村上春樹とはどんな作家?
1949年に京都府で生まれたあと、兵庫県で育った村上春樹。早稲田大学在学中に開業したジャズ喫茶の「ピーター・キャット」で働く傍ら執筆した、「風の歌を聴け」で第22回群像新人文学賞を受賞し、作家デビューを飾りました。
その後、「羊をめぐる冒険」で第4回野間文芸新人賞、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で第21回谷崎潤一郎賞、「1Q84」で毎日出版文化賞など、数々の賞を受賞しています。
また、2006年には国際的な文学賞であるフランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞などを受賞し、日本国内にとどまらず、世界的にも評価されています。
なお、小説だけでなくエッセイや紀行文、翻訳本などのジャンルも手がけています。
村上春樹作品の特徴と人気を集める理由
村上春樹の作品は、テーマに喪失や戦争などに関するものが多い一方で、音楽にも深い知識があることから、楽曲などに関連する作品も出版されています。
作品中では、文章自体は親しみやすいものの、奇抜な比喩表現を多用したり、独特の世界観があるため、ストーリーが難解と言われています。
鮮やかな色彩や情景が目の前に浮かんでくるような、創造力をかき立てられる表現が魅力です。
村上春樹のおすすめ29選
ここからは、数ある村上春樹の作品からおすすめの本をご紹介します。初心者向けの読みやすい作品と、村上春樹の作風が好きなら押さえておきたい作品別にご紹介。司書教諭のyokoさんがえらぶおすすめ作品もご紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
▼初めて読む方向きの「読みやすい作品」
▼好きになったら「押さえておきたい作品」
▼初めて読む方向きの「読みやすい作品」
新潮文庫『海辺のカフカ』は、村上春樹ワールドが堪能できる一冊。主人公が15歳の少年なので、そのころの自分を思い出しながら読めるでしょう。外国でも翻訳されている、有名な作品です。

誕生日に家を出た少年の物語
15歳の少年を主人公にした、長編小説です。
誕生日の夜にひとり夜行バスで家を出た少年が、知らない街にやってきて小さい図書館で暮らすようになるストーリー。
英語などに翻訳されたものが各国でも販売されているほか、舞台化もされている人気作です。村上春樹の作品をこれからはじめて読む人にもふさわしい1冊でしょう。
図書館からの不思議な脱出劇
図書館を舞台にした、絵本です。ある日、「ぼく」が図書館を訪れてオスマントルコ帝国の税金の集め方について尋ねます。
そうすると謎の老人が地下にある閲覧室へと案内してくれますが、奥から羊男が現れて…。
「ぼく」が、図書館からの脱出を目指して展開していくストーリーで、大人も楽しめるファンタジーの絵本に仕上がっています。
羊男のクリスマスストーリー
ほかの作品にも登場している羊男を主人公にした絵本です。
聖羊祭日にドーナツを食べてしまったことによって、クリスマスソングを作れなくなる呪いにかかった羊男。
ねじりドーナツを手に降りていった秘密の穴には羊博士や女の子などの登場人物が現れ、読む人も一緒にすてきなクリスマスパーティーに招待してくれます。
日常に起こる小さな50のドラマ
ほのぼのと過ごす毎日に、少しのスパイスを与えてくれるようなエッセイ本です。
柿ピーの諸問題や楽しいはずのレストランでの惨事、きんぴらを作るときにぴったりのBGMなど、ユニークな話題についてつづられた50にのぼるエッセイが収録されています。
何気ない日々のなかから見つけられた、小さなドラマをたくさん楽しめるのが魅力です。
ユニークな回文とイラストが魅力
こちらの本には、村上春樹が作った50の回文とミニエッセイ44篇が収録されています。漫画家の友沢ミミヨが描いたかわいいカラーイラストつきです。
「あ」から「わ」までの50音かるたで構成されており、「そうよ、私、したわよ……嘘」など、ユニークな回文に思わずクスっとなるでしょう。
少し変わった村上春樹ワールドを楽しめます。
やさしい気持ちになる猫の物語
村上春樹のストーリーと、イラストレーター・安西水丸の絵で構成された絵本です。
好きな猫のなかでも、とくに年老いた大きなメス猫に焦点を当てられています。猫が教えてくれる、いのちあるものにとって大切なことが語られているのが特徴です。
かしこくて心やさしい猫の姿に心身をゆだねながら読み進めていくと、最後には心があたたかくなって、幸せな気持ちになるでしょう。
受賞歴もあるデビュー作
こちらは、村上春樹のデビュー作として発表された作品で、群像新人賞を受賞しています。
1970年を舞台とした、僕と友人の鼠についてのストーリー。夏に海辺の町に帰省した2人が介抱した女の子と仲良くなり、退屈な日々を送っていきます。
ほろ苦く過ぎていく青春を軽快なタッチで捉えており、初心者でも読みやすい長編小説でしょう。
親友との過去をめぐる1冊
鉄道の駅をつくる仕事をしている、「多崎つくる」にまつわるストーリー。全米のハードカバー・フィクション部門第1位にも輝いた作品です。
名古屋で過ごした高校時代には男女含む4人の親友と付き合いがありましたが、大学に入ると突然、何の説明もなく絶縁を言い渡されてしまいました。
死の淵をさまよいながら生きてきたつくるですが、新しい恋人に促され、あのときなにが起こったのかを探りはじめます。
ムラカミワールドのはじまりとなった作品
谷崎潤一郎賞を受賞した、長編小説の代表作です。
静かな幻想の世界と、波乱万丈の冒険。この2つのストーリーが同時進行しながら織りなす不思議な並行世界が描かれており、ムラカミワールドの出発点ともされています。
「私」の意識に思考回路を組み込んだ博士と再会し、回路にまつわる秘密を聞くことになりますが…。
最後には、2つの物語を結びつける意外な結末が待っています。
▼好きになったら「押さえておきたい作品」
講談社文庫『ノルウェイの森』は、村上春樹の代表作のひとつと言ってもいいでしょう。上下巻で構成されていて、ボリュームもたっぷり。存分に村上春樹ワールドに浸れます。恋愛小説好きにもおすすめ。

等身大の人物が織りなす大人の恋愛小説
こちらは、村上春樹作品のなかでも代表的な長編小説で、上下巻合わせて11つの章で構成されています。
1969年に主人公がハンブルク空港に降り立つと、スピーカーからビートルズの「ノルウェイの森」が流れてきます。
その曲を聴いた主人公が20歳になるころの出来事を思い出すことから物語はスタート。等身大の登場人物たちにまつわる、喪失などが描かれていく恋愛小説です。
文春文庫『女のいない男たち』は、村上春樹の短編集です。短編なので、「村上春樹入門」として長編にチャレンジする前に読むのもおすすめです。「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」などが収録されています。

「ドライブ・マイ・カー」を含む短編集
村上春樹が「月刊文藝春秋」などで発表した小説をまとめた短編集です。累計100万部をこえ、ベストセラー作品になりました。
収録作品のひとつである「ドライブ・マイ・カー」は、舞台俳優の男を苛み続ける亡き妻の記憶についてつづられたストーリーです。
2021年には小説を原作とした映画が公開され、世界各地で90冠以上を受賞。封印していた記憶を解いていく物語の数々に夢中になるでしょう。
不思議な世界で2人の物語が描かれる長編傑作
毎日出版文化賞の文学・芸術部門に選ばれた小説で、6冊の文庫本シリーズになっている長編作です。
日本ではミリオンセラーを記録した傑作で、こちらも村上春樹を代表する作品のひとつになっています。
「1Q84年」と呼ばれる新しい謎の世界で、青豆と天吾の物語が展開していくのが特徴です。10歳で出会い離れ離れになった2人が再び不思議な世界でめぐり逢えるのか、目が離せません。
世界のねじを探す年代記
読売文学賞を受賞したほか、舞台化もされるなど、各方面で注目を集めた作品です。
とある世界でねじまき鳥がねじを巻かなくなってしまってから、平和だった郊外の住宅地は、闇の奥へと静かに傾きはじめてしまい…。
そこから、1984年の世田谷や1938年の満州・蒙古国境、意識の井戸の底など、ねじを探し求める年代記がはじまります。
40周年記念となる不思議な世界の長編小説
村上春樹の作家デビュー40周年に発表された、記念すべき長編小説です。
妻と別れて森の山荘で暮らす36歳の画家が、登場人物として描かれています。
画家のもとに白髪の紳士が現れたことから奇妙な出来事が起こりはじめるストーリーで、村上春樹の不思議な世界観が楽しめるでしょう。
1部・2部の合計4冊にわたって続く小説で、読みごたえもじゅうぶんです。
世界を切り取る8つの短編ストーリー
前作から6年ぶりに発表された短編小説で、合計8つの作品から構成されています。「一人称単数」というタイトルは、世界のかけらを切り取る「単眼」を意味しているのが特徴です。
切り口が増えるほど「単眼」はより「複雑」な複眼となっていき、私が私でなくなっていく…という世界が、この1冊を通して表現されています。
村上春樹にとって初の短編集
こちらの1冊は、村上春樹がはじめて発表した短編小説集です。本のタイトルとなっている作品のほかに、6つの物語が収録されています。
「中国行きのスロウ・ボート」は、1983年を舞台にした小説。中国人とひょんなことから出会った主人公が、青春を思い返しながら内なる魂の旅を経ていく様子を描いているのが特徴です。
大切なものを失った人たちの物語
身内の失踪や理不尽な死に別れ、名前の忘却など、自身にとって大事なものを突如奪われた人々の物語です。5つの短編小説が1冊にまとめられています。
孤独のなかを生きるピアノ調律師が登場する「偶然の旅人」は、心に射す光の行方を追い求めていくストーリーです。
また「ハナレイ・ベイ」では、サーファーである息子をなくしてしまった母親の人生を描いています。
29曲の訳詞とエッセイを収録
音楽に精通している村上春樹が、洋楽の訳詞とエッセイによってお気に入りの曲を紹介していく1冊です。
ビーチボーイズやドアーズ、ホリデイなど、29もの楽曲が取り上げられており、ジャズやスタンダード、ロックなど、さまざまなジャンルの音楽について触れられます。
イラストレーターである和田誠の絵もたっぷり掲載されていて、楽しめるでしょう。
膨大なTシャツコレクションを語るエッセイ
雑誌「ポパイ」に連載されていた、人気のエッセイをまとめた1冊です。
いくつもの段ボール箱で積みあがった、村上春樹の膨大なTシャツコレクションのなかから、18篇に及ぶエピソードが語られています。
ほかにも、Tシャツに関するインタビューやお気に入りのTシャツ108枚も掲載されており、ファッション好きやTシャツ好きの人も存分に楽しめるでしょう。
村上春樹のなりたちを知るエッセイ本
作家・村上春樹が、はじめて発表した自伝的エッセイです。これまでのなりたちを、自伝的なエピソードも含めて12章にわたって紹介しています。
小説の現場や、文学・世界についての考えを語りつくした読み応えのある1冊。文学賞についての考え方や、なぜ小説家という職業を選んで継続してきたかなど、村上春樹への理解がより深まるでしょう。
地下鉄サリン事件を描いたノンフィクション
村上春樹の作品のなかでは数少ない、ノンフィクションの本です。1995年3月に起こった、オウム真理教団による地下鉄サリン事件をテーマにしています。
62人の関係者にインタビューをしていきながら、村上春樹が真相に迫っていく構成です。各章は千代田線・丸ノ内線・日比谷線と路線ごとにわかれており、事件当日の朝、なにが起こっていたのかがリアルに語られています。
国内外の旅の景色をつづった紀行集
村上春樹が旅の魅力を紹介した紀行文集です。
メコン川の畔にあるラオスの町で出会った早朝の僧侶たちをはじめ、ニューヨークのジャズクラブ、イタリア・トスカーナのワインなど、世界各地での旅の様子がつづられています。
現地に行った人だけが見られる風景などの描写は、臨場感があって読むだけでも旅気分が味わえるでしょう。
ユニークな辺境・近境旅のエピソード
海外の辺境や国内の近境へ足を運んだときのエピソードが語られている紀行集です。
リュックを背負いモンゴル草原を目指したときのことや北米横断体験が紹介されています。
なかには、自動小銃で脅かされたメキシコでの経験や、無人島での潜入記など、辺境旅のハラハラドキドキするような話も含まれていて、飽きずに読めるでしょう。
シドニーへのオリンピック旅を記録
村上春樹が、2000年に開催されたシドニーオリンピックの観戦に訪れたときの様子をまとめた1冊です。
はじめてとなる南半球への旅は23日間の滞在で、著者自身が走って見て聞いて書きあげた体験が魅力。
番狂わせになったトライアスロンや砲丸投げなど、スポーツに関する話題のほか、コアラのトラウマや人食いサメなど、オーストラリアらしい話題も含まれています。
旅の風景を紡ぐ写真とエッセイ
写真家の稲越功一が撮影した写真と、村上春樹がつづったエッセイを組み合わせた文庫本です。
自分たちの記憶に残っている鮮烈な風景があるものの、それらの風景の使い道を知らないというところからスタート。
いくつもの旅を経験してきた2人が、失われた風景の記憶を紡いでいきます。カラー写真は合計58点掲載されていて、見ごたえがあるでしょう。
ある手紙からはじまる羊の冒険
野間文芸新人賞を受賞した作品です。1978年5月の消印がついた、ある1通の手紙をきっかけに羊の最後の冒険がはじまります。
その手紙は、北海道に渡ったと思われる鼠が書いたものでした。羊は、鼠を探して北海道の奥地にある牧場にたどり着きますが、そこでは恐ろしい事実が待っていました。
村上春樹の長編でも代表的な作品です。
ステップを踏みながら進む運命の物語
「羊をめぐる冒険」の続編として発表された作品で、4年後の1983年春が舞台になっています。
雪が激しく降る札幌から「僕」の新たなアドベンチャーがスタート。複雑でおかしなダンス・ステップを踏みながら、主人公は暗くて危険な運命の迷路を進んでいきます。
80年代を舞台にしながら、闇と光の交錯を描き出す描き下ろしタイトルです。
青春の終わりを描いた1冊
双子の姉妹と「僕」の日々が描かれた作品です。
古いスタン・ゲッツやピンボール、女性のぬくもりに沈んでいく「鼠」…。「僕」は、青春の終章を歩みはじめました。
やがて1つの季節が終わりを迎える、ほろ苦い物語が展開していきます。
「僕」が取りこんだピンボール・マシン(外国)との、やさしくて堂々とした結着のつけ方にも注目です。
真夜中に口を開く深淵の物語
書きおろしの長編小説です。
時計の針が夜中の12時を指す少し前に、都会のファミレスで一生懸命本を読む女性がいました。
フードパーカーを来た彼女にある男性が声をかけますが、時を同じくしてある視線が別の若い女性をとらえて…。
真夜中から空が明るくなってくるまでのあいだにひっそりと口を開ける、深淵を描き出しています。
「村上春樹」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 村上春樹の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの村上春樹の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
そのほかの小説の記事はこちら
村上春樹作品で独特の世界観を楽しもう
村上春樹の作品は、国内はもちろんのこと海外でも親しまれています。印象的な比喩表現や村上春樹独特の世界観が魅力です。
長編の小説も多くありますが、ほかにも短時間で読みやすい短編集や臨場感あふれる紀行集、イラストも楽しめる絵本など幅広いジャンルの本が出版されています。
あなたのお気に入りの1冊もきっと見つかるでしょう。今回ご紹介したおすすめの本も参考にしながら、ぜひたくさんの村上春樹作品を楽しんでください。
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村上春樹とは
1949年に京都府で生まれたあと、兵庫県で育った村上春樹。早稲田大学在学中に開業したジャズ喫茶で働く傍ら執筆した「風の歌を聴け」で第22回群像新人文学賞を受賞し、作家デビュー。
数々の賞を受賞し日本国内にとどまらず、世界的にも評価されている作家。小説だけでなくエッセイや紀行文、翻訳本などのジャンルも手がけています。
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本や博物館が好きすぎて、司書教諭の免許と学芸員の資格を保有しているライター。小学校教諭と幼稚園教諭の資格も保有。 どのようなジャンルの本も幅広く読む。趣味は小説を書くことや美術館めぐり。ネイルやマッサージなど、リラックスできることが生きがい。基本的に文化系女子。世界をひとりで旅行して、暮らすように滞在するのが好き。プチミニマリストで、がんばらない家事を意識している。