真空管アンプとは

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真空管アンプは、真空の容器に電極を封入した真空管と呼ばれる電子部品を搭載したオーディオ機器です。音にあたたかみや深みがあるといわれており、独特の音色が感じられます。
基本的に真空管アンプは、ボリューム調節部分であるプリアンプ部と、スピーカーで音を鳴らすアンプ部に分かれており、音響の増幅素子として真空管を使用しています。
その心地いいサウンドの理由は、アナログならではの『倍音』の表現力。倍音とは、固有の周波数で鳴る基音に続いて残る音です。ヒーターが加熱することで真空管が自然と光る性質は見た目もおしゃれで、音楽とともに優雅な雰囲気を楽しめます。リアルで生々しい音を楽しみたい、おしゃれなアンプが欲しい、という方にピッタリのアンプです。
■真空管アンプの特徴
真空管アンプの一番の特徴は、その温かみのある音。トランジスタを使用した一般的なアンプと違い、真空管を使用し、信号の増幅時に歪みが含まれますが、この歪みはCD音源には含まれないため、結果として人が好む音で音楽を再生できるのです。
一方、真空管アンプはサイズが大きいのも特徴的。場所を取るためデメリットに感じる人も多くいます。アンプの真空管自体にも寿命があり、取り換える手間などがあります。また、これは数値上ですが、一般的なアンプと比べ、ノイズや周波数範囲の広さで劣ります。もちろん、好みや音源により大きく変わりますが、データ上は一般的なアンプより数値は低い結果になっています。
■アンプの仕組みを解説
そもそもアンプは、音響の電子信号を認識するプリアンプと、認識した電気信号を拡大させるパワーアンプの2つから構成されています。一般的には、このプリアンプとパワーアンプが一体になっているプリメインアンプが多いです。
真空管アンプも同様で、大半の商品がプリアンプとパワーアンプが一体となっている「プリメインアンプ」です。
プリアンプの特徴としては、製品のラインナップが豊富で価格の選択肢が複数選べること、そして細かな設定もなく使いやすいということがあげられます。
真空管アンプ選び方
それでは、真空管アンプの基本的な選び方を見ていきましょう。ポイントは下記の4つ。
【1】管の種類
【2】回路(管)の構成
【3】ハイレゾ対応かどうか
【4】出力形式
上記の4つのポイントを抑えることで、より具体的に欲しい機能を知ることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】管の種類をチェック
真空管アンプで使用される管は大別して『MT管』『GT管』『ST管』の3種類。『GT管』が主流とされていたときもありますが、現在はコンパクトで種類も豊富な真空管である『MT管』がメインになってきています。
『ST管』は『GT管』よりもさらに歴史が長く、ふくよかなサイズ感とレトロさがあるタイプです。『MT管』を使用しているアイテムは比較的入手しやすく、コストパフォーマンスからも需要が多いようです。ビギナーに向いているといえるでしょう。
【2】回路(管)の構成をチェック
真空管アンプは『シングルアンプ』と呼ばれる管がひとつのタイプと、『プッシュプルアンプ』と呼ばれる左右にふたつずつ管が搭載されているタイプの2種類が存在します。
小さな音でしっとり聴くには、シングルアンプがおすすめ。シングルアンプは微小な音楽信号を正確に増幅。使用される部品点数も少ないためピュアな音質が期待できます。とくにアコースティックな楽器や女性ヴォーカルにはぴったり。出力は比較的小さめです。
プッシュプルアンプは大出力でダイナミックな音質が特徴です。オーケストラやビックバンドのほか、ロックにもおすすめです。
【3】ハイレゾ対応かどうかチェック
真空管アンプのアナログとしてのよさと、デジタルテクノロジーであるハイレゾを組み合わせたアイテムもチェックしてみましょう。CD音源を再生する場合、真空管だけでは表現し尽くせない音の解像度をアップさせてくれます。
ハイレゾ非対応の商品より価格は多少アップしますが、より豊かで深いサウンドが楽しめます。また、真空管とデジタルアンプとのハイブリッドモデルもあり、純粋な真空管アンプよりも比較的リーズナブルなため選択肢のひとつに加えてもいいでしょう。
【4】出力形式をチェック
オーディオを通して聴きたい音楽のジャンルによって、出力の相性というものが存在します。出力とは音量に関わる部分です。
控えめな音量でゆったりと音楽を楽しみたいという方は、数ワットの出力のものが適しています。大きな音量でサウンドに包まれるような音楽鑑賞が好みであれば、10W以上あるものを選びましょう。
音響機器のCEOよりアドバイス
真空管アンプは第二のアンプとしておすすめ。寝室やリビングで小音量で長く聴くというような場合に聴き疲れしません。メインシステムに真空管アンプを導入する場合は10W以上のものを選びましょう。
有名メーカー・ブランドの特徴
本項では、真空アンプの有名メーカーやブランドの特徴をご紹介いたします。こちらもぜひチェックしてください。
■マッキントッシュ(McIntosh)
マッキントッシュは1949年にアメリカで創立されたアンプメーカー。世界的にも有名なメーカーで、50年前の商品が復刻版として蘇るほど人気の商品を数多く展開しています。厚みのあるサウンドが特徴的で、こちらもこだわりと人気が強い、老舗のメーカーとなっています。
■ラックスマン(LUXMAN)
ラックスマンは、1925年に大阪で創業したオーディオメーカー。日本でも数少ない老舗メーカーです。真空管アンプが人気になり始めた初期の頃から、事業を展開しており、業界を牽引したパイオニア的な存在です。常に音質を追求する姿勢で親しまれ、現在でもクオリティの高い真空管アンプを発売している根強い人気を誇っています。
■トライオード(Triode)
文トライオードは、1994年に埼玉県で創業したオーディオメーカー。一番の特徴は、幅広い種類を展開している点。例えば、高品質で高価格なマニア向け製品を展開する一方で、初心者でも手を出しやすいリーズナブルで高音質な製品まで、カバー域が広く、数多くのユーザーがいます。
真空管アンプおすすめ12選
ここからはさまざまなタイプの真空管アンプのおすすめ商品を紹介します。
高品質な真空管がA4サイズに収まる
真空管アンプに使用されるトランスという電子部品はスペースをとりますが、自社生産された小型でも高性能なラックスマンのトランスは、A4サイズに収まるコンパクトな真空管アンプを実現しました。
豊かな音色と寿命が長いことで知られるJJ(スロバキア)製の真空管を採用しています。真空管のオレンジの灯りとともにあたたかみを感じられるサウンドです。
カラーが目を引くおしゃれなアンプ
6BQ5を搭載したシングルアンプです。とてもオーソドックスな設計で1960年代の真空管アンプ全盛時代を思い起こさせます。
全体がコンパクトにまとめられており、コストパフォーマンスのいいアイテム。6.3mmのヘッドホン端子に対応しており、耳元で音楽鑑賞をすることもできます。小出力なので、おだやかなサウンドと合わせて使いたいですね。
Bluetoothでスマホ接続できる
使用されている真空管KT88は、ヨーロッパで開発された大出力のオーディオ専用真空管でパワフルな音質が特徴です。真空管ケージ付きでスマホのBluetoothと接続可能です。
ヘッドホンアンプ出力を使い、このデバイスをイヤホンやヘッドホン向けのアンプリファーとしても使用できます。多機能なので、ユーザーによって多様な使い道を楽しめるでしょう。
手作業でつくられたこだわりが光る
使用されている真空管EL-34はプロのギタリストも使用するギターアンプに使用されている真空管。味わい深いヨーロピアンサウンドです。
ていねいな手動の溶接による手間暇かけた工程が生み出す、やわらかなアコースティックサウンドに浸ることができるアンプです。価格も手頃に検討できる範囲なので真空管アンプビギナー入門機にもいいでしょう。
パールホワイトに光が映える!
3Wという小出力アンプですが、周波数特性が30Hz~40kHzと真空管アンプとしてはとても広帯域でハイレゾ音源にも。
横幅19cm、奥行き18cmというコンパクトさでベッドサイドといった限られたスペースにも設置可能。同メーカーの『Ruby』に続くアイテムで、デザイン性と品質の高さを兼ね備えています。
パワフルなサウンドを表現
力強いサウンドを表現するしっかりとした重量感。ステンレスのスタイリッシュさを活かしたシンプルなデザインで、飽きを感じさせません。
低音〜中音あたりの音域を得意としており、深みのある音を表現。手溶接によるきめこまかい工程でつくられており、あたたかさがあります。音楽を聴くのが毎日の楽しみなルーティーンになること請け合いです。
PCオーディオにも対応したミニアンプ
旧ソ連等東側で開発された真空管6P1を使用。東側の真空管は独自の進化をし、現在でも軍用に使用されており信頼性の高さが特徴です。
ハンマートーンをほどこしたボディカラーに、グレイッシュな仕上げで塗装された天然木のフェイスパネルを採用。省スペースでブックシェルフスピーカーと組み合わせた使い方も良好です。
生活に寄り添う使いやすさ
真空管ならではのあたたかで、心地いいサウンドが魅力。リビングルームなどで使用してもコミュニケーションの邪魔にならない、ナチュラルな響きとリアリティを生み出す真空管アンプ。
お部屋になじむ使いやすさに配慮されており、入出力端子が上方向を向いています。背面がフラットになり、テーブルやブックシェルフにおいてもすっきり収まる仕様です。
DACにてハイレゾ音源を再現
デジタル信号をアナログ信号に変換するDACを搭載。ハイレゾにじゅうぶん対応できる仕様で、アナログらしいあたたかなサウンドとして表現します。
音の解像度が高く、クオリティにも納得。高出力で音にボリュームのあるミュージックが楽しめます。部品ひとつひとつにこだわった製造方法で音の厚みが感じられるでしょう。黒で統一されたデザイン性も、いい音を彩ります。
広い世代の音楽に合うアンプ
音源再生時のダイナミックさを再現する電子制御アッテネーターLECUAと出力管6L6GCで、趣深い音楽性を表現。
豊かなパワーアンプ回路とのマッチングで、時代を問わず音源の魅力をしっかり味わうことができます。クラシックな木箱ケースとテクノロジーを絶妙にミックスした、ハイブリッドな持ち味の次世代真空管アンプです。
安定的なサウンドを紡ぎ出す削り出しアルミ筐体
イタリア・ナポリのブランド『キャロットワン』のプリアンプ兼ヘッドホンアンプ。ヘッドホンで使いたいという方は検討してみてもいいでしょう。
また、このモデルの大きな特徴は「安定感のあるサウンド」。その秘訣は電源系統と信号系統の基盤を分けて組み込むこと。それぞれの基盤を削り出し筐体のふたつの部屋に個別で入れているため、互いに干渉することを防いでいます。
超コスパで体感できるビギナー向けセット
高音質といわれているローミュー(μ)の3極真空管を低歪のSRPPとして前段に使用したモデル。出力段も古くから定評のある6L6のプッシュプルです。周波数特性は20Hz~40kHzと広帯域でハイレゾ音源も楽しめます。
デジタル特有の瞬発力の高いレスポンスと、高音質サウンドをあたたかみのある深い音色の真空管アンプで聴きたい人におすすめです。クラシックのコンサートの臨場感を再現してくれます。
番外編|デジタルアンプとのハイブリッドモデル5選
新旧技術を融合させたハイブリッドアンプをご紹介します。
新旧技術によるハイブリッドアンプ
YAMAHA社製のデジタルアンプIC『YDA138』を搭載。真空管とデジタルのサウンドを組み合わせて、迫力のあるサウンドを表現してくれます。
FX-AUDIOは真空管プリアンプとデジタルアンプどちらにおいても経験豊富。これまで培ったそれぞれの技術を組み合わせて、新旧のよさを引き出したハイブリッドアンプです。
和紙の特性を活かしたサウンド
真空管ハイブリッドアンプを搭載した、省スペースの一体型デザイン。真空管とデジタルをハイブリッドしたアンプで、NFCに対応したBluetooth機能を搭載しています。
かたさとやわらかさを絶妙なバランスで保つ素材の和紙を使ったスピーカーが特徴。音の振動に負けない頑丈さと、スピーカー内の不要な音波を打ち消すしなやかさで、繊細な音を表現してくれます。
かっこいい見た目でノイズレス
真空管による前段回路と、半導体による出力段回路を組み合わせたハイブリッド型。純粋な真空管アンプではないものの、100W(8Ω)の出力は魅力です。
ベースとトレブルは−10〜+10dBの間で調整することができ、お好みのトーンで音楽を楽しむことができます。入力の抵抗を少なくし、ノイズや歪みを発生させにくくすることで本来の音を表現できる仕様です。
小型でも音は秀逸! 良コスパアイテムです
真空管と最新のテクノロジーがバランスよく融合したClass Dアンプを搭載。デザイン性の高いコンパクトなサイズ感でありながら、音質に妥協を見せない製品です。
『家庭に太陽のような笑顔を』というコンセプトにより、リビングルームやベッドルーム、PCデスクなど場所を選ばず備えつけられます。ヘッドホンやイヤホン、フロア型、ブックシェルフ型、コンパクト型などのパッシブスピーカーとの接続もでき、コストパフォーマンスも良好です。
コスパで選ぶなら! Bluetooth5.0対応
真空管アンプの醍醐味は真空管を交換して音質を変えられること。それがこの価格で手軽に、かつワイヤレス接続(Bluetooth5.0に対応)で楽しめるのはこのプリアンプのメリットのひとつです。
また、音の良さにも定評があり、コスパはで選ぶなら購入して損はないでしょう。
おすすめ商品の比較一覧表
各通販サイトのランキングを見る 真空管アンプの売れ筋をチェック
楽天市場、Yahoo!ショッピングでの真空管アンプの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
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まとめ
本記事では、真空管アンプの特徴や仕組み、選び方、そしておすすめ商品をご紹介しましたが、いかがでしたか?
商品を選ぶ際は、管の種類、回路(管)の構成、ハイレゾ対応かどうか、そして、出力形式をチェックすることで、きっと自分にピッタリの商品を選ぶことができるはずです。
真空管アンプはあたたかみと深みのあるサウンドを生み出してくれる魅力があり、また、インテリアとしても使えるアイテム。特徴も持ち味も価格にもバリエーションがあるので、楽しく迷いながら、ぜひ本記事を参考に、あなたの好みにふさわしい真空管アンプを見つけましょう。
◆記事で紹介した商品を購入すると、売上の一部がマイナビおすすめナビに還元されることがあります。◆特定商品の広告を行う場合には、商品情報に「PR」表記を記載します。◆「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。◆商品スペックは、メーカーや発売元のホームページ、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。◆記事で紹介する商品の価格やリンク情報は、ECサイトから提供を受けたAPIにより取得しています。データ取得時点の情報のため最新の情報ではない場合があります。◆レビューで試した商品は記事作成時のもので、その後、商品のリニューアルによって仕様が変更されていたり、製造・販売が中止されている場合があります。
専門は音響アンプの電子回路設計。筐体設計。真空管回路設計。2005年音響機器を開発・製造・販売する会社を設立。国内はもとより、欧州を中心に37ケ国に輸出。 2007年プロオーディオ事業、2013年ログハウス事業、2015年コンサート企画運営事業を開始。2018年から新規事業としてロシア製軍用時計の輸入を始める。その後、数ケ国の機械式腕時計や懐中時計をラインナップ。 2008年よりFM岐阜の長寿番組である『ムジカスタイル』(毎週木曜18:30~)のナビゲーターに。コラム等の執筆多数。総アクセス数370万を超えるブログは、現在も100万アクセス/年のペースで進行中。 ローカル鉄道養老鉄道支援組織『乗って残そう揖斐養老線実行委員会』会長。大垣ケーブルテレビ番組審議委員。