硯の選び方
まずは硯の選び方をチェックしていきましょう。自分の使い方にピッタリの硯を選ぶために参考にしてみてくださいね。
ポイントは下記の5つ。
【1】石の産地
【2】鋒鋩(ほうぼう)
【3】書きたい文字に合わせた寸法
【4】水分の乾きにくさ
【5】墨池
上記のポイントを押えることで、より欲しい商品をみつけることができます。一つひとつ解説していきます。
【1】石の産地で種類を選ぶ
産地で分けると、硯の種類は中国産と日本産の2種類です。ここでは、中国産の唐硯(とうけん)と日本産の和硯(わけん)についてそれぞれみていきましょう。
▼芸術品のような名硯を探そう! 中国産の唐硯
代表的な唐硯は、端渓硯(たんけいけん)、歙州硯(きゅうじゅうけん)、洮河緑石硯(とうがろくせきけん)などです。これらは名硯とされ、なかでも中国南部の広東省高要県の渓谷で採取される端渓石を使った端渓硯が高く評価されています。
石紋のあらわれ方が美しく、こまかい彫刻にも向いているため、芸術品といえる硯に出会えるでしょう。採掘される坑によってランクが分かれ、老坑(ろうこう)から産出されたものは品質がとくにすぐれています。
▼参勤交代の贈りものとしても使われた和硯
山口県の赤間石と宮城県の雄勝石は古い歴史を持ち、国から指定を受けた伝統工芸品です。赤間石を使った赤間硯は、鶴岡八幡宮に奉納されたり、長州藩の名産として参勤交代の贈りものなどに使われたりした歴史があります。
雄勝石は、2011年3月の東日本大震災の影響で生産が停滞した時期もありました。ほかに、三重県の那智黒石、山梨県の玄晶石が和硯の材料産地として知られています。
【2】鋒鋩(ほうぼう)を確認する
硯の評価は見た目などの芸術的な評価以外に、鋒鋩(ほうぼう)の質で決まります。石英や銅、鉄などの小さな結晶からなる墨をするデコボコした部分のことで、墨をするときにおろし金のような役割をはたします。鋒鋩のキメがこまかさと耐久性の高さがポイントです。
荒い鋒鋩だと、手早く墨をすることができますが墨色が出ず、ニジミもキレイではありません。鋒鋩は発墨のよしあしに大きく関わっているので、よく確認しましょう。
【3】書きたい文字に合わせた寸法を選ぶ
ここでは、書きたい文字に合わせた硯の大きさの選び方を紹介します。硯の大きさは、中国の方法にならって縦の長さを吋(インチ)で示し、1吋は約2.5cmです。目的にピッタリ合った硯を選ぶ参考にしてみてください。
▼かな書道には3~5吋を選ぶ
祝儀袋・写経用を探している人やかな書道をたしなんでいる人には、3~5吋(7.5~12.5cm)がピッタリです。小さいサイズの紙や筆には、大きな硯である必要ありません。学童用の硯は、四五平(しごひら)と五三寸(ごさんすん)です。それぞれおよそ6吋で、半紙サイズの字に合います。
日本独自の硯の寸法を残したものがあり混乱しがちなので、メートル法表記でも確認しましょう。
▼書き初めなど大型の漢字には8~10吋を選ぶ
書き初めなど大型の漢字を作品として仕上げるときは、半切あるいは条幅と呼ばれる和紙を使います。条幅紙の大きさは約35cm×136cmです。使用する紙の大きさや筆の太さに合わせて、準備する墨の量も調節する必要があります。
大作の場合は、8~10吋(16~25cm)の硯を選ぶと、途中で墨が足らなくなることがありません。
【4】水分の乾きにくさで選ぶ
せっかくすった墨が乾いてしまわないためにも、水持ちのいい硯を選ぶことが大切です。店頭で選ぶときは、店員さんの了承がえられるようなら、水をかけたりして跡が消えにくいなら水持ちがいい硯といえるでしょう。
蓋つきは、乾燥やホコリの侵入を防ぐことができ便利です。ただ長期間の保管には向かないので注意が必要です。
【5】墨汁だけを使用するなら墨池を選ぶ
硯で墨をする時間より書く時間を優先したい人や、墨の量を気にせず練習に没頭したいときに便利なのが墨池(ぼくち)です。墨汁を入れればすぐに使え、書道のほか水彩画や水墨画を楽しむことができます。
プラスチック製の墨池は、とても軽くて持ち運びしやすいので、お稽古やレッスンに参加するときにピッタリ。墨池に出した墨汁をもとの容器に戻すのは、墨汁の品質をそこなってしまうので注意が必要です。
エキスパートのアドバイス
硯を選ぶときは、どこで書くかを考えましょう。
墨の種類や形状によっても使う硯が変わってきます。たとえば書く文字が「漢字」で太い筆を使用する場合、少し多めの墨汁が必要になります。書く文字の大きさ・太さ・量でも必要な墨汁の量を準備するために硯の大きさや材質を変えましょう。
墨をするのか墨汁を使うのか、自分にあった硯はどのようなものかを考えて選ぶことが大切です。
硯のおすすめ12選
ここからは、硯のおすすめ商品を紹介します。小さな筆や紙を使うときにピッタリな小ぶりな硯を中心に厳選しました。使い勝手のいいものを見つける参考にしてみてください。
木箱と豪華な化粧箱つきでギフトにもピッタリ
端渓三大名坑のひとつ、麻子抗(ましこう)で採石された石を使った硯です。老抗と肩を並べるとの評価もあり、皇帝に貢ぐ貢硯としても用いられた歴史があります。
鋒鋩のキメがとてもこまかいので墨おりがよく、細字・かな文字などによく合います。たくさんの墨液を必要としない、かな・細字や写経にちょうどいい小ぶりなサイズです。
天然石を使った半紙サイズの書道にピッタリな硯
子どもの書道用にも大人の書道用にも使える、半紙サイズの字を書くときに合う四五平(しごひら)サイズ。100年以上製墨業を営む呉竹製の硯は、硬度のある天然石を使用しており、墨おりがよく硯面の持ちがいいのが特徴です。
子どもが手書きの温かさを体験するのにちょうどいいサイズでしょう。手ごろな価格帯なので、はじめての書道用硯としてピッタリです。
たっぷり練習したいときは墨池を使えて便利な両面硯
子どもの書道学習用の硯を探しているなら、セラミック両面硯がいいでしょう。軽量・丈夫なので、通学や習字のお稽古バッグに入れて持ち運びやすいのがポイント。表面は硯として固形墨に使え、裏面は墨汁専用の墨池となっています。
手ごろな価格で、半紙に字を練習するのにピッタリな四五平サイズ。実用的な硯なので、子どももたっぷり練習できるでしょう。
初め唐硯にふさわしい手ごろな羅紋硯(らもんけん)
中国産の唐硯のなかでも、実用性を重視して気軽に使ってみたい人にピッタリなのが、羅紋硯です。中国安徽省で産出される粘板岩の薄い板状の層を、縦割りに切り出した石を使ったもので、横目のこまかい羅紋を持っています。
大量に産出されるため価格が手ごろなうえ、墨おりもよく学童用や初心者用として広く使われている硯です。
写経やかな書道、手紙をしたためるときに使いたい
宮城県石巻市産の黒色硬質粘板岩を使って、硯職人によってていねいに手づくりされた硯。硯石の色彩は黒あるいは暗藍色で、光沢がありなめらかな石肌を持った、美しい文具です。
鋒鋩の荒さとこまかさ、かたさとやわらかさのバランスがよく、なめらかに油煙墨や松煙墨をすることができます。小さな文字を書くときに使い勝手がよく、箱つきなのでギフトとしてもピッタリです。
手のひらサイズの硯を探している人はお見逃しなく
ひとまわりさらに小さな、手のひらサイズの宮城県石巻市産の黒色硬質粘板岩を使った硯。とても小さくて軽いので、筆と硯を持ち歩きたい人にとって使い勝手のいいタイプ。これなら旅先や出先で、筆を使ってお礼状をしたためることもかんたんにできます。
祝儀袋や短い手紙を書くなど、小筆を短時間だけよく使用する人にピッタリな硯です。
和のテイストたっぶりなエンジ色が高級感のある墨池
開明墨汁を120年以上販売している開明の墨池。プラスチック製とは思えない、まるで漆器のような輝きと上品なデザインが特徴です。軽くて豪華は華やぎがあるので、仲間が集まる書道や水墨画などのお稽古やレッスン先に持っていくのにピッタリ。
筆洗いや筆置きとしても使える便利なデザインです。使い終わったあとのお手入れもかんたんなので、まずは墨をするより書の練習が先、という人にいいでしょう。
半切・条幅紙用に使うならたっぷり入る大がピッタリ
漆器を思わせる、落ち着いた風情のあるデザインが特徴の日本製墨池。開明の「大」サイズは直径14センチほどの大きさで、条幅用の太めの筆で書き初めなど大型の作品を仕上げるときに便利です。
墨汁だけでなく、すった墨を墨池に集めてから大作に取り組むのもいいでしょう。大きくてもプラスチック製で軽いので、持ち運びにも便利です。
外見を自然風に作硯された野趣あふれる硯
宮城県産出の黒色硬質粘板岩を使って作られた、雄勝硯。室町時代にはすでに硯石が産出されていたとされ、古い歴史を誇る雄勝硯は光沢があり粒子が均一なのが特長です。鋒鋩もキメこまかく密集しているので、墨おりもなめらか。
半紙や小画仙紙に書くときにじゅうぶんな墨をおろせるので、書をたしなむと決めたらひとつ持っておきたい硯です。
伸びや光沢にすぐれた墨汁をうむ長く使える名硯
良質な唐硯として名高い端渓硯のなかの麻子坑硯は、鋒鋩が繊細で墨の粒子をこまかくし、すばらしい発墨をえられます。この硯から生まれた墨汁は、伸びや光沢にすぐれているので、とっておきのギフトとして自分や大切な人に贈るのもいいでしょう。
幅広い目的で使える5吋は、使い勝手のいいサイズです。手紙・かな書道・漢字・水墨画などさまざまな用途に使えます。
唐型彫りで墨池の深さがあり多くの墨液をためられる
国指定伝統的工芸品として名高い、宮城県産雄勝硯の鋒鋩はキメがこまかく、墨をするのにちょうどいいかたさが特長です。蓋つきなので、ホコリや水分蒸発をかんたんに防ぐことができます。
手間をかけてすった墨の水分をとどめておけるので、短期間ならほぼ変わらない濃度をたもてます。硯のよさがわかる人にぜひ検討してほしい硯です。
金銀墨・彩墨・朱墨など黒以外の墨をするときに合う
普通の墨もすれますが、色ものの金銀墨、朱墨などの色合いを見るために開発された硯です。墨をするときに硯も少しずつ減ることから、硯の粉が色味に影響することを避ける目的で使います。
そのため写経用金錠を使って、写経をするときにピッタリです。従来の墨用の硯としてもじゅうぶん使え、すりにくさを感じたら耐水ペーパーで磨くとすりやすくなります。
「硯」のおすすめ商品の比較一覧表
通販サイトの最新人気ランキングを参考にする 硯の売れ筋をチェック
Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングでの硯の売れ筋ランキングも参考にしてみてください。
※上記リンク先のランキングは、各通販サイトにより集計期間や集計方法が若干異なることがあります。
硯のお手入れ方法とは
硯を愛用していると、汚れが気になる部分といえば、墨堂です。墨をするところを墨堂あるいは墨丘といい、使うたびに洗ったとしても少しずつ墨汁のカスがたまってしまいます。その結果、目づまりをおこした状態になって、発墨に悪影響が出ることに。
そんなときは、硯を水のなかに3時間ほどしっかりつけましょう。そのあと墨堂を脱脂綿や木炭でこすれば、たまったカスがキレイになるので試してみてください。
目的にあったサイズの硯を選んで書の腕前をあげよう
毎日の生活のなかに、墨を使って手紙を書いたり、写経やかな書道をたしなむ時間を持てたらすてきな時間を過ごせそう。鋒鋩のキメがこまかく、耐久性もある硯を選べば、伸びがよく艶やかな墨液をつくれるので書の時間がさらに楽しくなります。
書きたい字に合ったサイズの硯を選べば、活用する機会が広がり書の腕前もきっとあがるはず。今回はエキスパートさんに聞いた硯の選び方や、編集部も一緒に選んだおすすめの12選を紹介しました。お気に入りの硯を見つけて、写経や書の時間をますます充実させましょう。
書き味を試す色紙の記事はこちら
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筆耕士として贈答用熨斗紙表書き・名入れ、封筒など宛名書き等の代筆。書道歴15年以上。子育てをしながら書道教室に通い師範取得。現在書道展覧会の出品にも意欲的に取り組み中。冠婚葬祭において、前準備等に関する仕事にも携わっております。