洋楽レゲエのCDを選ぶ際のポイント 音楽ライターに聞く
レゲエは、1960年代に日本の秋田県ほどの国土であるジャマイカにて発祥。その独自性や普遍のメッセージ性が評価され、2018年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。ここからは、音楽ライターの妹尾みえさんに、洋楽レゲエのCDを選ぶときのポイントを教えてもらいます。
ボブ・マーリーとルーツレゲエの歴史にふれる
音楽ライター
ボブ・マーリーの褪せることないメッセージ
レゲエの神様とも呼ばれたボブ・マーリーは、圧政や差別に抵抗し、愛と自由を歌う詩人として、圧倒的なカリスマ性を示しました。36歳の若さで亡くなりましたが、今もなおジャンルを超え影響力を与え続けています。
こうした音楽的背景にあるのは、「ラスタファリズム」と呼ばれる宗教的性格の強いアフリカ回帰運動です。ジャーと呼ばれる神を崇め、生き方と音楽が直結したレゲエは一般に「ルーツレゲエ」と呼ばれます。
「ルーツレゲエ」はその一部ですが、ゆるやかなビートにメッセージを乗せた点が大きな特徴です。ボブの歌から、いつの時代も色褪せることのない彼の力強いメッセージを受け取り、選び方の参考にしてみてください。
未発表曲やライヴ音源を含む3枚組。『One Love(ワン・ラヴ)』『EXODUS(エクソダス)』などボブの代名詞ともいえるレゲエのクラシックをはじめ、全28曲が収録されている。
UK(イギリス)レゲエ・シーンの奥深さにも注目
音楽ライター
おしゃれなロマンチックさが魅力のUKレゲエ
ジャマイカとの結びつきが深いイギリスは、レゲエ第二の故郷。「UKレゲエ」「ブリティッシュレゲエ」のなかでも、ラヴソングの多い「ラヴァーズロック」は70年代半ばからクラブシーンで支持を集め、ジャマイカに逆輸入されました。レゲエのリズムと太いベースラインに、アメリカで流行したフィラデルフィア・ソウルなどの要素がブレンドされロマンチックな雰囲気を持ちます。
女性シンガーが多いなかで活躍した数少ない男性シンガーの頂点に君臨するのがマキシ・プリースト。彼の歌う「Close to you」は90年に全米でもNo.1に輝きました。 UKレゲエの扉を叩けば、自ずとジャマイカのレゲエも見えてくるはずです。
R&B要素も取り入れた「ラヴァーズ・ロック」が聴けるマキシ・プリーストの名盤。日本でも大ヒットした『Close to you』を収録。ラブソングが好きな方は必聴の1枚。
レゲエの醍醐味「ダンスホール」を体感してみる
音楽ライター
ジャマイカレゲエのリアルが見えるダンスホール
メッセージ性の強いルーツレゲエに代わって80年代初めに主流となったのが「ダンスホール」。ドラムマシンやサンプラーなどの打ち込みを積極的に使って繰り出されるビート、スラックスと呼ばれる下ネタ満載の歌詞、ラップのルーツとも言われるマイク1本でまくしたてるDJによる「トースティング」(リズムに合わせてしゃべったり語ったりする歌唱法)が特徴です。
全米チャートを席捲し「ダンスホール・レゲエの帝王」と呼ばれるショーン・ポール(2000年デビュー)はじめ、ダンスホールを世界に広めたイエローマンやビーニ・マンといったレジェンドから勢いのある新人まで、ジャマイカのリアルを感じるならまずここから体感してください。
洋楽レゲエのおすすめCD7選 音楽ライターが厳選
ここまで紹介した洋楽レゲエのCDの選び方のポイントをふまえて、妹尾みえさんに選んでもらったおすすめの商品を紹介します。

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『エクソダス40(UICY-78373)』

出典:Amazon
リリース(年) | 2017 |
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レーベル | UNIVERSAL MUSIC |
収録曲数 | 28曲 |

ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ『ライヴ!<2CDデラックス・エディション>(UICY-15709/10)』




出典:Amazon
リリース(年) | 2017 |
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レーベル | UNIVERSAL MUSIC |
収録曲数 | 22曲 |
こころをひとつに。愛を肌で感じるライヴ盤
1975年7月にロンドンのライシアム・シアターでおこなわれた2公演の模様を2枚組でたっぷりと。過去にリリースされていた『ライヴ!』と比較すると、全22曲中14曲が初出音源となります。客席に水の輪のように広がっていく美しい『ノー・ウーマン、ノー・クライ』、エリック・クラプトンのカヴァーで知られる『アイ・ショット・ザ・シェリフ』、闘うことをやめるな! と気持ちを奮い立たせてくれる『ゲット・アップ、スタンド・アップ』など代表作を収録。
ボブ・マーリーの力強いヴォーカルと、ウェイラーズというバンドのみずみずしさに打たれます。知らず知らずと身体が揺れ、いてもたってもいられないような胸の高まりを覚えるはずです。

ジミー・クリフ『ザ・ハーダー・ゼイ・カム・オリジナル・サウンドトラック(UICY-76884)』

出典:Amazon
リリース(年) | 1972 |
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レーベル | UNIVERSAL MUSIC |
収録曲数 | 12曲 |
ジャマイカのリアリティと底知れぬパワーを体感
ボブ・マーリーとともに、1970年代の日本のレゲエ・ブームを牽引したのがジャマイカ初の商業映画『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』(1972年/日本公開は78年)。ジミー・クリフは音楽だけでなく、歌手を目指して上京しながらも犯罪に手を染めてしまう主人公の青年も演じています。夢と希望、それを阻む現実との葛藤、そしてジャマイカのゲットーのリアリティ。
何度みても、あふれ出すパッションに揺さぶられる。生きて奴隷になるなら墓場で自由になると歌うタイトル曲、ソウルフルな名バラード『遙かなる河(メニー・リヴァース・トゥ・クロス)』などサントラも永遠の名曲ばかり。機会があればぜひ映画もご覧ください。

ロッカーズ『ロッカーズ~オリジナル・サウンドトラック(UICY-76888)』

出典:Amazon
リリース(年) | 1978 |
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レーベル | UNIVERSAL MUSIC |
収録曲数 | 14曲 |
映画から生まれたレゲエ・ファンのバイブル
主演の名ドラマー、リロイ・ホースマウス・ウォレスはじめそうそうたるミュージシャンが実名で出演した『ロッカーズ』のサウンドトラック(79年リリース)。ゆったりとしたリズムとともに、ボブ・マーリーが存命だった頃にジャマイカで聴こえていた音、さらにレゲエを生み出した生活の空気を想像できる1枚です。
奇才リー・ペリーがプロデュースしたファルセットで迫るジュニア・マーヴィン、ヘプトーンズによるR&Bの影響を思わせるやわらかなコーラス、そして波の音とともにアカペラで歌うバーニング・スピアのせつないナンバー。レゲエはこれほど繊細な音楽だったのかと、今さらながら驚かされます。映画を観ていない方にも70年代レゲエの黄金のコンピとしておすすめできます。

マキシ・プリースト『ボナファイド(UICY-76926)』

出典:Amazon
リリース(年) | 1990 |
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レーベル | UNIVERSAL MUSIC |
収録曲数 | 12曲 |

シャバ・ランクス『グレイテスト・ヒッツ(ESCA-7887)』

出典:Amazon
リリース(年) | 2001 |
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レーベル | SONY |
収録曲数 | 16曲 |
ダンスホールの王様は、えげつないほどにクール!
コンピュータを駆使した完璧なリディム(リズム)にのせ、ダミ声で、えげつない歌詞をラップする「キング・オブ・ダンスホール・レゲエ」シャバ・ランクス。世界のシャバになったあとも浮き足だつことなく、レゲエの伝統をリスペクトしながら挑戦し続けるブレない姿勢は、ヒップホップのアーティストにも一目おかれています。
本作はシェヴィル・フランクリンとのデュエット『ミスター・ラヴァーマン(愛の貴公子)』はじめマキシ・プリーストとの『ハウスコール』、ジョニー・ギルとの『スロウ・アンド・セクシー』、KRSワン、ココTとの共演なども収められ、シャバの虜になること間違いなしの中毒性の高い1枚です。

ショーン・ポール『ダッティ・グレイテスト・ヒッツ~ベスト・オブ・ショーン・ポール(WPCR-17853)』




出典:Amazon
リリース(年) | 2017 |
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レーベル | Warner Music Japan |
収録曲数 | 21曲 |
21世紀のレゲエなら、これを聴け!
ヒップホップに影響された独自のスタイルで2000年にデビュー。今やR&Bシーンを中心に全方位的に注目される、21世紀を代表するジャマイカが生んだ世界のスーパースターになったのがショーン・ポールです。本作は全米No.1ヒットの『ゲット・ビジー』『テンプラチャー』、ビヨンセとの共演で全米No.1ヒットとなった『ベイビー・ボーイ』などのクラブ・シーンにも欠かせないメガヒットに加え、日本のファン向けにボーナス・トラックが3曲!
日本のアーティストMs.OOJA、LECCAとコラボしたスペシャルテイク、そしてトロピカル・ハウス・シーンで絶大な人気を誇るマトーマと共演した『パラダイス』も聴き逃せません。
「洋楽レゲエCD」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 洋楽・レゲエの売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの洋楽・レゲエの売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
イメージに縛られずお気に入りの名盤を見つけよう
音楽ライター
視聴サイトも活用して本場のレゲエにも触れてみよう
夏になるとレゲエを聴きたくなるという方は多いと思います。たしかにジャマイカの太陽を彷彿とさせるのですが、今やレゲエは世界の音楽。季節にとらわれてはもったいない! 同じように、赤緑黄を基調にしたファッションにドレッド・ヘアというイメージに縛られると、進化するシーンに追いつかないかもしれません。
一方、ボブ・マーリーやジミー・クリフのようなルーツ・レゲエの大御所や最近のスターを除くとCDについては国内盤が少ないのが現状です。未発表を含む編集盤はいきなりヘビーだと感じる方は、サイトの試聴機能などを上手に使い、まずはお気に入りの1曲を探してください。
※「選び方」で紹介している情報は、必ずしも個々の商品の安全性・有効性を示しているわけではありません。商品を選ぶときの参考情報としてご利用ください。
※商品スペックについて、メーカーや発売元のホームページなどで商品情報を確認できない場合は、Amazonや楽天市場などの販売店の情報を参考にしています。
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※2020/12/09 コンテンツ追加・修正のため記事を更新しました。(マイナビおすすめナビ編集部 名原広雄)
日本で唯一のブルース/ソウル/ゴスペルの専門誌「ブルース&ソウル・レコーズ」誌では創刊当初からレギュラーを務める唯一の女性ライター。 暮らしと共にあるライヴ感を大切にしており、洋楽だけでなく国内のミュージシャンにもエールを送り続けている。「フロントポーチ」主宰。