルム装填、フィルム巻き上げ、露出、ピント合わせやフィルムの巻き戻しなど、撮影に関するすべての操作は手動で撮影者自身がおこなう必要があります。
適正露出で撮影するには、カメラ内蔵の簡易露出計を確かめながら最適なシャッタースピードと絞り値を組み合わせてセットし撮影。撮影のためのカメラ操作の基本の手順をすべて知ったうえで手動操作するカメラです。多くのニッコールレンズを使って撮影でき、交換レンズが豊富にそろっているところが魅力。ただし、絞り値を手動で設定できるレンズを選ぶという点には注意してください。
写真学校に学ぶ生徒たちに「まず始めにFM10から」とすすめていること、ボディ、レンズそのほかの付属品までセットになっていることから、入門者におすすめできる一品です。

Leica(ライカ)『ライカ M-A(Typ127)』












出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 約578g |
絞り | - |
シャッタースピード | 1 〜 1/1000秒(1ステップ)、 「B」:バルブ(無制限) |
ISO感度 | - |
電源 | - |
60年の歴史をもつ、M型ライカの基本形
M型ライカの超基本形とも言えるのがこのライカM-Aです。完全マニュアル・完全機械式のカメラで、簡易的な露出計さえもそなえていませんのでバッテリーも使いません。適正な露出で撮影するには、撮影者の経験と勘に頼るか、単独の露出計を使用するしかなく、生半可な気持ちではこのライカM-Aを使いこなすことはできません。
しかし、最適なシャッタースピードと絞り値を考えながら試行錯誤しつつ露出を決め、ファインダーを覗きながら構図を選び、素早くピントを合わせて撮影する楽しみは、なにごとにも代えがたい喜びがあります。高級で精密なカメラであることはシャッターを切ったときに指先に伝わる軽やかで上品な音とショックで感じられます。
交換レンズと組み合わせて購入すれば相当な金額になりますが、カメラのオート撮影機能に頼りたくない、露出もピント合わせもカメラを操作してすべて自分で決めて写したいというマニュアル撮影にこだわりのある人におすすめのカメラです。

Leica(ライカ)『ライカ MP』






出典:楽天市場
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 約585g |
絞り | - |
シャッタースピード | 1〜1/1000秒(1ステップ) 「B」:バルブ(無制限) フラッシュ同調速度:1/50秒 |
ISO感度 | ISO6/9°〜6400/39°(マニュアル設定) |
電源 | 電池式 |
「撮ること」に集中させた究極のM型ライカ
ライカM-AがM型ライカカメラの超基本形だとすれば、こちらのライカMPは、厳選された良質な部品を使用してプロの酷使にも耐えるように仕上げられています。また、メカニズムの調整も職人が徹底しておこなっているため、高価です。
簡易的な露出計を内蔵していますが、撮影モードは完全マニュアル式。使い勝手のよさという点ではM-AよりもMPのほうでしょう。このカメラには赤丸の「LEICA」ロゴマークがありません。ホンモノのライカ使いにとっては目立ちすぎてイヤだろう、との配慮だとのこと。
ブラックは一般のライカブラックモデルの「マットブラック」ではなく、艶があって手作り感あふれる「ペイントブラック」です。こだわり屋の「宝物」と言ってもいい良質な仕上げのカメラです。
古くからのM型ライカの伝統をしっかりと受け継いで完成域にまで高めたカメラです。M型ライカにあこがれていて、中古カメラはいやだという人には、このカメラが一押しです。

Lomography (ロモグラフィー)『Lomo LC-Wide 35 mm Film Camera』


















出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | - |
絞り | automatic f4 to f16 |
シャッタースピード | Automatic - ∞ to 1/500 |
ISO感度 | ISO100~1600 |
電源 | 電池式 |
超広角レンズを内蔵する3コンパクトカメラ
さまざまなアクセサリー類が用意された超広角レンズ内蔵の35mm判フィルム使用のコンパクトカメラです。17mmという超広角画角なので上手に使いこなすにはそれなりのテクニックが必要ですが、ハマるととても楽しいカメラです。
このカメラの特長は別売の専用アクセサリーが豊富なこと。カメラの裏ブタを外してインスタントバックをセットすれば、Instax miniを使用するインスタントカメラになります。専用の水中ハウジングもあり、それを使えば水深20メートルまでの水中撮影も可能。ホットシュー付きですので一般の外光式ストロボを使用することもできます。
フィルムでも撮影したい、インスタント写真もほしいという人にはおすすめのカメラです。

Lomography (ロモグラフィー)『Lomo LC-A 120 Camera』














出典:Amazon
フィルムサイズ | 中判 |
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質量 | - |
絞り | Automatic f4.5 to f16 |
シャッタースピード | Automatic - ∞ to 1/500 |
ISO感度 | - |
電源 | 電池式 |
真四角な画面が写せる中判カメラ
ブローニーフィルムを使用してスクエア画面(実画面サイズは56×56mm)が写せる中判フィルムカメラです。ブローニーフィルムとは35mmフィルムよりも大型サイズで120タイプともよびます。大きな画面で撮影ができますので大きく引き伸ばしプリントをつくってもフィルム粒状性が目立たないきめ細かな描写ができることが特長。
LC-A120にはMINIGON XL38mmF4.5レンズが内蔵されています。35mm判換算すると約21mm相当の超広角レンズです。深いピント幅を利用してピント合わせは4段階のゾーンフォーカス方式です。絞り値は2ステップ切り替え式の自動露出カメラで、カメラ上部にはホットシューアダプタがありますので外光式の一般ストロボが使用可能。シャッターボタンにはレリーズ穴があるのでケーブルレリーズ(付属)を使って低速シャッタースピード撮影もできます。
なお、ロモグラフィーには同じブローニーフィルムを使用する二眼レフタイプの中判カメラ「Lomo Lubitel 166+」もあります。ブローニー判カメラのファンはカメラ選びの参考にしてください。

FUJIFILM (富士フイルム)『写ルンです New Waterproof 27枚撮り』
















出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 170g |
絞り | - |
シャッタースピード | 1/125秒 |
ISO感度 | - |
電源 | - |
水陸両方の撮影も可能な簡易カメラ
通常のレンズ付きフィルムカメラと違ってこちらの商品は透明ブラスチック製の防水ハウジングで覆われています。防水カバーはしっかりと密封されていますので、取り外して再利用することはできません。お手ごろな値段で、軽量なので旅先での一時使用や、荷物を増やしたくない人におすすめです。
水深10メートルまでなら水中撮影ができますが、ピント合わせは固定式なので水中では1~3メートルの距離に限定されます。陸上撮影なら通常のレンズ付きフィルムと同じく約1メートル至近から遠景まで撮影可能。内蔵レンズは32mm、シャッタースピードは1/125秒単速ですので明るい場所での撮影がおすすめです。

FUJIFILM (富士フイルム)『写ルンです シンプルエース 27枚撮り』














出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 90g |
絞り | F=10 |
シャッタースピード | 1/140秒 |
ISO感度 | ISO400 |
電源 | 内蔵使い切り(乾電池) |

Leica(ライカ)『ゾフォート』








出典:Amazon
フィルムサイズ | ライカ ゾフォート用フィルム、instax mini |
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質量 | 約305g |
絞り | - |
シャッタースピード | - |
ISO感度 | - |
電源 | 充電式 |
憧れライカのインスタントカメラ
高級カメラメーカー「LEICA(ライカ)」から発売されたインスタントカメラ『ゾフォート』です。他のライカのカメラ同様、ひと目でわかる赤い「LEICA」ロゴマークがボディ前面にプリントされています。
ボディカラーは、ホワイト、オレンジ、ミント、ブラック、ピンク(限定色)、LimoLand by Jean Pigozzi(特別限定モデル)の6色。フィルムは、ライカの『ライカ ゾフォート用フィルム』のほか、富士フイルムのチェキ用フィルム「INSTAX MINI」が使用できます。
どうしてもライカが欲しいけど、なかなか手が届かない方でもこちらなら予算内? とっておきのフォトトリップに、日常の記録用に、ずっと使い続けたい1台です。
コダック『フィルムカメラM35』














出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 約100g |
絞り | F10 |
シャッタースピード | 1/120秒 |
ISO感度 | - |
電源 | 電池式 |
YASHICA『MF-1 Camera』






出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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質量 | 77g |
絞り | F11 |
シャッタースピード | 1/120秒 |
ISO感度 | - |
電源 | 電池式 |
FUJIFILM『インスタントカメラ チェキ instax mini 11』
































出典:Amazon
フィルムサイズ | 86mm×54mm |
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質量 | 約293g |
絞り | - |
シャッタースピード | 1/2〜1/250秒 |
ISO感度 | ISO800 |
電源 | 電池式 |
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする フィルムカメラの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場でのフィルムカメラの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
フィルムカメラの持ち運び方
カメラを普段使いする中で、撮りたい時にカメラをすぐに取り出せることや気軽に持ち運べることが重要なポイントになります。使用シーンをイメージして選んでみると、自分の欲しいフィルムカメラが探しやすいかもしれません。
首からかけるネックストラップ、腰に装着するカメラホルダー、リュックやバッグに収納できるタイプなど様々です。
おすすめフィルムを合わせて紹介!! カメラと一緒にゲットしたい

Kodak(コダック)『カラーネガフィルム ULTRAMAX 400 35mm 24枚撮 3本セット』

出典:Amazon
フィルムサイズ | 35mm版 |
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ISO感度 | ISO400 |

Kodak(コダック)『カラーネガティブフィルム Ektar 100 120 5本パック』

出典:Amazon
フィルムサイズ | ブローニー版(中判) |
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ISO感度 | ISO100 |
フィルムカメラ初心者向けの書籍を紹介! フィルム装填もこれでOK

フィルムカメラ・スタートブック


















出典:Amazon

玄光社MOOK『フィルムカメラ・ライフ 2019-2020』












出典:Amazon
「フィルムカメラ」のおすすめ商品の比較一覧表
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(制作協力:結城助助、掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/12/02 コンテンツ追加のため、記事を更新しました(マイナビおすすめナビ編集部 福本航大)
多摩美術大学付属多摩芸術学園・写真科卒業。撮影分野は、おもにクルマを中心に人、モノ、料理、風景、スナップ、ファッション、ドキュメントなど被写体を問わない。 ほかに、カメラ雑誌などに新型カメラやレンズのテストのレポート、撮影技法などの解説をする。