スピーカーケーブルを変えると音質も変わる?

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スピーカーケーブルとは、スピーカーとアンプなどの機器ををつなぐケーブルのことです。
アンプからスピーカーなどへ音の信号を伝送する際に、実は伝送ロスが生じています。そこで、よりオリジナルの音楽信号に近づけるためには、この伝送ロスを少なくすることがポイント。
そのため、ケーブルを変えるだけで、サウンドイメージを変えることが可能に。オーディオ機器初心者でも、手軽に自分の好きな音質にできるのでぜひ試してみましょう。
スピーカーケーブルの選び方 長さ・種類・素材
家電製品総合アドバイザーである安蔵靖志さんに、スピーカーケーブルを選ぶ際のポイントを挙げていただきました。ぜひ参考にしてみてください。
聴きたい音質に合わせて素材を選ぼう
ここでは、素材によってどのように音質が変わるのか、それぞれみていきましょう。
一般的によく使われる銅ケーブル
スピーカーケーブルといえば、よく使われているのが銅です。銅の純度の違いや結晶構造の違いで、こまかく分類されます。一般的なものが、TPC(タフピッチ銅)、より高価なスピーカーケーブルにみられるのが純度の高いOFC(無酸素銅)です。
銅の魅力は、その自然な描写力。純度の高さや構造の違いで、さらに表現力が違ってきます。
IT・家電ジャーナリスト
ケーブルの素材には、銅やOFC(無酸素銅)、銀などが用いられています。金属の種類によって異なる点はおもに電気抵抗率です。この電気抵抗率に優れている(抵抗が少ない)ほど、元の音がそのまま伝わる傾向にあります。
銅は銀についで電気抵抗率にすぐれており、高級ケーブルではその純度を高めたOFCが用いられることが多いのです。そのほか、銅にごく微量のチタンを添加して高純度銅6N(純度約99.9999%)相当の特性を実現したHiFCなどもあります。
導体としてすぐれた銀ケーブル
銀は、金属のなかでも電気抵抗率にすぐれていますが、高価な素材のため手が届きにくい存在です。銅より銀は、敏感に音の信号に応答できるため、繊細な高音を好む人にぜひ検討してほしい素材。
最近では4NAgも開発され、ギラついた高音ではなくなっています。価格的に高くなりがちですが、ポップやロックを楽しむなら銀製がいいでしょう。
IT・家電ジャーナリスト
銀製のスピーカーケーブルは、高音域にこだわりたい人にぴったりです。
それぞれの長所を生かした複合導体ケーブル
さまざまな素材の長所を組み合わせることで、製造されたスピーカーケーブルが複合導体ケーブルです。ハイブリッド導体とも呼ばれています。それぞれの素材のキャラクターを生かし、配合バランスを変えることができるのがポイントです。
そのためバランスよく音域を網羅することがかない、幅広い音域に対応しているのが基本的な特徴といえます。
ケーブルの構造も重要
平行型
平行型とは、スピーカーケーブルに用いられるプラスとマイナスの2本のケーブルを平行に並べたタイプです。構造が単純であり、ケーブルの太さや本数、ひねりの強さ、ケーブルを覆う外部絶縁体の素材などでさまざまな種類があります。
ツイスト型
ツイスト型とは、2本のケーブルをより合わせてツイスト状にしたタイプのものです。
ツイスト状にすることでプラスとマイナスのケーブルが相互に影響する力を中和し、安定して音がでると言われています。安価なモデルからハイエンドモデルまで幅広く用いられています。
スターガット(4芯)型
スターガット型とは、プラスとマイナスのケーブルを2対、計4本にして並列につないだタイプです。下記でご紹介しているカナレ(CANARE)『4心スピーカーケーブル(4S8-EM)』がこれにあたります。
ツイスト型よりもさらにプラスとマイナスの相互作用を中和することで、マイルドでありながら低音の良く響く音質になるといわれています。高価格帯の商品に用いられることが多い一方で、配線がやや複雑であるため、上級者向けとされています。
端子の種類を確認しよう
スピーカーケーブルは、アンプとスピーカーを接続します。しかし、スピーカーに付属するケーブルなどは端子が付いておらず、むき出しになっていることもあります。
そのままではケーブルが酸化して音質が劣化したり、つなぎ替えが面倒になったりするので、多くの人が端子の付いたケーブルを利用します。端子にはいくつかの種類があり、それぞれメリットやデメリットがあります。
家庭用には端子なしケーブル
端子なしタイプは、家庭用など安価なスピーカーやオーディオ機器との接続によく使われています。 これはスピーカーの接続部にさしみ込むタイプです。
出回っている商品数が多いのがポイントです。素材・構造・長さなど幅広い商品から選択したい人にぴったり。端子つきケーブルよりどうしても外れやすくなりますが、必要があれば、別売りのプラグを購入して端子つきへ改造もできます。
バナナの形状をしたバナナプラグ
プラグを差し込めるタイプのオーディオ機器を使用しているならバナナプラグがいいでしょう。端子の形状からバナナと呼ばれ、抜き差しがかんたんでスピーカーケーブルをセッティングしやすい機能的な端子です。
ロックできるタイプなどもあり、 抜けづらく振動に強いので、音質がブレないのがポイント。さらに導線同士の接触によショートも防げます。
PA機器に接続するならフォーンあるいはスピコンプラグ
レコーディングスタジオによくあるPA機器。PA機器にスピーカーを接続するなら、フォーンプラグやスピコンプラグを使います。フォーンプラグは頻繁に抜き差しする場合に便利です。
スピコンプラグは、ショートを気にせず、大出力でも使えます。誤って抜けおちるといったトラブルも少ないのがポイント。かんたんにしっかり脱着をしたいならスピコンプラグでしょう。
はさみ込んで接続するY字プラグ
別名Yラグとも呼ばれている、Y字プラグ。スピーカーケーブルをオーディオ機器と繋ぐときに、はさみ込んで接続する機能的な端子です。
商品点数は少なめですが、2カ所でネジ止めできるタイプもあるので、抜けが気になる人は探してみましょう。被膜をはがす必要もないので、配線を酸化させたくないときにもY字プラグは役立ちます。
ケーブルの太さを選ぶ
スピーカーケーブルの太さは、音質に影響します。ケーブルが太くなるほど高音域が弱くなり、ほそいほど高音域は鋭くなりますが低音域は少なくなるのが特徴です。
ケーブルの太さは、径(mm)やゲージ(AWG)で表記されています。ゲージの場合は、数字が大きいほど径が小さくなる点に注意が必要です。音域にとくにこだわらないなら、基本サイズの12~14ゲージを選ぶといいでしょう。
ケーブルの長さに注目
スピーカーケーブルは設置場所によって必要な長さが異なります。そのため、まずはケーブルの長さを決めましょう。ケーブルの長さは、できるだけ短くしたほうがノイズは混入しにくくなります。
しかし、オーディオ機器をラックなどから出してメンテナンスや掃除をしたり、ほかのオーディオ機器と接続したりできるように、ある程度の余裕を持たせたほうがいいでしょう。
目安としては、アンプとスピーカーとの水平距離に加えて、それぞれの床面からの高さを計測し、少し余裕を持たせた程度の長さにしておくのがポイントです。
人気メーカーにこだわって選ぶ
スピーカーケーブルのメーカーは数多く存在しますが、ぜひ知っておきたいメーカーをご紹介します。まずは、日本人のモノづくりの心を大切にしメイドインジャパン・ケーブルを送り出しているZonotone。
オリンピックやグラミー賞授賞式にマイクロホンを提供しているオーディオテクニカ。環境にやさしい製品づくりにこだわるアメリカのBeldenなど、メーカーごとの特徴も選ぶときの参考にしましょう。
まずは好みの音質を見つける 家電スペシャリスト・安蔵靖志さんのアドバイス
IT・家電ジャーナリスト
スピーカーケーブルは芯線の素材だけでなく、内部構造や被覆の素材などによって音質が変わってきます。さらには端子の種類や素材、ケーブルの引き回しの仕方なども音質に影響を与えるため、最適な選び方や引き回し方を見つけるのは簡単ではありません。
まずは音質的に好みのケーブルを見つけ、そこから端子選びにこだわってみたり、引き回し方を工夫してみたりするといいでしょう。
スピーカーケーブルおすすめ13選 高品質でありながら、エントリー向けの注目商品
家電のスペシャリストである安蔵靖志さんに、おすすめのスピーカーケーブルを13種類挙げていただきました。高品質でありながら、エントリー向けの注目商品をご紹介いただきましたので、ぜひご参考にしてください。

CANARE(カナレ)『4心スピーカーケーブル(4S8-EM)』

出典:Amazon
材質 | 耐燃性ポリエチレン |
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長さ | 1m単位の切り売り販売 |

Audio-Technica(オーディオテクニカ)『アートリンク スピーカーケーブル(AT-ES1100)』

出典:Amazon
材質 | PE絶縁体 |
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長さ | 1m単位の切売り販売 |

BELDEN(ベルデン)『スピーカーケーブル(STUDIO708EX)』

出典:Amazon
材質 | OFHC |
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長さ | 3m、5m、7m、12m |

FURUTECH(フルテック)『スピーカーケーブル(FS-301)』

出典:Amazon
材質 | μ-OFC |
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長さ | 長さ1m切り売り |

ZONOTONE(ゾノトーン)『スピーカーケーブル(6NSP-Granster 2200α)』

出典:Amazon
材質 | 6NCu、PCUHD、HiFC、OFC |
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長さ | 長さ1m切り売り |
Amazonベーシック『スピーカーケーブル 16ゲージ 30m』










出典:Amazon
材質 | CCA(銅とアルミのクラッド鋼素材) |
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長さ | 15m、30m |
BELDEN(ベルデン)『スピーカーケーブル(8460)』

出典:Amazon
材質 | メッキ線材 |
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長さ | 5m単位での販売 |
KRYNA(クライナ)『スピーカーケーブル(Spca3)』






出典:Amazon
材質 | 高純度軟銅線(芯線)、PVC(外皮) |
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長さ | 1.0m単位で切り売り販売 |
ホログラフィックサウンドの入門モデル
KRYNA(クライナ)が誇る「Spca」シリーズのエントリーモデルに位置するケーブルです。同ブランドが提唱する、広がり、高さ、奥行きの3次元で立体的な音響を生み出す「ホログラフィックサウンド」を身近に体験できます。
上位モデルと同じ超極細軟銅線を使用しているのもポイントです。しっかりした作りの落ち着いたブルーのケーブルで、絡むことなくオーディオとの接続ができます。KRYNA(クライナ)の「Spca」シリーズは、裏方的な位置付けで開発されたもので、派手さはないものの、安定の音質を作ってくれるでしょう。ケーブルはあくまで音を支える裏方的な役割で使いたいという人に「Spca」シリーズは向いています。
「Spca」シリーズには、極めて細い軟導線が使われています。その微細さは髪の毛に近いほどで、この繊細さが確かでクリアな音を再現してくれるのです。多重ツイストによる2芯構造からできるだけシンプルな作りにこだわり、場所を選ばずに柔軟性の高い使い方ができるケーブルとして仕上がっています。
見た目は硬めの印象を受けるかもしれませんが、使いやすさを優先し、無駄を省いた柔軟性の高いケーブルです。オーディオとのバランスを考えながら、適度に余裕を持って接続できる長さでセッティングしましょう。
YFF『無酸素純銅スピーカーケーブル』


















出典:Amazon
材質 | 無酸素純銅 |
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長さ | 5m〜100m |
8ONE『スピーカーケーブル』






出典:Amazon
材質 | 銅 |
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長さ | 5m |
HONKENT『バナナプラグ付スピーカーケーブル』














出典:Amazon
材質 | 純銅 |
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長さ | 1.5m |
Postta『スピーカーワイヤー』












出典:Amazon
材質 | 無酸素銅 |
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長さ | 15m、30m |
RAYWILL『オーディオケーブル』
















出典:Amazon
材質 | 高純度OFC |
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長さ | 10m〜100m |
「スピーカーケーブル」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする スピーカーケーブルの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでのスピーカーケーブルの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
スピーカーケーブルに関する素朴な疑問
そもそも、最初から付属しているスピーカーケーブルではダメなのか?
一般的に、オーディオに最初から付属しているスピーカーケーブルは特徴のない製品が多いものです。そのため、安価なケーブルであっても素材の良いものや構造の違うものへ交換することで、音質の変化が見込まれます。とはいっても、付属のケーブルが使えないということではありません。音質を上げるための手段としてスピーカーケーブルの交換を考えるということになります。
ケーブルが長すぎないことも良い音質を追求するうえで重要なポイントです。しかし、あまりにも短すぎても、適切に接続することができません。オーディオとスピーカーの位置を考え、置く場所や使い方なども考慮することが大切です。また、ケーブルの上に物が乗ることのないよう注意しましょう。ケーブルがつぶれてしまっては、音質を下げる原因にもなりますし、断線することもあります。付属のケーブルから交換することは、音質を優先するだけでなく、使う環境に合わせた適度な長さを確保するためにも重要なことなのです。まず、付属のケーブルで試してみて、音質と長さの両方から判断し、使い勝手の良いものを選ぶようにしましょう。
スピーカーケーブルは高ければよい?
スピーカーケーブル選びの難しい点は、高価なケーブルが必ずしもよい音であるとは限らないところです。素材や構造の違いで音質は変化しますが、ホームシアターやカーオーディオなど、使用用途によって適した音質も異なります。さらに言えば、良い音だと判断するのも違う耳をもつ違う人間で、そこには好みというものがあります。まずは好みの音を探してから、選び方のポイントやおすすめ商品を参照するようにしましょう。
スピーカーケーブルに関連する記事のご紹介
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
※マイナビおすすめナビでは常に情報の更新に努めておりますが、記事は掲載・更新時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。修正の必要に気付かれた場合は、ぜひ、記事の下「お問い合わせはこちら」からお知らせください。(掲載:マイナビおすすめナビ編集部)
※2020/11/26 コンテンツ追加のため、記事を更新しました(マイナビおすすめナビ編集部 福本航大)
一般財団法人 家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout オーディオプレーヤー、スピーカーなどのガイドを務める。 日経BP社『日経ネットナビ』『日経ネットブレーン』『デジタルARENA』『日経トレンディネット』などを経てフリーに。 デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。 KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」に出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの構成などにも携わっている。