そもそもふるさと納税とは?
ふるさと納税はいまでこそ「お得」「節税」などがピックアップされていますが、もともとは「都会に住んでいても、ふるさとを応援するために自分の意思で納税できる」という地方再生のための制度でとして2008年にスタートしました。
つまり、ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付できる制度です。
ではなぜお得なのかというと、寄付した金額から自己負担額2,000円分を引いた金額が、税金から控除されるからです。また寄付金の額に応じて、返礼品として魅力的な特産物を受け取ることもできます。
しかしいくらでもお得に寄付できるわけではありません。限度上限額が家族構成や所得などによって決まっており、その上限額を超えた場合はふるさと納税のメリットを享受できなくなります。上限額の目安は、個人が納めている住民税の約2割です。
年金受給者でもふるさと納税はできるのか
年金受給者の場合、ふるさと納税ができるのか気になる人も多いようです。ここでは年金受給者のふるさと納税が可能なのかを解説します。
ふるさと納税自体は誰でもできる
ふるさと納税のコンセプトは「ふるさとや地方を元気にするために、自分の意思で自治体を選び寄付をする」ということなので、誰でも行うことができます。もちろん、年金受給者も可能です。
「いまは都会に住んでいるけれど、かつて子供の頃に住んでいたふるさとを応援したい」、「災害の支援をしたい」といった場合は、ふるさと納税を通じて地方を応援するとよいでしょう。
しかし払戻金を受けてお得にふるさと納税をしたい場合、年金受給者は自分がその恩恵を受けられるか調べる必要があります。払戻金は税金控除という形で行われます。そのためメリットを受けるには、一定額の税金を支払っていなければなりません。自分が対象にあたるか、まずは確認をしてみましょう。
税額控除の対象になるかは課税標準額次第
ふるさと年金の払戻金は、現金で戻ってくるわけではありません。翌年の所得税や住民税から控除されるかたちで戻ります。厳密には税金が安くなるわけではなく、翌年の税金を前払いで支払う形で、お得なのは返礼品がもらえる点です。
そのため控除を受けるだけの税金を支払っていなければ、払戻金を受けられず寄付を行うだけになるので注意しましょう。
公的な年金収入(老齢基礎年金、老齢厚生年金、企業年金など)は税法上、雑所得として扱われます。所得に応じて、所得税と住民税がかかるので、年金収入が多い場合にはふるさと納税のメリットを受けられるかもしれません。
しかし年金収入の場合、所得税の計算をする中で収入額から公的年金等控除額を差し引きます。この計算の中で、所得税がかからなくなる人が多くいます。
所得税の寄付金控除を受けられる可能性があるのは、公的年金等の収入が108万円以上(65歳未満)や158万円以上(65歳以上)のケースです。
また住民税に関しては、課税標準額が1,000円以上の場合は、寄付金控除を受けられる可能性があります。
しかし上述したのはあくまで目安であり、他の収入や家族構成などで変わってきます。まずは例年住民税や所得税を支払っているのかどうか確認するところから始めてみましょう。
他の所得があっても可能
家賃や駐車場代などの不動産関連の収入や、給与収入など年金以外の収入がある人もいるでしょう。この場合も、ふるさと納税の税金控除を受けられます。
しかし税金控除を差し引けるだけの所得税や住民税が発生していなければなりません。公的年金所得と、それ以外で得た収入の所得や控除を合算した金額がいくらになるか確認しましょう。
0円でなかった場合、ふるさと納税の税金控除を受けられる可能性があります。
ふるさと納税で年金受給者が受けられる控除の上限額は
ふるさと納税には控除上限額があります。これがいくらなのか、年金受給者のケースをみていきましょう。
収入が年金のみの場合
公的年金収入のみの場合、下記に当てはまるケースは所得税・住民税が共に0円のためふるさと納税の税控除を受けられません。
・65歳未満:公的年金の受給額が105万円以下
・55歳以上:公的年金の受給額が155万円以下
ここでは参考までに、65歳未満で収入が年金のみの場合のふるさと納税の上限額を表にしました。他に収入がある場合やさまざまな条件で変わることがあります。あくまで目安としてください。
Photo by マイナビおすすめナビ
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年金収入の他にも収入がある場合
年金以外に給与や不動産関連の収入があっても、ふるさと納税の税金控除を受けることができます。
たとえば年金収入の他に給与での収入がある場合には、公的年金所得と給与所得の金額を合算して、そこからふるさと納税分の寄付金控除を差し引きます。
また住民税の場合には、基礎控除や所得控除などを差し引き税率を乗じた後の合計額から、ふるさと納税分の控除を行います。
しかし家族構成や所得などの条件によって、控除上限額が変わるので注意しましょう。
控除上限額の計算方法
ふるさと納税の上限額を求める計算式は以下の通りです。
個人住民税所得割額 = (所得金額 – 所得控除金額)×10%
控除上限額 = {(個人住民税所得割額×20%)÷ [90% – (所得税率 × 1.021)]}+2,000円(自己負担金)
数値を当てはめて計算してみましょう。また個人住民税所得割額は住民税決定通知書でも確認できます。
所得税率は所得によって変わります。令和3年4月1日における所得税率は以下の通りです。
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上限額は簡単にシミュレーションできる
ふるさと納税の上限額は計算式で算出できますが、けっこう複雑で手間です。ふるさと納税のポータルサイト内にあるシミュレーション機能を使えば、家族構成や収入、年齢などの項目を入力するだけで簡単にふるさと納税の上限額がわかるのでぜひ活用してみてください。ただし給与所得者だけではなく、年金受給者でもシミュレーション可能なものに限るので注意をしてみましょう。
また総務省のホームページ内には「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」という早見表があります。こちらは給与所得者が活用するものです。年金収入の方とは上限額が異なるので、使わないようにしましょう。
年金受給者がふるさと納税を行うメリット
ふるさと納税にはさまざまなメリットがあります。年金受給者にとってのふるさと納税の魅力をみていきましょう。
自己負担金を支払えば返礼品が受け取れる
ふるさと納税の返礼品がどんどん豪華になっていくため、その返礼品競争の過熱ぶりがニュースに取り上げられてきました。肉や魚などのほかに、地ビールや特産米、ご当地グルメセットなど多彩なラインナップです。
ふるさと納税を行う側にとってはうれしいことで、魅力的な特産物が、2,000円の自己負担金を支払えば手に入れられます。もちろん自己負担額のみで済ませるためには、税金控除の対象になる必要があります。事前に対象となるか確認をしてから返礼品を選びましょう。
ワンストップ特例制度が利用できる
ふるさと納税は名前に納税とついているので、なんとなく「手続きがめんどくさそう」というイメージがあります。たしかに以前はふるさと納税を行ったら、必ず確定申告をしなければなりませんでした。
しかし現在は、「ワンストップ特例制度」を活用することができます。これは条件さえ当てはまれば、確定申告をせずにふるさと納税のメリットを享受できるという制度で、申請書とマイナンバー関連書類のコピーを各自治体に郵送するだけなので手軽に行えます。
なお年金受給者の場合、受給額の合計が400万円以下で確定申告が不要です。このワンストップ特例法を上手に活用しましょう。
住民税や所得税の控除を受けることができる
寄付金から2,000円の自己負担額を差し引いた金額が、翌年の住民税や所得税から控除されます。よく節税や減税できると表現されますが、実際には翌年の住民税や所得税を前払いしているようなものなので、節税や減税とは少し違うかもしれません。
しかし返礼品として寄付した額の3割程度の特産品がもらえたり、クレジットカード払いなのでポイントがついたりするのでやはりお得です。
好きな自治体を応援できる
もともとふるさと納税が発足したコンセプトは、自分のふるさとや応援したい自治体に自分の意思で寄付するものでした。そのため好きな自治体を応援できます。
ふるさと納税のポータルサイトを見ると魅力的な特産物がたくさん掲載されているので、返礼品から自治体を選んでもよいでしょう。
また被災地支援として、全額復興支援に充てることもできます。自治体によっては寄付金の使い道を選択できるところもあるので、寄付金の使い道から自治体を選択してみるのもおすすめです。
年金受給者がふるさと納税を行うときの注意点
サラリーマンと異なり、年金受給者だからこそ注意しなければならない点もいくつかあります。ここでは年金受給者ならではの注意点について解説します。
他の控除によって寄付金の上限が低くなる
ふるさと納税の控除限度額は、「所得税からの控除」「住民税基本分からの控除」「住民税特例分からの控除」の3つの合計で計算します。
翌年に支払う税金の額は、その年の所得で決まるため社会保険控除や生命保険控除、医療費控除、住宅ローン控除などを受けている場合には、ふるさと納税の控除限度額が低くなってしまいます。
例えば医療費控除の場合、医療費控除額の2~4.5%程度の金額分、ふるさと納税の控除限度額が減るといわれています。
もしも医療費控除の額が10万円なら、1,000~4,500円程度ふるさと納税の限度額が下がると考えられるでしょう。しかしこれはあくまで目安なので、控除上限額を正確に知りたい場合はしっかり計算する必要があります。
所得が低いと全額自己負担になる
所得が低い場合、所得税や住民税が発生していない可能性があります。ふるさと納税は税金控除という形で払い戻されます。そのため所得が低く控除できないと、寄付した金額がすべて自己負担になり、ふるさと納税の税金控除のメリットを得られないので注意しましょう。
公的年金の受給額が65歳未満で105万円以下の場合と、65歳以上で155万円以下の場合は、所得税・住民税が発生しません。
また公的年金の受給額が高くても、医療費控除や住宅ローン控除などそのほかの控除を受けている場合、限度額が変わるので注意が必要です。
収入が400万円以上だとワンストップ特例制度が利用できない
2015年からはじまった「ワンストップ特例制度」は、条件さえクリアすれば確定申告なしでふるさと納税ができる便利な制度です。この制度は寄付する自治体が6つ以上ある場合や、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告をする場合には利用できません。
公的年金収入とそれ以外の収入を合わせた金額が400万円以上の場合、確定申告が必然的に発生します。そのためワンストップ特例制度を使えません。
またワンストップ特例制度の手続きを行っていても、年度の途中で収入が400万円を超えた場合、それまで行ってた手続きはすべて無効となるので注意しましょう。この場合は忘れずに確定申告で寄付金額を申告します。
限度額が不確定なら少なめに寄付する
ふるさと納税の控除上限額は、1月~12月の収入で算出します。上限額を早めに算出できればよいのですが、年金以外の収入が発生する予定があり収入の合計が不明確ならば、限度額を超えないように予想よりも少なく寄付をしておくとよいでしょう。
限度額を超えてしまった分は、すべて自己負担となってしまいます。
また限度額を算出するシミレーション機能ですが、ふるさと納税のポータブルサイトで提供している多くのシミレーションは給与所得者向けとなっています。年金受給者と計算式が異なる可能性があるので、利用する前に注意が必要です。
年金受給者のふるさと納税に関するFAQ
ここではふるさと納税のやり方や、ワンストップ特例の条件など、よくある3つの疑問にお答えします。
ふるさと納税のやり方は?
ふるさと納税の大まかな流れは以下の通りです。
1.控除限度額の確認
2.寄付の方法を決定(窓口で直接寄付・ふるさと納税サイトなど)
3.返礼品を選ぶ
4.返礼品と書類を受け取る
5.確定申告もしくはワンストップ特例制度の手続きを行う
ふるさと納税サイトから寄付は、ネットショッピングの要領で簡単に行えます。返礼品をカートに入れて、最後に寄付の手続きに進みましょう。
また確定申告やワンストップ特例制度を活用しないと、税額控除が受けられません。手続きを忘れないようにしてください。
ワンストップ特例のやり方は?
ワンストップ特例を受けようと思ったら、いくつかの条件に当てはまる必要があります。条件をまとめたので、当てはまるか確認してみましょう。
・寄付する自治体は5つ以内
・ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告の必要がない
・寄付した自治体のすべてに申請書を郵送できる
条件に当てはまるようならば、ワンストップ特例を受けられます。ワンストップ特例の流れは以下の通りです。
1.ふるさと納税を行う
2.自治体から「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を受け取る
3.申請書に必要事項を書き込む
4.マイナンバー関連の必要書類をコピーする
5.各自治体に申請書と必要書類を郵送する
確定申告に必要な書類は?
確定申告でふるさと納税を行う際には、ふるさと納税を行った自治体発行の「寄付金受領証明書」が必要になります。なくさずに取っておきましょう。
「寄付金受領証明書」以外にも、確定申告に必要な書類があります。基本的に必要になるのは以下の書類です。
・源泉徴収票
・寄付金受領証明書
・還付金受取口座の通帳
・個人番号(マイナンバー)確認書類のコピー
・本人確認の書類のコピー
ほかに私的年金などを受けている場合には支払金額がわかる物が必要です。また医療費の領収書や、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書、生命保険料の控除証明書、地震保険料などが必要なケースもあるので、必要書類はまとめておくとよいでしょう。
年金受給者もふるさと納税を賢く利用しよう
ふるさと納税は、寄付のみならば誰でも行うことができます。応援したい自治体がある場合におすすめの制度です。
また年金受給者がふるさと納税の税額控除のメリットを得ようと思ったら、事前に控除上限額を計算し、どの程度まで寄付が可能なのか調べる必要があります。いまはワンストップ特例制度のように手続きを簡略化できる制度もあるので、始めるのは意外と簡単です。
年金受給者もふるさと納税の制度を知り、賢く利用しましょう。
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※掲載の情報は2021年12月時点のものになります。
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